白石一文のレビュー一覧

  • ここは私たちのいない場所(新潮文庫)

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    人が死ぬということ。誰もが経験したことはないから、死ぬ時どんな感じとか、死んだらどうなるとか、わかるよしもない。ただ、死を身近に感じることはある。私も最近父を亡くしたが、死んだというより、いなくなったという感覚が近い。ただ不在なだけ。でも、時折もう二度と会えないと気づく瞬間があって、その時は奈落の底に落ちるような悲しみがおそってくるのだが。

    この小説は、身近に死を体験した人に、その死に対してどう向き合うかを、淡々とした中でやさしく、時に強く導いてくれる物語だった。

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    2019年12月10日
  • 僕のなかの壊れていない部分

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    久々に「白石一文の世界」にどっぷり浸る。のっけから主人公が繰り出す思索開陳のビッグウェーブ。良い意味で相も変わらず濃厚な展開で、ページを繰る途中に何度も本を閉じ、深呼吸するほど。まぁ、これが白石一文ワールドというか真骨頂。ファンとしては、しばしその世界に浸れる安堵と喜びを抱きつつも、脳髄は痺れるというアンビバレンツな読書タイムを味わえる稀有な作家。まぁ、とにかく圧倒的な情報量を包含した骨太の小説を編まれます。

    さて、本書。主人公は東大法学部出身、大手出版社勤務、高収入の30代独身男性。境遇のまったく異なる三人の女性と関わりを持ちながら、いずれも一定の距離を置いた関係を続けている。彼女らに向ける言葉は終始理屈っぽく他虐的で粘着性が強い。また、このエリートが語る仕事感・恋愛感・死生観は高慢で鼻持ちならず、正直言って感情移入しずらく、到底好きにはなれないタイプ。

    にもかかわらず、徐々に当初より抱いていた嫌悪感は薄らぎ、主人公の思考・思索・振る舞いに同調とまでにはいかないが関心を寄せるようになっていくから不思議。この“やな奴”の「僕の中の壊れていない部分」が、はたしてどこなのかを見つけたくて一途にページを繰ってしまう。もう、その段階で著者の術中にまんまとはまってしまってるわけですな。

    本書の後半に、その核心となる「なぜ自分がこんな人間になったのか」を坦懐するシーンがある。人は大なり小なり何かしらの「マグマ」を抱えている。コンプレックスや出自に根差すやり場のない燻り続けている感情、憤怒や復讐といった高熱を放っているものまで、それは様々。

    そのマグマが、時に人を攻撃的に、冷徹に、シニカルに、またその一方で路傍の名も無い花を愛でる繊細な優しさや死をも厭わない犠牲心や包容力を有していたりする。

    「落語は人間の業の肯定である」と喝破したのは談志。いうまでもなく文学も然り。太宰なんてその権化。

    業をカルマと呼ぶが、「カルマ」と「マグマ」。
    いずれも沈潜し、脈動し、得体の知れない不気味さを保有しつつ、存在の在り処をちらつかせる。理性は万能ではない。理性が制御する範囲は一部分である。人間は不条理で不合理な生き物であるってことをあらためて思わされ、またそれを自覚すべきであることを思いしらされた一冊。

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    2019年12月08日
  • 僕のなかの壊れていない部分

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    なんてつまらない人生なのだろう、と思う。
    自ら楽しもうともせず、
    理屈ばかり捏ねて、
    差し伸べられる手を拒絶してばかりで。
    けれど、何故か彼の生き方を完全に否定することはできないし、
    他人事には思えないでもいる。

    ただ一つの自分の居場所、
    たった一人の運命の人、
    ただ一度きりの自分の人生。

    それらを探し続ける白石一文の冒険は、
    きっとここから始まったのだろう。

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    2019年11月24日
  • 火口のふたり

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    いまやりたいことをやっていると、人間は未来を失い、過去に何も残せない。明日の為に必死の思いで今日を犠牲にしたとき、初めて立派な昨日が生まれる。

    ひたすらセックスしてるふたりのはなし。

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    2019年10月30日
  • ここは私たちのいない場所(新潮文庫)

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    あるみ在実 ありのり存実 そもそもが軽妙洒脱なその筆力に私は魅せられた ネクロフィリア 各々の人品骨柄を判定していた 人と人との間に生まれる愛情という貴重な財産は、一度小さなひび割れが生ずると、価値を失ったり減じたりするのではなく、そこから次第に腐敗が進行し、最後には猛毒に変じて、私達を蝕み、苛み、破滅させる。僅か三歳でこの世を去った妹は、その冷厳なる真実を私にしっかりと教え込んでくれたのだと思う。 年中顔を突き合わせていれば、どんなに特別な相手であっても、好きなだけでいられるはずがない。誰かと過ごした時の心豊かな記憶は虹のように儚く、その人物との諍いの記憶は刺青のように決して消える事がない。人は愛する以上に憎む事に長けた動物だ。世界から殺戮や戦争が絶えないのは、それが人間の本性に深く根ざしたものだからだ。 「懲戒解雇だけはやめてほしいの。降格も左遷も構わないし、できれば北海道に飛ばしてもらえないかしら」 鼻白む思いで私は呟く ゆし諭旨解雇 しゅかく主客転倒 釈尊は妻子を捨てて悟りの道へと踏み出し 修道士は童貞をもって本分としている 胆管癌 死の恐怖の希薄な世界に殺戮や戦争は根付かない 浦霞の純米吟醸で乾杯した ここの鱧は淡路産を使ってるから たっぷりの酢醤油に浸して小籠包を充分に冷やし 私は生まれてこのかたずっと「奥野と私が存在する世界」で暮らしてきた。それが五時間前に「奥野が死に、私だけが存在する世界」に変化した。 キェルケゴールやヤスパースを崇拝していた 喪失を昼すべての人に捧げるレクイエム

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    2019年10月13日
  • ここは私たちのいない場所(新潮文庫)

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    ふんわり緩やかな空気に包まれた本編と、その背景を綴った解説。もはや共作と言っていいくらいの作品。ストーリーにはちゃんと起伏があったはずなのに読後感は心地よい凪。

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    2019年10月07日
  • 心に龍をちりばめて(新潮文庫)

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    幼少のころから一緒だった同郷の美帆と優司、その先まったく違う歩みをするが、出生において悲しい共通点をもつ。それぞれ道を歩みながら、徐々に近いしい関係に。最初からこうなる運命だったんだと感じる事ができる作品。

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    2019年09月19日
  • ここは私たちのいない場所(新潮文庫)

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    いわば「変わり者」の思想と日常であるが自己投影ができてしまう内容。哲学的な文言も現実離れしておらず感慨深かった。解説で特定の人のために書いた物語とわかり、伝えたい想いを散りばめ小説にしたのであればこの本の意味はより深いものに感じた。

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    2019年09月17日
  • 永遠のとなり

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    何がきっかけで心の病になるかなんてわからないし、部下が自殺とか、そういうのも他人事じゃないなって思う。ホント。
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    白石一文さんならではの、心の闇とか、その掛け合いの描き方が、冬に読むには痛々しい。
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    てことは、巧いんですね。
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    2019年08月04日
  • 火口のふたり

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    まるで官能小説だけど、途中から白石先生らしくなってくる。でもこの前読んだ「愛なんて嘘」でも感じましたが、白石先生の作風というか、書きたいもの、言いたいことの表現手法が少し変わって来ているような気がする。
    確かに「身体が合う」って大事なことと思う。生まれも育ちも違う男女が長く仲良くいる為にはすごい大事な要素だと思う。その時その時は、一緒に快楽に溺れているから一心同体のような気がしても、やっぱり別々の個体が織りなす絡み合いなので、終わるまでずっと双方が同じ気持ちでいる訳じゃなく、所々で押したり引いたりしていますよねぇ~そりゃそうだよねぇ〜人の気持ちなんていくら身体を合わせていても測り切れませんよね。それでも獣のようにお互いを貪るほどに情愛に耽る…そういう関係って良いよね。
    仕事とか結婚や子育てとか年齢が上がるほど色々と積み上げて行かなきゃならないモノのにいつのまにか支配されていて、シンプルに自分の好きなように生きていく…なんて忘れちゃうと言うか、出来なくなっちゃうよね。でも、人生の岐路に立った時、立ち止まってもリセットしてもいいんじゃないか?ってそんな気にさせられました。
    生きてるのが楽しい…それが手に入るならそれで良いじゃね。みんな難しく考えすぎてないかいって言われたみたいな印象です。セックスばっかやってても気持ち良いんだから、いいじゃない(^^)

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    2019年07月26日
  • 翼

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    泣く場面も、共感も特にはなかったんだけど、こんなに運命の人だ、結婚したい、と言われて流されない里江子がすごい。
    設定上イケメンのお医者さんに、13年越しに。

    白石一文さんの恋愛小説はすごく愛について掘り下げてくる感じがある。

    フツーに暮らしてる自分にとっては読み物としてはよいけど、現実とはリンクしないかな。

    だけど初恋の人に振られる夢は未だに見るから、しかもいろんなシチュエーションで、必ず振られる(−_−;)人生における運命の人かもなー。

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    2019年07月19日
  • 記憶の渚にて

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    大好きな作家さんなので、書店で手に取ってすぐ読み始めたのはもう何か月前…?
    職場の昼休みや、待ち合わせの時間など細切れで読んでると、だんだん訳が分からなくなってしまって、これはしっかり読まないといけないと、後半は正座して読んでしまったにもかかわらず、消化不良…

    ここで終わる?とまだまだ小説の中に身を置きたい自分だけが取り残された感が…

    解説にもあるとおり、私も小説の中に入り込んでしまうからか、東也がおいてけぼりの結末にどうしても納得できなくて、白石作品初の星3つ。

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    2019年07月06日
  • プラスチックの祈り

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    五年前の秋、かかとのプラスチック化を初めて見つけたとき、これは天罰だと直感した。
    ーあんな形で小雪を失った当然の報いに違いない。
    そう確信した。

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    2019年06月21日
  • 一瞬の光

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    自分を愛していないと人を愛することはできないが、人を自分以上に愛して初めて本当に自分を愛することができる

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    2019年06月06日
  • プラスチックの祈り

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    体がプラスチック化する。それが、ある日ポロリと取れる。
    どんよりした気分や悲しい気分も同じように固まってポロリと取れてスッキリすれば清々しいんだろうにね〜。

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    2019年05月25日
  • プラスチックの祈り

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    本当にキツイときの記憶が失われたり、過去の思い出を友人と語ると食い違うということは実感としてわかる。
    そういった齟齬を突き詰めて作品化した大作。
    ラストの収束も含め、観測・認識されないものはプラスチックであるというテーゼは量子力学の観測問題のよう。

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    2019年05月14日
  • すぐそばの彼方

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    政治ものだけど、白石さんの「運命の人は、時すでに遅しくらいにわかる」的な恋愛物語。わかっていたけど、最後は戻るんだなぁ。主人公は責任感が強くみえるか、所々急に弱く逃げてしまう。でも戻るんだなぁ。
    政治の人間関係が少し複雑で読み難く、ストーリーが見えていたので評価3ですが、白石作品はやはり良いかな。

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    2019年04月16日
  • 幻影の星

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    長崎市諫早市いさはやし ほんみょう本明川 めいめい銘々適当に飲み始める イリュージョン 中洲の旗艦店 デキャンティング 重度の子宮内膜炎を患っていて 過去の姿の連なり 既に無くなったものの集積 江戸川橋 神楽坂 書籍取次大手のトーハン 逆転式一方通行 ひるがれい昼餉ひるげ 都電荒川線に乗って早稲田と三ノ輪橋の間を往復したり イタリアの小都市トリエステ たききぎ薪焙煎の上質なエスプレッソ 世界平和はナマコとともに ゾウの時からネズミの時間 肺の動きは、その動物の心拍を基準にすると、四倍の時間がかかっている。つまり心臓の拍動を時計の振り子とみなすなら、肺の時間は、どの動物でも心臓時計四拍分なのである。 とう薹が立っている 梅枝母智夫ウメガエモチオ 梅ヶ枝餅 巨大隕石 直径四〇〇キロ 秩父ワインの醸造所 委託生産 昵懇の間柄 それこそ女性のオルガスムスを何倍にもしたような生涯ただ一度きりの陶酔が死の瞬間訪れてくれるのならば 芋焼酎の赤兎馬 つまみは蕗味噌 ゆうげ夕餉 細工は流々りゅうりゅう 非嫡出子ひちゃくしゅつし 彼は女性のアナルにしか興味が持てない異常性欲者なのだ 愛犬のルルド クリーム色のポメラニアン 女は誕生に生命の意味を見出すが、男は死の中にこそ、その意味を読み取ろうと欲する。男は人間存在の終わりの為に生き、オンナは始まりの為に生きる。男は愛する女に一緒に死んで欲しいと希い、女は愛する男に一緒に生きて欲しいと希う。 何もかも死に対する抵抗として存在している 松本清張 敵愾心を糧に刻苦勉励 音羽通り 講談社ビル 鳩山会館 至極当たり前の感想 大塚警察署 椿山荘の冠木門かぶきもん フォーシーズンズホテル ルルドの洞窟 また別のレプリカ 平和公園での一齣 こぬか小糠雨が降る彦国橋 閉経した雌が子育てに参加できるかがどうかが一番大きくて 放射能の「ホルミシス効果」 或る世代 玉置浩二の曲名から拝借 太宰府天満宮 菅原道真 とびうめ飛梅伝説 シュミレーション=思考実験装置としての小説の機能がフルに活かされた作品である タナトロジー死生学 直線的で計量可能な時間意識からの飛翔こそを

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    2019年04月21日
  • 火口のふたり

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    世界が終わるとき…終わるかもしれないとき…
    誰と何をして過ごすのか。
    生かされている私たちには究極のテーマだと思う。
    そこそこ大人の私なので分からんこともない。
    人として至極素直な行動なのだろうとも思う。
    だけどやっぱりこれは男性の理想の終末なのかなという気もする。男性が生きていることを一番に感じられる瞬間。
    母である私はおそらく選択する道が違うのだろうな…というだけのこと。
    今年の8冊目
    2019.3.24

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    2019年03月24日
  • プラスチックの祈り

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    うーん。
    長文だった。早く終わらないかなぁ?と読み進めると、え?え?え?の展開へ。
    なんだかメビウスの輪みたいな話。
    ちょっと苦手。

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    2019年03月18日