山本兼一のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
ネタバレ狩野永徳を主人公にした小説。歴史にうといが、狩野派や永徳の活躍した時代のイメージがつかめた。もはや狩野家は大企業のような規模、永徳の悩みとかは大企業の幹部の悩みって感じかも。
資産や歴史、格式のある家の跡取りとして生まれた永徳。エリート意識も高いなかで、絵師として新しい画風を開拓したいという葛藤もあり、恵まれている環境に苦しめられもする。永徳と対照的に描かれる、等伯の人柄ととらわれない画風がさらにその悩みを際立てる。
男社会の描きかた、矜持との葛藤などがテーマのように思った。あまりそういうところと、絵画の技術的なところには実感を持たなかったので、少し文字が上滑りしたところがあった。
面白かったのは、絵のなかにみる人の心の余裕を持たせる、というところ。花火とかでも、暗闇こそ浮かび上がるなぁと思っていた。花火は誰もが同じように心にうつしだされるが、そのあとの静寂はひとりひとりの胸に迫る時間なのだと、絵の示唆をうけて考えた。
しかし、主人公の絵に展開があるのかというと、悪相になったな、と秀吉に言われたとおり、どんどん自分の矜持にからめとられてそちらとの戦いに苦しんでいく主人公。倍返しだ、とかそういう世界観を感じた。
絵の技術的なこととかは話のなかで丁寧に解説されていて、狩野派の絵を見たときの助けになりそう。そのあたりの絵の知識をつけたい人にはおすすめ。
あと、死などの不浄すらも絵の主題としてしまうことに罪悪感を覚えた主人公が、「それがなんだ、私は神や仏に支える身ではなく、絵師なのだ」と開きなおるのは新鮮だった。絵を描く喜びが伝わってくる勢いのある作品。
情感や情緒はあまりないが、丁寧に書きこまれたサラリーマン向けの歴史小説。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ信長の夢は、天下一の棟梁父子に託された。
天に聳える五重の天主を建てよ!
巨大な安土城築城を命じられた岡部又右衛門と以俊は、無理難題を形にするため、
前代未聞の大プロジェクトに挑む。
信長の野望と大工の意地、情熱、創意工夫
すべてをのみこんで完成した未曾有の建造物の真相
職人魂の素晴らしさを改めて実感させられた一冊です。
木と向き合い、天主と向き合う。
石と向き合い、石と対話する。
自分の仕事に徹底したプロ魂を持った職人さんたちがいて、
それを束ねる総棟梁(岡部又右衛門)がいて、
独創的なアイディアを好む信長がいて、
それで名城が出来ない訳がありません。
岡部又右衛門父子の親子の絆もしっかりと受け止めました。
登場する主な人物の誰が欠けても、この名城は出来上がらなかったと思います。
安土城、実物をぜひとも見たかったです。 -
Posted by ブクログ
老舗の茶道具屋の娘ゆずと、彼女と駆け落ちした奉公人真之介、彼らが営む道具屋「とびきり屋」を舞台にした連作短編7編。
各編に、幕末の歴史上の人物が登場する。
表題作「千両花嫁」には、近藤勇。以下各編に、高杉晋作、坂本龍馬、勝海舟、土方歳三、武市半平太、芹沢鴨。
そして、著者は彼らの顔の特徴を、真之介の目を通して詳細に記し、人物評価としている。
例えば坂本龍馬、「額が良い。形よく広がった額は、明るく開放的で、天真爛漫な質をあらわしている。…とてつもなく大きな夢や野心を抱いている男に違いない。それを実現する行動力もあるだろう」
各人それぞれの特徴を述べ、歴史ファンには、それを読むだけでも楽しいことだろう。
さらに、ゆずのはんなりとした京ことばが、読んでいるだけで心がほだされ心地よい。
シリーズものなので、次巻も読まずにはいられない。 -
Posted by ブクログ
面白かった!そして儚い
安土城築城における棟梁親子とプロフェッショナルたちの熱い物語!
織田信長の無理難題に挑む棟梁とその息子。
大工の意地と情熱と創意工夫でそれを解決して、城を築き上げていきます。
親子の確執あり、築城を邪魔するスパイ活動あり、さらには、巨大建造物を構築するためのさまざまな苦労、犠牲ありと、プロジェクトXさながらのストーリ展開。
とりわけ、大通柱4本の運搬の大変さや巨石の運搬に携わる過酷さなど、当時重機がない中でどのようにしてそれらを運ぼうとしていたのかが詳細に語られています。
すごい...
そうした木材のプロ、石材のプロ、大工のプロ、さまざまなプロ達の衆智を結集し、プロがプロの誇りをもって仕事をしていく姿がすばらしい。
さらに、突然の仕様変更により、壁の厚さを変えなければならなかったときの棟梁の決断。結果、バランスを崩しかけた城に対して、通し柱を削るという荒業を実行する場面ではハラハラものでした。
そして、父親の本当の偉大さ、棟梁の本質に気づいた息子の成長と読みどころ満載です。
しかし、最後、100年も耐えられるように設計し造られた城が、築城後わずかの間で焼かれてしまうというところがあまりに儚い。
プロの矜持、そうしたプロ達を纏め上げる責任と覚悟、をひしひしと感じる物語でした。
ものづくりが好きな人にはお勧め!