あらすじ
信長の夢は、天下一の棟梁父子に託された。安土山のいただきに巨大な城を築け、天にそびえる五重の天守を建てよ! と命じられた岡部又右衛門と息子の以俊は、その難題を形にする、前代未聞の巨大プロジェクトに挑む。いまだかつてない、南蛮風の天守にせよ。見上げれば、思わず掌を合わせとうなるほど秀麗な…信長の野望と大工の意地、情熱、創意工夫、膨大な労力──すべてをのみこんで完成した、安土城。その築城の真相に迫る、松本清張賞受賞作。
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信長という無茶苦茶な施主からの依頼である、安土城をいかに意匠を凝らして、納期遵守するか。とてつもなくめんどくさいプロジェクトマネジメントの物語。同業他社や遺恨を持つモノ、防風・雷、大雨といった天災などインシデント多数。
今では荒涼としている安土城跡だが、あそこにあった城と街の異様さに思いをはせることができる。
著者が生きていれば、続編として大阪城築城を書かれたのかもしれないな。
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とても読み応えのある、良い物語でした。
世紀の安土城築城。
岡部又右衛門らの大工衆、戸波清兵衛らの石工衆、甚兵衛らの杣衆らの仕事ぶりが感動的です。
まさに仕事師たちです。
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「火天の城」は城を作った宮大工、岡部又右衛門にスポットをあてた小説で、私に知らない世界を教えてくれた。それまで歴史に興味はあっても、城造りには知識もなく安土城の独創的な凄さには気がついていなかった。フロイスが当時ヨーロッパにもないと驚嘆した高層木造建築であり、華麗な外観と吹き抜けのある内部。宗教的な意匠。
その他、総石垣の普請、計画的な城下町。なりより天主は信長が居住していた御殿であった。安土城は近世の変革者信長そのものであったと思う。残念ながら城は本能寺の変の後、焼失してしまったが、この小説は今でも城跡に登城するものにその威容と城造りを想像させてくれる力作です。
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面白かったー!又右衛門に惚れた。通勤電車とかでちょっと読み始めたらあっという間に小説の世界に入れるタイプの本。作者の方は何者ですか?ってくらい知識量をぶち込んでて色々調べたくなる。
気が済まないことに対して「呑み込んで糞にしてひり出せっ」ってセリフは私も今後の人生に活かしましょう。ありがとう総棟梁又右衛門。
久しぶりに、歴史小説の醍醐味を堪能させてくれた作品です。
織田信長の安土城を建設した大工棟梁親子の物語で、
建築ディティールの書き込みも去ることながら、
安土城完成まで、山あり谷ありの波瀾万丈。
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山本兼一さんの出世作。
山本さんは、これまで何冊か読んできましたが、その中で最も面白い。確かに喧伝されるだけのことはあります。
安土城築城を、その総棟梁の親子を主人公にして描いた物語。ケン・フォレットの『大聖堂』を思い出します。『大聖堂』が聖堂建築を主軸にしながらも、様々な伏線を取り込んだ膨大な中世ロマン小説だったのに対し、『火天の城』は伏線が少ないシンプルな構成です。どちらが良いという訳でなく、それぞれが素晴らしい。ただ、軸となる壮大な建築物語は似た雰囲気があります。ひょっとしたら山本さんは『大聖堂』の影響を受けているかもしれません。
ちなみに現存する安土城設計図は、内部が吹き抜け構造で、その中にせりだし舞台があるのですが、この設計図は使われなかった案だから残されているという説もあります。信長なら吹き抜け構造の方が相応しく思えますし、物語としても面白そうです。しかし、山本さんは吹き抜けの無い構造案を採っています。事実はともあれ、それでかえってリアリティーが出たような気がします。
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歴史小説なので、ずっと敬遠していたが、読んでみると築城に関する棟梁の想いと大工職人としての姿勢、父としての姿などもあり、単なる歴史小説ではない仕事に対する熱意を捉えたとてもよく練られた作品だった。
安土城はもう残ってないし、文献も残ってないが、凄まじい熱い想いを持って作られたのが解った。
読み終わる前に「安土城 復元」で調べてしまった。
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安土城を成した棟梁父子が主役ではあるものの、信長をはじめ、そこに関わる全ての者、木石の物語。
父を乗り越えてゆく息子以俊に対し、信雄が暗に父に及ばぬ息子として対比されて描かれているように思ってしまう。
それにしても、面白かったです。
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歴史小説家の今村翔吾さんのお薦めだけあって、読み応えを感じた。
物語りは大工の親子が織田信長のムチャな城造りの要求に、創意工夫を重ねて何とか応えていくといったあらすじ。
そのメチャクチャ壮大な仕事にかける父親の職人魂、そして何とか父親に認めてもらいたい息子の意地とが何度もぶつかり合う場面がこの物語りの面白さのひとつかな。
城造りの専門用語は分からんけども、それを抜きにしても想像しながら読むことができたし、戦国時代の史実も改めてインプットされた感ありです。
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戦国の安土城築城の物語。建築についての専門用語や当時の寸法には中々馴染みなく、取っつきにくく読む速度が進まなかったが、各分野の専門家、大工、杣、石職人、瓦職人などの命懸けの仕事が熱い。
現代にも通じる仕事に対しての姿勢も共感出来る。
壮大な築城であり、完成したときの又右衛門の感無量さと達成感がガッツリ伝わる。しかし歴史の通り最期は炎上、落城してしまうその落差に心が砕かれる。あまりの儚さに気持ちも沈んでしまった。
跡地にも訪れてみたくなった。
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「できるかできぬか」ではなくて、「自分がこの天主を建てたいかどうか」だ。
方法、手段は置いといて。考えずに感じる。
だからこそ、岡部又右衛門は信長に取り立てられたんだろうな。
改めて安土に行きたい!って思う。
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『利休にたづねよ』で山本兼一氏の作品を知り、どっぷりハマってしまった。『花鳥の夢』で本編の主人公岡部又右衛門が登場したのをきっかけに、本書を手に取った。
戦国時代の城が建つ背景がよく分かる一冊。職人気質でこれぞプロフェッショナルという魅力的な人物が多々登場し、職人の心意気のようなものが感じられ、仕事とは何かを改めて考えさせられた。
リズムよく話が展開し、章ごとに視点が変化し読書を飽きさせず、目まぐるしく時代が変化した戦国時代の話であることも相まって躍動感に溢れおり、グイグイとストーリーに引き込まれた。さすが松本清張賞受賞作品。
とびきり家シリーズもこれからの面白そうな展開になりそうだっただけに、早すぎた著者の死が悔やまれてならない。
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安土城を建てた大工を中心に、着工から竣工、そして本能寺の変までを描く。
壮大なスケールのお仕事小説。3年という工期の間、事件や揉め事、それぞれの葛藤がありつつも大勢の力が合わさって、とてつもないものが形になっていくのが生き生きと描かれている。
しかし、先後は悲しい。ものすごい知恵と技が結集されて形になったものが跡形もなくなってしまう。まるで、焼かれるために建てられた城のようで、そして城と共に築城に関わった人たちの思いも煙となってしまったようで、とても切ない。
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お城についての見方が変わった1冊。
安土城を作る親子2代の番匠、城の支柱となる木曽檜に命をかけた杣、御神石と石工の戦い。。。
また、城を作るに対抗する乱破。
コンピュータも、重機もない時代に城を作るって、
そりゃすごいことやな。と、しみじみ。
その当時の安土城、是非一眼見ておきたかった。
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熱田の宮大工が安土城を築くエンジニア時代小説。
精神論だけではなく緻密な計算が大仕事を成し遂げると気付かされる。領国一帯を挙げての国家的プロジェクトであったことを深く理解できる。
映画は適度に省略された良作だが、岡部親子の葛藤と友情を排して安っぽいラブロマンスに置換していたのは残念。
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御大工・岡部又右衛門一門の視点から見た安土城築城の物語。現代の我々は安土城が空前絶後の構えであったことや、焼失したことも知っている。又右衛門の息子に対する不器用な振る舞いは、人の親となってみれば合点もゆく。職人の視点であるからこそ、用材の調達や運搬、基礎・石垣を含む土木工事、天守の設計施工のたいへんさが伝わってきた。穴太衆の頭・戸波清兵衛と又右衛門の、プロとして気脈が通じる描き方も良かった。
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読み応えたっぷり。あの時代に城を築くことの苦心惨憺と、焼け滅ぶまでのあっけなさとの対比が実に面白い。これを読んで「五重塔」を連想した人も多いんじゃないかな。
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【内容】織田信長の安土城がいかにつくられたかを工事に携わった棟梁の視点から描く物語。
【感想】建って数か月でなくなったらしいという知識を持っているだけにこの多大な労力がせつなく思える。全編を通じて無駄がなく迫力がある。職人たちの群像劇でもある。彼らのセリフもいい。城づくりの蘊蓄もいろいろ。
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大工棟梁の視点から書かれた歴史。
お城に興味なかったけど、安土城を一目みたくなった。
大工、武士、忍者、瓦焼き職人、石職人… その道のプロたちの仕事ぶりだけでも面白い。
織田信長というとんでもないリーダーに、仕え、翻弄され、鍛え抜かれていくひとたち。
こころに残るシーンは、木曽大松の木を川に流す場面。杣の棟梁が命を落とす。それを、羽柴秀吉が運んでくる。切り詰めた仕事をしているひとたちの間では、少ない時間でも通じるものがあるようで、おそろしくも羨ましい。
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信長の夢は、天下一の棟梁父子に託された。
天に聳える五重の天主を建てよ!
巨大な安土城築城を命じられた岡部又右衛門と以俊は、無理難題を形にするため、
前代未聞の大プロジェクトに挑む。
信長の野望と大工の意地、情熱、創意工夫
すべてをのみこんで完成した未曾有の建造物の真相
職人魂の素晴らしさを改めて実感させられた一冊です。
木と向き合い、天主と向き合う。
石と向き合い、石と対話する。
自分の仕事に徹底したプロ魂を持った職人さんたちがいて、
それを束ねる総棟梁(岡部又右衛門)がいて、
独創的なアイディアを好む信長がいて、
それで名城が出来ない訳がありません。
岡部又右衛門父子の親子の絆もしっかりと受け止めました。
登場する主な人物の誰が欠けても、この名城は出来上がらなかったと思います。
安土城、実物をぜひとも見たかったです。
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人を束ねるとは。職人の心意気とは。
ただの築城の話ではありませんでした。とにかくスケールが大きくて、現代ではあり得ない事の連続。
織田信長が生き生きと描かれていて、彼の口ひげが見えるようだった。
最後に神父さん、お願いだから、いいところで鼻をかまないで!
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面白かった!そして儚い
安土城築城における棟梁親子とプロフェッショナルたちの熱い物語!
織田信長の無理難題に挑む棟梁とその息子。
大工の意地と情熱と創意工夫でそれを解決して、城を築き上げていきます。
親子の確執あり、築城を邪魔するスパイ活動あり、さらには、巨大建造物を構築するためのさまざまな苦労、犠牲ありと、プロジェクトXさながらのストーリ展開。
とりわけ、大通柱4本の運搬の大変さや巨石の運搬に携わる過酷さなど、当時重機がない中でどのようにしてそれらを運ぼうとしていたのかが詳細に語られています。
すごい...
そうした木材のプロ、石材のプロ、大工のプロ、さまざまなプロ達の衆智を結集し、プロがプロの誇りをもって仕事をしていく姿がすばらしい。
さらに、突然の仕様変更により、壁の厚さを変えなければならなかったときの棟梁の決断。結果、バランスを崩しかけた城に対して、通し柱を削るという荒業を実行する場面ではハラハラものでした。
そして、父親の本当の偉大さ、棟梁の本質に気づいた息子の成長と読みどころ満載です。
しかし、最後、100年も耐えられるように設計し造られた城が、築城後わずかの間で焼かれてしまうというところがあまりに儚い。
プロの矜持、そうしたプロ達を纏め上げる責任と覚悟、をひしひしと感じる物語でした。
ものづくりが好きな人にはお勧め!
Posted by ブクログ
・あらすじ
破竹の勢いで天下統一事業を進める織田信長に天下人に相応しい前代未聞の巨城を築くように依頼された職人親子の奮闘を描く歴史小説。
・感想
現代も、戦国時代も、サラリーマンという生き物は苦労が絶えないようである。
信長は型破りな独創家として知られる。となると注文も型破りなものになる。まだ西洋という存在を知って間もない頃に日本人に西洋風の城を建てよと未踏の地の城を要求する。普通に建てたら倒壊しかねない規格外のスケールの城を注文する。小惑星かと見紛うような巨大な岩石の見栄えが良いからあり得ない傾斜を登らせろと命令し何百人もの人足が岩の下敷きになる。次々と信長は無理難題を吹っかける。誠心誠意これに答えると、ねぎらいの言葉と次なる無茶苦茶な要求を突きつける。要求の水準はどんどん上がって行く。もしも「出来ない」と言ってしまえば、その首は文字通りクビになる。織田軍に使えると大変である。自分には戦国時代のサラリーマンの辛さが見て取れた。
Posted by ブクログ
「安土山の頂きに天下にならびなき天守を建てよ」
織田信長に安土城築城を命じられ、壮大な天下一の城を建てる!
信長の奇想天外な要望に応えていく匠達。
身を励んで工夫する。知恵を絞って汗をかく。迷った時は心静かに木に耳を傾ける…。
古の匠達の職人魂には頭が下がるばかり。
「城は腕で建てるのではない。番匠達の心を組んで建てるのだ」
天下一の匠達の情熱の込められた安土城。
やはり本物をこの目で見たかった!
今回は棟梁目線で描かれた物語。
主役ではないのに信長の圧倒的な存在感に唸るばかり。
やっぱり信長は偉大だ!
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安土城建築を指図する岡部父子の仕事への没頭の様子を描いている。
テーマは魅力的だし、建築にかける棟梁の本領が、迫力をもって伝わってくる。
しかし、『利休に尋ねよ』でもそうだったのだが、この山本兼一という作家の文章には微かな違和感を感じる。上手く説明できないのだが、印刷されたページ面をパラパラとめくった時に各ページに個性が無いような感じ。全編が単色の細密画のような雰囲気で、作品全体の中の構造性が、ページづらからは感じられないといったらよいのか。
シーン毎の描写は精密で美的なのだが、全体として組み合わせるときにプロットの理が勝ち過ぎているのかもしれない。
Posted by ブクログ
安土城を作った男たちの物語。
映画化もされています。
「仕事とは?」ということを考えさせられた。
建築系の人には刺さると思う。
同じく山本兼一の『信長死すべし』とのつながりも感じさせられ、面白かった。
Posted by ブクログ
幻の城、安土城を建設した棟梁親子とお城の運命は…
織田信長が命じて築城させた、当時の日本では稀有な欧州風天守を備えた高層城は完成後六年余りで焼失し未だに材料調達や建築方法、112トンの蛇石と言われる巨石の存在等謎の多い安土城を信長に遣えた大工棟梁親子の目線で波乱万丈な信長、安土城を追ったフィクションです。
1576年に信長命により3年以内に巨大な7重層の城の建設に挑む宮大工棟梁と弟子である息子はお互いの職人としての面子に拘り同じ目標に向かってるにも関わらず噛み合わないまま日が過ぎて行くが事故や怪我、敵の妨害等で次第に結束が高まって行き様々な苦労や犠牲を払って遂に城は完成する。
その3年後に信長は明智の襲撃により自害し栄華の安土も戦乱に呑み込まれ安土城も焼失する。
小説の筋は事実に基づいて構成されていますが詳細な点は未だに解明されていないので作家の創作ではありますがそれも根拠は現在明らかになっている仮説を基にしており特に築城工程等は詳細な記述でその光景が目に浮かぶ様に調査されており読みごたえが有ります。
物語は琵琶湖の東岸である安土の田舎が主体で派手な事件やうっとりする様な恋愛もありませんが、壮大な建築物の背景にあった人間の物語が五百年の時代を越えて鮮やかに瞼に投影される感じは雄大です。