山本兼一のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
『利休にたずねよ』でおなじみの山本兼一氏の歴史小説。5本の短編小説が収録されており、主人公が信長の命を狙う点では共通しているが、基本的に独立した作品となっている。
男と女の機微が非常に巧みに描かれているが、どれも読みやすい。他の山本兼一作品も読まねばと感じた。
表題作は鷹を調教して信長を暗殺をもくろむ、なかなかぶっ飛んだ話だが、予想していなかった結末含め面白かった。
『下針』は遊女・綺羅の複雑な造形が良い。
『ふたつ玉』のクライマックスには鳥肌が立った。冒頭の何気ない会話が伏線になっているのが、とても良い。一番面白かったかも。
『安土の草』は他と比べると物足りないかな。でも棟梁である又右 -
Posted by ブクログ
「火天の城」は城を作った宮大工、岡部又右衛門にスポットをあてた小説で、私に知らない世界を教えてくれた。それまで歴史に興味はあっても、城造りには知識もなく安土城の独創的な凄さには気がついていなかった。フロイスが当時ヨーロッパにもないと驚嘆した高層木造建築であり、華麗な外観と吹き抜けのある内部。宗教的な意匠。
その他、総石垣の普請、計画的な城下町。なりより天主は信長が居住していた御殿であった。安土城は近世の変革者信長そのものであったと思う。残念ながら城は本能寺の変の後、焼失してしまったが、この小説は今でも城跡に登城するものにその威容と城造りを想像させてくれる力作です。
-
購入済み
久しぶりに、歴史小説の醍醐味を堪能させてくれた作品です。
織田信長の安土城を建設した大工棟梁親子の物語で、
建築ディティールの書き込みも去ることながら、
安土城完成まで、山あり谷ありの波瀾万丈。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ江戸時代のダ・ヴィンチと呼ばれた国友一貫斎の半生記。もともとは火縄銃職人なのだが、創意工夫が好きな発明家気質で、空気銃、天体望遠鏡、灯油ランプ、万年筆などをほぼ独力で発明した実在の人らしい。
エジソンもそうだが、とにかく失敗してもメゲない。失敗作の山を築きながら改善点を治しさらなる工夫を重ねて少しでも完成品に近づける、そのモチベーションが素晴らしい。
ただ残念ながら、損得勘定の観点から考えれば、必ずしも良いものでもないだろう。実際作品中でも「それをなんぼで売りまんの?」と突っ込まれるシーンも再々出てくる。夢をまことにするなら、現実(まこと)のツラさも克服しなければならないわけで…。
それで -
Posted by ブクログ
長谷川等伯の「松林図屏風」を観てから、等伯に興味を持ち、安部龍太郎の『等伯』をずっと前に読んだ。『等伯』に描かれる永徳の、ここまで悪人にしていいの?という位の冷血なイメージがあった為、こちらの作品との対比も楽しみだった。
折しも、大徳寺聚光院の特別拝観で「花鳥図」を観たばかり。以前「洛中洛外図」「楓図」も観た。
芸術職人集団の大組織率いるリーダーと、絵師永徳個人との葛藤と苦悩が読んで辛いほど。等伯への激しい嫉妬がありながら、認めたくない自身を、統率者として狩野派を肯定する事で隠す。本当はもっと自由に、楽しく、新しい世界に、挑戦したかったのだろうな。
ストイックに自分を追い詰めている姿は、絵を観 -
Posted by ブクログ
ストレートで思い切ったタイトル。
内容も、これ以上ないほどに面白く読みやすい。
本能寺で時の天下人・織田信長が部下の明智光秀に討たれたことは、歴史に疎いサブロー(誰!?)でも知っている大事件だが、真相は、とくに、光秀が信長を討ち果たす決心をした理由については謎のままだ。
光秀が信長に猛烈なパワハラを受けていたらしいことは、目撃証言などもあるようだが、それだけでどうかな?という思いは多くの人が感じると思うし、毛利攻めに関してないがしろにされたから、とか、秀吉が仕組んだ説などと、どんどん新説も出てくる。
この本はシンプルな組み立てだが、1章ごとに中枢人物の心理が深く書きこまれていて、読み進むご