【感想・ネタバレ】利休にたずねよのレビュー

あらすじ

女のものと思われる緑釉の香合を肌身離さず持つ男・千利休は、おのれの美学だけで時の権力者・秀吉に対峙し、天下一の茶頭に昇り詰めていく。刀の抜き身のごとき鋭さを持つ利休は、秀吉の参謀としても、その力を如何なく発揮し、秀吉の天下取りを後押し。しかしその鋭さゆえに秀吉に疎まれ、理不尽な罪状を突きつけられて切腹を命ぜられる。利休の研ぎ澄まされた感性、艶やかで気迫に満ちた人生を生み出したものとは何だったのか。また、利休の「茶の道」を異界へと導いた、若き日の恋とは…。「侘び茶」を完成させ、「茶聖」と崇められている千利休。その伝説のベールを、思いがけない手法で剥がしていく長編歴史小説。第140回直木賞受賞作。

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Posted by ブクログ

久しぶりの五つ星!
利休切腹の当日からさかのぼり、各章が違う歴史上の重要人物の目線で描かれる。
冒頭の「死を賜る」の章で出てくる、「あの女」「殺した」「緑釉の香合」何のことだろう?どうしたのだろう?
↓以下ネタバレです










その真相は、後ろから2番目の章「恋」で明らかになる。
それは、かなり若気の至り。ちょっと冷静になりなさいよ。と思ったけど、そこは利休もまだ19歳だった。彼女も、死にたかったの?本当に?彼女を渡すくらいなら、殺して自分も死ぬつもりでいた利休ですが、それは、彼女を本当に想ってでの決断ではなく、衝動的に彼女を誰にも渡したくなかったのだと思う。とりあえず、妾になって適当にしてたら、また国へ帰れたかもしれないのに。
利休の切腹含め、現代の日本ではどうとでもリカバリーできる環境にあると思うけど当時はそんな生やさしい世の中ではなかったのであろうか。

私が特に印象に残っているものは、利休の美意識である。
これ以上、何も足さず、何も引かず、映えさせようと目論んでデザインされたものはあざとい。というのが利休の信条。文章になっているものを読んでみて「ああそうだよな」と自分で気づくことができた。手元にあるので、時々読み返してみようと思う。茶道の言葉、昔の言い回しがたくさん出てきて、スマホで調べながら読んだので時間がかかった。さすが直木賞受賞作品だと思った。

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2025年08月02日

Posted by ブクログ

ネタバレ

私はこの小説を読んで、これから木槿の花を見る度に、韓紅花の衣を纏った女を思い起こすに違いない。
一度読み終えて一晩高ぶる気持ちを反芻して、翌朝一から読み直した。
再読時には、各章のところどころに韓紅花の衣の裾が見え隠れしてどきどきした。

女が閉じ込められた土蔵を「なかに美しい命が隠されていればこそ粗土の壁が輝いて見える」これこそが利休の目利きの真髄で、ヴァリヤーノのいうところの「土くれの焼き物」に美を見出だす根源なのだろう。

宗恩は気の毒だと思った。もてなしの超人を、毎日暮らしのなかで満足させるのは、さぞや神経をすり減らすことだろう。

秀吉はおそらく、利休の美的感性に嫉妬したのではないか。そして私は、悲しいがその気持ちがよく分かる。
ブランドや高価か否かは無関係にその人が手掛けるもの、持ち物、組み合わせ方など、その美しさにはっとする感性を持つ人に時折出会う。
そしてそれらは、私が何時間考えたところで思い付くものではなく、さらにどんなに努力しても身に付けることは叶わないのだ。と敗北感を感じることがある。
秀吉は天下人である自分が手に入れられない、勝つことのできないものを持っている利休を許せなかったのではないだろうか。

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2025年01月26日

Posted by ブクログ

武士でもない利休が、なぜ切腹を命じられたのか?
茶道とはどういう物なのか?
美に対するとてつもないこだわり、矜持が利休にはある。
その根元にあるのが、若き日に出会った高麗の女性だったんですね。
おもしろかったです。

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2025年01月03日

Posted by ブクログ

利休の侘び寂びを 生き生きとさせてるものは
19歳の頃 出会って逃そうとした高麗のお姫様への
情だったんですね。
憧れて逃そうとして 逃げられないとわかったとき
一緒に死のうとして 相手だけを死なせてしまった。
石見銀山入りの自分のたてた抹茶で。
その人の持ってた緑色の香合を 終生持ち歩き 中に 自分が噛み切ったその人の小指だか爪だかが
入っている。
奥さんになった宗恩さんは 自分を抱いても他の人を想っている。
と思わせた 深い気持ち
利休が死んだ時 宗恩さんは その緑の香合を叩きつけて割る。
後書きで 宮部みゆきさんが
利休さん あなたがもっとも深く愛した女性は やっぱり宗恩ですね。
と書いてたけど 私は違うと思う。
自分が憧れて 自分の茶に毒をいれて殺した高麗の女性。
その人だけが 心の奥にずっといたんだと思うなあ!宗恩さんや生きてる女には勝てない争い
惚れるってこういうことなんでしょうね。

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2024年06月28日

Posted by ブクログ


くらくらする。宮部みゆきの巻末の解説を読んで、よりわからなくなる。

妬みや欲は誰しも持っている。それを志にまで昇華させることができると、表面上たおやかで凛とした佇まいになる。
利休自身がそうであったように、宗恩や高麗の女も、おそらく欲を昇華し無欲にみせることのうまい女だった。だから、互いに惹かれ合い、ただ実の心を見せることはできず離れ離れになってしまう。50いくばくかになって、しっかり恋をする利休や宗恩が美しかった。

利休が最後に腹を切ったのは、秀吉への抗いではなく、高麗の女を裏切ってしまったあの時に報いるためだったのではないか。利休はなぜ死んだのか。それが、題名の問いなのではないか。血の海にゆったりと白布をかける宗恩の姿が目に浮かんだ。

私は、死ぬ時に(死ぬ時に限らずとも)他の女のことを少しだって考えていられたら腹が立つ。後悔する気持ちも、過去においてきてほしい。そう思うのは心が女なんだろうか…

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2024年04月12日

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茶の湯?武士のお気楽な愉しみ?ぐらいのアホな認識しか有りませんでした。ハズカシイ。
千利休という名前は皆が知っているけど、さてどんな人だったのかと問われると困ってしまう人物。
最後の日から周りの人の視点で遡り、浮き上がってくる利休。
作品内でもありましたが、「三毒の焔」を誰よりも熱く持ち、「美」へと昇華させたモノはなにか?
戦国から安土桃山時代はどうしても武将に目が向いてしまいますが、こんなにも熱くて魅力的な人物の物語を読めて感謝です。
利休にたずねることを、じっくりと考えてみたいと思います。

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2024年02月26日

Posted by ブクログ

ネタバレ

歴史ものはほとんど読んだことがないのですが、フォロアーさんの書評を読んで、すごく興味がわきました。
読んで良かった!! ありがとうございます!!

利休の美に対する執念ともいえる追究と自負。茶の湯に感じさせる生命力。その根底に潜む緑釉の香合と美しい高麗の女の謎。時間を遡りながら徐々に明らかになっていく。
利休の人柄も周囲の一人一人の嫉妬と羨望の混じった話で明らかになっていく。
利休を疎ましく思い、切腹を命じた秀吉だが、時間を遡れば、少なからず理解しあえていた時があったように思えた。
最後まで読んで、切腹した利休や緑釉の香合を手にした宗恩の気持ちに思いふけりながら、また最初の利休が切腹する朝の話を読み返した。
「あの日、女に茶を飲ませた。あれからだ、利休の茶の道が、寂とした異界に通じてしまったのは。」
利休の切腹は秀吉の機嫌を損ねたためだが、憤慨しつつも利休はそれを望んでいたのではと思ってしまった。
利休にたずねても、はぐらかされるだろうなぁ。

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2024年01月21日

Posted by ブクログ

 特に歴史好きというわけではない私でも、ハマってしまうその物語に、完全に魅了されました。
 実在した稀代の茶人・千利休とは何者だったのか? 史実とフィクションを見事に融合させ、人間・利休の崇高さ、人となりに迫る名作でした!

 本書には、構成上の大きな特徴があります。
①秀吉の命により、利休が切腹する場面から話が始まり、70歳から19歳へと時を遡る展開であること
② 様々な人物が、利休を客観的に語る複数視点で物語が展開すること

 ①について、利休がなぜ切腹を受け入れたのか? 美の追求に命を賭した理由は? という疑問に答えるため、歩んで来た轍を振り返り逆に辿って行くことで、茶人としてだけだなく人間としての利休の原点に迫ろうとしたのではないでしょうか。
 加えて、冒頭の利休が殺したという高麗の女性、形見の緑釉の香合の謎が、最後まで読み手を引き込むミステリー要素も、功を奏している気がします。

 ②について、美の求道者と崇められる利休の多面的な要素を、多くの人物の視点で多角的に語ることで、良くも悪くも利休の実像に限りなく近づいている気がします。
 ただ、利休自身の心理描写は多くなく、余白を残している点も味わい深いと思いました。

 利休の「侘び」「寂び」の世界と秀吉の「雅び」の世界の対比、利休の生き様を通した人間の心の光と闇の複雑さなど、深い精神性に圧倒されました。
 歴史・時代ものはちょっと‥という方にも、声を大にしておすすめします。読まなきゃ損です!

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2023年12月10日

Posted by ブクログ

構成が秀逸。
読み進めていくことで、パズルのピースが埋まるように利休の死の謎に近づくことが出来る。
また、茶室や風景の描写が見事で、容易に当時の様子を伺える。ぜひ1度茶室を見てから本作を読んで欲しい。
人物は歴史上の人物なので、自分の解釈と異なる場合は、苛立つこともあるかと思うが、自分は人物描写に対して思うところはなく、むしろ作者の像に寄せられてしまうくらいのパワーがあった。
面白かったです。

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2023年11月29日

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 色気のある役者さんが好きだ。
でも、自分の中ではセクシーとは明らかに違う。もっと根源的なもの。魂の輝き、美学。一朝一夕になるものではない。
 遠い人で、会えはしないけど、利休はきっと、眩いようなオーラを放つ人だったのだろう。
 素晴らしい恋愛は男性も女性も輝かしくその人を彩る。
 人は必ず死ぬ。人そのものが、変化していく芸術なのだ。

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2023年10月02日

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千利休の最後の日から人生を遡って行く構成が斬新でした。
これ程ある意味血が通った、人間臭さを感じる千利休という人物の描写は、個人的に初めてだと思います。
読み終えた後の余韻を通して、千利休という人物に思いを馳せることができました。

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2023年03月31日

Posted by ブクログ

読み応えのある本でした。余韻が深く、適切な感想が書けそうにありません。しばらく脳みそが発酵するのを待ちましょう。
 難しい漢字が多く、ふり仮名がついてなければとても読めなかったでしょう。出版社の親切さに感謝します。

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2022年09月20日

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千利休という人物に惹きつけられ、なぜこの人が死ななければならなかったのか?なぜ。
そこから時間を遡る物語。
読むほどに利休から、この物語から目が離せなくなっていく吸引力が凄い。

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2022年09月15日

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若かりし頃から逆上るのではなく、切腹の当日から若い頃に戻る構成が新鮮で、利休の人生が盛り上がってくる感じがして良かった。また、秀吉との関わり合いが良かったね。

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2022年02月13日

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読んでよかった。お恥ずかしながら茶道には全くたしなみがなく、こういう世界があると知ることができてよかった。ただ、美とか風情とか抽象的すぎて戸惑った。「茶杓の節の位置で侘びを醸し出す」とか意味わからん( ̄▽ ̄)

そしてオイ秀吉!その茶壺が欲しいからよこせとか、それを手放さないことに腹を立てるとか、人が持っている香合をネチネチ執念深く欲しがるとか、秀吉何やってんの?て感じ苦笑。自分勝手すぎやろ。

三成も性格悪かったーー「八本目の槍」ではいいヤツだったのに。

あと、ヴァリニャーノの章が興味深かった。坊主にボンズとルビが振ってあったので声を出して笑ってしまった(^^)

あと一つ。わたしは日々、短い隙間時間でちまちま読むタイプなので、一つの章が20ページ前後で、とても読みやすかった。千利休がもちろん主役だけれど、章ごとに千利休以外のメインキャラクターが登場。月日が遡っていくのも非常に面白い展開だった。

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2025年03月11日

Posted by ブクログ

戦国という様々な欲望が顕現した世の中、ただひとつ、美のために命を燃やした男の物語です。章の流れが読者をどんどん引き込む良いアクセントです、良い本でした

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2025年02月10日

Posted by ブクログ

ネタバレ

利休にとってあらゆるものたちが評価すべきもので、高麗の女性だけが対峙したい人で、もてなしたい人だったのかもなぁ、と思いました。

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2024年04月27日

Posted by ブクログ

気付けば3度目の再読。
利休の内に秘めているものの強さ、愛おしさ、儚さ。
宗恩の、嫉妬なのか悲しみなのか、怒りなのか。
何度読んでも、物語が美しいなと感じる。
利休に何をたずねて、そのこたえは何なのか。毎回謎解きな気分。

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2024年03月03日

Posted by ブクログ

己の美学だけで天下一の茶頭へと昇りつめた千利休。しかし、その鋭さ故秀吉に疎まれ、切腹を命じられる。
肌身離さず持っていた緑釉の香合の秘密とは。研ぎ澄まされた感性と気迫に満ちた人生を生み出した恋とは、いったいどのようなものだったのか。


茶道を大成し、茶聖と呼ばれた茶人・千利休と、彼を取り巻く人々について、千利休切腹の当日から19歳の若かりし頃まで、時代を逆行する形で描く時代小説です。
市川海老蔵さん主演で映画化もされた一作。

時代をさかのぼって書いていくことにより、後の(読者的には事前に読んだ)行動・言動に背景や伏線が生まれたり、逆により謎を際立たせたりしているのが上手いです。
ひりつくような美への執着や希求、それに対する周囲の妬みや羨望。どんな逆境でも折れない美学と自尊心。文章からも張り詰めた美しさを感じます。
タイトルである「利休にたずねよ」。読み終わった後、利休にいったい何をたずねたいかは人によって変わるかと思いますが、私はその美への情熱の根源をたずねてみたい。

あまり歴史に詳しくはないのですが、それでも読みやすく、一人の伝記やヒューマンドラマ、恋愛小説としても興味深く読めました。

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2024年02月29日

Posted by ブクログ

この時間的構造でなくても十分に面白かったと思うけど、先を読みたいという気持ちを保ち続ける面白さでした。

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2023年12月28日

Posted by ブクログ

千利休は歴史で習い知っていましたが、ここまで美に追求する人だとは思いませんでした。若い時に出会った女性が利休の中で生き続けているのと言うのが印象的です。色々な人物の視点で描かれるので、利休という人物像が想像しやすく、読み応えがありました。

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2023年04月14日

Posted by ブクログ

利休切腹の日から50年以上前まで遡っていく書き方が秀逸!周りのいろんな人の視点から利休について書かれているのも面白かった。
ただ、高麗の女の人の話はフィクションだと思われるけど、利休が茶の湯を極めた根本に関わる部分をそこまで作り上げていいのか?!とは思ってしまった。
茶室での利休の振る舞いや細かい心の動きなどを表現する文体が美しかった。

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2023年03月14日

Posted by ブクログ

歴史的に大変有名な千利休という人物を、彼に関わった人物らの目を通して語られる。茶道の先駆者であり、日本を支配していた信長等に重用された利休とはどのような人物だったのか。
切腹するその日から遡り、描かれる利休の過去には、ある女性がいた。利休は秘めたる想いを抱え、美学にも影響を及ぼした。利休という人間を身近に感じられるようになる一冊。
直木賞受賞作。

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2022年05月27日

Posted by ブクログ

香合は一つのキーではあるし、ミステリではないのだけれど、1人の美の天才としての利休と、別の方向での表現の天才である秀吉の交わり。
利休の侘び寂びの基となった美の基準とは何なのか?貪欲、怒り、愚かの三毒をもって生きる、持つものと持たぬものとの嫉妬と憧れ。人間描写が素晴らしい。

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2025年08月12日

Posted by ブクログ

千利休が切腹を命じられてから物語は始まり、過去へ回想していく流れ。色々な人の視点から千利休とはどう映っていたのかを読み解いていく物語。

読む前までは、千利休=茶道=物静かで悟りに達した人というイメージだったが、茶道を極めただけあって、拘りや情熱、執念が凄まじい。
時の権力者や情勢を動かすほどのものがある。

思ったより茶の味に対する描写は少なく、道具など目に見える美に特化した描写が多い。
普段見るもの中に見出す美が、いかに美しく強いか。

最後に木槿の花言葉がこの物語を表してる気がした。
花言葉:新しい美、繊細な美、デリケートな愛、信念、尊敬

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2025年02月20日

Posted by ブクログ

形あるもの 形あるものいつか壊れる。それが美しい。人の命も同じ、死ぬからこそ美しいのだと私は思います。不老不死など必要ない、年相応に人生を楽しみたいと思います。

千利休が偉大な茶人だと言うことは知っていましたが、秀吉の名で切腹して死んだことは知りませんでした。侘び寂びの中の艶やかさ、悠久の浪漫を感じさせてもらいました。

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2025年12月03日

Posted by ブクログ

「利久にたずねよ」山本兼一著
 秀吉の命で切腹させられた千利休の切腹から19の時の言葉も通じない高麗からさらわれてきた女との恋を時間を遡るような書き綴っている。
 千利休がどれ程の美を追求したか、秀吉が利久の才覚を妬み死に追いやったかを小説にしている。
 千利休は秀吉を品のない人間と認識していたが、「人をとろかす魔力がある」と書いてます。恋も茶道も美学として作者山本兼一は捉えている。
 解説で宮部みゆきは利久に多くの恋をしたが本当に愛したのは宋恩(最後の妻で後妻)と言っているが僕は19の時の高麗の女じゃないかと思う。

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2024年03月20日

Posted by ブクログ

なぜ戦国時代に武力社会と対極にある静の文化、茶の湯がもてはやされたのか、そしてその中心人物とされる利休とは一体何者だったのか?
作者独自の視点で利休が自害するまでの経緯が解き明かされる意欲作で、第140回直木賞受賞作品。
本書には工夫がある。まず、秀吉から切腹を命じられる場面からどんどん遡っていく倒叙法を採用している点、従って早くから利休が心底愛した一人の女の存在が明かされるが、そこまで辿り着くまでの長いこと、それだけにその女の登場には、「待ってました!」と膝を打つ。
また、「侘び寂び」という曖昧模糊とした概念を作者は本書のあらゆる場面で言語化しているが、それが取りも直さず権力者が茶道に傾倒する理由の説明にもなっている趣向。
そして白眉は、後半の「白い手」以後から始まります。明らかに小説としての面白度合いが違っており、作者自身が書きながら愉しんでいたに違いありません。
最後に蛇足、本書の解説は宮部みゆき氏ですが、宮部氏が願望を込めて言うように「利休が最も愛した女性は宗恩」ではなく、やはり高麗女でなければなりません。人は、存在しないものに余計に執着し、勝手に心中で美化する生き物だからです。とはいえ、肌身離さず利休が持っていた莫大な価値の高麗女の忘れ形見、緑釉の香合を躊躇なく粉々に砕いた宗恩の気持ちを考えると、「利休を最も愛した女」なら宗恩で間違いないでしょう。

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2024年03月15日

Posted by ブクログ

独特な話の運びに、最後まで馴染めなかった。繰り返し繰り返し語られることに、少し飽きてしまったのかもしれない。

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2023年10月30日

Posted by ブクログ

一回読んだ。待って待って、もう一回、読まないと!→→読んだ。
利休が、生涯かけて追求した美の原点を、逆回しで辿って明らかにしていく。
「鄙めいて枯れた草庵のなかに、命の艶やかさを秘めた」利休の茶の湯。なぜそんなふうになるのか。
黄金の茶室も利休が思いついたと。狭い牢獄のような茶室も作り、黄金の茶室も…のめり込んだ女人に端を発した美の追求、欲から発出した理性の昇華というか、理性の中心にうごめく欲と執着というかに凄みを感じる。

本文には関係ないけど……
1500年代、日本には、織田信長、豊臣秀吉、千利休と、狩野永徳と、長谷川等伯が生きていた。
ヨーロッパではルネサンスで、ダ・ビンチやミケランジェロ、ラファエロが活躍していた。
すごっ。

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2022年03月05日

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