【感想・ネタバレ】利休にたずねよのレビュー

あらすじ

女のものと思われる緑釉の香合を肌身離さず持つ男・千利休は、おのれの美学だけで時の権力者・秀吉に対峙し、天下一の茶頭に昇り詰めていく。刀の抜き身のごとき鋭さを持つ利休は、秀吉の参謀としても、その力を如何なく発揮し、秀吉の天下取りを後押し。しかしその鋭さゆえに秀吉に疎まれ、理不尽な罪状を突きつけられて切腹を命ぜられる。利休の研ぎ澄まされた感性、艶やかで気迫に満ちた人生を生み出したものとは何だったのか。また、利休の「茶の道」を異界へと導いた、若き日の恋とは…。「侘び茶」を完成させ、「茶聖」と崇められている千利休。その伝説のベールを、思いがけない手法で剥がしていく長編歴史小説。第140回直木賞受賞作。

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Posted by ブクログ

ネタバレ

私はこの小説を読んで、これから木槿の花を見る度に、韓紅花の衣を纏った女を思い起こすに違いない。
一度読み終えて一晩高ぶる気持ちを反芻して、翌朝一から読み直した。
再読時には、各章のところどころに韓紅花の衣の裾が見え隠れしてどきどきした。

女が閉じ込められた土蔵を「なかに美しい命が隠されていればこそ粗土の壁が輝いて見える」これこそが利休の目利きの真髄で、ヴァリヤーノのいうところの「土くれの焼き物」に美を見出だす根源なのだろう。

宗恩は気の毒だと思った。もてなしの超人を、毎日暮らしのなかで満足させるのは、さぞや神経をすり減らすことだろう。

秀吉はおそらく、利休の美的感性に嫉妬したのではないか。そして私は、悲しいがその気持ちがよく分かる。
ブランドや高価か否かは無関係にその人が手掛けるもの、持ち物、組み合わせ方など、その美しさにはっとする感性を持つ人に時折出会う。
そしてそれらは、私が何時間考えたところで思い付くものではなく、さらにどんなに努力しても身に付けることは叶わないのだ。と敗北感を感じることがある。
秀吉は天下人である自分が手に入れられない、勝つことのできないものを持っている利休を許せなかったのではないだろうか。

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2025年01月26日

Posted by ブクログ

ネタバレ

歴史ものはほとんど読んだことがないのですが、フォロアーさんの書評を読んで、すごく興味がわきました。
読んで良かった!! ありがとうございます!!

利休の美に対する執念ともいえる追究と自負。茶の湯に感じさせる生命力。その根底に潜む緑釉の香合と美しい高麗の女の謎。時間を遡りながら徐々に明らかになっていく。
利休の人柄も周囲の一人一人の嫉妬と羨望の混じった話で明らかになっていく。
利休を疎ましく思い、切腹を命じた秀吉だが、時間を遡れば、少なからず理解しあえていた時があったように思えた。
最後まで読んで、切腹した利休や緑釉の香合を手にした宗恩の気持ちに思いふけりながら、また最初の利休が切腹する朝の話を読み返した。
「あの日、女に茶を飲ませた。あれからだ、利休の茶の道が、寂とした異界に通じてしまったのは。」
利休の切腹は秀吉の機嫌を損ねたためだが、憤慨しつつも利休はそれを望んでいたのではと思ってしまった。
利休にたずねても、はぐらかされるだろうなぁ。

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2024年01月21日

Posted by ブクログ

ネタバレ

利休にとってあらゆるものたちが評価すべきもので、高麗の女性だけが対峙したい人で、もてなしたい人だったのかもなぁ、と思いました。

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2024年04月27日

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