山本兼一のレビュー一覧
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安土桃山時代の天才絵師、狩野永徳の生涯を描いた物語。
どこまでが史実でどこまでが創作なのかわかりませんが、永徳の苦悩、嫉妬、葛藤が描かれています。
永徳と言えば、「洛中洛外図」や「唐獅子図」。天才的な画家だったということしかイメージありませんでした。
本書では、その永徳の絵に対する考え方、描き方まで深く描かれていて、作者はその書き方見てきたの?って思ってしまいます(笑)
それぐらい、しっかり語られています。
様々な作品を描くにあたって、魂削って描いていたことが伝わります。
でも、城や建物に描いたものは燃やされてしまったんですね。
儚い...
天才が故に悩むこと。狩野派としての矜持故に悩みなど、その人間性が伝わってきます。
さらに、長谷川等伯に対する嫉妬心は半端ない描かれ方です。
等伯と永徳の対比された描かれ方が厳しい。
鬼気迫る描き方をする永徳。
見る人に余白を与える等伯。
そんな等伯に対しての、嫉妬心、どす黒い感情がそのまま描かれています。
正直な気持ちなんだろうけど、読んでて嫌になっちゃいますね。(笑)さらに、かなりくどい。
最後、ぷつっと終わってしまって、どういうことかと思ってググったら、天井画の龍図を制作中に亡くなったんですね。
絵に人生のすべてを注いだ漢の物語でした。 -
Posted by ブクログ
千利休が切腹を命じられてから物語は始まり、過去へ回想していく流れ。色々な人の視点から千利休とはどう映っていたのかを読み解いていく物語。
読む前までは、千利休=茶道=物静かで悟りに達した人というイメージだったが、茶道を極めただけあって、拘りや情熱、執念が凄まじい。
時の権力者や情勢を動かすほどのものがある。
思ったより茶の味に対する描写は少なく、道具など目に見える美に特化した描写が多い。
普段見るもの中に見出す美が、いかに美しく強いか。
最後に木槿の花言葉がこの物語を表してる気がした。
花言葉:新しい美、繊細な美、デリケートな愛、信念、尊敬 -
Posted by ブクログ
なぜ戦国時代に武力社会と対極にある静の文化、茶の湯がもてはやされたのか、そしてその中心人物とされる利休とは一体何者だったのか?
作者独自の視点で利休が自害するまでの経緯が解き明かされる意欲作で、第140回直木賞受賞作品。
本書には工夫がある。まず、秀吉から切腹を命じられる場面からどんどん遡っていく倒叙法を採用している点、従って早くから利休が心底愛した一人の女の存在が明かされるが、そこまで辿り着くまでの長いこと、それだけにその女の登場には、「待ってました!」と膝を打つ。
また、「侘び寂び」という曖昧模糊とした概念を作者は本書のあらゆる場面で言語化しているが、それが取りも直さず権力者が茶道に傾倒する理由の説明にもなっている趣向。
そして白眉は、後半の「白い手」以後から始まります。明らかに小説としての面白度合いが違っており、作者自身が書きながら愉しんでいたに違いありません。
最後に蛇足、本書の解説は宮部みゆき氏ですが、宮部氏が願望を込めて言うように「利休が最も愛した女性は宗恩」ではなく、やはり高麗女でなければなりません。人は、存在しないものに余計に執着し、勝手に心中で美化する生き物だからです。とはいえ、肌身離さず利休が持っていた莫大な価値の高麗女の忘れ形見、緑釉の香合を躊躇なく粉々に砕いた宗恩の気持ちを考えると、「利休を最も愛した女」なら宗恩で間違いないでしょう。