夢枕獏のレビュー一覧
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久々の『陰陽師』
陰陽師 安倍晴明と相方 源博雅のふたりによる9つの怪奇譚。
今回は呪による掛け合いや菅原道真の怨霊話ようなものはなく、どれもアッサリとしているのだけども、その実、儚くしんみりと、女性に焦点があてられていたような気がする。
安定した2人(清明&博雅)の、酒を酌み交わし四季折々の庭を愛でつつ静かに語りあうシーンは素敵だな。
花鳥風月、雅だのう。
9つの話のうち、どれが一番いいか・・・と、目次を眺めていたのだけども、どれもそれぞれ良いわ。
思い出すだけでジーンとくる。
そうそう
あとがきで、作者が『キマイラ』シリーズを勧めていた。
清明と博雅が好きな人には読んでもらいたいと -
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今までの人生のうち釣竿というものに触った記憶は1回。
運よくその時1匹かかってくれたので釣りに対する印象は悪くはないのですが、釣りの好きな方が夢中になって話してくれるのはどうもピンときませんでした。
この本を読んで釣りの不思議な魅力を体験してみたいものだと一層思うようになりました。
思うようにならないことの多い人生。その中で何かに狂い、突き動かされるように生きるのは哀しくもあるけれど、そう生きてこそしあわせなのかもしれない。
そんな風に生きる人同士が本当の意味で触れ合うことができ、愛しく思うことができるのかもしれない。
自分の好きなこと、隣の人の好きなことを大切にしたいと思える -
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久しぶりの陰陽師。
文庫の新刊が出たので、それを買うつもりで書店を訪れて、ふと前の巻を買ってたかが気になったので確認したら、買えてなかったので購入。
それにしても安心のコンビである。
何がって、月の夜に晴明の家の庭の縁側で、晴明と博雅の二人が座して酒を酌み交わしている。
その場面を見るだけで、ススススーッと物語の世界に入りこめる。
あとは一気に読み終えるだけ。
今回はおなじみの二人に加え、蝉丸法師の出番も多かった。
また、これまでのように人を助けるばかりでなく、晴明や博雅自身に降りかかる怪異について語られる話がいくつか含まれていたことが新鮮だった。
さて、というわけで最新刊の醍醐の巻を読みまし -
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ネタバレその老人はみごとな銀髪をしていた。その瞳は異様な光を帯び、ノラ犬を思わせた。加倉文吉、人はその男のことを「真剣師」と呼ぶ。賭け将棋のみで生活をしているもののことである。旅から旅へ、俗世間のしがらみをすべて断ち切って、ただただ強い相手を求めて文吉は生きる。夢を諦めて師匠の妻と駆け落ちした男、父の敵を追い求める女、プロ棋士になり損ねた天才…。将棋に取り憑かれた男と女。その凄絶かつ濃密なる闘いを描ききった連作集。
賭け将棋を生業とする「真剣師」。一人の老人真剣師を中心にいろいろな人物が賭け将棋をやりにやってくる。
『銀狐』
真剣師・加倉文吉の紹介的な会。その老人はみごとな銀髪をしており、 -
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夢枕獏 著「天海の秘宝(下)」を読みました。
江戸を揺るがす怪しい集団と戦う覚悟を決めた、からくり師吉右衛門と親友の剣豪、病葉十三は苦闘の末に天海の秘宝を見つけ出す。しかし、そこには驚愕の真実が隠されていた。
下巻は正直やられたという感じでした。
上巻は、謎が謎を呼び、時代劇ミステリーのような形で進み、下巻はその謎が明らかになっていく展開と思って読み進めていたのですが、謎が明らかになるにつれ、上巻とは思い切り展開が変わり、いい意味で裏切られました。
まさか、思い切りSF小説だったとは。
タイムパラドックスを織り交ぜ、展開の秘宝の謎に迫る展開は、頭の中でなかなか整理すること -
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今までの夢枕獏作品とは傾向が違うので昔からのファンはちょっと戸惑うかもしれない。
時は江戸、徳川綱吉公が将軍であった頃のお話。生類憐みの令が人々に目を光らせているというのに、因果なことに釣りが好きでたまらないという人の群像劇。
傍から見れば救いようの無い愚かな行為をする人には、その人自身ではもうどうすることも出来ずただひたすらに自分を突き動かす業のようなものがある。その哀しみを静かに描き出す本作から、人間への静かな愛を感じる。
『「将軍様だの、お大名だのと言ったって、その着ているものを引きはがしてみりゃあ、おんなじ屎袋だろうがーーー」
「兄さん、けれど兄さんは、その屎袋が愛しくてなんね