あらすじ
都のあちらこちらに楽しげに現れては、伽羅の匂いを残して消える不思議な女がいた。露子姫の前にも姿をみせたという。その話を晴明が耳にした翌日、蜘蛛の巣に妙なものがひっかかったと僧が訪ねてきた。早速、博雅と寺に赴き、蝶のようなそれを放すと……。はたして女の正体とは? 天皇の命で博雅が童と笛比べをする「笛吹き童子」、鼠の化生を助けた事を口にしてしまい逆に命を狙われるようになった男を救う「不言中納言(いわずのちゅうなごん)」ほか、全9篇を収録。宿命のライバルである蘆屋道満との対決にも要注目。晴明の呪、博雅の笛が京の怪事件を解き明かす大人気シリーズ!
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和風ファンタジーの題材としてすっかりおなじみの陰陽師。そのブームの火付け役であり、9月に市川染五郎・市川海老蔵らによる歌舞伎座公演も決定したのがこの「陰陽師」シリーズです。
平安時代の天才陰陽師、安倍晴明。その親友で音楽の才能豊かな源博雅。この二人が鬼や生霊など様々なものの怪にまつわる怪異を解き明かしていくこの物語。映画のような派手なアクションはほとんどなく、彼らは問題の怪異の原因となった人の業を探り、ものの怪達を納得させることで怪異を見事に解決していきます。
この物語の大きな魅力は、主人公二人の掛け合いが格別に面白いこと!
厄介事を頼まれ困り果てた博雅が、二人で酒を酌み交わしながら晴明に解決を依頼するのですが、その軽妙なやり取りに、自分も仲のよい友人と庭を眺めながら、美味い肴片手にお酒を舐めたくなる事間違いなし!
美しくも怪しい平安時代の余韻から抜け出せなくなりそうな不思議な物語です。
感情タグBEST3
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このとき読める陰陽師シリーズはこれが最後になります。とても楽しい時間を過ごすことができました。清明と博雅のやりとりにいつもほっこりさせてもらいました。生涯でここまで思い合うことができる友と出会うことはなかなかないのではないかと思います。
「百足小僧」は怖かったですね。動きの描写がうまく、這ってくる実貞が想像できてしまいました。
「犬聖」。赤子を守る白い犬。真実はわかりませんが、私もそんなことがあっても良いのではないのかと思いました。
不言中納言の物語は後味が悪かったです。でも、人を喰う妖、それを野放しにすれば、人が喰われてしまう。エゴだけど話さずにいられないですよね。昔話で、話してはいけない話をしゃべってしまい、嫁が去って行くというパターンをよく耳にしますが、殺されてしまうのはいただけないですね。
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すごく読みやすい
晴明と博雅の語りから始まり、事件を解決していく流れはずっと一緒なんだけど、事件が毎回面白い
自然の描写が美しい
今回は保憲が出番多めで嬉しかった(*^ω^*)
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最近では久しぶりに新刊を買った。
やはり、この作品の世界観は素敵。
ゆるゆると時間をかけて読んだ。
『はるかなる……』には、大好きな露子姫登場。
『夜光杯の女』は、以前読んだ小野小町の話に似ていて、男女の仲、特に恋愛感情のようなものはほんとにややこしいな、と。
芦屋道満は今回あんまり濃くなかったなぁ。
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どんどん自由になっていくなぁ。
今回は、特に「きがかり道人」でそう感じました。
これ、見えていてそのまま描写すると、まぁそれはそれで楽しいけれどアホな絵になるのですが、それが、蝉丸という目が見えない人物を通すことで、音と声でその絵を伝えてくるという上手さ。
素晴らしい。
あと、「白蛇伝」の人間の欲望さえも包み込む着地の仕方が、とても好きです。
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高校時代からずっと好きで、読み続けているシリーズ。何年振りかに手にしたのだが、やはり面白かった。いつもの「ゆくか」「う、うむ」、「ゆこう」「ゆこう」のくだりで様々な妖の場に立ち会う博雅と清明。ひとつの話もそんなに長くないので、すぐに読める。
次のシリーズ、早く出ないかなあ。
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久々の『陰陽師』
陰陽師 安倍晴明と相方 源博雅のふたりによる9つの怪奇譚。
今回は呪による掛け合いや菅原道真の怨霊話ようなものはなく、どれもアッサリとしているのだけども、その実、儚くしんみりと、女性に焦点があてられていたような気がする。
安定した2人(清明&博雅)の、酒を酌み交わし四季折々の庭を愛でつつ静かに語りあうシーンは素敵だな。
花鳥風月、雅だのう。
9つの話のうち、どれが一番いいか・・・と、目次を眺めていたのだけども、どれもそれぞれ良いわ。
思い出すだけでジーンとくる。
そうそう
あとがきで、作者が『キマイラ』シリーズを勧めていた。
清明と博雅が好きな人には読んでもらいたいとのこと。
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【内容(「BOOK」データベースより)】
都のあちらこちらに楽しげに現れては、伽羅の匂いを残して消える不思議の女がいた。露子姫の前にも姿をみせたという話を晴明が耳にした翌日、蜘蛛の巣に妙なものがひっかかったと僧が訪ねてきた。早速、博雅と寺に赴き、蝶のようなそれを放した晴明が知ることとなった女の正体とは?「はるかなるもろこしまでも」他、全九編。
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【目次】
笛吹き童子
はるかなるもろこしまでも
百足小僧
きがかり道人
夜光杯の女
いたがり坊主
犬聖
白蛇伝
不言中納言
あとがき
文庫版あとがき
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晴明の庭の色、匂い、風の温度に、心の底から酔いしれる。毎度、とても幸せな一瞬。文句なしの★5つ。
色々タイミングが重なったとはいえ、「はるかなるもろこしまでも」で泣きそうに。
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世に魅力的な男性は尽きないものだ。
陰陽師シリーズは文庫になり次第、全て読んでいる。
今作も、雅に涼やかに展開される晴明と博雅の交流が美しい。
どの話もよかったが、一番気に入ったのはおばあちゃんの夢の話しだろうか。
彼女ならば…と百人一首に取られた歌を思い出した。
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妖のモノ達が人の側に居た時代、妖し事件を晴明と博雅が解決してゆく短編集。
何が好きって、二人が縁側(?)でほろほろと酒を交わしている描写がなにより好き。
同じ日本でありながら、現代とは全く違う時が流れていた感じがたまりません。こんなにゆっくり流れている時間なのに博雅は「齢を重ねると歳月が早く過ぎる」とか話す。
そして生まれて死んでいく儚さを憂い、二人で酒を酌み交わす時を大切にしている。
人の生き方の理想のひとつがあると思えてなりません。
あとがきで、著者が書き続けてゆくと記していたのが、大変うれしかったです。
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笛吹き童子(博雅、嫉妬す)/はるかなるもろこしまでも(伽羅の香残す不思議女)/百足小僧(主人が百足に)/きがかり道人(毎日歩む不思議老人)/夜光杯の女(夜光杯で酒を飲むと見える不思議女)/いたがり坊主(帝の腹痛を治した僧)/犬聖(真面目すぎる僧と赤ん坊と白犬)/白蛇伝(白い蛇に憑かれた僧)/不言中納言(他言無用だった秘密)
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いやぁもう絶対付き合ってるじゃんこれ と何度つぶやいてしまったか。「ゆこう」「ゆこう」の予定調和が相変わらず(久々に読んだけれど)楽しい。シリーズの他の作品が好みならば絶対に外れない。
本作に限った感想としては、晴明の兄弟弟子にあたる賀茂保憲が「身内の絡む問題」を晴明に依頼しにきたシーンで、彼らが陰陽師と出家者(宗教者)のスタンスの差異を語るところが印象に残った。
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今回も晴明、博雅コンビの安定感が何とも心地よい。
全9編の中で個人的に好きなのは『犬聖』でした。
晴明の兄弟子である賀茂保憲と保憲の兄である心覚上人が登場するお話ですが、物語の中から保憲と心覚や晴明との関係や心覚と晴明との関係が垣間見えた点が良いなと。
あとは『百足小僧』も不気味さや気味悪さが効果的に用いられていて面白かったです。最後に少しだけですが道満が登場するというのも良い。
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今回も楽しませて頂きました♪
清明と博雅の鉄壁コンビが健在で、いつもの通りのあとがきで、60歳を越えてもなお、まだまだ続ける宣言。嬉しい限りです。
巻末のエピソード「~中納言」が、個人的に非常に面白かったです。“鶴の恩返し” のホラーバージョン、とでも言うのかな?
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清明と博雅の二人が妖しの物を退治すべく平安の都で今夜も活躍する人気シリーズ。
人の心に巣くう鬼の話も好きですが、今回は「不言中納言」のような化け物を退治する話も「キマイラ」や「闇狩り師」を彷彿とさせてとても楽しめました。
このシリーズを読むたびに、平安の都の雰囲気を味わうことができるのも楽しみの一つです。
次回もどんな鬼や化け物が平安の都を騒がせてくれるのでしょうか。
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縁側で清明と博雅が酒を飲みながら、取り留めのない会話を交わす、そんな情景を読みたくて、今回も手に取りました。
話そのものは、ほとんど、どうでもよくなってきていますが、お月様の話は、面白かったです。
以上
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九つの短編。いずれも佳作でラジオ・ドラマにしたいと感じるほど。
岡野玲子さんには悪いが、絵は魅力的なのだから妙な精神性に迷い込まず、原作者の物語に寄り添っていて欲しかった。
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今回はほっこり感が高かったかも。
「はるかなるもろこしまでも」が好きだなぁ。
虫愛ずる姫も出てくるし。
あとがきの言葉が沁みました。
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安定の面白さ。貘さんは、人の深い業を描くのが本当に上手い。そのおどろおどろしい業をこのシリーズでは淡々と描いている。だから読む人によって違うイマジネーションを想起させていて、その幅の広さが色んな層の読者に希求するものを持っているのかなと。
どの逸話も面白いのだけども、印象に残ったのは、「笛吹き童子」と「夜光杯の女」。
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良い意味でいつもの通り。
長いシリーズなので、段々と晴明の陰陽の技が披露されなくなってきた。
古くからの読者には良いが、新たに読む人には物足りないかも。
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博雅も、笛では負けたくないとか、焦りとかあるんだなあ、と。実際は自分の音だったとか。晴明は博雅を見て内心ニヤニヤしていたのだろうなあ(笑)お前の笛以上のものがあるわけないじゃん、みたいな(笑)
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安倍晴明と源博雅の物語、相変わらずにさらさらと読めます。
どこか、平安時代の“夜”を感じさせてくれる話が多いような。
漆黒と言うほどではない、薄墨を流したような昏さ、
その中には何かしらの“モノ”が潜んでいる、、そんな話が多く。
個人的には「夜光杯」の一遍が印象的でした。
一度、夜光杯で一杯やってみたいですね、、できるなら月明かりの下で。
そういえば、「ゆこう」「ゆこう」のやりとりが複数パターン出ていますね、
個人的には「そういうことになった」との定番がなんとなく好みです。
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晴明と博雅さまは相変わらずほろほろと酒と飲み、ほろほろと語り合い、ほろほろといちゃついてはりました(笑)
「笛吹き童子」・・・博雅さまにも、己より美しい音を奏でであろう者と競うことへの恐れ・・そんなものがあるんだなあ、と、かえって親近感みたいなのがわいた。
Posted by ブクログ
読みやすい長さの短編が9本。うっとりとした不思議とぞっとする話、怪しく切ないが交互といった感じで、今回も晴明と博雅のやり取りが軽快で面白かったです。
二人以外にも今回は賀茂家の兄弟や蝉丸、道満など、本書以外にも陰陽師ネタ好きにはたまらない人物が登場しており、個人的にはかなり嬉しい内容でした。
笛吹き童子、きがかり道人、犬聖、不言中納言が特に気に入りました。
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都のあちらこちらに楽しげに現れては、伽羅の匂いを残して消える不思議の女がいた。露子姫の前にも姿をみせたという話を晴明が耳にした翌日、蜘蛛の巣に妙なものがひっかかったと僧が訪ねてきた。早速、博雅と寺に赴き、蝶のようなそれを放した晴明が知ることとなった女の正体とは?「はるかなるもろこしまでも」他、全九編。
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安定のマンネリで、読むたびにいつでも晴明と博雅の二人と同時代にいるような気がします。
端からこの二人の有様を見届けている感覚。
まるで、蜜虫たちのような式神にでもなってしまったかのようです。
マンネリという否定的な言葉が、褒め言葉になるという珍しい現象。
Posted by ブクログ
安倍晴明と源博雅
晴明の屋敷の縁側から話が始まり、「ゆこう」「ゆこう」と連れだって、妖の怪異の元に赴く。
形式の中に盛り込まれる、ゆったりとした雰囲気と濃密な夜、澄み渡る大気の中に清冽に響く博雅の笛の音と怪異を切り裂く晴明の術
この雰囲気が好きというか、こんな雰囲気を実際に感じてみたい。
Posted by ブクログ
夢枕獏の陰陽師 醍醐の巻を読みました。
陰陽師シリーズの最新刊でした。
陰陽師の安倍晴明と笛の名手源博雅が主人公の伝奇小説です。
今回もマンネリ感はあるものの、面白く読みました。
Posted by ブクログ
安定の読みやすさ。
最近はすっかりのんびりほのぼのな雰囲気だけれど、これはこれで好きなので楽しんで読む。
ただ、「ゆこう」「ゆこう」のくだりは、初期の頃の「そういうことになった」のほうが締まる感じがして好き。