あらすじ
晴明と博雅、儚いこの世を楽しまん!
安倍晴明と源博雅が平安の悲喜こもごもに奔走する12篇。
少納言・坂上彦麻呂は、夜な夜な怖ろしげな美女から手に噛みつかれる夢を見る。
目覚めると実際に赤い傷が―蘆屋道満が活躍する「にぎにぎ少納言」、
虫めづる露子姫が登場する「塔」、
そして今日も晴明と博雅は京の怪異に奔走する。
夫婦の情愛、前世の因縁、虫の音と妙なる琵琶の響き。
昭和・平成・令和と愛され続けて16巻目!
※この電子書籍は2019年2月に文藝春秋より刊行された単行本の文庫版を底本としています。
和風ファンタジーの題材としてすっかりおなじみの陰陽師。そのブームの火付け役であり、9月に市川染五郎・市川海老蔵らによる歌舞伎座公演も決定したのがこの「陰陽師」シリーズです。
平安時代の天才陰陽師、安倍晴明。その親友で音楽の才能豊かな源博雅。この二人が鬼や生霊など様々なものの怪にまつわる怪異を解き明かしていくこの物語。映画のような派手なアクションはほとんどなく、彼らは問題の怪異の原因となった人の業を探り、ものの怪達を納得させることで怪異を見事に解決していきます。
この物語の大きな魅力は、主人公二人の掛け合いが格別に面白いこと!
厄介事を頼まれ困り果てた博雅が、二人で酒を酌み交わしながら晴明に解決を依頼するのですが、その軽妙なやり取りに、自分も仲のよい友人と庭を眺めながら、美味い肴片手にお酒を舐めたくなる事間違いなし!
美しくも怪しい平安時代の余韻から抜け出せなくなりそうな不思議な物語です。
感情タグBEST3
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傀儡子神(伊豆守の目代はデキる男)/竹取りの翁(竹取りの青盛の母が行方不明)/さしむかいの女(橘忠治が目覚めないという話を賀茂保憲が持ってきた)/狗(よく気のつく娘と人懐こい犬の敵対)/土狼(連続して脚を食われた事件が)/墓穴(墓穴で鬼に出会った?)/にぎにぎ少納言(夜中に謎の女が腕を噛む)/相人(死相をみることができる僧)/塔(塔を作っては壊しまた作らされる苦行)/露子姫(露子姫に夢で何かが訴えかけてくる)/月を呑む仏(神泉苑で夜ごと薬師如来が月を呑む)/蟬丸(自然の音の中、蝉丸と博雅の出会い、音楽で語り合う)。
■この巻の簡単なメモ
桜は人の心をよく映すということだ(p.11)
博雅よ、おまえが、この世にあるそのことが、それだけで意味なのじゃ。(p.238)
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今作で16巻目という。毎回、摩訶不思議なことが起き、それを解決していくわけだが、最近は、蘆屋道満や蝉丸といった、サブキャラも立ってきて、楽しい。
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長編を含めシリーズ19作目。12編からなる連作。
作者独特の文章のリズムや言葉の選び方、そして晴明と博雅が醸し出す空気。相変わらず心地よい。ひとつの話の長さも寝床で読むのに丁度よい。
今回は蘆屋道満の登場シーンが多く、サブタイトル「女蛇ノ巻」も道満活躍の話のものだったが、自分としては「相人」が最もおもしろかった。
(創作だとは思うが)『今昔物語』にも登場する「登照」の為人をうまく膨らませて興味深い話にし上げていたのには感心した。
Posted by ブクログ
切ない話や不気味な話、心温まる話など、バラエティに富んでいて、毎夜一遍ずつ読んでいくのが日々の楽しみだった
「墓穴」はお気に入りのひとつ、前半は不気味さ全開なのに、物語が進むにつれて何ともせつない気持ちになるのが癖になる
Posted by ブクログ
陰陽師の十六巻「女蛇ノ巻」。
「さしむかいの女」冒頭でいつになく恋話に話を咲かせる晴明と博雅の二人。なんかいちゃいちゃ度が増しているように思えます。基本、陰陽師は二人のいちゃいちゃから始まることがほとんどですが、今回は微笑ましかった。博雅を称して「自然の人」というのは、こういう純粋な面があるからでしょう。
「狗」と「にぎにぎ小納言」がよかった。というか怖い。
祟りの怖さがあった二つ。「狗」の方は多弥子になんの落ち度もないのが、祟るという執着の強さを感じてしまって怖い。どちらも肉親の情が強いからこその怪しき事。
情の強さは強さということか。
「つよさ」で「こわさ」と読むのは、表裏一体が事実であるという証明な気がする。
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夢枕獏さんの陰陽師シリーズは読んでおり、このアプリで文庫本が出たということを知り翌日購入しました。
作品としては、いつも通りとても面白かったです。ただ、短編ということもあり、やや先の展開が読めてしまうものが多く長編・過去作に比べるとハラハラ感は少なくも感じました。あと!晴明と博雅のBL展開を期待させるような腐女子向けを意識しているのではという点が残念だなと思いました。
色々と良くない点を書いてしまいましたがとても面白く1日で読んでしまいました。おすすめは月を呑む仏です!
Posted by ブクログ
待望の文庫化。
晴明の庭を始め、自然の情景の涼やかさが心地よい。
目で読んでるけれど、この書き始めで、聴覚や嗅覚、身体全体の様々な感覚が呼び起こされる感覚がある。
これがあるから、毎回待ち遠しい。
晴明と博雅、露子姫に蝉丸、道満。
新鮮味はなくなったけれど、変わらず、この世界はあり、日々何らかの刺激はあるんだという安心感。