あらすじ
陰陽師シリーズ初の長篇。すべてが始まったのは、いまから12年も前のことだった。月の明るい晩に堀川の橋のたもとで、心のおもむくまま笛を吹く源博雅。その音色に耳を傾ける姫。名前も知らない、淡い恋だった…。思い悩む友を、そっと見守る安倍晴明。しかし、姫が心の奥底に棲む鬼に蝕まれたとき、2人は姫を助けることができるのか? 急げ博雅! 姫が危ない──。主人公・安倍晴明はもちろんのこと、無二のパートナーである源博雅の清澄な魅力も全開の作品です。
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和風ファンタジーの題材としてすっかりおなじみの陰陽師。そのブームの火付け役であり、9月に市川染五郎・市川海老蔵らによる歌舞伎座公演も決定したのがこの「陰陽師」シリーズです。
平安時代の天才陰陽師、安倍晴明。その親友で音楽の才能豊かな源博雅。この二人が鬼や生霊など様々なものの怪にまつわる怪異を解き明かしていくこの物語。映画のような派手なアクションはほとんどなく、彼らは問題の怪異の原因となった人の業を探り、ものの怪達を納得させることで怪異を見事に解決していきます。
この物語の大きな魅力は、主人公二人の掛け合いが格別に面白いこと!
厄介事を頼まれ困り果てた博雅が、二人で酒を酌み交わしながら晴明に解決を依頼するのですが、その軽妙なやり取りに、自分も仲のよい友人と庭を眺めながら、美味い肴片手にお酒を舐めたくなる事間違いなし!
美しくも怪しい平安時代の余韻から抜け出せなくなりそうな不思議な物語です。
感情タグBEST3
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前半は陰陽師とは、安倍晴明とは、源博雅とはといった登場人物と時代背景などの説明と、物語が入り混じり知らず知らずのうちに物語の世界観に引き込まれている。
後半の生成り姫本編では、話自体は能などでもテーマとなる鉄輪がベースであるが、そちらでは嫉妬に狂った女が鬼になるという程度でしか説明されなかった姫の背景が、何故鬼になるまで心を壊すにいたったのか納得させられてしまうほど丁寧に描かれている。
鬼や怪異は恐ろしいもの、というだけではなく人が生み出すものだからこその悲しみ、哀れ、というものが感じられる。
Posted by ブクログ
シリーズ5番目
晴明からたびたび、お前は良い男だな、優しいな、と言われる博雅の魅力がいっぱいに散りばめられたストーリーとなっています。
博雅と晴明のキャラもよく見えて、エンタメとして読むのが楽しみになってきました。
。。。
博雅と長年の思いびとの徳子姫との一部始終。
博雅の笛を橋の袂で聞いたことから、お互い恋心を持ってきたが、徳子姫は別の男性と結婚して、そののち捨てられ、鬼に変貌してしまった。男性の新しくできた恋人を呪い殺し、浅ましい姿になり、それを博雅に見られるという失態。
恨みと辱めと愛憎がぐるぐるして恐ろしい情景が描きだされるのだが、最後は大きな博雅の愛に包まれて、元の徳子に戻っていくのだった。
すさまじい鬼の姿になってもまだ徳子を愛おしいと思う博雅の優しさにじんとくる
自分の腕を噛まれても!!
Posted by ブクログ
この物語は主人公・安倍晴明の活躍と、その親友である源博雅の悲恋を描いた物語です。
博雅は12年前のある夜、得意の笛を吹いている時に一人の姫と出会う。
その後も笛を吹くたび現れる姫。彼は名も知らぬまま彼女に惹かれ、いつしか会えなくなってからも ほのかな想いを持ち続けていた。
時が流れ、博雅はある男から相談を受ける。
かつて情を通じたが今では疎遠になった姫が、夜な夜な呪いをかけて男を殺そうとしているというのだ。
博雅は男を救うべく親友・晴明の力を借り、共に姫を待ち受けるが、生成りとなり現れた女…徳子姫は 彼が思いを寄せたその人であった。
あさましき姿を博雅に見られたことに絶望する徳子姫。自分が介入したことによってより深く彼女を傷つけてしまったことを悟る博雅。
何とか姫を救おうと彼女の屋敷へと向かった晴明と博雅だが… といったストーリー。
とにかくクライマックスで博雅が徳子姫にかける言葉がいいのです!
まず、鬼になって自分を喰らおうとする姫に「我が肉を喰らえ」と。
そして「そなたが愛しいのだ」と言うのです。
たとえ年を取って肉がつこうがシワが増えようが、鬼になってしまおうが、そんな貴女が愛しいのだと言う博雅と、 「十二年前にその言葉を言って欲しかった」と返す徳子姫。読みながら思わず号泣しました。
純粋だけど不器用で男女の仲に疎いせいで、好きな女性と結ばれることができなかった博雅にノックアウトです。
読んだら瞬く間に博雅の嫁になりたくなること請け合いです。少なくとも私はなりました。
晴明が何度も言うのですが、本当に『良い漢』なのですよ。
まぁ、よく考えてみれば博雅は30代後半という設定なので、何だかんだ言ったって平安貴族の常識としては 立派な家柄出身の北の方(奥さん)がいないわけないんですけどね。
さて、いささか暴走してしまいました。
陰陽師シリーズは基本的に文春文庫から出ている短編集が主ですが、 これは朝日新聞の連載小説だったため長編です。
それゆえ読んだことのない人のために、主人公たちの人となりについて十分な解説がなされている安心設計。
(しかし、これを毎日切れ切れで読んでいたら私も泣けなかったなぁ、きっと)
いきなり買うのは冒険だという方は、 「陰陽師 付喪神ノ巻」の中の短編「鉄輪」を読んでいただければ大体の感じはつかんで頂けると思います。
でも『良い漢』っぷりは3割減。(TORY比較)
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なんとも哀しい、ただ哀しい。
誰の心にも鬼が棲んでいて、鬼になってしまうのをどうすることもできない。せつなかった。
晴明が言うように、博雅はよい男だ、と改めて感じた。
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陰陽師シリーズ4作目にして初の長編となった『生成り姫』
シリーズを読んでいなくても、あらためて陰陽師(おんみょうじ)というものや安倍晴明(あべのせいめい)、源博雅(みなもとのひろまさ)について、章を割いて解説してあるので、この巻のみ読んでもイケる。(※ただ、やはり要約なので一巻から読むことをおすすめする)
やはり夢枕獏の陰陽師の、なんともいえない雅(みやび)な世界、そして鬼と人とが共存する平安の怪しい闇の世界が美しい。
今回キーとなっているのが、本性(本然:ほんねん)。
再三に、こう語られている『雨も水、池も水。雨が続けば梅雨と言われ、地に溜まれば池と呼ばれ、その在り方で名づけられ方はそのおりおりに変わりますが、変わらないのは水の本然』『水の本然は、ただ水でばかりであり、それを善であるとか 悪であるとか言うのは、人の側にその善も悪もあるからなのだよ。』
鬼も人も同じ。そして、哀しいもの。
源博雅の深く純な愛も描いた最高の物語になっていて、終盤は涙なくして読めない。
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【内容(「BOOK」データベースより)】
十二年前、月の明るい晩。堀川の橋のたもとに立ち、笛を吹く源博雅と一人の姫。すべては二人の出会いから始まった。淡い恋に思い悩む友を静かに見守る安倍晴明。しかし、姫が心の奥底に棲む鬼に蝕まれてしまった。はたして二人は姫を助けられるのか? 急げ博雅! 姫が危ない。シリーズ初の長篇、遂に登場。
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【目次】
序ノ巻 安倍晴明
巻ノ一 源博雅
巻ノニ 相撲節会
巻ノ三 鬼の笛
巻ノ四 丑の刻参り
巻ノ五 鉄輪
巻ノ六 生成り姫
あとがき
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陰陽師シリーズ初の長編
以前掲載された短編『鉄輪』を長編にしたもの
『鉄輪』より姫や博雅の心の動きが詳しくかかれているのでこっちの方が悲しく辛く感じた
博雅は本当にいい漢だなぁと改めて実感
そして晴明の優しさと博雅との友情も素晴らしかった
鬼になろうとも味方でいると言い切ってくれる人に一生のうちに出会えるなんて幸せなことだ
Posted by ブクログ
シリーズ初の長編という触れ込みながら、前半はまるでそれぞれが独立しているような構成が続く。
ところが後半になるにつれ全てが繋がり始めて、何とも悲しい物語になりました。
ミステリーでは良くある構成ながら、この手法を陰陽師シリーズで用いるとまた違った趣がありますね。
だけど自分はやっぱり短編の方が好きかな。
Posted by ブクログ
陰陽師、シリーズ初の長編。
映画で観たエピソードでした。当たり前ですが原作の内容の濃さがすごかった。こんな悲しい話ない。。
済時、なんてひどいことを…
博雅と晴明の関係がなんかもう、付き合っちゃえよってくらい強い絆というか…作中でも言ってますが、博雅の存在が晴明を繋ぎ止めてるんだなと思いました。
余韻がすごい。しばらくは思い返すと思います。
Posted by ブクログ
陰陽師シリーズ初の長篇。すべてが始まったのは、いまから12年も前のことだった。月の明るい晩に堀川の橋のたもとで、心のおもむくまま笛を吹く源博雅。その音色に耳を傾ける姫。名前も知らない、淡い恋だった…。思い悩む友を、そっと見守る安倍晴明。しかし、姫が心の奥底に棲む鬼に蝕まれたとき、2人は姫を助けることができるのか? 急げ博雅! 姫が危ない──。主人公・安倍晴明はもちろんのこと、無二のパートナーである源博雅の清澄な魅力も全開の作品です。
Posted by ブクログ
第5弾
長編になるんかな?
悲しい話やけど。
貴船神社って、丑の刻参りの発祥の地!
ここでも、恨みを持った女の人が、毎日夜中に人形に、五寸釘を
カッツン!カッツン!
¶ヾ(´皿`;)_中))))☆= カンカンカン【呪怨】
しかも、その女の子は、博雅がずっと想っていた人…
もう既に…徐々に、人から鬼に…
さぁ、救えるか晴明!
陰陽の力で!
「博雅よ、人は自ら鬼になるのだ。鬼にならんと願うのは人よ。貴船の高龗神も闇龗神も、ひとにわずかの力を貸すにすぎぬ」
鬼なるのもならぬのも人次第か…
まぁ、そうなのかもね。
今回は、陰陽の力より、博雅の力の方にぶがあったな。
陰陽の力で調伏は出来ても、人に戻すのは無理なんかな。
天に愛された音楽家…
その笛の音が全てを…
あとがきで、獏さん、「餓狼伝」とかも心配御無用。生きている限り、終わるまで書き続けるって言ってたけど。
2000年の時のあとがきやし(~_~;)
Posted by ブクログ
平安陰陽師伝奇ファンタジー第五巻。初の長編。以前に短編として発表されていた"鉄輪"をベースにした話で、悲恋の末に鬼(生成り)へと化していく姫と、晴明・博雅との絡みを描いていく。鉄輪以外にもこれまでに短編に出てきたエピソードがちりばめられており、さながら総集編といった趣。それでいてしっかりと魅せるあたりは流石かと。
ただ、これまでの短編では時に濃かったえぐみは薄目で、晴明というよりも筆者あとがきにもあるように博雅の物語といった感がある。彼の純真さにこころ救われる思いがする。
Posted by ブクログ
博雅お前は本当に良い漢だなぁに尽きる(╹◡╹)悲しい終わり方だけど読み終わってスッキリした気持ちになった。悲しいハッピーエンド?前作より式神も多めでそこも面白い。あと平安時代の話だけどそんなに堅苦しくなくサクサク読めました。今後もシリーズ読み進めていきたい。
Posted by ブクログ
短編の「鉄輪」がベースのお話し。
全体的には面白かったけど、短編でざっとした流れを知っているから最初の方は流し読み。
後半は引き込まれて読みました。
長編は博雅と晴明のやり取りがじっくり楽しめるのもひとつの良さかなと。
Posted by ブクログ
陰陽師シリーズ。長編。
シリーズ発刊以来、初の長編ということですが、すでに既刊の短編集で収録されている話を一つの長編に組み込んで纏めたものであったらしい。シリーズ最初から読み進めている者からすると、すでに読んだような話ばかり。ただ、完全コピーというわけではなく、同じ話を違う方向から描かれていたりで、あらためて晴明と博雅という人物を確認できる意味では良かったのかな。
この作品の話の中心は言わずもがな、「付喪神ノ巻」の「鉄輪」。短編作でも十分に切なさは伝わっていたけれど、長編となって更に迫るものを感じることが出来た。とにかく、、、博雅が本当にイイ漢、、、。それに尽きます。
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一度読んだことある?と思っていたら、短編のストーリーを長編化したものでした。短編でも悲しい話でよかったのですが、もやっとしてたことがクリアになったかんじ。どちらが好みかは人それぞれ。私は短編のままで思い描くのもいいと思います。
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陰陽師、 ひろまさの歴史もよくわかり 初心者には 読みやすい。登場人物の歴史について詳しく書いてあるのでその人柄を思いだきながら読むことができる。映画 陰陽師の原作。
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シリーズ初の長編。
シリーズで出ているけれど、どこから読んでも大丈夫なように書かれています。
特にこの長編は、今までの晴明&博雅のエピソードも織り込まれていています。はじめての方やおさらいにぴったりです。
私はシリーズ順に読んで来たので、くどいとしか感じなかったけど。
物語のもととなるのは、呪われた男を晴明が助ける、という謡曲。それを、夢枕獏が女の悲しい物語として描きなおした。
前に短編「鉄輪」としても収録されていた物語です。大筋は変わらないけど、長編になって、鬼へ成っていく女の悲しみがぐっと迫ってくる作品になりました。
それと、博雅の良い男ぶりが光る。素直で優しくて、優しすぎて、切ない。
晴明さんも言っています。
『博雅は、良い漢だ…』
Posted by ブクログ
藤原済時の心変わり、悔しさのあまりに丑の刻参りをして鬼に変わりそうになるが
その姫は、堀川の橋のたもとで 笛を吹く博雅にあわせて琵琶ひいてくれた 博雅の想い人でした。
泣きながら 死にゆく生成りと化した徳子姫をだきしめて「そなたが愛しいのだよ」と告白する博雅が愛しい人でした。
Posted by ブクログ
短編であらましを知っていたので、展開そのものは新鮮さはさほど感じない。けれどやはり「生成り」の姫の心情は痛ましくて切ない。学生時代に神話や民俗学関連の授業で「鬼」についてのレポートをまとめた時、おそらくこの話の原型となっている古典を少し研究した。物語を楽しむわけでもなく、あくまで調査という形で触れたけれども抉られるような気持ちになった。また、今作は晴明の妖しい活躍よりも長雅の天然(?)さが堪能できました。
Posted by ブクログ
長編版もよかった。
男の勝手な都合に振り回された徳子が可哀想だと思った。鬼になりたくないのにならざるをえないほど心が耐えられなかったんだろう。
博雅は本当に優しい男だ。
相撲の話もそこで繋がったかと合点がいった。
Posted by ブクログ
「人は誰しも心に鬼を飼っている。人は鬼になりたいと願ってそうなるのではなく、鬼になるべくしてなるのだ。」という清明の言葉が印象的。確かに、人は追い詰められて、追い詰められて、どうしようもなくなったときに鬼になるという気がする。
Posted by ブクログ
文庫版ではシリーズ第5弾となります。今回はシリーズ初の長編です。
博雅は、かつて彼の吹く笛の音を聞いて彼のもとにやってきてた姫と、十二年ぶりに再会することになります。彼女は、博雅に助けを求めますが、博雅には彼女の真意が理解できません。
一方晴明は、藤原斉時と彼が懇意にしている女性に対して、何者かが呪詛をおこなっていることを知ります。やがてそれが、博雅の前に姿を見せた姫だったことが明らかになりますが、嫉妬のために鬼になろうとする姫を、博雅は止めることができません。
博雅が姫に呼びかける最後の会話は、現代を舞台にした小説ではくどいと感じてしまうところを、時代がかったセリフまわしのためか歌舞伎のようなリズムが感じられて、けっしてくどいとは感じませんでした。謡曲の「鉄輪」をもとにしたストーリーとのことですが、どこかに通じるものがあるのかもしれません。
Posted by ブクログ
正直言うとガッカリ。
すでに短編として発表された短編の生成と物語の主人公である安倍晴明、源博雅のやっぱり読んだことのある紹介文でページを稼いだような長編作品でした。
既刊のまとめが大半って長編としてどうなのよ。とツッコみたくなる。
Posted by ブクログ
『陰陽師 付喪神ノ巻』にある、「鉄輪」を長編化したもの。
前半部分は、安倍晴明や源博雅についての説明が、
以前短編の方で語られたことのある内容と重複して書かれている。
短編を読んだあとにこの長編を読むと、
重複するところがあって退屈ですが、新聞連載だったそうなので、
初めての読者への紹介の意味があったようです。
普段は晴明や博雅が、
第三者として出来事に関わっていくお話が多かったと思いますが、
これは特に博雅自身が物語に深く関わっていることもあって、
一層しみじみとした心持ちになりました。
映画の『陰陽師』は、この長編をベースにしているのかな?
と思いますが、それならこの物語を忠実に映画化した方が、
面白いものになったのではないかと思います。
Posted by ブクログ
途中の陰陽師に関する説明、源雅博の紹介が若干鬱陶しかったが、物語自体は面白かったです。
人間とは何か、という事を考えさせられます。水を使った説明はすごくわかりやすく、自分について考えてしまいました。
Posted by ブクログ
シリーズ第五作目は、某新聞社の夕刊に連載された長編。
そのため若干今までの作品と趣が違う。
本作は、「付喪神ノ巻」の中の短編「鉄輪」を
長編化したものである。
そのため、私にとって、
短編版の「鉄輪」を初めて読んだ時に受けたショックや
感動があまりに強かったために、
改めて長編化した「生成り姫」を読んでみたら、
既に一度読者の心に向かって発された題材を、
いかに著者の夢枕獏氏が
その筆力を駆使して料理し直しても、
この物語から受ける感動は薄れ、
熱は冷めてしまった感がある。
それでも、この切なすぎる物語のラストは、
何度読んでも、短編も長編関係なく、
ぐっと胸に迫ってくるものはある。