夢枕獏のレビュー一覧
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夢枕獏『天海の秘宝 下』徳間文庫。
本所深川に住むからくり師として法螺右衛門の異名を持つ堀河吉右衛門と天才剣士の病葉十三を主人公にした時代伝奇小説の下巻。
下巻は時代伝奇小説から一転し、時代SF小説に……いや、本格SF小説に変貌するのだ。と、簡単に書いてしまったが、この予想外の展開には驚くばかりだった。
堀河吉右衛門のからくりが大黒天のからくりと死闘を繰り広げる。そして、病葉十三は、怪僧・天海より100年の命を与えられた『新免武蔵』と対決する。
『新免武蔵』の正体は……
天海の秘宝とは……
大黒天の正体とは……
江戸の町を恐怖に陥れる強盗団『不知火』、謎の辻斬り『新免武蔵』、人の言葉を話す黒犬と共に現れる謎の男・大黒天と一連の怪異は全て天海の秘宝へと繋がっていく。
本体価格750円
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夢枕獏『天海の秘宝 上』徳間文庫。
本所深川に住むからくり師として法螺右衛門の異名を持つ堀河吉右衛門を主人公にした時代伝奇小説の上巻。
法螺右衛門こと堀河吉右衛門が、畏友で天才剣士の病葉十三と共に怪異に立ち向かうという設定は『陰陽師』にも似ている。しかし、『陰陽師』とは異なり、活劇がある分、面白みが増している。
謎が謎を呼ぶ上巻。下巻でこれらの謎をどう回収するのか非常に興味深い。
堀河吉右衛門が病葉十三と共に江戸の町に出没する謎の辻斬り『新免武蔵』の正体を探るうちに二人の前に人の言葉を話す怪しい黒犬が現れ、二人の周囲で強盗団『不知火』が暗躍する。そんな中、吉右衛門の前に現れた謎の男、大黒天。
次第に明らかになる吉右衛門の出時の秘密。そして、謎の天海様のお宝とは……
本体価格760円
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夢枕獏『宿神 第三巻』徳間文庫。
全四巻から成る大河歴史伝奇小説の第三巻。
第三巻は、第二巻までの西行の色恋沙汰など平時としか見えぬ程に状況が一変する。大昔に読んだ平家物語の粗筋を思い出すような展開が続く。夢枕獏は残り一巻で何を見せてくれるのか。
密かに西行を思い続けていた鰍の命が尽き、それを切っ掛けにしたかのように世の中は混迷を極める。朝廷、源氏と平家が相い乱れての大乱。
権力や地位を巡り、争いや策略は何時の時代も変わらぬようだ。権力と地位を手にいれようと修羅と化した平清盛。そういう俗世からいち早く離脱した西行は最後に何を見るのか。
本体価格780円
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夢枕獏『宿神 第二巻』徳間文庫。
全四巻から成る大河歴史伝奇小説の第二巻。四巻全て刊行されてからイッキ読みするつもりで読み始めた。
面白くなって来た。タイトルの『宿神』とは冒頭の描写からそういうことかと少し理解する。呪師の申と妹の鰍こと玉藻が物語の鍵を握るようだ。宿の神、翁、魔多羅神……
万物に宿るとされる神々。人間の人生は様々な物と事、自然や人に影響され、思わぬ方向に向かう。それをまた機微と受け入れるのか、諦めるのか、あがらうのかでその先の人生の価値が決まるのだと思う。
女院・璋子に心を奪われた義清は叶わぬ恋と知りながら、感情の全てを女院に支配される。しかし、女院にこの恋を諦めることを諭された義清は鳥羽上皇と女院の御前で十首の別れの歌を詠み、障子に書き上げる。歌を詠んだ義清は自身が生まれ変わったことを感じ、頭を丸めて出家し、西行となる。
本体価格770円
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夢枕獏『小説 ゆうえんち バキ外伝 5』秋田書店。
ついに完結。夢枕獏が様々な制約を物ともせず本気で描く、板垣恵介の『バキ』と夢枕獏の『獅子の門』『餓狼伝』『キマイラ』『魔獣狩り』の渾然一体となった夢の格闘技世界の第5巻。
非常に面白い。冒頭から葛城無門と柳龍光とのアドレナリン全開の『死合』が描かれる。夢枕獏の格闘技小説の集大成のように次々と過去の作品に登場した技が描かれる。そして、師匠・松本大山を殺した柳龍光との激闘の後、葛城無門の前に立ち塞がる『ゆうえんち』の主催者・蘭陵王。太古から続いて来た、終わらことのない格闘の輪廻。
タケミカヅチ……
凄いのは夢枕獏が足掛け4年に亘り、リンパ癌を患いながらも、一度も休まずに連載を続けたことである。それに比べて、月に一度は必ず休載する板垣恵介の体たらくぶりは目に余る。
夢枕獏のあとがきによると、この『小説 ゆうえんち』が漫画化されるらしい。作画は『小説 ゆうえんち』の挿絵を描いた藤田勇利亜とのこと。漫画を原作にした小説の漫画化とは何ともややこしい。
本体価格800円
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ネタバレこれまでどれだけの作品に登場したか、日本歴史上の人物最多登場でも驚かない。織田信長である。もちろん変換候補一発変換である。そして、ここまできて夢枕獏が織田信長を書いたのである。ところで、「であるか」っていう信長語は、いったいいつから定着したんだろう。とりあえず、本書内でも言ってる。「であるか」
主人公は言わずと知れた超リアリスト信長。
登場する信長は特に目新しい人物設定はない。他、武将たちも従来のイメージだ。
しかし、夢枕獏の描く歴史物にある雅な雰囲気があり、苛烈でありながらも美しくある。
対するもう1人の主人公飛び加藤。こちらは想像上の人物で講談などに登場する不思議超人。忍者だったり、果心居士やら役小角のような存在だったりする。
余談だが、アメコミに登場する超人的アジア人の名前が加藤なのは飛び加藤から来てるんだと面白いと思う。
神も仏もあるものか、絶対いない、いたら俺とっくに死んでるはずだしという思想の信長が、若かりし頃に出会った不思議な人物であり、まるで人生を示唆していくかのようにたびたび現れる飛び加藤。信長の周囲に配置する人物を勝手にスカウトしてくる始末。
リアリスト信長は、けれど加藤の存在を受け入れ面白がっている。
信長は、神仏を否定しているわけではないのではないか。だからこそ、神を仏を信じるという者を呼びつけては議論させた。納得のいく証明を得たかったから。
否定するためにではなく、この世のあらゆる不思議、自分の知らないことを知りたいと思っていたのではないだろうか。
あえていえば、不思議を求めていたからこそ、池の水を抜いてまで大蛇を探した。
飛び加藤がどんなに不可思議なことを行おうと、確かにそこに存在していた。だから受け入れた。
人間なんてほっといても絶対いつかは死ぬんだから、死ぬことなんて祟りとはいえないだろうというのはもっともだと思うのである。
物語の中で重要な小道具になっている敦盛の一節は、若き日に飛び加藤から伝授されたことになっている。
人生五十年というならば、成る程、信長公、長生きではないか。
道半ばで死んだと思えば祟りかもと思えなくもないが、あんな無茶苦茶やって平均寿命ってむしろ御加護とも言える。
要は受け取り方の問題でしかない。
最高にしつこい敵だった一向一揆の皆さんが、本気で念仏唱えたら阿弥陀様が救ってくれて極楽行けると信じてるのか。見えないものをなぜ信じられるのかと思う作中の信長は、実は、彼らと同じことを体験している。
帰蝶は信長自身が手にかけて死んでいるにもかかわらず、信長にはずっとそこに見えていた。存在していた。家臣たちは、信長がそう振舞っているから合わせていたと、死の直前に蘭丸から聞いてようやく記憶を戻す。
あるものはる。あると思えばある。
しかし、自身がそれを体験したとて、闇雲に極楽を信じる民衆を理解したのかはわからない。
ところで、歴史上の人物で悲劇的だったり生死のはっきりしない人は転身伝説があるが、例えば義経がジンギスカンになったなどだ。
討った側の明智光秀は、処刑されたにもかかわらず天海僧正になったなんて伝説があるのに、遺体すらない信長にはそういうの聞かないのである。
生きてたら逆襲してきそうだし、なんで別人にならないといけないんだって怒りそうだし、想像しにくいからだろうか。ファンタジーの中ではいろんなことになってるけど。