夢枕獏のレビュー一覧
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陰陽師シリーズ4作目にして初の長編となった『生成り姫』
シリーズを読んでいなくても、あらためて陰陽師(おんみょうじ)というものや安倍晴明(あべのせいめい)、源博雅(みなもとのひろまさ)について、章を割いて解説してあるので、この巻のみ読んでもイケる。(※ただ、やはり要約なので一巻から読むことをおすすめする)
やはり夢枕獏の陰陽師の、なんともいえない雅(みやび)な世界、そして鬼と人とが共存する平安の怪しい闇の世界が美しい。
今回キーとなっているのが、本性(本然:ほんねん)。
再三に、こう語られている『雨も水、池も水。雨が続けば梅雨と言われ、地に溜まれば池と呼ばれ、その在り方で名づけられ方はそのおりおりに変わりますが、変わらないのは水の本然』『水の本然は、ただ水でばかりであり、それを善であるとか 悪であるとか言うのは、人の側にその善も悪もあるからなのだよ。』
鬼も人も同じ。そして、哀しいもの。
源博雅の深く純な愛も描いた最高の物語になっていて、終盤は涙なくして読めない。
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【内容(「BOOK」データベースより)】
十二年前、月の明るい晩。堀川の橋のたもとに立ち、笛を吹く源博雅と一人の姫。すべては二人の出会いから始まった。淡い恋に思い悩む友を静かに見守る安倍晴明。しかし、姫が心の奥底に棲む鬼に蝕まれてしまった。はたして二人は姫を助けられるのか? 急げ博雅! 姫が危ない。シリーズ初の長篇、遂に登場。
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【目次】
序ノ巻 安倍晴明
巻ノ一 源博雅
巻ノニ 相撲節会
巻ノ三 鬼の笛
巻ノ四 丑の刻参り
巻ノ五 鉄輪
巻ノ六 生成り姫
あとがき
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久々の『陰陽師』
陰陽師 安倍晴明と相方 源博雅のふたりによる9つの怪奇譚。
今回は呪による掛け合いや菅原道真の怨霊話ようなものはなく、どれもアッサリとしているのだけども、その実、儚くしんみりと、女性に焦点があてられていたような気がする。
安定した2人(清明&博雅)の、酒を酌み交わし四季折々の庭を愛でつつ静かに語りあうシーンは素敵だな。
花鳥風月、雅だのう。
9つの話のうち、どれが一番いいか・・・と、目次を眺めていたのだけども、どれもそれぞれ良いわ。
思い出すだけでジーンとくる。
そうそう
あとがきで、作者が『キマイラ』シリーズを勧めていた。
清明と博雅が好きな人には読んでもらいたいとのこと。
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【内容(「BOOK」データベースより)】
都のあちらこちらに楽しげに現れては、伽羅の匂いを残して消える不思議の女がいた。露子姫の前にも姿をみせたという話を晴明が耳にした翌日、蜘蛛の巣に妙なものがひっかかったと僧が訪ねてきた。早速、博雅と寺に赴き、蝶のようなそれを放した晴明が知ることとなった女の正体とは?「はるかなるもろこしまでも」他、全九編。
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【目次】
笛吹き童子
はるかなるもろこしまでも
百足小僧
きがかり道人
夜光杯の女
いたがり坊主
犬聖
白蛇伝
不言中納言
あとがき
文庫版あとがき
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今までの人生のうち釣竿というものに触った記憶は1回。
運よくその時1匹かかってくれたので釣りに対する印象は悪くはないのですが、釣りの好きな方が夢中になって話してくれるのはどうもピンときませんでした。
この本を読んで釣りの不思議な魅力を体験してみたいものだと一層思うようになりました。
思うようにならないことの多い人生。その中で何かに狂い、突き動かされるように生きるのは哀しくもあるけれど、そう生きてこそしあわせなのかもしれない。
そんな風に生きる人同士が本当の意味で触れ合うことができ、愛しく思うことができるのかもしれない。
自分の好きなこと、隣の人の好きなことを大切にしたいと思えるようになりました。 -
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久しぶりの陰陽師。
文庫の新刊が出たので、それを買うつもりで書店を訪れて、ふと前の巻を買ってたかが気になったので確認したら、買えてなかったので購入。
それにしても安心のコンビである。
何がって、月の夜に晴明の家の庭の縁側で、晴明と博雅の二人が座して酒を酌み交わしている。
その場面を見るだけで、ススススーッと物語の世界に入りこめる。
あとは一気に読み終えるだけ。
今回はおなじみの二人に加え、蝉丸法師の出番も多かった。
また、これまでのように人を助けるばかりでなく、晴明や博雅自身に降りかかる怪異について語られる話がいくつか含まれていたことが新鮮だった。
さて、というわけで最新刊の醍醐の巻を読みましょうかね。 -
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ネタバレその老人はみごとな銀髪をしていた。その瞳は異様な光を帯び、ノラ犬を思わせた。加倉文吉、人はその男のことを「真剣師」と呼ぶ。賭け将棋のみで生活をしているもののことである。旅から旅へ、俗世間のしがらみをすべて断ち切って、ただただ強い相手を求めて文吉は生きる。夢を諦めて師匠の妻と駆け落ちした男、父の敵を追い求める女、プロ棋士になり損ねた天才…。将棋に取り憑かれた男と女。その凄絶かつ濃密なる闘いを描ききった連作集。
賭け将棋を生業とする「真剣師」。一人の老人真剣師を中心にいろいろな人物が賭け将棋をやりにやってくる。
『銀狐』
真剣師・加倉文吉の紹介的な会。その老人はみごとな銀髪をしており、その瞳は異様な光を帯び、野良犬を思わせた。賭け将棋でのみ生活をしており、そのほかの生活は自堕落。だが、そんな人物だからこその情緒が感じられた。
『くすぶり』
真剣師は、賭け将棋のみで生計を立てる者。くすぶりとは、賭け将棋以外にも生計を立てる術を持っているもの。この両者には決定的な違いが感じられた。それは、勝つことへの執念であった。文吉が後悔しているものの汚い心理戦を挑んでいたので、そう感じた。
『浮熊』
自分の家族を賭け将棋によって崩壊させられたと思っている娘による父親の仇をうちに行くという話。一人一人の個性によって将棋の指し方が違い、それを元に仇の人物をたどっていくというもの。最後に勝負の行方を書かなかったのも、また、面白かった。
『妄執の風』
プロ棋士になり損ねた天才との将棋勝負。プロ棋士とアマチュア棋士・真剣師というものの違いを描いている。将棋界における棋士は天才の中の天才であるが故に対外的な恥は許されない、というプロ棋士側の苦悩も描かれており、とても面白かった。 -
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夢枕獏 著「天海の秘宝(下)」を読みました。
江戸を揺るがす怪しい集団と戦う覚悟を決めた、からくり師吉右衛門と親友の剣豪、病葉十三は苦闘の末に天海の秘宝を見つけ出す。しかし、そこには驚愕の真実が隠されていた。
下巻は正直やられたという感じでした。
上巻は、謎が謎を呼び、時代劇ミステリーのような形で進み、下巻はその謎が明らかになっていく展開と思って読み進めていたのですが、謎が明らかになるにつれ、上巻とは思い切り展開が変わり、いい意味で裏切られました。
まさか、思い切りSF小説だったとは。
タイムパラドックスを織り交ぜ、展開の秘宝の謎に迫る展開は、頭の中でなかなか整理することができず、パズルのピースを当てはめていくような楽しさを味わうことができました。
しかも、登場人物も一人一人がくせ者で、悪役も悪の魅力が全開でした。
その中に歴史上の人物も顔を出し、歴史の魅力も感じられました。
かなり思い切った作品になっていたと思いますが、自分はこの思い切りがとても爽快でした。
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今までの夢枕獏作品とは傾向が違うので昔からのファンはちょっと戸惑うかもしれない。
時は江戸、徳川綱吉公が将軍であった頃のお話。生類憐みの令が人々に目を光らせているというのに、因果なことに釣りが好きでたまらないという人の群像劇。
傍から見れば救いようの無い愚かな行為をする人には、その人自身ではもうどうすることも出来ずただひたすらに自分を突き動かす業のようなものがある。その哀しみを静かに描き出す本作から、人間への静かな愛を感じる。
『「将軍様だの、お大名だのと言ったって、その着ているものを引きはがしてみりゃあ、おんなじ屎袋だろうがーーー」
「兄さん、けれど兄さんは、その屎袋が愛しくてなんねえんだろう?」
「そりゃあ、おめえ、結局その屎袋の人間しかいねえからな」
「屎袋だから、人はおもしれえ」』
( pp.335〜336)