夢枕獏のレビュー一覧

  • 鳥葬の山

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    ネタバレ

    [柔らかい家]
     個人的にこの短編集のベストはこれ。この短編集は、冗長になってきた感じのある「キマイラ」よりも、全体的に密度が高くていい感じだけど、その中でも特に好み。「顔面崩壊」や「ポルノ惑星のサルモネラ人間」並の内臓感覚の描写が満載でいけてます。自分の娘を犯して子供を産ませて、それを餌にして魚を釣ったり、食べちゃったり。かなり鬼畜。
     床を踏みしめたときの音が、板の隙間に詰まった小さな虫があげてる悲鳴だというのは、かなりいいたとえ。

    [頭の中の湿った土]
     なにもおこならいのが意外なオチ(?)の吸血鬼小説。地面に埋められた男の回想っていうで出だしは、独創的でかなり好き。吸血鬼ものっていう

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    2025年11月24日
  • 神々の山嶺 下

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    下巻ではいよいよ、エベレストに挑む本格的な登攀が描かれます。呼吸しても酸素が吸えず、氷壁はピッケルをはじき返す。人間の力では到底太刀打ちできず、一手でも間違えば死に直結する描写の連続に、緊張感があります。

    そんな極限の環境で、人生すべてを振り絞るように進む羽生の姿は圧巻でした。人間離れした執念と孤高さが、ページをめくるたび胸を締めつけます。彼は他者を寄せ付けず、人として閉じていた存在ですが、同じ夢を追う深町と、あえて手を取り合うわけでもなく、ただ同じルートを進んでいく。
    友情でも、利害でもない、奇妙で純度の高い関係性が、物語に独特の静かな熱を与えていました。

    羽生という孤高の登山者が山と対

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    2025年11月20日
  • 神々の山嶺 下

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    ネタバレ

    (上)(下)まとめて。
    ハードボイルド風の筆致が時代を感じさせ、男女のやり取り等もいかにも古めかしいのは否めないが、肝心の中身はしっかり骨太でずしりとした質量を伴っている。
    人智の及ばない神の領域…とあっさり書き記してしまうのはあまりに月並みで陳腐なことだが、それでも、標高8000mを超える峰々の世界というものはまさしく神々が統べる聖域に他ならない…と本書を読んで強く感じる。
    そしてそんな神の世界が漠然と抽象的な表現でなく、非常に具体的かつ詳細に描写されていることに感銘を受ける。
    上る人間の目線からどう見えるのか、壁を攀じる際に何を感じ、どういった手順で体を動かして高度を上げていくのか、そして

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    2025年11月18日
  • 神々の山嶺 上

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    ネタバレ

    (上)(下)まとめて。
    ハードボイルド風の筆致が時代を感じさせ、男女のやり取り等もいかにも古めかしいのは否めないが、肝心の中身はしっかり骨太でずしりとした質量を伴っている。
    人智の及ばない神の領域…とあっさり書き記してしまうのはあまりに月並みで陳腐なことだが、それでも、標高8000mを超える峰々の世界というものはまさしく神々が統べる聖域に他ならない…と本書を読んで強く感じる。
    そしてそんな神の世界が漠然と抽象的な表現でなく、非常に具体的かつ詳細に描写されていることに感銘を受ける。
    上る人間の目線からどう見えるのか、壁を攀じる際に何を感じ、どういった手順で体を動かして高度を上げていくのか、そして

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    2025年11月18日
  • キマイラ23 魔宮変

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     幻獣キマイラを巡って男たちが熱い闘いを繰り広げるSFアクションシリーズ第23弾。

     いよいよこの長編が完結に向かって最終コーナーを回り始めたという位置付けににあたるのが本巻なのかなあ(多分)と思いながら読みました。

     深雪を救い出すため、身を犠牲にして敵に挑んでいく大鳳の姿は、これまでの苦しみを乗り越えた先にある一人の男の生き様のように感じました。

     そこに向け、様々な人物たちが織り成す展開もキマイラシリーズらしく、それぞれの人物たちに感情移入しながら堪能することができました。

     一方で、このタイミングで新たな展開やキャラクターの登場など、この物語の結末が一体どうなっていくのか、楽し

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    2025年11月09日
  • 陰陽師 玉兎ノ巻

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    安定した面白さの『陰陽師』シリーズ第15弾❗️

    今回は全体を通して、「月」に纏わる話しが多かったです。好きな話しは、『嫦娥の瓶』、『道満月下に独酌す』、『月盗人』、『木犀月』の四編です。

    男女の色恋の話しは、悲哀な結末が多くてちょっぴりセンチメンタルになったりもしますが、『嫦娥の瓶』のように古の異国(中国)の話しが絡むエピソードは、一笑に付する箇所も見られて、個人的には結構気に入っています❗️

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    2025年11月08日
  • 大江戸釣客伝 上

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    日本史上比類なき悪法生類憐みの令のもと、釣りに狂う文人墨客の滑稽ではあるが、命をかけた飽くなき求道の姿に感動すら覚える怪作。

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    2025年11月05日
  • 上弦の月を喰べる獅子(上)

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    ネタバレ

    面白かった〜上に登った螺旋蒐集家と、下に降った宮沢賢治がアシュヴィン双人として須弥山に登っていく...という構造も、仏教問答するのも、兄妹/業と縁という対が出てくることや、わたしわたくし構文など好きだった。
    ただ、ところどころ鼻につくというかのめり込むような文章ではなくて、後書きを読んでさらに納得w
    というか二問目スフィンクスのなぞなぞだった笑。
    私はシェラが好きだったなあ。愛憎を実兄に対して持つのが良かった。。宮沢賢治、パラパラとしか読んでないから、ハマりきれなかったのかな

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    2025年10月29日
  • 陰陽師 瀧夜叉姫(下)

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    陰陽師シリーズで泣くとは。。。

    瀧夜叉姫は平将門の娘である五月姫や
    滝姫とも言われていて、その妖術を使うお話は
    全国にあるのですが、陰陽師の瀧夜叉姫は
    滝姫よりも平将門の思いが強く表現されていた。

    人情に厚く、人々に慕われていた平将門が
    新皇として東国の独立を成し遂げていたら
    陸奥国の地。。。東北の歴史は変わっていたのかな??
    京都の蝦夷討伐もなく、平穏に過ごせてたのかな??

    『鬼』とするものは
    誰かが 誰かを
    憎み 怨み 恐れ 怒る心から 生まれるもの
    その心が 平将門を鬼(怨霊)として
    平将門の娘をも妖術使いとして
    討伐の言い訳にして
    平将門の父と親交があった陸奥国までも
    鬼門と

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    2025年10月29日
  • 神々の山嶺 下

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    あれ?私ってエベレスト登ったことありましたっけ??と錯覚してしまうほどの鮮明な描写。間違いなく見たことのない景色なのに…山の姿が目の前に広がる。うわぁ…綺麗だなぁ…。

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    2025年10月28日
  • 陰陽師 瀧夜叉姫(上)

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    清明と博雅のやり取りが好きな陰陽師シリーズ。

    滝夜叉姫は上下巻からなる大作で
    上巻は、あまりにも有名な平将門の最期が
    おぞましい。。。
    そんな将門の言葉で、心に残ったのが

    『桔梗よ、哀しみと憎しみは、人を変えるのじゃ…』
    『変わりとうて変わるのではない。
    変わらずにおれぬから変わるのさ。
    もはや、もどることはできぬ』

    『鬼』というものは
    さまざまな環境が
    己の心に住まわせてしまうものなのか。。。

    将門のこの思いが
    下巻へ続くのか。。。

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    2025年10月26日
  • キマイラ12 曼陀羅変

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    前巻からの続きで、数千年にわたる、キマイラの血筋と雪蓮の一族の話。長くなるかなと思っていたら、序章で終わってしまった。大鳳や九鬼はキマイラの血筋で、それをあがめてきたのが雪蓮の一族の亜室健之達。しかし、どうやらキマイラは遺伝的ではないらしい。修行によってキマイラになったのが赤須子で、老子(耼)は一族の者だった。そして、故郷の天山が中国政府に見つかったり、ルシフェル教団(グルジェフ、ボック達)が動き出したり、日本には九鬼玄造がいることで、現在の状況に至っている。現在に戻るかと思いきや、今度は九鬼麗一が中学生、九十九三蔵との出会いから始まり、幼児期、母親とのエピソード、円空山、そして高校生。過去の

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    2025年10月22日
  • キマイラ10 鬼骨変

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    やっと物語が動く。キマイラ化した九鬼は、ツォギェルと巫炎の助けにより巫炎と共に天空へ去る。その後、復活を果たした龍王院弘、キマイラ化した九鬼を見たことから混乱している菊地、深雪への欲望から衝動を抑えようと肉体を酷使する九十九。そこへ深雪が連れ去られる事件が起こる。連れ去られる深雪を見かけ立ちはだかる菊地はボックに倒され、一緒に連れ去られてしまう。龍王院弘は、ボックの仲間に偶然関わり、深雪の事件を知る。深雪を探し海へ出た九十九は、菊地の隠剣を拾う。玄造の屋敷へ確かめに行った後、円空山に帰ると雲斎が戻っているという展開で。さあ、これから激しく物語は動いていくのだろうか。それにしても、今回も過去の話

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    2025年10月20日
  • 陰陽師 瀧夜叉姫(下)

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    上巻から引き続き一気に読んだ。
    下巻はいよいよ将門の元へ。
    何が起こっていたか、20年前の出来事から絡み合う妬み怨みが紐解かれる。
    いよいよ道満も年貢の納め時かとちょっとヒヤヒヤした。
    緊張感のある中で、博雅の存在が読んでいて安心感がある。
    ラストでもうひと展開あり。

    上下巻通して将門のイメージが変わり、将門の本を改めて読もうと思う。

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    2025年10月12日
  • 陰陽師 太極ノ巻

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    ネタバレ

    今回は短編。
    いつも通りで満足。
    一番最初の黄金虫の話が童話的で好きでした。
    露姫様また出て来てくれて嬉しい。
    蘆屋道満はもう準レギュラー。

    物語の最初に2人でお酒飲みながら話してるシーンが好きです。
    博雅、可愛い。その季節や風景をちゃんと感じて楽しんでいるところが本当に好きです。読んでるこちらまで幸せな気持ちになります。
    2人でお酒飲んでる時の会話がなんか哲学的でした。
    後書きで、一行目は現実の季節から書き始めるとあって、じゃあこの話書いたときは雪だったんだなーとしみじみしました。

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    2025年10月08日
  • 陰陽師 瀧夜叉姫(上)

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    今回は平将門の話がベースになっている。
    相変わらずの博雅、晴明なのだけど、話が進むにつれ、将門が切なくて悲しくなってくる。
    道満は晴明のことが好きだよねといつも思う。

    読み終わって、将門の話を読みたくなり、永井路子さんの怨霊列伝を読み返した。

    下巻が楽しみ。

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    2025年10月04日
  • おんみょうじ 鬼のおっぺけぽー

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    おんみょうじの絵本とは珍しいと手に取ってみたら、なんと作が夢枕獏! これは読むしかないよね。
    で、当然のことながら、主人公は安倍晴明。その少年時代のエピソードなのであった。栴檀は双葉より芳し。
    作者の解説があるのも嬉しい。

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    2025年09月23日
  • 大江戸釣客伝(下)

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    幾つか調べてみたら、かなりの出来事が史実をベースに語られていることが分かりました。
    言われてみれば納得だけど、かの生類憐みの令が釣りまで禁止していたとは、自分も一時期釣りにハマっていたので当時の人々のストレスは想像できる。
    面白い作品だったけれど、江戸時代の粋人と呼ばれていた人たちの遊び方だけはあまりに品がなくて全く共感できない。

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    2025年09月23日
  • 上弦の月を喰べる獅子(下)

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    ここまで来ると序章の二人のこと忘れてるし、小松左京の果しなき流れの果にを初めて読んだ時を思い出した。
    合間に挟まれる説法パートがクール。

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    2025年09月21日
  • 上弦の月を喰べる獅子(上)

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    序章が良すぎる。
    螺旋にとらわれた戦場カメラマンパートもたまらなかったし、もう一人の視点は何を言ってもネタバレになるので伏せるけど、この文体って……って思ったらマジだったので笑った。

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    2025年09月21日