梶尾真治のレビュー一覧
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【エマノン】生命発生からの記憶を持っている少女。名はノーネームの逆綴り。【ヒカリ】タイムトラベラーだが自分の意志では跳べない。エマノンが人間になる前から知っており友人で同志のようなもの。【タン】ヒカリの愛したベトナム人で彼の死を防ぐことをエマノンに依頼した。【朔夫】子供の頃から何度もエマノンと出会う。【俊】登山中の俊はヒカリが落とした「ヒーリング・スイング」を探しているエマノンと出会う。【もののけ】それは理解不能のなんらかの扉を人間が脳内補正したものかもしれない。【ビッグバン】いつでもどこででも発生するのかも。【サンクチュアリ】禁じられているクローン人間を作っているがDカズコとFカズコが脱走した。
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著者の作品で言えば『つばき、時跳び』や『アラミタマ奇譚』などと同系列。地元熊本を舞台にした“伝奇ファンタジー”です。
しかし、上記の作品群と決定的に異なっているのは“歴史的事実に題材をとっている”
という点です。
延宝2年(1674)に肥後国仏原(ほとけばる)で起きた「仏原騒動」を題材とした物語ですが、一揆を起こしたとされる一族の娘おさごと現代の青年との邂逅を軸に描かれるので、ファンタジー色の強い作品になっています。
著者は『熊本県大百科事典』でこの事件を知って興味をもち、地元新聞での連載を経て本書にその内容をまとめたらしいです。
『仏原騒動』の顛末については、歴史的事実はほとんど謎に包まれた記述ばかりで、“全く何もわかっていない”というのが正直な所なのでしょう。
しかし、以前私がレビューを挙げた飯嶋和一著『神無き月十番目の夜』(1997年刊)で描かれた常陸国で起きた『生瀬騒動』(1609)に状況がよく似ています。こちらの本は、戦国末に各地に割拠していた土豪・地侍階級弾圧の歴史を冷徹な視点で描いた創作作品でした。そのレビューに書いた通り、“このような事例は全国で多数起こっていたのだろう”という感想を、図らずも裏付けすることができたのが収穫でした。 -
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全国で突然何の前ぶれもなく子どもたちが失踪しはじめる。どうやら、いなくなった子どもたちはある場所を目指しているようなのだが……。マスメディアが「おかげ参り」にちなんでこの現象を「OKAGE現象」と名づけるなか、おとなたちはそれぞれの立場から子どもたちを追いはじめるが……。
世紀末テーマの作品なのだが、ホラーというのとはちがうんじゃないか?あえて分類するならやっぱりSFなんじゃないかと思う。子どもたちは自分の目の前に現れた精霊のような存在「幻獣」に導かれているわけだけど、その設定もやはりSF的だ。しかも現代的だし。夜の街を徒歩で行進する子どもたちが自分たちを元気づけるために合唱する歌とか「幻獣」たちのヴィジュアルイメージとかもよい。
プロローグに登場する霊視能力のある「おばちゃん」についてのエピソードがふたたび語られるエピローグが余韻があって美しい。さらりと「三十年」などと書いてあるが、この物語の中で子どもたちが経験する「幻獣」たちとの交流とその背景を思う時、その「三十年」っていったいどんなものだろうと思うのだ。 -
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未読だった梶尾作品。<汎銀河聖開放戦線>のテロ行為により夫と子供を失った主人公静香は憎悪を人工的に精神に移植することでそれを支えに生きている。しかし、実際に静香が復讐という行為に及ばないよう同時に心理抑制がされていて……。
家族の仇をうつために戦士となる決心をした静香がすることになる選択というのがこの物語のキーになるテーマですが、ちょっとすごすぎる。まるで「おもいでエマノン」の裏返しの物語ですね、これは。しかも梶尾作品の多数を占める叙情性とも、またもうひとつの持ち味であるスラップスティックとも違って徹頭徹尾ハードボイルド。これ発売当時に読んでいたらけっこうショックを受けたかもしれないなあ。
ところで『さすらいエマノン』どこかで文庫化しないでしょうか? -
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怪獣大好き男性作家陣の怪獣小説アンソロジー
「怪獣二六号」樋口真嗣
25年前の怪獣映画の企画書
ざっくり。さもありなんです。
「怪獣チェイサー」大倉崇裕
ゴジラ存在的世界観の日本。
怪獣先進国たる日本。
ちょっとそのままドラマになりそうな
カメラマンと怪獣省の女性の関係が素敵
怪獣省の大臣はきっとあの人。
「廃都の怪神」 山本弘
未開の奥地の原神となっていた怪獣。
少年は、原始的な戦い勝利した。
最近、こういう感じのファンタジーBLあるよね。
「ブリラが来た夜」梶尾真治
自分の母親が ウルトラの母的存在であったならその血脈は受け継がれるのではあるまいか。
怪獣来襲の夜は、家族の来歴を知る夜でもあった。
おもろかったです。
「黒い虹」太田忠司
謎の転校生(眉村卓)×時を駆ける少女×怪獣
「怪獣の夢」有栖川有栖
さすがというか、怪獣文藝とは、といった短編。貧しい子供時代から見続けた怪獣の夢。
現実が成功するにつれ、怪獣となった夢に転換する。ラストの意味深が好き。
先日読んだ 能の邯鄲を思い出す。
「孤独な怪獣」園子温
もし、あのトラブルが表面化した後の作品だとしたら人格を疑う。
アンソロジーが2015年刊行だから さすがにセクハラ流出前ですね。
これを小説と読むか私小説と読むか。
同意してるから良いのかな?
私は、何やっても自由だと思うけど
それを文藝とされたくはない。
「東京デスワーム」小中千昭
ものすごく昔、テレビのロードショーで
ワームがそこらじゅうから溢れてくる映画を観たことがある。水道の蛇口からもどこからも。おそらく、私が観た事がある映画の中で最恐だと思う。この小説のように怪獣並みのワームならまだ良い。小ぶりなのがいっぱいが 怖い。
で、もしかしたら蛭子様とかからのモチーフかなと思いました。
「聖獣戦記 白い影」 井上伸一郎
著者は初読。
雑誌編集者で、2007年に角川書店代表取締役社長、のち角川グループホールディングス代表取締役専務という経歴がまず目を引く。
しかも本作が小説執筆の初作品だというから驚く。
時代設定は鎌倉時代、文永の役・弘安の役。
いわゆる「神風」を、聖獣の存在として再解釈する構成がとても明快だ。
怪獣(聖獣)というフィクションを用いながら、
歴史の踏み込んでいく。
そしてラストのまとめ方が、
怪異譚としてだけでなく、時代小説としても少しドキッとする着地になっている。
あとがきは東雅夫氏。
発刊当時の怪獣映画事情が語られる中で、
宮部みゆき『荒神』にも触れられていた。
福島県内陸部を舞台にした元禄期の怪獣小説。
民話・歴史・怪異が溶け合ったこの作品は、
怪獣を愛する男性作家たちによる諸作品をも凌駕する名作だと思います。
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些細なことで傷害事件を犯してしまった浅見克則は懲役1年の判決を受ける。しかし、試行段階の『消失刑』を選べば刑期は短縮され自宅で過ごせるという。ただし特殊なリングを装着して他人からは“見えない”存在となり、人との交流は完全に禁じられる。深く考えずに『消失刑』を選んだ浅見に押し寄せる過酷な運命とは…。
“何かを受け入れることによってもたらされる過酷な運命“。その時、人はどう生きるべきか…という命題を嫌でも考えずにいられなくなる。梶尾真治の作品に共通する視点だと思います。「どんなに孤独が好きな人でもここまでの状況になったら…」と考えると胸が苦しくなりました。
【余談】
本書は光文社文庫2023年7月20日初版。裏表紙折り返しには光文社文庫既刊の梶尾真治作品全8作品名が載っている(全作持ってる)が、近隣、何なら県内の書店では全く見かけない。本書は横浜の新刊書店で偶然見つけた。そもそも本書が昨年刊行されていたことすら知らなかった。私が住む県内の書店では、光文社古典新訳文庫は置いてあっても光文社文庫は置いていない本屋がほとんど。でも、“新刊書情報”は割とこまめにチェックしているつもりなんだけどなぁ。それでも気付けない情報格差ってあるんですね。大都市に住む人にはやはりアドバンテージが大きいと感じた出来事でした。