あらすじ
少年の日、健志は恋をした。桜の咲く頃だけ春待岬の洋館で会える、美しい少女・杏奈に。なぜ、彼女が現れるのは一年のうち数日だけなのか。なぜ、館に暮らす老人を「兄さん」と呼ぶのか。杏奈の秘密を知った健志は、彼女をいつか救い出そうと決意する。月日は流れ健志は年を重ねていくが、杏奈はずっと少女の姿のまま……。幼い初恋はやがて究極の純愛へ。切なすぎるタイムトラベルロマンス。(解説・笹本祐一)
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〈そこを、春待岬と呼ぶことを知ったのは、杏奈を見かけた年のことだ。
春待岬という名前が、なんと皮肉な付けられかたをしているのだろうと思い知るのは、それからまた、数年を待たねばならないのだが。〉
昔からの銃砲店を営む祖父母の暮らす海辺の町で、春休みの間を過ごすことになった小学生の白瀬健志は、桜の木がいっぱいに並ぶ春待岬の存在を知る。岬の突端部分には洋館が建っていた。不吉な物語を背負い込んだような洋館に、健志はひとり向かい、閉ざされた門の前で偶然出会ったカズヨシ兄ちゃんに連れられて、覗くように眺めていた洋館の庭を眺めていると、彼女が現れた。それが運命の一瞬だった。その時、数輪の桜の花が咲いていた。
美しかったお姉さんはやがて……。桜の咲く時期だけしか現れない不変の少女、年老いた姿をした杏奈の兄、洋館に住むふたりの秘密と関わり合うようになった少年。ひとつずつを年齢を重ねていく中でも、少年の心の中にはつねに杏奈のことがあった。あの日の初恋が、どこまでも深い献身を生む。切ない余韻が、読後いつまでも残ります。
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梶尾真治といえば時間ものですね。作中で発生している事象に対して、登場人物たちがあまりに無力なのがある意味でリアルですが、物語としては少し退屈かも。
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久々に梶尾真治さんの本を読んだ.
なんか,すごく懐かしい感覚がある.
そして,ページを早くめくりたい衝動に駆られた.
ずっと,この世界に浸っていたいと思う感覚があった.
最後の方は,梶尾さんのタイムトラベルものによくある,心の中の純粋なパワーが発揮されるシーンが繰り広げられ,揺さぶられる.
Posted by ブクログ
「つばき、時跳び」の元のタイトルが「つばきは百椿庵に」だったというので、似た雰囲気の物語を想像して読み始めたのだが、生涯をかけた初恋をした、初恋に一生を捧げた男の、あまりに一途な姿には、春と桜と海(岬)という風景とは真逆の影の空気を感じさせられる。
さて、杏奈のことばかりが語られ、家族やまわりの人物との関係はまるで背景かのように味気なくしか触れられれず、特に梓との関係、梓の思いが男に(読者にも)明確に伝わってこないのは、時の間に閉じ込められた少女を待ち続け、流れ続ける時の中で時を止めてしまった男
にとっては、周りの人間との時間の流れに差ができて、
梓に限らず、自分を取り囲む人や世界は、まるで早送りのように流れ去って行ってしまっていた、のではないのか。
そういった想像も踏まえると、ある重大で皮肉な秘密が隠されていて、男が時を止めてしまっているようで、時の速度差、老い、限りある人生という現実も容赦なくのしかかっていた男にとって、ラストはある意味での約束の成就、つまりは自分の人生からの一つの解放、であったのではないか。
時の流れるスピードが異なる男女の姿は「美亜に贈る真珠」も思い起こさせる。あと「ジェニーの肖像」も。
クロノスをジョウントできる(ようになる)人物が登場するのはちょっとしたご愛敬か。
Posted by ブクログ
甘いのか苦いのかよくわからなかった。
SFファンタジーなのかな、あまり得意分野ではないのです。
所謂ファム・ファタール的な感じなのですが、女の私はもっと超現実主義なので主人公のような一生は自分はいやです。