梶尾真治のレビュー一覧
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かなり前に書かれた(最初の話は1994年)お話のようで文体に少し古さは感じますが、とても面白かったです。
クロノス・ジョウンターという一種のタイムマシンに纏わる短編、中編をまとめたもの。本の紹介にも書かれてますが、行く過去は指定できるけど、いられる時間はわずか。しかも反動で今よりも先の未来に飛ばされるというかなり恐怖のマシン。そんなビックリ設定のマシンなので、後味悪そうな結末が待ってるのかドキドキしながら読みましたが、ほっこりするラストの話が多くホッとしました。
他の方も書かれてますが、最後の短編が余計な気がわたしも最初しました。なにしろ本のタイトルにもなっているクロノス・ジョウンターが出 -
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タイムマシン<クロノス・ジョウンター>をめぐる連作短編集である。以前に、朝日ソノラマ版を読んでいる。本書は、その後に執筆された物語を追加した、現時点での最新版となる。
開発中の物質過去射出機<クロノス・ジョウンター>には、重大な欠陥があった、過去にとどまれる時間は10分程度。しかも出発した時間にもどれず、より未来に跳ばされるのである。
本書の巻頭に掲載されている『吸原和彦の軌跡』は、一番最初に発表され作品である。舞台化、そして映画化もされている作品で、私自身も<クロノス・ジョウンター>といえば、この作品が思い浮ぶ傑作である。恋人とは呼べないかもしれない女性。しかし一番大切な人を救うた -
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3年前に出版された単行本は発売されて直ぐに読み始め、何と2回も読んだ(速読・熟読)。自分の記憶では短期間で2回読んだのはこれが初めて。今回、文庫本が出版されたのをきっかけに、3年ぶりに3回目の読書に着手した。例の自転車の確認もあるし。既に2回も読んで内容も理解しているので、あっという間に読んでしまった。細かい描写は忘れている所もあったが、概ね本筋はきちんと理解・記憶していた。
3回も読むと今回のタイムパラドックスについていろいろ考えることが多かった。SFなので科学考証や古風な恋愛について特にコメントすることはないが、大まかに2つ考えさせられる所があった。1つは、クロノスの設計の基本となるアメ -
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熊本市の郊外、花岡山の中腹に、その『百椿庵』はある。終戦後、廃屋同然だったこの家を曾祖父が購入し、父からの提案もあり、現在は専業作家をしている〈私〉が住んでいる。百椿庵には幽霊の噂があるらしい。男には見えない、という女の霊。新作を書きあぐねていた〈私〉は、謎の人影を見る。あれが百椿庵の幽霊だろうか――。
とそんな鮮やかな導入で幕を開ける、タイムトラベル&ラブロマンスな一冊が本書『つばき、時跳び』。140年の年月をこえる愛の物語です。土地の雰囲気が立ち上がってくる丁寧な描写が相まって、とても静謐で、情感豊かな恋愛小説になっています。惚れ惚れするような糸を引くストレートを見る感覚がありました -
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惑星ヤポリスによって起こった爆弾テロ。在人類惑星条約機構の要人暗殺のための行為は、一般市民も巻き添えに6万人近い死者を出した。その事件を生き延びたものの、愛する夫と娘を失った神鷹静香は重篤な心神障害を負ってしまう。父親のたっての頼みで、医師は特殊な心理療法を使って、静香の意識を回復させることにさせる。それがテロの首謀者である〈汎銀河聖解放戦線〉への憎しみを静香に植え付けることだった。
ということで、作者の代表作のひとつとされる大作『サラマンダー殲滅』です。エンタメ性抜群。文庫本で上下巻1000頁近い分量ですが、引っ張られるように気付いたら読み終えていた、という嬉しい読書体験ができました。 -
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〈そこを、春待岬と呼ぶことを知ったのは、杏奈を見かけた年のことだ。
春待岬という名前が、なんと皮肉な付けられかたをしているのだろうと思い知るのは、それからまた、数年を待たねばならないのだが。〉
昔からの銃砲店を営む祖父母の暮らす海辺の町で、春休みの間を過ごすことになった小学生の白瀬健志は、桜の木がいっぱいに並ぶ春待岬の存在を知る。岬の突端部分には洋館が建っていた。不吉な物語を背負い込んだような洋館に、健志はひとり向かい、閉ざされた門の前で偶然出会ったカズヨシ兄ちゃんに連れられて、覗くように眺めていた洋館の庭を眺めていると、彼女が現れた。それが運命の一瞬だった。その時、数輪の桜の花が咲い -
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極紘物産株式会社の営業企画部開発課に所属する宮口翔一は、人件費の削減のため、上司から早期退職の打診を受けていた。結婚を考えていた相手から別れを切り出されたタイミングも合わさり、退社の決意も固まっていた彼は突然、話したこともない常務から呼び出される。常務から翔一が受けた特命は、熊本にある離島『壱里島』に行き、そこで売られている『おもしろたわし』の謎を調べること。翔一はそこで島のひとたちと関わりながら、不思議な体験をしていく。
島とこれからも生きていこうとする人々の想い、果たされなかった約束の映画、ありえたかもしれない未来、大切なひととの再会……読み終わった時に、爽やかな余韻の残る作品でした -
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「孤独が好き」と言うひとはたまにいます。人生の中で何度か、私も言ったことがあるように思います。ただそれは、『本当の孤独』を経験していないからこそ口にすることができる言葉なのかもしれないなぁ、と感じる時もあったりします。『本当の孤独』とは、たとえば本書の主人公である浅見克則のように。
熊本にある日用品雑貨の卸問屋で平凡なサラリーマン生活を送っていた浅見克則は、職場で出会った女性に誘われた際、彼女と彼女の前の彼氏の間のトラブルに遭遇し、仲裁に入ったことがきっかけで、傷害事件を起こしてしまう。相手の男性を植物状態にしてしまった自らの行いを悔い、控訴もせず、懲役一年の実刑判決を受け、真摯に罪と向か -
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「未来」と書いて「あした」と読むタイトル。タイトル別に並べたらあ行に来てあれ?ってなるのかもしれない。
以前どこかで買った梶尾真治本の、「時の"風"に吹かれて」に続いてまた別の一冊。こっちは長編だからか、ほのかに読んだことがあるような記憶があるようなないような…
でも読み進めてて「もしかしたら… こうなるんじゃないのか!?」って展開を予想しながらドキドキしながら読んでいた。既読者の楽しみ方じゃねえ!楽しいからいいけど!でもそれは単に読んだ記憶があって展開を知っているだけなのか、純粋に展開を予想したのかどっちなのかもはや誰にもわからない。
梶尾真治が熊本出身なだけあって、 -
ネタバレ 無料版購入済み
カジシン作品の完璧な漫画化
梶尾真治作品、けっこう読んでいますが、実はこれ、未読だったようです。
ただ、リリカルなカジシン節が見事なまでに炸裂している佳品で、鶴田謙二氏の作品も初読でしたが、あっという間に作品に引き込まれました。
私もフェリーの旅は好きですが、2等雑魚寝は利用しませんので、その辺も自分の経験に沁みたのでしょうかね。
アナログタッチの見事な描線で、脱帽の出来でした。素晴らしいです。 -
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ネタバレとても良い短編だった。どのシーンを切り取っても綺麗で、ストーリーもまた、読み進めるごとに違う良さが姿を表す。
一冊の漫画で、これほど魅力的なヒロインを描くことができるのは凄い。多分、絵柄や造形というだけじゃなくて、それなりに多くの人が胸中に抱く、ヒロインのイデアみたいなものを、ずるずると引き出してくることで、一層魅力的に見えたんだと思う。誰しも一度くらいは、エマノンみたいな女の子に憧れたことがあるんじゃないだろうか。
序盤の、美人とゆきずりになるような旅情、中盤のSF的な展開による空気の転換、一度あっただけの女の子への慕情を、ずっと持ち続けているラスト、いずれもとても風情があって良かった -
Posted by ブクログ
本作品は既に2004年10月に光文社文庫から出版されているもの。今回の本には「白鳥山奇譚」との副題が添えてある。今回舞台となる白鳥山は実在しており、熊本県と宮崎県の県境にある標高約1,640mの山である。Google mapで見ると素人がハイキングで気軽に行ける山ではなさそうだ。宮崎県側から登った方が近いような気がする。
一回舐める様に読んだため、読み進めるうちに徐々にストーリーが脳内に蘇ってきた。まあ、結末が判っているので安心して読める(ネタバレか?)のだが、ワクワク感にはちょっと乏しい。また、新しく徳間文庫から出版されたものは、光文社文庫のものを加筆・修正されたとのことだが、残念ながらそ