梶尾真治のレビュー一覧
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私の敬愛するSF作家、梶尾真治先生の今年第2作目となる。しかも大好きなエマノンシリーズの最新作だ!当然、気分は上がるよね。いかん、ちょっと暴走しかけたので、少し落ち着いて最後の「エマノンの軌跡」を見る。そうか、「読楽」に年一回のペースで寄稿されたものを纏めて出版したのか。5年間かけて執筆したのだが、作風が全く変わっていないのが素晴らしい。もう、エマノンのイメージは変える必要もなく、気が遠くなる時間を過ごした中で普遍的な使命を粛々とこなしていくエマノンのその様な時間のイメージを大切にする、まさにこれが梶尾先生の真骨頂。いまやミスター・タイムトラベラーは筒井康隆ではなく梶尾先生であることは紛れもない事実であると言えよう。
来年、舞台が企画されていると帯に書かれていた。潤色・演出 柴幸男(ままごと)とのことだが、舞台なら当然キャラメルボックスがサンシャイン劇場で行うと思っていたが、どうもそうではないらしい。一番気になるのが「潤色」。なんだ?潤色って、脚色ではないのか?原作のイメージを大幅に変えるのか?と不安だけが先行する。長年に亘って梶尾先生が積み上げてきたエマノンのイメージを大幅に変えることなく舞台作品を発表して欲しい。東京で舞台が開催するのであれば絶対に行く。そしてエマノンのイメージが損なわれていないか細かくチェックする予定。エマノンをどなたが演じるのかも気になる。ああ、来年まで待てないな。
エマノンと人間との関わり合いは、今回も特定の人間の一生に大きく影響を与えている。それはエマノンの優しさでもある。私がエマノンに作品を通じて再会するのは概ね5年後となる。体調を万全にしてその時を待つ。待てよ?「読楽」を買えば毎年会えるではないか。その手があったか。でもそれはあまり粋ではない。まあ、そういう意味では5年後に確実に会えることを期待するのも粋ではない。やはり、予期せぬタイミング、思いがけずに出会うのがエマノンとの関わり合いかただ。そのためにも、梶尾先生には体を大切にして欲しい。キノコを求めて野山を駆け回って体力作り、キノコを食べて体調を整えるので、それは杞憂と言うものか。 -
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私の敬愛するSF作家、梶尾真治先生の本が遂に出た。しかし、それは本来のSF小説ではなくキノコの話。しかも小学館新書からの出版である。毎年、facebookのお誕生日メッセージには、新作の発表を心待ちにしておりますと投稿し続けてきたが、よもや突然本書キノコの本を含めて一気に3冊(本書、「もののけエマノン」、「おさご幻奇譚」)も出版されるとは思ってもみなかった。もう驚きしかありません。あと、出版の可能性があるとすれば、「白岳」で有名な高橋酒造のHPの「お知らせ」(特にコラム名はない)で連載されているショートショート?をある程度纏めたものかな。4/1現在で第258回だから、そろそろ第1弾出版の話が出ていても不思議ではない。ところで2006/5/25に発表された第1回ではどのような話なのかと覗いてみたら、白岳とキノコと高橋酒造の人達に関するお話で、SFのテイストは皆無。
さて、梶尾先生は日頃よりキノコ、キノコ狩りについてSNSで発信してきたが、今回の本は西日本新聞の連載等を基に纏められたものとのこと。私もキノコ好きで、なんだかんだ言って食事の半分以上はキノコを食べている。特に、なめこ・エノキ・マイタケが好き。去年、庭の梅の木がお亡くなりになった時に、幹の根元にびっしりとキノコが大発生したが、果たして食用なのか判別できず、そのまま根元から梅の木を伐採した。この様に、キノコ狩りには憧れるのだが、食用かの判別がつかず、もどかしい思いをしている。本書はキノコ毎にかわいいイラストがついているので、とても楽しんで読み進めることが出来る。イラストよりも先生が撮りためたカラー写真の方が良いかと一瞬思ったが、図鑑ではないのでそこまでする必要はないかとも考えた。また、カラーだと本の値段が跳ね上がってしまうのであまり得策ではないのかも。
「胞子活動歴40年を超える」という表現で思わず笑ってしまった。しかしキノコの種類も凄いけど、~~モドキって言う名前を持つキノコが結構あることを知った。これで真っ先に、マグマ大使の「人間モドキ」を思い浮かぶとは、歳がバレてしまいますね。本書で先生は毒キノコにやられた経験は少ない様に思えたが、やっぱり猛毒のキノコは怖いな。なので、しょうがないまま、スーパーでキノコを買っています。でも、スーパーでは珍しいキノコが入荷することは殆どないのでつまらない。いろんな道の駅を訪れて買うしかないか。 -
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半世紀近く続く<エマノンシリーズ>の七巻目で、五つの短編からなる。主人公のエマノンは、地球に生命が誕生した三十数億年前から、記憶を母から娘へと引きついでいる。というか背負っている。
本書で一番気に入ったのは、巻頭の『またたきホイアン』だ。エマノンの唯一の友人のヒカリから、ある依頼をされる。ヒカリもまた、過酷ともいえる運命を背負っている。三十数億年の時間軸を、何の秩序も法則性もなくタイムリープさせられているのだ。なぜか二人は、時々の時代で会合することがある。二人は唯一無二、心を許せる相手として信頼しあっている。そして、その依頼は何としても果たさなければならない約束である。
そのヒカリからからの依頼とは、ベトナムである青年に命を救うこと。ここで疑問。もしその青年の命を救ったら、ヒカリの依頼そのものが無くなってしまうのではないか。いわゆるタイムパラドックスである。これをどうか解決するかが、時間SFの名手である梶尾真治氏の腕の見せどころである。
私は、<エマノンシリーズ>の第一作『おもいでエマノン』がSFアドベンチャー誌に掲載された時から読んでいる。その設定および、永遠と一瞬、出会いと別れの描写に引き込まれた。そして、鶴田謙二氏の描くエマノンの姿に惹かれてしまった。鶴田氏にイラストをお願いした編集さんに感謝。 -
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かなり前に書かれた(最初の話は1994年)お話のようで文体に少し古さは感じますが、とても面白かったです。
クロノス・ジョウンターという一種のタイムマシンに纏わる短編、中編をまとめたもの。本の紹介にも書かれてますが、行く過去は指定できるけど、いられる時間はわずか。しかも反動で今よりも先の未来に飛ばされるというかなり恐怖のマシン。そんなビックリ設定のマシンなので、後味悪そうな結末が待ってるのかドキドキしながら読みましたが、ほっこりするラストの話が多くホッとしました。
他の方も書かれてますが、最後の短編が余計な気がわたしも最初しました。なにしろ本のタイトルにもなっているクロノス・ジョウンターが出てこないんですよ。野方さんの話でいい感じに終わってたのに…と思いましたが、クロノス・ジョウンターがなくても…という話を著者先生が投げかけたかったのかもしれません。
そして、最初の吹原くんの話が何と映像化されてましたね。声優の下野さんがいい感じに吹原くんの朴訥さを好演されてましたが、クロノス・ジョウンターが!!!あれ、なんですか??製作費がもったいなかったのかもですが、クロノス・ジョウンターといえば機関車なんですよ。色は黒。そして威圧感溢れる大きさ。。それなのに床屋さんの座席みたいになってしまってて。。ハリボテでもいいから再現して欲しかったです。。
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タイムマシン<クロノス・ジョウンター>をめぐる連作短編集である。以前に、朝日ソノラマ版を読んでいる。本書は、その後に執筆された物語を追加した、現時点での最新版となる。
開発中の物質過去射出機<クロノス・ジョウンター>には、重大な欠陥があった、過去にとどまれる時間は10分程度。しかも出発した時間にもどれず、より未来に跳ばされるのである。
本書の巻頭に掲載されている『吸原和彦の軌跡』は、一番最初に発表され作品である。舞台化、そして映画化もされている作品で、私自身も<クロノス・ジョウンター>といえば、この作品が思い浮ぶ傑作である。恋人とは呼べないかもしれない女性。しかし一番大切な人を救うために、吸原和彦は過去に跳ぶ。失敗しても何度でも。そのたびに彼は未来に跳ばされる。最終的には4千年以上も未来に。
梶尾真治氏は、『美亜へ贈る真珠』や<エマノン>シリーズなどのタイムトラベルや時間SF の著作がある。これらも、ハズレなしの傑作である。 -
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3年前に出版された単行本は発売されて直ぐに読み始め、何と2回も読んだ(速読・熟読)。自分の記憶では短期間で2回読んだのはこれが初めて。今回、文庫本が出版されたのをきっかけに、3年ぶりに3回目の読書に着手した。例の自転車の確認もあるし。既に2回も読んで内容も理解しているので、あっという間に読んでしまった。細かい描写は忘れている所もあったが、概ね本筋はきちんと理解・記憶していた。
3回も読むと今回のタイムパラドックスについていろいろ考えることが多かった。SFなので科学考証や古風な恋愛について特にコメントすることはないが、大まかに2つ考えさせられる所があった。1つは、クロノスの設計の基本となるアメリカの科学者が提唱した時間軸圧縮理論。これはどの様にして導き出された理論なのかということ。もう1つは、学術誌として公開されている理論ならば、とっくの昔に世界各地で応用・実用化・開発戦争が行われているのではないかという疑心暗鬼。アメリカなら莫大なお金をかけて国家戦略としてアリゾナ砂漠の地下深くにて開発された「タイムトンネル」レベルの研究に既に着手しているのでは。ああ、こんな小さなことに次々に引っ掛かるくらいなら3回も読まなきゃよかったとも反省している。
最近では、タイムパラドックスや枝分かれ世界という言葉を耳にする機会が少なくなっている一方、最近テレビで見た科学番組では「シュレディンガーの猫」が話題になっていて、時代も変わったなとつくづく感じている。アインシュタイン方程式への宇宙項の追加やブラックホールにより空間と時間は不確定性を帯び、場合によってはこれらが意味をなさないものとなるという話を聞くと、SF自体がフィクションでなくなってしまい実に悲しい。
ひところは、サンシャイン劇場で行われた演劇集団キャラメルボックスの「クロノス」関連の新作が出る度に通っていた。小説も面白いが、演劇も実に興奮するものであった。最初に演劇を見た時には、この本の内容をどの様に演劇として作り上げていくのだろうとワクワクしながら観たのがつい先日の様だ。このキャラメルボックスの主宰の成井豊さんが最後に解説を寄せている。ここで初っ端にクロノスと映画「バック・トゥ・ザ・フューチャー」のデロリアン号を対比させている。まあ確かに言われてみればそうだが、私としては先程の「タイムトンネル」の方がイメージとして良く似ていると思う。SFなので比較するのはあまり意味が無いが、いくつか問題を抱えながらも全体としての性能は「タイムトンネル」の方が優れている。
話が逸れてしまったが、脱線ついでにもう一つ。つい先日、私が所属している吹奏楽団の演奏会で前述の「バック・トゥ・ザ・フューチャー」を演奏した。この文庫本の読書と、演奏会が同時期に重なるのに因縁めいたものを感じるが、見方によってはたまたま偶然に重なったとも言える。ああ、また考えすぎてしまった。
成井豊さんが解説の最後で、「梶尾先生の次の射出を楽しみに待っている。」と述べているが、私も毎年先生の誕生日にFacebookでしつこく次回作出版を迫っている。でも先生は酒造メーカーHPへのショート・ショート寄稿に留まり、あとはキノコ狩りに精を出している模様。先生!お願いしますよ! -
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熊本市の郊外、花岡山の中腹に、その『百椿庵』はある。終戦後、廃屋同然だったこの家を曾祖父が購入し、父からの提案もあり、現在は専業作家をしている〈私〉が住んでいる。百椿庵には幽霊の噂があるらしい。男には見えない、という女の霊。新作を書きあぐねていた〈私〉は、謎の人影を見る。あれが百椿庵の幽霊だろうか――。
とそんな鮮やかな導入で幕を開ける、タイムトラベル&ラブロマンスな一冊が本書『つばき、時跳び』。140年の年月をこえる愛の物語です。土地の雰囲気が立ち上がってくる丁寧な描写が相まって、とても静謐で、情感豊かな恋愛小説になっています。惚れ惚れするような糸を引くストレートを見る感覚がありました。後半は時代小説の要素が絡んでくるのも楽しく、最終盤に明かされる謎めいていた人物の正体とそのやり取りは、感動的です。 -
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惑星ヤポリスによって起こった爆弾テロ。在人類惑星条約機構の要人暗殺のための行為は、一般市民も巻き添えに6万人近い死者を出した。その事件を生き延びたものの、愛する夫と娘を失った神鷹静香は重篤な心神障害を負ってしまう。父親のたっての頼みで、医師は特殊な心理療法を使って、静香の意識を回復させることにさせる。それがテロの首謀者である〈汎銀河聖解放戦線〉への憎しみを静香に植え付けることだった。
ということで、作者の代表作のひとつとされる大作『サラマンダー殲滅』です。エンタメ性抜群。文庫本で上下巻1000頁近い分量ですが、引っ張られるように気付いたら読み終えていた、という嬉しい読書体験ができました。
愛の代わりに、テロリストへの復讐を。作為的に施された生きる目的が、ひとりの凡庸(比較的)な主婦を戦士に変えていく。みんな大好き復讐と冒険の物語です。何がいいって主人公である静香以外のキャラもすこぶる魅力的で、様々な感情を抱えたり、葛藤したりしながら、己の闘いに身を投じていく姿が、とても感動的でした。 -
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〈そこを、春待岬と呼ぶことを知ったのは、杏奈を見かけた年のことだ。
春待岬という名前が、なんと皮肉な付けられかたをしているのだろうと思い知るのは、それからまた、数年を待たねばならないのだが。〉
昔からの銃砲店を営む祖父母の暮らす海辺の町で、春休みの間を過ごすことになった小学生の白瀬健志は、桜の木がいっぱいに並ぶ春待岬の存在を知る。岬の突端部分には洋館が建っていた。不吉な物語を背負い込んだような洋館に、健志はひとり向かい、閉ざされた門の前で偶然出会ったカズヨシ兄ちゃんに連れられて、覗くように眺めていた洋館の庭を眺めていると、彼女が現れた。それが運命の一瞬だった。その時、数輪の桜の花が咲いていた。
美しかったお姉さんはやがて……。桜の咲く時期だけしか現れない不変の少女、年老いた姿をした杏奈の兄、洋館に住むふたりの秘密と関わり合うようになった少年。ひとつずつを年齢を重ねていく中でも、少年の心の中にはつねに杏奈のことがあった。あの日の初恋が、どこまでも深い献身を生む。切ない余韻が、読後いつまでも残ります。 -
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極紘物産株式会社の営業企画部開発課に所属する宮口翔一は、人件費の削減のため、上司から早期退職の打診を受けていた。結婚を考えていた相手から別れを切り出されたタイミングも合わさり、退社の決意も固まっていた彼は突然、話したこともない常務から呼び出される。常務から翔一が受けた特命は、熊本にある離島『壱里島』に行き、そこで売られている『おもしろたわし』の謎を調べること。翔一はそこで島のひとたちと関わりながら、不思議な体験をしていく。
島とこれからも生きていこうとする人々の想い、果たされなかった約束の映画、ありえたかもしれない未来、大切なひととの再会……読み終わった時に、爽やかな余韻の残る作品でした。意外な事実が明かされるとともに、島とそれまでよりも深く密接に関わりを持つようになった翔一が、環境問題も絡む島民同士の想いのぶつかり合いの中で、翔一にとっても、この場所がさらに特別な場所になっていく過程がとても好きでした。 -
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「孤独が好き」と言うひとはたまにいます。人生の中で何度か、私も言ったことがあるように思います。ただそれは、『本当の孤独』を経験していないからこそ口にすることができる言葉なのかもしれないなぁ、と感じる時もあったりします。『本当の孤独』とは、たとえば本書の主人公である浅見克則のように。
熊本にある日用品雑貨の卸問屋で平凡なサラリーマン生活を送っていた浅見克則は、職場で出会った女性に誘われた際、彼女と彼女の前の彼氏の間のトラブルに遭遇し、仲裁に入ったことがきっかけで、傷害事件を起こしてしまう。相手の男性を植物状態にしてしまった自らの行いを悔い、控訴もせず、懲役一年の実刑判決を受け、真摯に罪と向かい合おうとする克則に弁護士は、近年、試験的にはじまった『消失刑』を提案する。刑期が短縮される、という『消失刑』。行動の自由が与えられる代わりに、他者から自身の存在をまったく認知できなくなるリングを首に嵌め、誰との会話も許されない。そして克則が味わうのは絶望的なまでの孤独だった。
誰とも『出会えない』『話せない』、そんなコミュニケーションをまったく取れない絶望の中で、克則は他者とコミュニケーションを取らないといけなくなってくる場面に遭遇します。これは結末に触れることなので詳しくは言えないのですが、重大な事件に巻き込まれる中で、顔も知らない大切なひとを守りたい、と無垢なほど一途な想いに突き動かされて。読み終わった後、愛おしさが胸に広がる、とても素敵な作品でした。