梶尾真治のレビュー一覧
-
購入済み
心温まるタイムトラベルもの
初めての梶尾もの。タイムトラベルを味つけにした心温まるラブストーリーが描かれます。サイエンス・ファンタジーという感じでありまして、“そういう設定なのだ!”と、そんな勢いで時を越える仕組みが出て来るので、それに乗れるか乗れないかはあるかもしれません。細かいことはさておき、舞台劇を楽しむ感じかな。「時をかける少女」は超えられないけど、次々と短編中の設定が絡み合うのは読んでいて楽しい。ただ、出だしの物語が結局畳まれずに終わっているのが減点かなーーー
-
Posted by ブクログ
黄泉がえり、失われた最愛の人が変わらぬ姿で目の前に現れたら。前作同様、再びの別れの予感に怯え、恐れながらも、精一杯その日その時を一緒に懸命に生きていきたい、と「改めて」思うのだろう。
しかし、その日その時を一緒に懸命に生きていかなければならないのは、一瞬で、突然に、終わるかもしれない現実世界も同じこと。改めて日常の大切さを思い返すことになる。
本作は(も)、地震の傷跡も残る熊本が舞台であり、熊本の復旧・復興、よみがえり、が背景として流れるなかに、複数の登場人物・パートナー、家族の愛情、友情、成長、冒険、黄泉がえりのエピソードが絡み合い、一つの大きな流れとなっていくのだけど、カバーにも登場しているひげを生やしてバンダナをまいた長身のおじさんがいい味、愛し、愛され、あこがれるリーダー像を出して、出しすぎて熊本の人は幸せだな~と思うのだ。
そう今回の黄泉がえり現象は時空のスケールが前作を大きく超え、結末もちょっと優しすぎるくらい希望にあふれ、熊本県民のみならず、苦難を乗り越え、元気を出す、元気を湧きあがらせ、何でもない日常を大切に生きるには、心によい物語だと思うのです。 -
Posted by ブクログ
「つばき、時跳び」の元のタイトルが「つばきは百椿庵に」だったというので、似た雰囲気の物語を想像して読み始めたのだが、生涯をかけた初恋をした、初恋に一生を捧げた男の、あまりに一途な姿には、春と桜と海(岬)という風景とは真逆の影の空気を感じさせられる。
さて、杏奈のことばかりが語られ、家族やまわりの人物との関係はまるで背景かのように味気なくしか触れられれず、特に梓との関係、梓の思いが男に(読者にも)明確に伝わってこないのは、時の間に閉じ込められた少女を待ち続け、流れ続ける時の中で時を止めてしまった男
にとっては、周りの人間との時間の流れに差ができて、
梓に限らず、自分を取り囲む人や世界は、まるで早送りのように流れ去って行ってしまっていた、のではないのか。
そういった想像も踏まえると、ある重大で皮肉な秘密が隠されていて、男が時を止めてしまっているようで、時の速度差、老い、限りある人生という現実も容赦なくのしかかっていた男にとって、ラストはある意味での約束の成就、つまりは自分の人生からの一つの解放、であったのではないか。
時の流れるスピードが異なる男女の姿は「美亜に贈る真珠」も思い起こさせる。あと「ジェニーの肖像」も。
クロノスをジョウントできる(ようになる)人物が登場するのはちょっとしたご愛敬か。