京極夏彦のレビュー一覧
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ネタバレ松永裕美は、隆昭と同居している。籍入れてない。
隆昭は仕事を辞めてしまい、引きこもっている。鬱なのかもしれない。裕美が仕事にいくのも、家を出るのも嫌な顔をするから、リモートの仕事に変わった。
そんな時曽祖母が亡くなったと知らせが来た。
相続するのは遠い親戚の芽衣と自分だけらしい。
曽祖母の外田のうは、岡山の山奥の山奥に1人で住んでいた。
芽衣と自分のどちらが相続するのか,放棄するのか諸々のために岡山にむかう。
隆昭はそれもぐちぐち言う。行かなくてもいいだろ?放棄すればいいだろ?
そして,出かける時に天井を向いて言った「猿がいる」
もちろん,都会の天井に猿なんかいない。
また引き止めるための戯言だと考えつつ、不気味な気持ちで家を出た。
岡山で,芽衣に会い、弁護士の山川やパラリーガルの尾崎真智と合流。
曽祖母のいる祢山村は最寄駅から車で数時間。道もちゃんとしてない。近くにコンビニも自販機も何もない。家も泊まれるかどうかわからないので、
天候不良で途中で立ち往生しないように古びたホテルに泊まる。「決して,窓は開けないように」
湿度の高い、エアコンの温度調整もできないホテル。
ロビーに出ると、芽衣と尾崎も来ていた。そこでも曽祖母や、祢山の話をする。
実は、祢山は村ではない。
代々、外田の人間が住んでいて、田畑やらいろんなことが自分たちだけで出来ないからと,人を雇って、
その雇われた人たちがそこに住み着いているだけ。雇われて住んでいる人たちは、高齢の人たちがきて、自分たちの死期を感じると出ていくのだそう。
ほぼ自給自足だが、多少の賃金は払っているらしい(その財産はあるらしい)
ホテルにいる間も雨風が強くなる。
外では,何か音がする。野猿がいるらしい(だから窓は開けてはいけないらしい)
野猿?猿・・隆昭が「猿がいる」と言ってからずっと気になっている。見えない猿に怯えている。
朝になり天候は良くないし、台風が近づいているが祢山に向かう。対向車は絶対無理なので、ここにいく時は祢山唯一の軽トラの持ち主に声をかけるらしいが、いくら電話してもでない。
なんとか到着。すると、久能という夫婦が出迎えてくれて、集会所のような場所に通してくれた。
実は今朝,夫婦で首吊り自殺があった。しかも、複数人が逃げ出していなくなっていた。
(徒歩で山を降りるしかない。過去の人たちはそれで熱中症で倒れたり自殺したりしてるらしい。
住人たちは裕美か芽衣がのうの代わりに住んでくれる思っていたが、今日は見学だけだと言うと落胆する。
そして、「怖い怖い」と。
外田の家にのうがいたときはみんな怖くなかった。でも、誰もすまなくなると夜になったら怖くてしょうがない。怖くて怖くて、幸田夫婦は自殺して、他の夫婦も逃げ出したのだろう。
天候がますますヤバく集会所で泊まるとこに。
芽衣がどんどん怖がるようになった。
いままで、猿に怯えていた裕美は、怖くない。
台風が遠のいたのか、雨が小降りになった。
懐中電灯で外田の家に裕美1人で向かう(のうがいなければこの家に入るのも怖くてできなかったらしい)
家の中に入っても,裕美は怖くない。どんどん襖を開けてすすむ。
最後の部屋に暗くてモヤモヤしたものがある。でも怖くない。隆昭とのささくれた生活より安らぐ。
そのモヤモヤに手を差し出した途端、
裕美のマンションの前にいた。
数日経ってる。くつは祢山の土がついてるから夢ではない。記憶が飛んだ?
そして、数日ぶりにマンションに入った。
隆昭が食べ散らかした汚した部屋。
その奥、隆昭が籠る部屋をあけたら、
猿がいた
と言う話。
終わって「え?どーゆうこと?」って思った
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これは虫ですね――(p.43)
【説明】本草学者の久瀬棠庵は数々の事件を「虫」のせいにして収めてしまう。
【感想】>例によって会話劇。いつもよりうだうだ度は低くあっさりして読みやすい。>隠居の超ベテラン藤左衛門と生まれながらの隠居の子藤介が楽しい。>棠庵と藤介のなかなかかみ合わない会話が楽しい。
【内容】>乾坤で事件と解決編。>「病葉」とは?>善兵衛を殺したと孫娘のお初が言う。>巳之助の女房おきんが叫んでる。>〈うお膳〉の料理を食べた四人の客が死んだ。>金兵衛長屋は庚申講でみんなひーこら。>評判芳しかぬ医師のアドバイス。>食わないのに太っていく男。>棠庵に縁談?>志乃が拐われた。
■簡単な単語集
【校倉左門】店子。傘張り浪人。アラフォー。
【馬癇:うまかん】虫。棠庵いわく、心臓に涌きゆるゆる育ってあるとき突然宿主を殺す馬に似た虫。今で言うならとりたてて原因というほどのものがない心臓麻痺ってことかな。
【勝】店子。大工の徳松の女房。若いがしっかりしており荒くれ者の徳松を尻に敷いている。大力でもある。
【気積:きしゃく】虫。棠庵いわく、精力ばかり増し、食欲をなくす虫。
【鬼胎:きたい】虫。女の子宮にいつく虫?
【吉】煮売屋の女房。長屋の情報通?
【蟯虫】虫。庚申の虫はこれらしい。
【金兵衛】傘屋の隠居。やはり長屋の大家をしてる。藤左衛門の碁敵。
【久瀬棠庵:くぜとうあん】→棠庵
【源太】店子。渡りの町鳶。がさつで博打好き。
【幸助】店子。屋根職人。色狂い。
【志乃】平次の妹。器量は良いがいつもボーッとしておりかなりドジ。
【十内】店子。当たらない易者? 50歳以上と思われる。
【澄】店子。お針子。四十絡みの後家さん。
【仙吉】たぶん善兵衛の後に入った新人店子。体調が悪いらしく一日中寝ているようだ。しかもどんどん太っているようだ。
【善兵衛】店子。孫のお初とともに住んでいる裕福そうな老人。
【脹満:ちょうまん】虫。身体じゅう脹れて腹が膨れものを食べられず、茶と水と冷えたものと酸っぱいものを好む。
【棠庵】久瀬棠庵。本草学者。藤左衛門長屋の店子。めちゃくちゃ痩せている。ごたごたとモノが多い中で暮らしている。藤介より少し若く二十歳を少し出たくらいと思われる。金には困ってないらしく一年分の家賃を前払いしている。藤介いわく《あたしゃあんたぐらい虫のことを熟熟(つらつら)と語る人に会ったことがないよ》p.188。ちびまるちゃんのセリフみたい。《この人はね、聞いてくれと言ったら聞くだけなんですよ。聞き終わったら帰りますよ。こう、澄ました顔で、お約束通り聞きましたハイ左様ならと言うんですよ、この人は》《しかも小父さん。あんた、半刻でいいなんて言ったでしょ。(中略)きっちり半刻経ったら、話の途中だろうが何だろうが、ハイこれで刻限で御座いますねとか言って帰りますよ。》p.189。『巷説百物語シリーズ』に出たことがあるらしいが、個人的に読んだ範囲内ではまだ登場していない。
【藤左衛門】薬種問屋の主をしていたが五十を前に弟に店を譲り隠居した。八軒長屋(因幡町藤左衛門長屋)二軒の店賃が生活費。もとより金はまあまああるのでなにもせずただぶらぶら。隠居のベテラン。《世の隠居がやることは一通りしなくちゃ申し訳が立たんと思う》p.244。あるときからやいと(お灸)にこりはじめほかの人にやってみたくて仕方がない。
【藤介】藤左衛門が隠居した後にもうけた、生まれながらにして隠居の子。母は藤左衛門の面倒をみるために雇っていた女中だったが後添となり、すでに故人。現在は藤左衛門と二人暮らし。母の死後は長屋の面倒を見ているがなかなか難しい。
【登勢】犬目宿の本陣の娘。棠庵との縁談が持ち上がる。後に店子になる。
【頓死肝虫:とんしのかんむし】虫。肝臓に食いつかれると人は突然死する。
【根岸鎮衛】佐渡奉行。どうやら藤左衛門の古い知人らしく、彼が棠庵を店子として紹介してくれたらしい。藤介のカテゴリ分けでは棠庵と藤左衛門と根岸鎮衛は同タイプらしい。
【肺積:はいしゃく】虫。臭いにおいや辛いものを好むようになる。
【針聞書:はりぎきがき】茨木二介著。著者は鍼灸師のようで、さまざまな病状をファンキーな虫に例え描写した。漆原友紀さんの『蟲師』を想起するけど想を得たのかどうかは不明。
【脾臓虫:ひぞうのむし】虫。棠庵いわく、脾臓に入り手足のしびれなどを発生させた後に宿主を殺す。
【平次】目明し駿河台の伍平の下っ引き。ふだんはヒマで収入もない。
【巳之助】店子。まじめな左官。女房はおきん。
【モノ】棠庵《人は、それぞれ要るものを持っているんです。要らないものは持っていない。》p.339 -
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本屋で京極夏彦の本の分厚さにのけぞることは多々あるけれども、本の薄さにのけぞったのは初めてだ。
たった250ページとはこれいかに?
この作品は、歌舞伎の原作として書かれたものなのだそうだ。
確かに京極夏彦の作品と歌舞伎は親和性が高いかもしれない。
そして確かにこの作品は、影や暗闇の効果が目に見えるようで、舞台映えがしそうである。
京極堂の曽祖父は、以前『了巷説百物語』にも出てきたが、衣装といい決め台詞といい、まったく京極堂そのもので嬉しくなってしまう。
ただ、単に”憑き物落とし”として雇われただけではなく、本筋にしっかりと絡んでいて、彼が出てくるのは物語の必然なのだ。
本来の京極堂シリーズの最新作『鵼の碑』では、新たな登場人物が出てきて世界が広がりそうだったけれど、もしかして中禪寺洲齋もぽつりぽつりとシリーズ化されるのだろうか。
それはそれで、楽しみが増えて嬉しい。 -
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ネタバレ大阪の浮世絵師、竹原春泉が描いたという妖怪絵に
福島出身の戯作者、桃山人こと桃華園三千麿が解説を書いたというかたちの江戸時代の『絵本百物語』という怪談奇譚集の現代語訳である。
(後書きの荒俣先生のコメントを読むにホンモノであるらしい)
もうここからパラレルワールドにいる気持ちなのである。
妖怪絵と竹原春泉の画讃はお馴染みのアレであるが、解説がすごい。邪念があるから禍を受けるのであるし、平知盛なんかが妖物に成り果ててそんなところに顕れるなどあり得ないと思うって言っちゃってるし、鷺は光るものだから不思議じゃないし、平家一門の怨霊の蟹って、平家の武士は愚か者ばかりだったのだろうかとか、とか。
批判的な解説の一方で、この虫に殺されたものは多くいる、など怪を肯定しているものも多数あるのである。 -
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ネタバレ2026年3冊目。
すごく読みやすくてさくっと読み終わっちゃったなあ。長屋の住人たちが主人公だから小難しい理屈や理論もほとんどなく、とてもわかりやすかった。これは人様にオススメできる珍しいタイプの京極夏彦。
棠庵は「前巷説百物語」でおじいちゃんのイメージだったから、20そこそこで出てきて「??」だったけど、今作はだいぶ前の時代なのね。確かに田沼とかの名前出てたけど、あんまり意識しないで読んじゃったなぁ。また「前巷説百物語」も読み返さないと。つかつまり、今作のあと棠庵は30年くらい空白期間っつーことよね。なるほどそれなら同じ設定でもう2冊はいけるな…待ってるね京極センセ♡
藤介はすごく親しみやすくて、京極作品の語り手役としては一二を争うくらいの好きキャラだった!途中から大泉洋のビジュアルで脳内再生してたよ。くっ、あと30年早ければ実写化もありえたかもなのに……。
藤介と棠庵が互いを補う病葉同士だってのにもにこにこしちゃったなあ。たぶん藤左衛門と同じくらいにこにこしちゃった。あのご隠居さんも愛おしい爺様だったわ。
あと出てくる虫たちのビジュアルがみんな愉快でどこか愛嬌もあって良かった。あのゆるキャラたちが永禄11年(戦国時代)に生み出されていたのあまりに浪漫でウキウキが止まらない。脾臓虫が最推しです。ぬいぐるみほしい。 -
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「百鬼夜行シリーズ」の番外篇。おもしろい作品ではあるのだが、シリーズの読者に向けて書かれたファン・サーヴィス的な作品という趣が強く、なかなか純粋に小説として評価することが難しい。作品としては「鬼」「河童」「天狗」の3作品が収録されているが、いずれも推理小説としてはそこまで完成度は高くないと感じた。また、一介の女学生に過ぎない呉美由紀がいずれの事件においても深くコミットしており違和感を覚える。たしかに違和感が薄まるようには配慮してあるのだが、どう取り繕ってもそもそも女学生であるという設定は変えられないので、わたしの場合はそこがずっと引っかかってしまった。
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時は明治35年(1902)。必要な人にのみ忽然と姿を現す書楼弔堂(しょろうとむらいどう)。
今回は謂(いわ)く有り気な甘酒屋の老爺・弥蔵を狂言廻しに、徳富蘇峰、岡本綺堂、宮武外骨、竹下夢二などの、人生のターニングポイントに相応しい一冊の本を弔堂が選書する。
前2巻まではお客さんの正体を推理するのが楽しかったのであるが、今回は早々にわかってしまう。その代わりと言っては何だが、弥蔵爺さんの正体がトンとわからない。何人も人を斬ってきた幕臣崩れとまではわかるのではあるが、幕臣側の人斬りは新撰組関係しか思いもつかず、どうもそのようではないので、読みながらずっと頭を抱えていた。寺田寅彦じゃないけど、その推理の過程が愉しくて読んでいたようなもんだ。最終章の手前で、見当は付いた(能くやった、私)。95%当たった。
扠(さて)、
弔堂シリーズの愉しみは、京極堂独特の漢字使いだ。第二章のみから拾ってみても、以下がある。
草臥れて(くたびれて)
着熟し(きこなし)
寸暇(ちょいと)
莫迦野郎(ばかやろう)
敏捷い(すばしこい)
地動波動(じたばた)
尾行ている(つけている)
況て(まして)
表六玉(ひょうろくだま)
奥の冥蒙(おくのくらがり)
人の倫(ひとのみち)
あたしの所為(あたしのせい)
郭(くるわ)
例がねえ(ためしがねえ)
挙動(ふるまい)
怪訝しい(おかしい)
鬼魅がわるい(きみがわるい)
粋でも鯔背でも(いきでもいなせでも)
大廈(たてもの)
莞爾と(にこりと)
←iPhoneで其の儘出て来る読みもあれば、真逆の使い方もある。何れにせよ、京極堂本人の頁レイアウトなので至極読み易い。 -
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ネタバレ再読。
とはいえ、20年ぶりに読み返したので新鮮な気持ちで読むことができた。
〈巷説百物語〉シリーズ第1巻。騙りや手品、変装などを駆使して事件を解決する小悪党たちを主人公とした、1話完結型の作品集。
深い因縁からの執着や迷妄を祓い、現に向かい合わせるとでもいうような「憑物落とし」を行う〈百鬼夜行〉シリーズと対を為して、この〈巷説百物語〉シリーズでは逆に怪異を利用し、作り出し、またはわざと読み違えて事をおさめてしまう。(又市の
「目ェ醒まして本物の真実見ちまえば、辛くッて生きちゃ行けねェ。人は弱いぜ。だからよ、噓を噓と承知で生きる、それしか道はねえんだよ。煙に巻いて霞に眩まして、幻見せてよ、それで物事ァ丸く収まるンだ。そうじゃあねェか──」
という台詞がよくそれを表している)
狐狸妖怪の仕業であったと思いたい、その方がまだ救いがある、というような、人間のどうしようもない愚行、醜態を相手にする話、ということでもある。だから語られる話はどれもどこか寂しく、人間の仕方なさが底に流れているように感じる。(特に前半3話くらいは陰惨な話で、読んでいて堪えた)
けれど、流石に話の運びが面白くて、騙しの術も大仕掛けになっていき、中盤以降の「芝右衛門狸」や「塩の長司」などは読んでいて楽しく読後感も良かった。
途中から未読になっていたシリーズだけれど、先日完結したとのことなので、続けて最後まで読み進めたい。 -
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三冊合本版。だったらこの厚さでも普通かと騙されそうになるのだが、一冊ずつでもそれなりの長さなので、結局はかなり読み応えがあるのだった。「鬼」:意外性はまずまず。妖怪談義がやや薄めだと感じられるのは、『魍魎の匣』でもいくらか鬼談義があったからか。『ヒトごろし』とも関わりがあるようなので、そちらも読みたくなる。「河童」:のっけから河童談義で嬉しい。『塗仏の宴』のひょうすべ談義ともつながる。話としてはまずまず。「天狗」:これが一番好きかもしれない。美弥子の再登場は嬉しい。天狗談義は薄めで、専門家の講義が欲しかったところ。美弥子の言葉が小気味良く、読む手を進めさせてくれる。話としてもまずまず。そして自作「雪女」が連載中とのことなので、これは読まねばならない。あと京極堂が東北に行っている描写があったのは、本編次作の伏線か、気になるところ。