あらすじ
文明開化の音がする明治十年。一等巡査の矢作らは、ある伝説の真偽を確かめるべく隠居老人・一白翁を訪ねた。翁は静かに、今は亡き者どもの話を語り始める。第130回直木賞受賞作。妖怪時代小説の金字塔!
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読む順番を間違えて「参」を先に手にとってしまいました・・・。「弐」までは一度読んでいるのでこちらは初見。「壱」の体裁でものがたりは進んでいるのかと思いきや参では物語の有り様が変わっており、百介を中心に話がすすむ。
ところどころ百介の気持ちが語られるが壱で受けた百介の印象とは大きく異なり、葛藤が垣間見られる。最終話は不器用ながらも又市を模し自身を囮に一幕打ち予想外、想像以上の成果を挙げる。
最後の1ページで百介の素の気持ちが知れたようで切ないような温かいような不思議な気持ちになる。
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今回は語り手の百介が年寄りになって、過去を語りながら回想する形で進行していきます。
この中で百鬼夜行シリーズと繋がっており、向こうのシリーズでは怪異として伝わっているのが実に素敵でした。最後の終わり方なんかも、前回に続いて物悲しくて好きです。
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少し趣向が変わって、時代は現代に近づく。なんとここで百鬼夜行シリーズとつながってしまうとは。加えて素晴らしいのが小野不由美による解説で、百鬼夜行シリーズのファンも是非とも読むべき。
了巷説百物語読了後に是非
リアタイで読んで以来の再読です。
昨年刊行された鵼の碑そして、
百物語シリーズ完結編である了巷説百物語がとても良かったため、シリーズを読み返していたのですが、今回は初読以上になぜだかぐっときてしまいました。
この話の最終話にて(時系列としてはですが)化け物遣い達の物語に幕が降ります。ただ、彼らの残した何某かが与次郎や小夜さんにも引き継がれて、次のシリーズにも続いていくのだなぁと思い、このタイミングで改めて読んで良かったと思います。
個人的には巻頭の一編である「赤えいの魚」もおすすめです。シリーズ中でも異質な舞台設定ながらもなんとも言えない魅力ある世界観が愉しめます。そしてこの話を踏まえ(個人的には近作を読むまであまり思い入れもなかった)シリーズのとあるキャラクターの今までの言動を思い返すとなるほどなぁ、となってしまう。
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『赤えいの魚』
なんともまあ、表現し難い気持ちになる話で、
逆にそれがめちゃくちゃ印象に残った。
そしてラストの『風の神』
終わり方凄すぎる……
ああ……もう、
様々な意味で【終わり】なんだなあと。
読み終わって暫くは放心してしまった……
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明治十年。文明開花の音がするも時代は変われど人は変われず。
北林藩の元藩士で貿易会社に勤める与次郎は、腐れ縁の仲間たちと一白翁と名乗る老人のもとを訪れるが。
明治と江戸、二つの時代をまたぐ事件の結末とは……。シリーズ3作目、第130回直木賞受賞作→
連作短編集。全二作と緩やかに繋がり、そして一つの時代が終わる。
もうね、なんも言えん。読み終わって一週間経つけど、いまだに最後のページを開くとなんも言えなくなる。
ただ、良かったなぁ、と。おそらくこれは、終わりの物語。一白翁の、そして「小豆洗い」から読んできた私たちの。→
前作「続巷説百物語」のラストがあまりに突然だったから。
又市や百介と一緒に旅をした私たち読者の気持ちの整理をつけさせてくれた、これは京極御大の優しさなんよ(と、勝手に思っている)
いやもう、最高。「小豆洗い」を読んだ全ての人に「風の神」読んでほしい。最高だから。
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最終話が良すぎて鳥肌たった。
百物語にはじまって百物語に終わる。
百介が最後まで百介で、そこがとてもよかった。
繋がりは、なくなってはなかった。
きっと彼らは、いつも見守ってくれていた。
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再読。巷説百物語シリーズ第三弾。だいぶ昔に読んだ割には殆ど内容は覚えていた。それでも最後の「風の神」を読んだ後の読後感は何とも言い難い、物悲しいような妙にさっぱりした気持ちになるようなそんな感情が残る。百介さんはきっとこの終わりまで夢の中で生きられたんだろう。
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あれから◯年後・・・
時代を感じられるのが面白いです。文明開化の後の、武士の時代から明治へ、妖怪が当たり前にいそうな江戸時代の終焉。
懐かしい人、懐かしい名前。
若者たちがわいのわいのと騒ぐのを丸く収めるあの人の懐かしい感じがいい。
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『続』の方が話としては面白いのですが、こちらにはまさかの仕掛けが施されています。
京極夏彦の作品全ての、契機になっている作品で、これを読まないと髄まで愉しむ事が出来ないのです。
本編自体も、必殺仕事人的面白さは健在で単体で読んでも十二分に楽しめますが。
このシリーズ程、続編が読みたいものはない。
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大好きになったシリーズ。切なすぎる最後だったけど、きっと山岡百介さんは幸せな生涯だったと思う。小夜ちゃんの口調がおぎんさんに似ていたからきっと、、って思って読み進めたらやっぱり。「道を通せば角が立つ。倫を外せば深みに嵌る」又市さんの存在が百介さんにどれだけ大きな存在となってるのか苦しくなるくらいの想いがつまっていた百物語の最後でした。
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江戸で妖怪が受け入れられていた時代から、近代化を押し進め妖怪は古いと言われるようになった明治での巷説百物語。 八十を超えた百介が又市たちと関わった不思議な出来事を懐かしく思いながら語っていく話。 百介からの視点なので、百介が又市一行をどのように捉え、感じていたかが分かる。越えられない一線の向こう側で生きる又市たちに憧れを持っているのが切に分かった。 最後の「風の神」は長い仕掛けの幕閉じであり、涙がほろりと零れそうになる。
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又市の物語の締めの一冊……かな。
「西の……」は未読だが、どうやらあちらはスピンオフ的な内容らしいので。
出てくる話、出てくる話、皆どこかで聞き覚えのあるような説話……シリーズの小編ひとつひとつに繋がっているのだから、当然か。
一冊目から再読したくなってくる(笑)。
又市の仕掛けを話のメインに据えておきながら、その実、又市は一度も登場しないという作りが、何ともにくいね。
続編は書かれていないとのことなので、既存の御行話は読み尽くしてしまったということ……が、寂しい限り。
★5つ、10ポケット。
2016.03.24.図。
※「五位の光」は……、遥かに時を越えての、『狂骨の夢』の前日譚か?
京極ファンにはニンマリものだね。
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「巷説百物語」から時を隔て、そのころ若者であった山岡百介も80歳。遠縁の娘である小夜と静かに一白翁と名のって隠居暮らしをしている。
その一白翁の庵に、彼の持つ巷説の博識を頼りにふしぎ話を読み解くべくやってくる4人がいる。
見習い同心から一等巡査になった剣之進、藩士から貿易会社奉職になった与次郎、剣術の達人だが経営する道場が閑古鳥の惣兵衛、徳川の重鎮を父にもつ洋行帰りにして無職の正馬といった面々。
明治維新後のいづれも新しい人々である。
そのような4人が持ち込むものは世に伝わる怪談の真偽だ。
一白翁が自身の若き頃、諸国を渡り歩いて集めた奇談を開示しながら怪談のもつ意味を諭し、時に巡査剣之進のかかえた事件まで解決に導く。見事である。
今は過去となった江戸で一白翁が、百介として一番生を輝かせていたころのお話を懐かしみながら、現在に過去に、妖かしの世界に現実にと、読者を自在にひっぱっていく。
そして最終話”風の神”にいたっては”小股潜りの又市”、”山猫回しおぎん”といった、過去に百介を輝かせたカリスマ?たちの登場もあって、百介の青春回顧録といったふう。百介という現し世に住まうまっとうな人間と裏稼業で悪人を懲らしめる表には出てこない人間という対比が光と闇として溶け合う。
また、現在と過去との地続きである小夜の存在。
涙がとまらなかった。
タイトル通りに”百物語”がなされる最終章はほんとうに引きこまれた。
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2007/4/28ジュンク堂住吉シーア店にて購入。
2014/12/20〜2015/1/7
第130回直木賞受賞作品。巷説シリーズの第3弾。時代は明治に入り、隠居した山岡百介を中心に話が進む。時を越えて語られる小股潜りの又市の仕掛けが見事。
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何の情報も持たずに読み始める。短編集かと思うがそれぞれの章は繋がっていて最後にまとまる。前半はつらかったが後半は一気に読んだ。若者が議論をして老人に答えを聞きに行くという形式は「黒後家蜘蛛の会」を彷彿させる。
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幕府が倒れて近代合理主義が人口に膾炙した明治10年、年老いた山岡百介の元に脂ののった矢作剣之進たち御一行が「不思議」な話を持ち込んでくる
明治の世に妖怪たちはどういう振る舞いをするのか
悲しく辛いこの世でどう人は生きていくのか
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お話の筋や仕掛けやあれやこれやは好きなんだけど、与次郎達4人の会話に苛々してしまって、読み進めるのに苦労してしまった。
でも好きですよ。
由良家の発端を知れるところが良い。
あと、和田智弁ね。
又市はスーパースターであり元凶でもある‥。
百介さんは、又市さん(達)のことが本当に、好きで好きでたまらなかったのね‥。
なんだか切なくなってしまった。
それ以外のことは重さも厚みもない、そういう体験をしてしまったら、仕方ないのかな。
小夜さんを託されて良かったね、百介さん。
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一白翁こと山岡百介の語る、若き日に出会った種も仕掛けもある不思議な話。赤えいの魚が、一番ファンタジーっぼく、美しく、恐ろしい。
小夜を託されたと知ったとき、百介がどれだけ嬉しかったかと思うとなんだか切ない。百介は又市らに憧れ、尊敬していたが、又市らも、身分にこだわらず、まっすぐな百介を眩しく思っていたのだろう。ちょっと切ないラストも、温かくてよかった。百介さん、お疲れ様でした。
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明治の初め、怪しい相談を持ち込む若衆4人組に対して、枯れた隠居が自らの体験談を語る物語です。
前作までとは案内役が異なるため、当初4人の内誰の台詞か分かりにくかったり、本題に入るまでの下りや蘊蓄が長いなど、多少テンポが悪い気がしました。
他方本作は単なる殺人狂や色狂いのような極端な悪役が少なく、しかし最終話のみはその前作までを思わせる悪役により物語を締めるという憎い演出でした。
また神仏や占いが未だ生き続ける現代を見据え、どうにもならない問題や生き辛さに折り合いをつけて生きることの意義にまで踏み込んだ本作は更に深みを増したと言えます。
読者と一緒に旅をし、最後の最後まで読者と一緒に騙されてきた百介との別れは寂しいものですが、次の世代への希望が描かれたのは救いとなりました。
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"彼方を立てれば此方が立たず、此方を立てれば彼方が立たず、並び立たぬが憂き世の定め、それを立たすが小股潜り。"
あの日別れた御行の、遺志を受け継ぐ戯作者の、命を懸けた、百物語。
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私が巷説百物語を読んだのはH18年なので8年前
嗤う伊右衛門が面白すぎて、すぐまた読んだのが巷説百物語で、面白さに驚いた記憶がある
しかし本作に関してはいまひとつかな
種明かしがきれいすぎて味気ないような
私の側の感じ方の問題なのか作品の問題なのか、今となってはわからないけど
相変わらず語り口は絶妙で難しい漢字も出てくるけど読みづらさは全く無い
落語の枕のような前振りから知らず知らずに本編に引き込まれて、ハラハラドキドキしながら読み通す
物語としての面白さには何の不満も無い
でも最近直木賞受賞作を読んできて感じるけど、優れた作品は、人間が生きていくうえでの苦しさ・辛さみたいなものに正面から向き合っていて、作者さんはもがき苦しみながら搾り出すように物語をつづっているんじゃないかと、私はそう感じてきた
本作からは、残念ながら、そういうものは感じなかった
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【2024年181冊目】
赤えいの幻、六部と舞首、生き続ける蛇、山男と移りゆく時代、光る青鷺、終わりの百物語。世に不思議なし、巷説百物語シリーズ第三段。
読むのに随分と時間がかかってしまいました。前作は「もしかしてここで終わるつもりでした?」みたいなお話でしたが、今作はその後の話です。どちらかというと読者側、巻き込まれ側の百介が語り手に変わり、四人の元武士たちが読者側という立ち位置に。
交錯する昔に起きた事件と、現在の事件を繋ぐ一白翁の回顧録というのが正しいかもしれません。ただ、小股潜り一向が好きな私としては伝聞ではなく臨場感あるその場その場の話として読みたい!と思うなどしました、だからなかなか進まなかったのかも。
京極堂シリーズに出てきた由良氏もひょっこり登場してきたりして、他シリーズとの連動ににっこりするなどしました。やはり鳥に囚われてるんですねぇ。
今シリーズは全部で七作、果たして次はどのような巷説百物語が展開されるのか。やっぱり目が離せそうにありません。
初読:2012年11月1日以前
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回想シーンが大半を占めるため、前作までのような緊迫感は無かったが、不条理ホラー的展開(赤えい)あり、密室モノ(手負蛇)ありでバラエティーに富んでいた。
結局、前作最終話(老人火)の真相はよく分からなかったが…
最終話のオカルト人脈大集結!みたいな展開はわくわくする。
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シリーズ3作目
時代は明治へ。
血気盛んな4人の男たちが、何かに詰まると
頼るところ・・・
80歳を超えた百介が語る過去の物語
前作の藩全体を騙る凄さと比べると
過去を語る形なだけにちょっと物足りない。
でもラストの「百物語」の話は
過去と現在が繋がり、面白かった!
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シリーズ第三弾。
明治に入り、「一白翁」と名乗るようになった山岡百介のもとに、一等巡査の矢作剣之進、その元同僚である笹村与次郎、洋行帰りの倉田正馬、剣術指南の渋谷惣兵衛の四人が、奇妙な事件を持ち込み、百介が若いころに体験した出来事を彼らに語り聞かせるという形式で物語が進んでいくことになります。
文明開化の波が押し寄せる明治の日本に、怪異の背後に人びとの複雑な心のうごめきがひそんでいることを何度も見てきた百介の知恵が、生き生きとした語り口調によってとどけられるという仕掛けにうならされました。
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小股潜(くぐ)りの又市さんらと別れてからずっと後。
徳川幕府が倒れ、明治になってから、薬研堀に引っ越した百介さんが、若いお兄ちゃんたちに昔話をするという設定でいくつかの物語が語られていました。
どれも妖怪譚って感じではあるけれど、実際は人が起こしたやり切れない事件や出来事を「妖怪のしわざ」ってことで落としどころを得るようなお話。
結局、人の哀しみや苦しみを全部人のせいだと暴いてしまうと、心の癒しが全くできなくなることがあるんだろうね。
今の日本だって、犯人が逮捕されても被害者やその家族は、そいつを殴ることも切り刻むことも自由に罵ることも同じような目に遭わせることもできないじゃん。
人ではない理屈や正論から離れたこの世の論理が通じない「あやかし」にやられたってことにすれば、なんとなくまだマシに思えることってあるんだろうな。
最後は文章としては出版しなかった百物語を蝋燭を吹き消す実践で行って、おぎんさんの娘さんをなぶり殺した悪者を焙りだすことで、長く一緒に暮らしてきた娘さん(おぎんさんのお孫さん)の無念を晴らしてから百介さんは静かに亡くなりました。
-御行奉為。