京極夏彦のレビュー一覧
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京極夏彦さん久しぶりに読んだけど、文章良すぎる…。文章がページを跨がないようにしていると聞いたことがあったけど、それが効果的なのか、ノイズに引っかかることなく話が入ってくるから読んでいて楽しかった。
各登場人物の解像度がめちゃくちゃ高い。なんか嫌なやつの喋り方、ヒステリーな喋り方が「あるある」過ぎて、ムカつきながら読みました。最高!
色々な人物に話を聞きに行くケンヤだけど、誰もアサミのことを分かっていなかった。自分の都合の良いようにアサミを見て、扱っていただけだった。
けど、アサミみたいに如何様にも態度と気持ちを順応させれる人っているよね。
アサミもケンヤも、人間味がなくて怖かった。 -
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盛岡。甲斐源氏の流れを汲む名家・南部氏が治めてきた豊かな土地だ。だが天保の世になった近年、領内には不穏な空気が漂っていた。
事態を憂えた盛岡藩筆頭家老で遠野鍋倉城主の南部義晋は、腹心の宇夫方祥五郎に自領内の実情を探るよう命じるが……。
長耳の仲蔵の異能が冴え渡る、シリーズ第6作。第56回吉川英治文学賞受賞作。
◇
暦の上ではまだ春なのに、今日の空はまるで藍玉でもぶちまけたように蒼い。そんな初夏を思わせる陽気に見舞われた遠野の町を、宇夫方祥五郎は眩しげに目を細めながら歩いている。
ここでは毎月「1」のつく日に市が立つ。交通の要衝でもある遠野保は、もともと人通りが多いのに加え、海山物や他国の名産品が集まる市の日は、いっそう賑やかなことこの上ない。
米は今年も豊作になりそうだ。海でも豊漁続きだと言う。ますます遠野が活気づく材料は揃っている。
だが近年、遠野は深刻かつ不可解な問題を抱えていた。
ここ数年、遠野の市場に流れ込む銭が妙に不足している。つまり、通貨としての銭がないのだ。
銭不足は物価に直結する。特に供給過多の魚が深刻だ。取引される値が著しく下落しているので、売れども売れども収益は上がらない。
おまけに加工品は物量に対する課税となるため、安定した収入源だった干物などへの税負担は重くなる一方だ。
実入りがなく日々の食料さえままならなくなった遠野の漁民は、魚ばかり食って糊口をしのぐほかなかった。
金がないのは民草だけではない。盛岡藩もまた、苦しい財政を強いられていた。
藩の現状を憂えた筆頭家老で遠野鍋倉城主の南部義晋は、腹心の祥五郎に密命を授け、領内の実情を探らせることにした。
祥五郎は、領内での出来事やそれについての領民たちの噂を収集するため、幼馴染の乙蔵に情報を集めさせた。
祥五郎は今、その乙蔵が待つ場所に向かって歩いているのである。 ( 第1話「歯黒べったり」) ※全6話。
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時系列では、最終巻『了巷説百物語』後の話になります。
舞台は岩手県の遠野。早池峰山を望む広大な盆地で、数々の伝説奇譚を持つ民話の郷としても有名な土地です。
当然、妖怪についての伝承も多いため「化け物使い」には好都合。おまけに遠野に腰を据えて仕掛けを演出するのが「長耳の仲蔵」ときては、もう期待で胸がワクワクしっ放しです。
さらに、仲蔵を輔けるのが「亡者踊りの柳次」です。
この柳次、表向きの商売は献残屋 ( 大名家や公家などから安く買い上げた献上品を売り捌く仕事 ) ですが、裏の稼業は死んだはずの人間をまだ生きているように見せかける「亡者踊り」と呼ばれる芝居工作です。
柳次の見せる巧みな芝居や流れるような口上は名人級と言ってよく、仲蔵の作る仕掛けをさらに効果的に演出します。
まるで漫才コンビのような掛け合いを見せる仲蔵と柳次の「仕事」の数々。その鮮やかさと痛快さは、読み終えるのが惜しくなるほどでした。
さて、本作で仲蔵が出現させた「化け物」を紹介しておきます。
第1話 歯黒べったり
美しげな女の姿をした妖怪です。
道ばたの暗がりに後ろ向きに佇んでいて、通りがかった人が思わず見とれたり声をかけたりするとゆっくり振り返るのですが、女の顔には口だけあって目鼻がありません。
腰を抜かさんばかりに驚く人を見て、いきなり大口を開けてケラケラ笑う女。その剥き出しになった歯にはお歯黒がべったり付いているそうです。
このお騒がせ妖怪は、ただ不気味なだけであって、決して危害を加えたりすることはありません。
第2話 磯撫
サメに似た姿の、怪魚の妖怪です。
普段は海中に潜み、船が通りかかると強い北風とともに海上に姿を現すのですが、まるで海面を撫でるような静かさとスピードでもって船に近づいてくるため、巨体にも関わらず船員に気づかれることがありません。
そうして、無数の細かい針が並んだおろし金のような尾びれを船上に振り上げ、乗員を引っ掛けて海中に引きずり込んで喰い殺してしまうという、非常に恐ろしい怪物です。
第3話 波山
赤々とした鶏冠を持つ怪鳥です。
普段は山奥の竹薮に棲んでいて人前に姿を見せないし、口から吐き出す赤い炎は狐火同様に熱を伴わないため、火災を起こすことはありません。
稀に深夜に集落に降り立つことがあり、その際にバサバサと不気味な羽音をたてたりするところから、「婆娑婆娑」と呼ばれたりします。
そのように人を驚かすこともありますが、決して害をなさない妖怪です。
第4話 鬼熊
長い歳月を経て変化した熊の妖怪です。
山奥深くに棲んでおり、普段は人前に姿を現すことはありませんが、夜更けに人里に降りて来ることが稀にあるそうです。
鬼のような怪力と立ち歩きできる器用さを持っていて、家畜の牛馬を軽々と担いで山へ持ち帰(り、食ら)ってしまったりします。
普通の熊の3倍ほどもある巨大さで、享保初期には畳6畳分の大きさの鬼熊が仕留められたという記録が残っているそうです。
第5話 恙虫
人の血を吸って死に至らしめるという虫の妖怪です。
夜な夜な民家に入り込んでは寝ている住人の生き血を吸うのですが、この虫は小さいながら恐ろしい毒を持っていて、噛まれた人間はその毒にやられて急に高熱を発して苦しみだし、半月ほどで死んでしまうと言います。
第6話 出世螺
深山の土中に棲むという巨大なホラガイの妖怪です。
このホラガイは、山、里、海で、それぞれ3000年ずつ棲むことで龍に化身すると言われていて、最初に山から抜ける際には轟音とともに大規模な山崩れを起こすと言われています。
ちなみに、抜け出た跡にできる窪地や大きな穴を「出世のほら」と呼び、ホラガイの最終化身である龍を「出世螺」と呼びます。
以上のような伝説をもとに仲蔵が一計を案じて人助けをしていくというのが、本巻の主要なストーリーです。
この「長耳の仲蔵」、妖怪と見紛うような異様な風貌ですが気性はきわめて臆病です。
そして、頭の回転の速さや全体を見通せる小股潜りのような眼力はないし、相手をねじ伏せる玉泉坊のような膂力や剛強さも持ち合わせていません。
つまり、戦闘力はゼロと言っても過言ではないのです。
なのに「化け物使い」の中では特異な存在感を放っているのは、仲蔵の発想の柔軟さと創作の巧みさが際立っているからに他なりません。
本巻では、その仲蔵の真骨頂を存分に味わうことができます。
さて、仲蔵の策のキモは、いかにして「人死に」を出さずに事を収めるかにあります。
いわば「人助け」に主眼が置かれているため、仲蔵と言えどもうひと捻り知恵を絞る必要があります。そのあたりも読んでいておもしろい。
ところで、その策ですが……。
臆病な仲蔵は、自分の細工を最大限に活かすための準備を周到に行います。中心となるのは、情報操作でした。
もう少しだけ、仲蔵の手の内を明かしておきます。
仲蔵は、主君の密命で領内の情報収集に当たる宇夫方祥五郎とその情報屋である乙蔵の2人を、うまく利用しようとします。
祥五郎は、実直な忠義者であり、嘘はつけない男です。
一方の乙蔵は、ぐうたらな男ながら、伝説や怪しげな譚に詳しい「歩く民俗学」のような男であり、世俗の噂にも通じている「歩く週刊誌」のような男でもあります。
この2人が収集する「妖怪についての譚」や「世間を騒がしている噺」が、仲蔵の作り出す妖怪の出現に信憑性を与え、公然の事実として世に認知させるのです。
そしてここに、口八丁の柳次がバックアップに回ることで、仲蔵の策はいっそう強化されるのは言うまでもありません。
ということで、仲蔵のみごとな手並みのほど、ぜひお楽しみください。 -
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ネタバレ1300ページ、あっという間だった。久しぶりに再会する登場人物の面々、いつものやり取りが楽しくて。ゲストキャラクタもみんな良かったし。すごく面白かった!
結局身体のパーツの端々の生き物を追いかけて、謎が増えて、形が見えて、実は私も【ああこれは軍部の陰謀!?大掛かりな軍事的秘密!?】つて。もう完全に憑かれていましたので、最終章にてすっかり祓われて、ああこれは一体なんだったんだ、となりました。
事件はたしかにあったけどそれは概ね終わった話で、たしかにこれは【化け物の幽霊】かと。よく出来てる。出来すぎてる。
緑川さんがすごくいいキャラで。御厨さんも最初は煮えきらなくて(何だこの人)と少し思っていたけど、最後にはなにか吹っ切れて。本当は感動の再会が見たかったけど、そんな綺麗なご都合主義にはならないんだよね。それも、なんか良かったし。謎は解けたようでとそもそもあったのか、なかったのか、いやあったのだけれど。
はっきりしない形の取りにくい「あいこ」の謎解きなのにどこか清々しい爽やかな読後感が不思議。
彼らがいつも通りの彼らで、嬉しかったなって。 -
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シリーズ完結!
狐を狩る猟師、藤兵衛の視点で語られる、化け物遣いたちの活躍。過去六作品で語られた東西の彼らが惜しげもなく登場する様はまさに最終回!!
続巷説百物語でぽっかり穴が空いたすべての人に読んでほしい
そして、シリーズを読むときにさらに面白くなるのが隣の「絵本百物語」
章立ての妖怪話を先に「絵本百物語」で読んでから本編を読むと、その巧さに舌を巻く。御大の計算され尽くした物語にぜひ酔いしれてほしい。
私は未読だが、シリーズ外の三作品(伊右衛門、小平次、井戸)も多分繋がる。
いやもう、最高だから。決め台詞を持つキャラは惜しみなく言ってくれるし(林蔵のあのセリフがここで聞けるとは思わなくてうっひゃー!ってなったよね)京極夏彦のシリーズ作品を読んでる人はニヤニヤできちゃう仕様。ラストがまたたまらぬ。最高だよこんちくしょー!!(笑)
以下、読書中のツイート
巷説百物語シリーズをおさらいしたら大丈夫かと思っていたら、どうやらその前三部作も読んだ方が良かったらしく、今真顔。
1話は数えずの井戸が下敷きだし、たぶん3話は覗きの小平次だよね……(震え
もう、とりあえず読み切りたいから後で三部作読む!我慢できぬ!!(笑)
3話はアベンジャーズやったわ……なんちゅーか、ほんまに終わるんやな……後3話、噛み締めて読もう……
中禅寺、めちゃくちゃ中禅寺(笑)
面子が揃ってきたァァァァ!!
今までの流れ的に、5話目がでかい流れがあってラスト6話目で締める感じだから、今日から心決めて読んでいく……ラスト2話!!
って章立て見直したら7話あったわ。でも7話目はたぶん総括的な話っぽいな。タイトル的に。
とりあえず300ページほどある手洗い鬼読んでいく。
……300ページって、薄めの文庫本一冊やん(笑)相変わらずの京極クオリティ。好き。
了巷説読んでるんだけどさ……内容が完全に“今”の日本なんよ……御大……これ狙ってるのか……???分厚い本にすることにより検閲をすり抜ける的な……(脳内の時代がバグる)
いやもう、ゾクリとした。キャラにめちゃくちゃハッキリ言わせるやん……。
このままだと……くにが……滅ぶね……
「簡単に言えば金に換えられねえものは全部要らねえという改革なんだぜ。病人や年寄りはな、働けねえ。働けねえ奴は価値がねえと、そういうことになる。無駄は省け贅沢はするな、金を生み出せねえ奴は死んじまえ、ということよ」p727抜粋
それにしても藤兵衛の決め台詞、カッケェよなぁ。渋めのオジ(独断と偏見)がやってんのが良い……
こういうエンタメ色が強いのがまた良いんよ……最終巻で新キャラ出してきたからなんぞ……?と思ったけど、狐窓からの呪文からの決め台詞の流れがカッコよすぎて痺れるわ。好き。
おじさんが描くカッケェおじさんが出てくるお話が好きな私、ウハウハで読んでる(笑)
終わった……話は物語になった……
ウワァァァァァァァァ。・゚(´□`)゚・。
ラストにあの人が出るとか……脳がバグるわッ!最高かッ!!!
二度見したよ……マジかよぉぉぉ。
はぁ……最高やったわ……最高の物語やった……これぞアベンジャーズ……妖怪大戦争やで……(違う)
(どうでもいいが、ツイートしすぎじゃね?笑 それだけ面白かったんだなぁ……)
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Posted by ブクログ
ネタバレ既刊6作と江戸怪談シリーズ3作を再読してから臨んだ今作。(せめて『続〜』と『数えずの井戸』くらいは読んどいたほうがいい)
藤兵衛の勘が良すぎるぞ。もう何もかも知ってる人がしらばっくれて喋ってる感じ。
そして源助の能力はもう人間技じゃない。X-MENのミュータントみたい。
シリーズ最終作なのに、主人公は影が見え隠れするだけで一向に表舞台に出てこない。なんて斬新。それでもスゴい存在感。
今回は中編連作集ではなく長編。しかもめちゃ長い。読んでも読んでもページ数が減らない。
スケールが大きくて大作だったな。前作読み返しといて良かった。
そもそも一文字屋仁蔵は、なんで登代を拐ったんだろう?なんか具体的な説明あったっけ? -
Posted by ブクログ
私の語彙力でどれだけ言葉を尽くしても、何もかも軽くなりそうで何て言っていいかわからない。
ただ、もう、続きが気になって気になって、1日で全部読み切ってしまった。
私の読書タイムは大抵職場のお昼休みで、毎日20分程度でちょこちょこ読み進めるので、そこそこ異例のことだった。
これをミステリと言われるのはなんだか違和感があるな。じゃあ何だと言われても何も思いつかないんだけど、心理小説ってことになるんだろうか。
面白いっていうのとは違うような、でもめちゃめちゃ面白かったような。。
京極夏彦作品を読むのはこれが初めてだったが、あんなクセ強おじさんの書く小説なんてどれだけクセ強だろうかと身構えていたのに、まさかこんなに読みやすい文章だとは思いもよらなかった。
京極夏彦初めて読みたいって人がいたらきっとこれを勧めよう。感想は出てこないかもしれないけど、きっとページをめくる手は止まらないだろう。私のように。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ〈巷説百物語〉シリーズ第4作。
上方から逃れ、江戸に流れ着いた頃の若き日の又市を主人公にした前日譚。
多くの犠牲を出して今巻の事件が決着することは、もともと既刊の作品でも語られていたけれど、魅力的な登場人物が多かったからやはり読後感は寂しい。
しかしまだ自身を包み隠さない頃の又市の姿は、青臭くも爽やかで、読んでいて快かった。
「それにな──と言って又市は棠庵を確と見た。
『猫が鼠より強ェな解る。だけどもよ、猫が鼠より偉ェってこたあねェぞ』
その通りですよと棠庵は言って、縁台を叩いた。
『猫は強いが偉くはない。それこそ真理です。お前さんは──そこに気が付けるひとなんだ』」
と、棠庵が又市を評した言葉が、シリーズをここまで読んできたからか妙に胸に染みる。