京極夏彦のレビュー一覧

  • 了巷説百物語

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    生涯もっとも面白い小説かもしれん。このたび文庫化を機に再読。初読の際、シリーズ既作品の物語・登場人物を忘れていていまいちピンとこない部分があったため、今回はシリーズこれまでの六冊および江戸怪談シリーズ三冊を読んでから本作に臨んだ。すると面白い面白い。登場人物の会話中の細部のあちこちに前作までの物語への言及がありたまらない。ある意味、これまでの九作品すべてが伏線であり、本作で回収されるという趣で、まさしく集大成。京極夏彦の構想力構築力に驚嘆感動する。物語は『続』で暗示されていた支配者中枢との闘い(ではないかもしれんが)が描かれる。しかも、新たな登場人物、支配者から小悪党達の探索を依頼された、噓を見抜く技をもつ稲荷の藤兵衛の視点で全編貫かれ、藤兵衛の目から見た小悪党の動きが描かれる。その藤兵衛の人物造形、洞察力、細やかさ、優しさ、しゃべり方が良い。また中禅寺秋彦の曾祖父も登場し憑き物落としを行う。小悪党どうしの交誼、互いへの強がりを含む思いやりに泣ける泣ける。また、壮大なエンタメであるとともに、政の根本を語り、この国の歴史への、資本主義への、現代社会への鋭い批判でもある。すばらしい。
    しかしあの愛すべき化物使い、小悪党達にもう会えないのか、嗚呼。

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    2026年05月13日
  • 猿

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    最近出会った小説の中でいちばん余韻すごいかも。
    周りの人に薦めて、感想を聞きたくなる本

    個人的に、恐怖の本質は頭で理解できないわからなさ、不確定性にあると思った

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    2026年05月05日
  • 文庫版 鵼の碑

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    まるで「狸」に化かされたような心地よい脱力感に包まれています。脳内に広がる緻密な映像美は、思わずNetflixでの実写化を願ってしまうほど。

    前作から途方もない時を経て届いたこの一冊。読み終えるのが惜しくてずっと大切に積んでいましたが、意を決して踏み込んだそこには、作家の圧倒的な博識と、小川哲さんが解説で触れたような幾重にも重なる「次元の入れ子構造」が待っていました。

    文庫版という名の「鈍器」を両手で支え、その物理的な重みごと物語を味わう。まさに贅沢で、特別な読書体験でした。

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    2026年05月05日
  • 数えずの井戸

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    直参旗本、その側用人、長屋の娘、部屋住みの旗本次男、米搗きの若者、時期若年寄の娘、視点人物は六人。各章一人ずつの内省と見聞、他の登場人物との会話が描かれる。それぞれなりにものの考え方心持ち自己像が歪で常人とは違っており、納得理解しがたく、当然のことながら登場人物相互、また他の登場人物とも言葉が思いが噛み合わず通じないところがなんとももどかしい。その齟齬が歯がゆいまま、少しずつ物語は進み、やがて悲劇的なカタストロフ。だれも救われず辛い。「巷説シリーズ」の又市、徳次郎ともに、菊の三平の哀切に涙する。ああ。

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    2026年05月06日
  • 死ねばいいのに

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    ネタバレ

    京極夏彦作品を初読み。とても面白かった。ケンヤは死んだアサミについて何人かに聞く。聞いているのに自分のことを話す人ばかり。ケンヤの話し方も聞かれてる人もムカついてイライラ。いろんな人のいろんな部分が自分の嫌いな所を見ているようでイヤなんだな。わかったふりをしないケンヤを尊敬する部分もあったり、話を覚えてるケンヤって賢いな、と思ったり。死ねばいいのに、と言われどう答えるか?死にたくないって人は幸せになりたいから今は死にたくない、と。他の作品も読もう!

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    2026年05月03日
  • 遠巷説百物語

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    初めはまどろこしいが、読み進めるにつれ、(『前』でもいい味出していたのが)長耳の仲蔵という人物の人柄が好ましく、とても好きになってくる。どうにもならぬ状況の納め方がすばらしい。だんだんと盛り上がり、最終話。『了巷説百物語』を読み、頭に戻って『巷説』から再読している身としはもう、涙。ああ。そしてやはり恐るべきは京極氏の構想力。最終話が『続巷説』と繋がり(『続』を書いている段階で構想していたのだろう)、かつ(本作執筆時にはまだ書かれていない)『了巷説』と繋がっている。シリーズ通再読していてよかった。

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    2026年04月28日
  • 文庫版 地獄の楽しみ方

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    京極作品にしてはやたら薄い本だな?と思い手に取ると十代の若者向け講座を文字起こししたものだったらしく、全編話し言葉で書かれていてあっという間に読んでしまいました。

    講座のタイトルが「たたかわないために〜語彙と思考」だったようで、つまりこの世を地獄と見立てた上で言葉と思考でこの地獄を乗り切るにはどうすればいいか、という内容でした。

    第一部では人間が言葉を会得して世界の認識をどのように変えたか、言葉の利点と欠点、言葉によって生じる思い込み、思い込みで感情や思考、行動を操作する、操作されうる危険性、そういった前提を語り、後半の第二部では実際の地獄では言葉を使ってどうやってたたかわずに済ますかを教えます。

    口調が京極堂だったのでまるで自分が関口になった感じで基本ニヤニヤしながら読んでいたのですが、ところどころ真顔になるところもあり、やはり京極さんは信頼できる書き手だなぁと思いました。それは何回りも歳下の若者に対する京極さんの愛、ではなく真心から出るものなのでしょう。

    SNSや政治に関するところは自分の思っている事と同じ危機感を語っていたので、講座のあった当時より悪くなっている現状を思うと、この本を若者だけでなく一家に一冊国は配った方が良いんじゃないかと思ったのですが、いや国としては国民に小利口になってもらうと困るだろうからやらないな、とも思い、ならば自衛のためにみなさんぜひ読んで!と強くお勧めする次第です。

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    2026年04月26日
  • 巷説百物語

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    京極夏彦版必殺仕事人。いや、ちょっと違うか。百鬼夜行シリーズとは真逆のアプローチで面白かった。毒をもって毒を制す。

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    2026年04月13日
  • 嗤う伊右衛門

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    これは純愛の物語。「巷説百物語シリーズ」再読の一環として再読。何とも哀しい愛の物語ではないか。12の章それぞれの視点人物の目から見た民谷岩と民谷伊右衛門をめぐる事件の顛末が語られる。何人かの登場人物の愛の形。歪であったり、人倫に外れていたり。それだけに、岩の凜とした美しさ正しさ、伊右衛門の純情が際立つ。なのにわかり合えないのが辛い哀しい。互いを思うがゆえに破滅に至る二人。結末に泣いた。これ以上の恋愛小説を僕は知らぬ。

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    2026年04月10日
  • 猿

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    ネタバレ

    ホラーではない。これは「恐怖」「怖い」についての物語。ストーリーは単純。視点人物である女性が、同棲しているパートナーを置いて、最近亡くなった(会ったこともない)曾祖母の住んでいた限界集落(と思しき)岡山の山村へ、相続関係の手続きの一環として赴くというだけ。章立てもなく(時間が飛ぶところはあるが)、視点人物の見聞きした物事、思考、他の登場人物との会話が延々と続き、特別事件や怪異は起こらないまま300頁以上進む。件の集落、別段因習もオカルトめいた秘密といった横溝正史的要素は何もなく、集落へ至る途中の心霊スポットとされる隧道も怪異とは全く関係ない。かといって退屈かというとそういうわけではなく、会話や思考を通して、ホラー小説にありがちは舞台立てについてのメタな思考が展開され、なぜか夢中で読んでしまう。いろんなホラー的装飾が剥ぎ取られ終盤、純粋な恐怖が剥きだしになり、そしてラスト! いかようにも解釈のできる物語として閉じる。さすが京極。面白かった。

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    2026年04月07日
  • 猿

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    ネタバレ

    続きが気になりすぎて気になりすぎて、読み終わってほっとした。

    たかあきは、実は最初から猿だったのか、なんだったのか。
    ありきたりな恐いに行きつかないところが、京極っぽくて良い。

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    2026年03月27日
  • 前巷説百物語

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    再読「巷説百物語シリーズ」通し読み第四弾。御行の又市が山岡百助と知り合う前の江戸を舞台とした物語集。大坂で下手を打ち林蔵と共に江戸へ流れてきた若き又市は、ゑんま屋から裏の仕事を請け負うようになる。人の命を取ることを極端に嫌う又市が智恵をふりしぼり、元締めの描いた図面をなんとか引き直し落とし所を探す。ここでは又市はまだ若い双六売り。ひとつひとつの仕事に関わりながら、本当にこの図面で良かったのか、もっといい絵図は描けなかったものかと自問自答する青臭さがよい。やがて恐るべき敵と対峙する中で、読者にはすでにお馴染みの面々と出会う。その出会いの描き方がファンにはたまらん。また本作で馴染みになった仲間との切ない別れ、そして最後に双六売りの若者が「御行の又市」へと成長する。あちらこちらで泣いた。

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    2026年03月25日
  • 虚実妖怪百物語 序

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    「このままではあんた、ニッポンはおかしくなりますよ」


    実名小説、あまりみないので面白かった。スターシステムなども大好きなのでとても良い。
    エンターテイメント小説として、実名がスパイスとなって、リアルとフィクションの狭間が出来上がっているのが良い。内容にもフィットしていて巧妙だと思う。
    たまたま印刷博物館のイベントで京極氏の本を持っていくと名刺がもらえるイベントがあり(結局行けなかった)、持ち運びしやすい本を探していた所出会ったシリーズだが、丁度ゲゲゲの映画のブームが起こっていて、タイミングよく出会えた本だった。
    水木御大のユニークな雰囲気も大変良かった。エンタメとして。京極堂シリーズのエノさんポジかも。

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    2026年03月21日
  • 筑前化物絵巻

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    奇譚より生ずるもの 京極夏彦
    凡例

    筑前化物絵巻 化物画図+現代語訳
    縮小全図+全文翻刻

    翻刻注
    資料 早稲田大学図書所蔵『化物絵巻』縮小全図
    『筑前化物絵巻』解説 近藤瑞木

    編者あとがき
    協力機関・協力者一覧

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    2026年03月18日
  • 猿

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    ネタバレ

    「恐怖」とは何か?
    あらためて問われると何とも答えにくいが、この作品を読んでいくと「なるほど」とすとんと胃の腑に落ちる。相変わらずの憑物落とし的な語りにものすごい言葉の力を感じる。
    恐怖を分解していけば確かにわからないや、気配は大きな恐怖の構成要素だと気づかされるが一人でそこに辿り着くのは難しい。
    そして「恐怖」は人によって異なるからこそのラスト。もうちょっとだけ先が知りたい。

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    2026年03月15日
  • 鉄鼠の檻(2)【電子百鬼夜行】

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    禅宗について語られる場面に圧倒されました。分からないながらに読み進めましたが、とても面白かったです。京極堂の自信満々の語りに引きずられました。続きが気になって仕方ありません。

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    2026年03月14日
  • 続巷説百物語

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    ネタバレ

    多様な視点多様な語りで闇に巣食う小悪党達の活躍を描いた前作から変わって、今回はずっと山岡百介視点からの語り。中にはこんなことはないやろ? と思えるような設定もあるが、悪の造形の仕方、その解明の仕方、解決の仕方、本当によくぞこんな風に物語を構築するものだと舌を巻く。さらに! 各話物語内容と登場人物の資料を作りながら読んでいると楽しい楽しい、そして良く分かる、京極さんの世界・物語構築力の凄さよ。前作『巷説百物語』の各話との有機的結合がなされているだけではなく、すでに、次次回作『前の巷説百物語』の内容にも筆が及んでいる。ひょっとしてシリーズ七作品全体の構想を立てた上で、一作一作書いている? と思いながら読み進めると最終話『老人火』! これ、『了巷説百物語』の後の話ではないか! 初読の際にはそんなこと知る由もなかったが、『了』を読んだ後で読むと感慨深く、涙が出る。やはりシリーズ全体を構成してから書いているんだわ。恐るべし京極夏彦。シリーズ再読通し読み思い立ってよかった。
     

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    2026年03月10日
  • 猿

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    ネタバレ

    “恐怖”を突き詰め、様々な恐怖の表現に臨んできた京極夏彦氏だからこそ書ける表現。
    件の集落というか曰くの場所までの長ーーい道のりと、何も見えるものの無い、恐怖を“感じる”ラスト。
    貞子的な女性とか、呪いとか、田舎の集落の因習では無い、独自の目新しいホラーだった。
    他にない逸品だからこそ読む価値も面白さもある。
    これだから京極作品からは目が離せないのです!

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    2026年03月05日
  • 病葉草紙

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    あの京極夏彦が、人情噺を書いた!という感想です。
    殊に最終話の「頓死肝虫」は、これは絶対人情噺ですよね。
    舞台を貧乏長屋にしたのが、まずは秀逸。じっくり住人のことを整理してみたら、この人たち、結構な曲者ですよ。
    でも、人物紹介的な扱いで、この一冊ではそれなりにあっさりとした雰囲気で噺は進みました。
    なんといっても棠庵さんが強烈なので、他の登場人物、長屋の住人の印象が薄くなる傾向にありますが、棠庵さんをちょっと寄せて読んでみると、長屋の住人は皆、曲者揃いです。
    藤介も魅力的なキャラクターですが、それ以上に父藤左衛門の意味ありげな笑顔が、チェシャ猫の顔のように、頭に張り付いて離れません。
    こんないたずらを仕掛けてくるのも、まさに京極夏彦ですね。十分に楽しみました。
    繰り返しになりますが、最終話は、もう、素敵な人情噺。誰か当代の名人に騙っていただきたいと思うくらい。
    悪役になるべき「虫」ですが、その風貌は憎めない造形。
    これも参ったなあ。
    何から何まで、してやられた感のある本作でした。
    楽しみました。ありがとうございます。

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    2026年02月28日
  • 虚談

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    幽霊的、グロテスクではなくふと感じる気味の悪さを表現した新感覚のホラー作品。

    『全部、嘘』と言い切られているのに、真相は虚の中。どれが本当でどれが嘘?考えるほどに不気味だから面白い。

    30ページ程度の短編が詰まっているので、京極堂の世界観を手軽に味わってみたい人におすすめしたい作品。
    シリーズものでもあるようなので、他3作品にも期待が高まる。

    3/24訂正 現代怪談シリーズはこちらの虚談含めて現在6作品あるようです。

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    2026年02月27日