京極夏彦のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
ネタバレもう畏くはない。
京極堂は呟いた。
「拙僧が−−殺めたのだ」
もう暫く箱根にいようと、私は思った。
夜の庭を見つめ、何もかも抛って帰りたくなっている関口君と飯窪女史の会話から始まり、漸く帰って来た富士見屋での会話。
憑物落としを進める京極堂と邪魔するものは打ち砕くように手助けをする榎木津の息ぴったりぷりと、絶妙の合いの手を入れる関口君らのやりとりは圧巻。最後の最後で、走り回っていた鼠の伏線も回収された事に感嘆の息しか零れません。
時が止まり、世界と隔絶された異界がまたひとつ解かれ、此れから先は個人が抱え込まなくちゃならなくなると紡ぐ京極堂。甘美な闇の世界がまた一つなくなる切なさが溢れま -
Posted by ブクログ
『嗤う伊右衛門』とおなじく、切ない読後感に酔いしれています。
小平次の様子に、異様さ、不気味さを感じつつ、なぜか、お塚がののしるほどの嫌悪は感じませんでした。読み進めていくにつれ、彼を「強く頼もしい」存在に感じ、好意を持ってしまうのは、なぜでしょう。彼ら以外の登場人物は、あるべき自分の姿を探し、ないものを埋めようと必死です。人々の、あさましさや愚かさを描きながら、なぜか彼らを憎めないのは、自分の中にも同じものがあることを自覚させてくれるからかもしれません。そして、自分にはない強さを感じるから、小平次に好感を持ってしまうのかも。いずれにせよ、京極さんの、異形な者への優しいまなざしが、この切なく温