【感想・ネタバレ】文庫版 オジいサンのレビュー

あらすじ

益子徳一(72)は独り暮らし。誰かに「オジいサン」と優しく呼ばれたことを思い出したり、ゴミの分別で悩んだり、調子に乗って妙な料理を作ったり。あるがままに生きる徳一の、ささやかであたたかな一週間

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Posted by ブクログ

主人公である益子徳一さんのモノローグがメインのお話です。近所の人との会話では多弁ではないけど、頭の中ではよく喋るオジいサン。
深夜営業についての下りとか、”それでは徘徊老人である”の下りが個人的にツボでした。そして淡々と終わるのかと思ったら、終わり方があったかくてほろりとしました。

京極氏の作品は百鬼夜行シリーズしか読んだことがなかったので、こんな平和なお話も書かれるんだとびっくりしました。会社で昼休みに少しずつ読みましたが、クスッと笑えて良い気分転換でした。

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2024年01月02日

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一人暮らしのちょっぴり偏屈なオジいサンの日常をここまでおもしろく描けるのはすごいと思った。

緩やかな日常生活が細やかに描かれていく中で、オジいサン自身の感情、亡くなった人、生きている人への感情の表現が細やかで、読み飽きないどころか最後はほんのり温かい気持ちになる。

ウインナーと格闘するくだりも大好き。

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2021年02月07日

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人の生活をそっと後ろから覗くような感覚。
最初は「やれやれ」と呆れながら付き合うような気持ちで読み進めたが、最後にはすっかり徳一さんと一体化してしまった。
宮部さんの解説で少し泣いた。

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2024年11月28日

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年末に本屋に寄ったら目についた、
京極夏彦の文庫本。

なんともゆるいタイトル、
紙粘土のお爺さん、フォントの文字も気が抜けていて装丁がどことなくかわいらしい。

鵺の碑で久しぶりに骨のある京極本を堪能したから、こんどはいかにも軽そうなのを読むか…、と手に取った。

公団アパートでかれこれ40年一人暮らしをしている、72歳6ヶ月の益子徳一さんの1週間のとある時間を、端折ったり飛ばしたりせずにその時間のままツラツラと書き記すスタイルの小説。

基本的に徳一さんのモノローグで話がすすむので、最後まで特になんのイベントも起きない。

何日か前に「オジいサン」と呼びかけられたその記憶を、起き抜けに徳一さんが一生懸命思い出すモノローグだけで終わってしまう第1章。
思考があっちへ行ったりこっちへ行ったり、忘れたかと思えば思い出したり、思い出しては腹を立てたり反省したり…、
ずーっと徳一さんの頭の中の声で進むので、少し退屈に感じたりもするんだが、不意に描かれる徳一さんの人生哲学や老いや時間についての考えに、妙に納得したりする部分もあり、なんやかんやで読まされてしまう不思議。

2章、3章も外に出て誰かと話したり、料理をしたり、なんてことない日常を徳一さん目線のモノローグで追っていくだけの物語なんだけど…、

どんどん引き込まれるんだよなぁ。

頑固で面倒くさいお爺さんのようなところもあるんだけど、それだけじゃない。
人間にはいろんな側面があるんだなという結構不思議で当たり前のことに気がつく。そしてなんだか徳一さんを好きになる。

何がいいって、定年退職してからはありあまる時間をなんの生産性もなく過ごしていて、地デジもわからないし、携帯電話もわからない。社会にこれと言った貢献してもおらず、生涯独身で妻も子もいないからもちろん孫もいない。ただただ面倒くさい一人暮らしの頑固爺だと自認しながら、自暴自棄にならず、自分なりの道徳を持って倹しく生きるその生活を、なんだかんだでちゃんと肯定しているところが本当に良い。
本人は嫌だと感じている独り言のように、モノローグの中でふとしたはずみで出る、しあわせだな、の感情が、
読んでいてめちゃくちゃ愛おしくなるのだ。

一見ネガティヴに見える老いを描きながら、その実、あるがままの時間をあるがままに生きる、その清々しさ。

とても好き。
気持ちの良い小説でした。



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2024年01月15日

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面白かったー。72歳の益子徳一さんの日常。7日間のできごと。

日常も日常。ほとんど何も起こらない。せいぜいが数日前のことを頑張って思い出してみたり、近所の人と話したり、自分のお昼を作ったりするくらい。でも面白くて、飽きずにずっと読めちゃう。

日常をこなす徳一さんの心の動きが、よーくわかって楽しいんだよね。脳内のつぶやきやセルフツッコミ、展開しすぎてたまに哲学っぽくなる自分への分析。時間についての考察はしみじみ納得した。

読むうち、徳一さんにどんどん親近感が湧いてくる。年齢のせいか少し忘れっぽかったり、考えがループしちゃったり、最新の機械に疎くて間違った確信を持っていたりするんだけど、そういうところがすべて愛らしく思えた。

ラストもとても良かった。涙が出ちゃうくらい。

私の年齢は、先日挫折した「麦本三歩の好きなもの」の三歩ちゃんと、徳一さんのちょうど真ん中くらい。でも感覚的な年齢で言うと徳一さんの方に近いんだろうなあ。言ってることがしっくりきた(笑)。

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2021年11月29日

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「オジいサン」の発音にこだわるジイさん…、一体これは何の話なんだ…?
て思ってましたけど、最後はちょっとほろっときました。
よかったね、徳一さん。

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2020年12月22日

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オジいサンの発音がね、なんともね。
私にとしては、おじいちゃん、なんだけれど、まあ、なんとなく分かるかなとも思うような。
独居老人の頭の中、というよりは一個人の頭の中をつらつら覗いたような、そんな感じだろうか。
途中、ちょっと中弛みします。他人が日常で考えている、どうでもいいことが一冊分、ですから、そりゃあ、中弛みくらいするでしょうけれど、最後はちょっとほっこり。

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2020年11月01日

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72歳の1人暮らしの益子さん
料理をしたり 買い物でヨーグルトを選ぶのにも悪戦苦闘!でも自由で気ままなオジいサンライフをユーモアたっぷりで描かれている 続編お願いします

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2020年08月24日

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ネタバレ

最初はこの益子さんのように、ゆーーーっくりしか読み進めれなかったが、半分くらいから一気読み。

孤独な独居老人って言いつつ、地味に色んな地域住人に知られててなんだか良かった。
二代目田中電気との関係も良き。

隣の田川さんの山形での電車のエピソードが好き!

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2025年05月18日

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自分の○年後を想像してみた。
電器屋の息子さんが存在感ある。身近に似たような人がいるので感情移入した。

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2025年03月19日

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 益子徳一、72歳。未婚のまま定年を迎え、現在は公団アパートで独り暮らしだ。
 これという趣味もなく、博打や酒色に向かうこともない。ただ、己を見つめつつ日々をきちんと生きるのみ。

 そんな益子徳一の1週間を描いた日常スケッチ。
          ◇
 「オジいサン」と呼ばれて、ふと目が覚めた。5月某日早朝のことである。

 寝床の中で徳一は考える。
 家には自分のほかは誰もいない。だから実際に呼ばれたのではなく、以前そう呼ばれたときの記憶が夢の中で再生されたのだろう。
 徳一はそう結論づけ、物思いに耽りだす。

 室内は、暑くも寒くもないし明るくも暗くもない。夜は終わっているのだろうが、起きるにはまだ早いようだ。きっと6時前だ。
 早く目覚めるとうんざりする。時間のたつのがどうにも長い。
 いや、1日はあっという間に終わる。1週間も1ヵ月も1年も、すぐに過ぎてしまう。
 それなのに、1時間が、1分が、長い。呆れる程に長く思える。起床前の寝床の中では特に長い。妙なものである。

 ならばさっさと床を出ればよさそうなものなのだが、それが儘ならないところがもどかしい。億劫なのだ。
 つまり、脳の神経は覚醒していても身体の方が駄目だということなのだろう。

ーーお爺さんだからか。

 そう呟いた徳一は、まだ床の中である。
( 第1話「七十二年六箇月と1日」)※全7話。

     * * * * *

 「じいさん」を描いた作品を読むのは、この半月ほどで3作目です。
 過去2作品のじいさんはかなりの存在感がありました。

 『秋山善吉工務店』の秋山善吉。
 80歳を過ぎても大工の棟梁を務め、気力体力ともパワフルそのもので、仕事から他人の困りごとまでテキパキ片づけてしまう。
 そのカッコよさには、真打ち登場の華があります。

 『じい散歩』の明石新平。
 90歳を過ぎても健康で食欲旺盛。営んでいた工務店は畳んだものの、気になる建築物やカフェを巡って歩くほどの健脚を誇り、妻の介護も一手に引き受ける。問題だらけの息子たちにも動じない。
 主人公にふさわしい度量を有しています。

 ところが本作の益子徳一はと言うと……。

 まだ72歳。善吉や新平よりよっぽど若い。なのにどうにも締まらない。
 朝の始動に時間がかかる。
 やっと起きても、運動などしないし、読書や芸術鑑賞といった有意義な趣味もない。テレビをつけることすらほとんどないため、社会の動向にもさほど目を向けない。日がな1日、とりとめもないことをつらつら考えるだけの日々を送っています。
 たまに外出してもあたりの風景に同化しているかのような存在感の希薄な人物です。


 そんな徳一の暮らしぶりを描く本作。読み始めはおおいに戸惑いました。
 アクティブさの欠片もない徳一。だから生活の中でドラマ性のある出来事が起こるはずもなく、徳一が物思いに耽るその内容が延々と綴られていくのです。

 その物思いのベースには老境の悲哀と諦念があるため、淡々とした文体のわりに辛気臭さが滲んでいて、読み続けるには忍耐力が要ったというのが、正直なところでした。

 例えば、徳一が公園で小さな女の子から言われた「おじいさん」の言い方について。

 その発音はカタカナ表記 ( みたい ) だった気がする。少なくとも漢字ではないようだ。ただし、「い」のところに妙なアクセントがあったので、文字にするなら「オジいサン」という感じか。

などと延々と考えているのです。
 他には、枕にカバー代わりに巻いた手拭いの替えどきについてグダグダ悩んだり、天井板の節目模様が何の形に似ているのかをあれこれ考えたりもします。
 すべてどうでもいいことなのになあと、ため息を吐きつつ読まねばなりませんでした。

 万事この調子で、徳一の頭の中だけで物語が展開するため、事件などはまったく起こりません。いちばん大きな出来事は、地デジ対応テレビに買い替えるかどうかの決断を、電気屋の主人から迫られるところです。

 ですから、短気でせっかちな人やドラマチックな展開が好きな人にはオススメできません。


 ところで、読み終わっておもしろく感じたのは、あれだけ苦痛だった日常スケッチめいた展開を、終盤は楽しんで読んでいたことでした。
 恐らくクライマックスであろう、電気屋の主人とのやりとりにほっこりして、わりといい気分で本を閉じることができたのです。特に最終話は微笑ましいばかりです。

 年寄りのよもやま話に付き合うのはやぶさかではありませんよという方は、お読みになってみるのもいいのでないでしょうか。

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2025年03月02日

Posted by ブクログ

京極夏彦は、姑獲鳥や魍魎は過去に読んだ。だが、こういうのも書いているとは知らなかった。
文章の完成度は、さすがだな。しかも、老人の分裂的思考の様が、これでもか、というくらいにしつこく描写されていて、リアルにうんざりする。(そういう小説なんでしょうけど)

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2024年08月28日

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ネタバレ

徳一さん(72)の一日密着レポート、みたいな小説。
私が今まで読んでいた老人が主役の小説とは全然違った。
私が今まで読んでた小説は「老人なのにアグレッシブすぎる!」と思うくらい色々展開が変わっていった目まぐるしい小説だったので「これがホントの姿だよなあ」とある意味新鮮だった。
地味に生きてるようで、意外に顔を覚えられてる徳一さん。
あと、レンジが家にないので驚いた。
一体徳一さんいつの生まれなの!?と思って地デジ終了の2011年から逆算してみたところ、戦前の生まれだった。そりゃ色々ついていけないよなあ。
時々ハッとするセリフを言ったりしてた徳一さん。
「鍛えているから衰えません」と豪語している奴は本格的に年をとる前に死ぬ。とかは結構その通りなのでは?と思ってしまった。
あと「長く生きているんだからお前なんかよりずっと物知りだよ。ちょっと疲れてついていくのが面倒になってるだけだ」のくだりも。

今気づいたけど、私の初、京極夏彦だったわ。

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2024年06月18日

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ネタバレ

のんびり穏やかにくらす、益子さんの日常。
目玉焼きとソーセージについて考えている様子がとても可愛いなとほっこりしました。
驚くような大事件はありませんが、とにかく益子さんの脳内でひとりボケツッコミが繰り返されていて、思わずくすっと笑ってしまいます。
最後に田中電気さんからのお願いが、これからの益子さんにとってプラスになって、さらに楽しく生きていくんだろうなぁと期待が持てました。

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2022年11月28日

Posted by ブクログ

『遠野物語remix』以来、2作目に読む京極作品。
聞くところによると、彼の作品の中では珍しく、かなり温かい雰囲気の作品らしい。

主人公は、益子徳一という、リタイアした男性。
公団住宅に一人で暮らしている。

この人物の、何でもないといえば何でもない日々が、本人のとりとめのない語りで描かれる。

地デジとやらに変えねばならないとやってくる「田中電気」二代目とのやりとり。
スーパーでうっかり試食してしまい、欲しくもないウィンナーを買うことに、自分で追い込まれていく過程。

きっと、自分に余裕があったら、こういう徳一さんにおかしみを感じたりするのだろう。
が、今は時期がいけなかった。
忙しくて、「だから何?」と思ってしまうのだ。

お正月も三日目、もはやなにもすることがなくなった午後に、おもむろに読んだら、もっと楽しめたのかも。

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2021年10月10日

Posted by ブクログ

これだけ本を読んでいますが京極夏彦さんの作品は読んだことありませんでした。何しろ分厚いしなんだかめんどくさい感じがするというのが理由です。
本書はほんわかな感じなのできっとめんどうではないだろうと踏んで読み始めましたが、ひたすら主人公徳一(72)の独白が続くのでこれはこれでめんどくさい・・・。
独り者で結婚もしていない彼なので、一人でひたすら地味な日常を送っています。心の中に時折嵐はあれど、基本的には何も事件が起きない本です。
実際に目の前に居たら理屈っぽいおじいさんで、話すのもおっくうに感じそうですが、人に寄り掛からず一人で平和に生きている所は、自分が独居老人なら理想とする所かもしれません。

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2020年08月14日

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