浅田次郎のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
こういう小説は、もうある世代以下の作家には書けないだろうな。
ファンタジーの要素を入れてエンタメとして読みやすくしながらも、近代の中国でキーとなった人物達の動きや、歴史的な事柄の背景がたいへんよくわかる。
昔、歴史の授業で袁世凱や孫文、張作霖については習った気がするけれど、日本で教えられる歴史はやはり日本に都合の良いように調整がされていたように思う。例えば教科書では孫文はもっと「偉人」扱いされていて、張作霖は「徒花」扱いされていたような記憶があるのだが…もちろんこの小説はあくまで小説なのだけれど、私たちが知らされていることが全て正しいわけではないかもしれないと、やんわり諭されているような気持ちになる。 -
Posted by ブクログ
もちろんこれは小説なのだけれど、西太后の印象を操作して貶めて自分達に有利になるようにする、というイメージ戦略は、いかにも植民地として中国を狙っていた欧米諸国(日本も同じ穴の狢だけど)がやりそうなことだと納得してしまう。もしかしたら西太后の実像はこちらにより近かったのかも?と思ってしまうと、彼女の最期の描写は胸に迫るものがある。西太后も光緒帝も気の毒すぎて…
更に、日本がしたことを考えると、いたたまれなくなる。中国が列強の植民地になった場合の日本の立場を考えると切羽詰まるのも理解はできるが…うーん…
近代史もちゃんと子供に教えた方がいいと思う。起きたことを受け止め、検証し、同じことを繰り返さないようにみんなで考えることは、とても意義あることだと思う。 -
Posted by ブクログ
芹沢鴨暗殺までの新撰組ってほんとろくなことしてねえよな、という熱量の低い感想しか出てこない。鴨の暗殺もなんかアホらしいし。
著者は農民が侍を倒すという補助戦で芹沢暗殺解体してみせた。そして、一つの集団における農民と侍の対立を描くにはどちらにも肩入れしない平等さが必要であり、新撰組にとって究極の他者である女の視点が採用された。本作で著者が必要に何人かの女の視点で新撰組を眺めるのは、構図を鮮明に見せるためだろう。新撰組という異様な半グレ集団に対峙するとき、それぞれ出自や生活環境の異なる女たちは、連帯意識を持たざるを得ない。女たちは最初から、新撰組の人々が追い求めていた、農民としてのコンプレックスを克服する可能性や侍としての誇りからは疎外されているからだ。
そして、男同士主導権争いの内ゲバという鏡に映された女たちのシスターフッド的連帯、という図式のシスターフッドが成立しているのは、女たちが徹底して政治から隔離されているからでもある。
本作をこのようなフェミニズム的な観点から読んだのは自分以外にはいないようである。本作の自分の読み方に基づくと、個人的なことは政治的なことといい始めた瞬間に女たちは政治的な分断に巻き込まれるのではないか?という問題が立ち上がる。 -
Posted by ブクログ
新撰組は悲運の武士たちみたいなロマンチックなイメージだけど、町人の立場から書くとただただ迷惑な存在で、しかも廓の中から見た彼らはひたすら陰惨な内ゲバを繰り広げる不気味な存在となる。彼らの悲劇は時代の波に乗れずに翻弄された末の破滅にあるためだと思う。時代を動かそうとしていた武士たちと関わりのない街場の地べたから見ると、人を斬っちゃあ拷問しているくせに当時の武士の本質である行政完了の地位も持たない訳の分からないいわば半グレのような存在でしかない。百姓だったり脱藩者だったりといった隊士のコンプレックスに焦点を当てることができたのは、女性に対してそれを語らせるという手法を採ったことの功績だと思う。他方で新撰組はほんとに陰惨な内ゲバや略奪行為しかしていないので全く爽快感がなく読後感が重苦しい。