山本一力のレビュー一覧
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最近流行りの、料理人を主人公とした時代小説の先鞭をつけた『だいこん』の続編。
浅草から深川に店を移した一膳飯屋の女主人つばきは、大口注文の騙りに遭うが、深川の人々の人情ある手助けもあり、店はますます繁盛。
幕府による寛政の改革の不況時も、更なる困難な状況も、誰かしらの助けですんなり乗り越えるられるのは、主人公に対する著者の暖かい思いがあるからなのだろう。
書中語られる「難儀なときこそ、ひとの値打ちが分かる」「こんなときこそうろたえるな」
「たとえつらい日が続くことになっても、明けない夜はない」等は、著者の不遇時代に体得した経験知だろう。
このシリーズ、第三部『花だいこん』があるそうで、ぜひ読み -
Posted by ブクログ
今年最初の読破本は昨年後半からはまっている山本一力の時代小説でした!
本作は、深川の女衒の主人公新三郎が、仕事の不始末で借金を負い、その返済の旅に出たところ江の島で壷振りのおりゅうと出会い、江の島神社の裸弁天を江戸で出開帳することで借金返済することを思案し、紆余曲折ありながらも2人で出開帳を大成功させ借金返済と堅気に戻ることに成功するという話までかと思いきや、続きがあり、女衒の親分である土岐蔵と4人のてきやの元締めとひょんなことから久能山参詣に一緒に行くことになり、新三郎とおりゅうが旅の差配を請負うことになるのですが、この旅を通して土岐蔵と4人の元締めの気風の良さと旅で出会った粋な人たちとの出 -
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幼い頃から両親を敬い、類まれなる商才を身に付けていった主人公つばきが、ひたむきに努力し、若くして「だいこん」という今で言う大衆食堂の商いを大きくしていく姿を描いた長編でしたが、さすがの山本一力作品だけあって、まわりの粋な人たちの支えや人の目効きをする際の深い洞察力が特に良かったですね!
己の恋愛は脇に置いて、商いに人生をひたむきに掛けるつばきの姿が悲しき孤高の天才のようで胸にしみましたね!
最後の知恵を使い、志を捨てず、ひたむきに汗を流せば、道は拓ける、人が力を貸してくれるという言葉が、この物語の真理を巧みについた言葉だと深く感銘を受けました! -
Posted by ブクログ
アカデミーで日本人として初の2等航海士の免許を得て
クジラの乱獲で大西洋では、需要を満たすクジラが得られずに
船の造船も資本家が出費を渋るようになっていた。
そんなおり、日本との通商条約締結を目論む米国の情勢にも
影響され、万次郎はフランクリン号にのることになった。
太平洋への航海だ。
アカデミーの友人ジムの協力で、太平洋の航海日誌を見ることが
できた万次郎は凪に備えて、日本の浜で知った「浄水器」をつくり、
船に装備した。このことで、いつも綺麗な水を飲むことができた。
航海の途中船長が病に。。。
ますます面白いシリーズ。次回が待たれる。 -
Posted by ブクログ
なんだこの山本さんらしくも無い、いい加減なエンディングは。最初はそう思いましたね。でも更に見事にひっくり返してくれました。ちょっと出来すぎですけどね。
1994年に書かれた最初の長編だそうです。随分荒っぽいところも感じられます。例えば腕の良い大工の銀二が、借金を抱えた身で、乞われたとは言え給金の下がる呉服屋の手代になる必然性は有りません。でも、まあそういうところは無視しましょう。
そういえば、このストーリーは先日読んだ"蒼竜"の中の"のぼりうなぎ"に似てますね。こちらは腕の良い指物師が呉服屋の手代になる話でしたけど。
何はともあれ、山本さんの読後感