あらすじ
手をつないだわけでもない。好き合っていたのかもわからない。それでも祝言を挙げると知ったあの時、涙がどうしても止まらなかった……。遠い日の思い人と再会する女性の迷いと喜びを描く「やぐら下の夕照」。売れない戯作者がボロ雪駄の縁で一世一代の恋をする「石場の暮雪」。江戸深川の素朴な泣き笑いを、温かで懐かしい筆が八つの物語に写し取る。著者の独擅場、人情の時代短編集!(解説・縄田一男)
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江戸深川を舞台にした市井時代小説です。「辰巳」とは江戸深川のこと。深川は江戸城の辰巳の方角(東南)にあたるからです。山本一力氏が長唄『巽(辰巳)八景』に材を得て紡いだ八篇の物語です。八編とも極上の物語です。それぞれ味わいが深く、私は一篇読み終えるごとにしばらく心地よい余韻に浸りました。中でも「永代寺晩鐘」と「やぐら下の夕照」が秀逸。
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江戸の人情もの短編集。心意気的なものを中心に据える話が多かった印象。
人物の背景描写が多く最初少しくどく感じたが、それが後々の理解につながることもあったので、ああこういうノリなんだなと思った。
個人的には色々な人の想いが集まって、2度橋がかけられる「佃町の晴嵐」が好みだった。
見舞金で橋を架ける決断をした先生もそうだが、その話を聞いた人々が寄り集まって色々と手助けする辺りの流れがいい。
橋がかけられるまで名前を伏せていた人たちは、絶対にその場にいたはずで、さぞ意地悪い顔をしながら驚愕している先生を眺めていたんだろうな、などと思った。
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山本一力の真骨頂とも言える深川を舞台とした時代物短編8編集でした。8編を八景とタイトルでかけているのも粋な感じです。
どの短編も素朴な人情話なのですが、それぞれ違ったテイストで面白かったですね!
最初の忠臣蔵の末後を取り扱った話が特に良かったです!
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江戸の庶民、職を持った人たちを中心にその暮らし、人との関わりを8つの短編にした作品。江戸っ子らしい気っ風の良さと、最後に主人公が気づく新たな発見は、読んでいて清々しい。2017.10.19
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深川人情短編集
先入観なしで、素直に読むといいと思います。
佃町の晴嵐は、出来すぎた話ではあるけれど、でも本当にありそうないい話。
ありそうなところが深川人情なんだなぁ
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長唄の「巽八景」にちなんだ心温まる8つの短編集。
深川を舞台にした江戸庶民の生活が巧みに描写されている。
どの話も新たな人情や自分の気持ちへの気付きで終わる。
個人的に「佃島の晴嵐」,「洲崎の秋月」が良かった。
特に辰巳芸者の心意気を描いた「洲崎の秋月」は良かった。
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どこか明るさを含む情緒のある作品でした。
ストーリーの作り方が、ほぼ同じパターンですね。導入でクライマックス直前を描き、次に逆戻りしてその背景やそこに至る過程を描いていく。そして最後に一気のクライマックス。この持ち上げ方が、なかなか見事です。時折、そう来るかと思わせるエンディングも混じっていますし。
いかにも江戸の庶民を生き生き描く山本さんという感じで、なかなか良い作品です。