柴田元幸のレビュー一覧

  • 幽霊たち(新潮文庫)

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    鍵はウォールデンである。
    ある男を監視する主人公は、男の買ったソローの森の生活を読もうとして挫折する。
    ゆっくりと読む、それが主人公の陥った袋小路を打開する唯一の手段。
    しかし、その機会を失った事で、停滞していた監視は、主人公を傍観者の立ち位置から巻き込む形で、監視される男へと、一種、予定調和の様に集約していく。
    ゆっくり読むべきは、我々読者だったのか?
    この転換は、小説の丁度ど真ん中でピッタリと折り返す様に起き、計算された構成を味わえます。

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    2025年01月22日
  • ガラスの街(新潮文庫)

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    ネタバレ

    物語の中に著者が出てくるメタ要素がある中で、同じくメタ要素のあるドン=キホーテをとりあげるというユーモアさもありつつ、妻と息子を失った主人公の虚無感ゆえの自己の抽象化と、そこから起こる探偵物語のような展開に惹き込まれる。

    どうなっていくんだろうと没入するほど、奇妙に歪められた世界を見ることになった。
    結論から言うと解決はされていない。
    俎上に載せられた問題は何もわからないまま、物語の幕は閉じる。
    真実の物語なのだから、常に答えが用意されているとは限らないよね、という感じなのか。
    それでも、面白い。

    個人的な読字体験として、プルーストとイカ〜読字は脳をどのように変えるか〜を併読していて、文字

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    2024年12月15日
  • 4 3 2 1

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    ネタバレ

    やー、面白かったなー!!分厚くしかも二段組で、嬉しくこの世界に浸った。

    注:何をどう書こうが読み進む面白さを削いでしまってはいけないので、未読の方はここから先を読まないでください。


    最初の1.1、1.2で、むむむ?と思いながら読んでいたのが、1.3あたりから、もしかしてこれってそういうこと?!と急に霧が晴れてきて、すごい構成だなーとぐいぐい来た。どういうことかは読んで知るのが吉。ラストも素晴らしい。余談ですが、そういえばポール・オースターはコロンビア大学なんだね。まさに『いちご白書』の渦中の人だったんだ?

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    2024年12月15日
  • ガラスの街(新潮文庫)

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    探偵小説のようでそうでもない
    ひとりの男の「間違い電話から始まった」
    物語
    「ニューヨークは尽きることのない空間、無限の歩みから成る一個の迷路」
    やっぱり気になる
    読み終えたあともっと
    気になる
    ゼロは始まりか否か

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    2024年12月08日
  • ユリイカ 2015年3月臨時増刊号 総特集 150年目の『不思議の国のアリス』

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    理想化された「少女」としてのアリス。
    ロリータ・ファッションなど、少女主体のガーリー・カルチャーにも派生。

    ディズニーアニメ、実写映画、演劇など、さまざまな翻案(アダプテーション)にも言及。

    英国文学、児童文学、言葉遊び、ナンセンス、数学者で論理学者のドジソン教授、当時の写真技術、鉛中毒の帽子屋……などなど、様々な角度から論じられる「アリス」の魅力について。

    表紙イラストはヒグチユウコ。

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    2024年11月02日
  • ブルックリン・フォリーズ(新潮文庫)

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    非常に起伏に富んだ鮮やかなストーリー展開で一気に読ませる力がある。所々に出てくる現実の出来事への評価を含めて政治的にも旗幟鮮明であり、「多様性とその敵」とばかりに定義される善悪の構図は、寛容がベースとなる本書の筋書きの中では怒と憎悪の感情が顕になる貴重なアクセントでもある。
    小説の舞台から四半世紀、出版から20年が経過した現在から見ると、ポリティカル・コレクトネスが高らかに歌い上げられている光景には当時の熱気と未完の革命への期待感のようなものが感じられる。その明るさが、結末部分に迫る非常に暗い影と対照的に浮かび上がる仕掛けには思わず唸らされた。

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    2024年10月05日
  • ブルックリン・フォリーズ(新潮文庫)

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    あとわずかで60歳のネイサン。
    妻イーディスとの結婚生活は破綻し、娘のレイチェルともうまくいかない。
    そこへガンにかかり、治療はなされ小康状態になってはいるが、仕事も失った。
    死までの時間を過ごすため、幼少期を過ごしたニューヨークのブルックリンに移り住むところから物語が始まる。

    こちらとてキラキラした物語を期待しているわけじゃない。
    それでも、序盤からこんなんでついていけるか不安になってくる。
    が、そんな不安は次第に払拭される。
    その後のネイサンの人生は、実に魅力的なものになっていくからだ。

    それには、やはりネイサンのキャラクターが大きな要素になっているのかな、と思う。
    彼は自分の人生を振

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    2024年10月06日
  • デカルトからベイトソンへ――世界の再魔術化

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    私の大学生活でこの本を何度読み返したか分からない。タイトルの「再魔術化」という表現は、マックス・ウェーバーがかつて「プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神」の中で、近代化によって以前のアニミズム的思考が薄れてしまった状況を表した「脱魔術化」との対比表現である。しかし重要なことは、両者は対立的ではないということだ。なぜなら、「再魔術化」は、近代のデカルト的思考を否定しているわけではなく、むしろそれとアニミズム的思考との統合を目指しているからだ。そして、この統合に取り組んだのがグレゴリー・ベイトソンである。本書でもベイトソンの理論が簡潔にまとめてあるが、彼の代表作である「精神と生態学」「精神と

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    2024年08月02日
  • ブルックリン・フォリーズ(新潮文庫)

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    面白くてたまらなくて、
    がっしがしに読み進めた!

    これまで読んだポール・オースターは、
    もっと複雑で、言葉の迷宮に入り込み、
    冷たさや悲観的な部分があるからこそだった気がするが、
    とてもあたたかくて、優しくて、
    楽観的で、希望がある。
    もちろん人生なので悲痛な痛みや別れはあるのだけれど。

    街角で巡り合う人々や、
    家族の繋がりの中で、
    名もなき人々の物語が照らし出されてきたからこそ、
    ラストの2段落に、
    はっと息を呑むのだった。

    すべての人々に、
    他にはない特別な物語があったのだということを、
    ブルックリンへの愛を込めて、
    ポール・オースターは全力で言いたかったのだな。

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    2024年06月20日
  • ブルックリン・フォリーズ(新潮文庫)

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    還暦目前、自身の身の錆で離婚をすることになり、さらには肺ガンにもかかり、残りの余生は静かに暮らしたいと故郷であるブルックリンに一人戻ってきたネイサン。
    幸いガンは予後が良いようで、もうしばらく人生を楽しめるというなか、新生活を始めるやいなやわきおこる数々の騒動。
    騒動の中で登場するネイサンの甥であるトム、トムが働く古書店の(怪しげな)主人のハリー、通りすがりに出会った完璧に美しい母親(PBM)ナンシー、トムとネイサンのもとに突然現れた少女ルーシー。
    その他、ネイサンが行動する範囲で現れる数々の人々を群像劇的に描いていく。

    騒動がおこり、それが収束していくなかで変わり、そして深まっていく人間関

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    2024年06月01日
  • 舞踏会へ向かう三人の農夫 上

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    隅から隅まで溢さず読んだとは決して言えないけど、本当に面白かった。
    パワーズは元々ゴリゴリの理系だったけど、知識によって世界を理解するのに限界を感じて文転し、小説の中でいろんな実験をするようになったと聞いた。(ニュアンスで理解)
    その経歴の通り、膨大な知識や事実をベースにしながらも大胆に物語を繋いでいて、その想像力に感動し好きになってしまった。
    ただどの他作品も大ボリュームの大作だから、読み始める勇気が一生出ない、、

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    2024年05月28日
  • ブルックリン・フォリーズ(新潮文庫)

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    オースターと言えば抗えない偶然の連続によって自分を失くしていく物語という印象だったけど、この話は偶然の連続によって自分を取り戻していく物語だった。出てくる登場人物が揃いも揃って問題を抱えていて、更に打ちのめされるような展開もあるのだけど、訳者あとがきにもあるようにオースターにしては楽天的でポジティブな話なんだけど、あのラストをどう解釈すれば良いのかちょっとまだ消化できていない。そこも含め、今まで呼んだオースターの小説の中で一番好きかもしれない。

    カフカの人形のくだりが特に印象的

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    2024年05月21日
  • ブルックリン・フォリーズ(新潮文庫)

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     突然のポール・オースターの訃報を聞き、長年積読状態だった本書を手に取りました。難解と思い込み本棚で眠っていましたが、オースターってこんなに面白かった?と思わせる小説。10ページ弱のエピソードが怒涛に展開してとても読みやすい。「アメリカ文学」って高尚に構えるのではなく、日本の小説ではないアメリカ的な「物語」を読んでいる、引き込まれて行く感覚。
     結局、人は一人では生きられない。誰かとの繋がりを求めている。オースターの小説の登場人物は、高度資本主義かつ大量消費社会に馴染めないインテリの男が多い。本書もしかり。人間は愚かな生き物だけれども、だからこそ魅力的でもあり愛すべき存在。
     もちろん読みやす

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    2024年05月13日
  • 翻訳夜話

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     残念ながら柴田先生の講義を受ける機会に恵まれませんでしたが、翻訳者としての意見を本書で知ることができ、嬉しいです。翻訳について村上派か柴田派か、と聞かれれば、私は柴田先生を選びます。
     大学にて翻訳理論、英文学翻訳、米文学翻訳の授業を受講していたのですが、各先生と柴田先生は、翻訳者の立ち位置について似たことを仰っていました。
     改めて「翻訳者とは」を勉強した気持ちです。

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    2024年02月25日
  • ブルックリン・フォリーズ(新潮文庫)

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    お気に入りの本になった!
    波瀾万丈あるけど、喜劇的な要素が多く、悲しいシーンでも文章にユーモアがあり面白いから楽しく読めた。
    主人公ネイサンは基本的には他の登場人物たちを手助けするような立ち回りだったけど本人もしっかり作中で成長していて、人生の明るい部分を思い出させてくれるかのようなお話だと思った。
    ポールオースターを読んだのは冬の日誌/内面からの報告書に次いで2回目。なのでまだ多くを語れる立場ではないけどこの人の書く文章や感性が好きだなと思う。

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    2024年02月23日
  • 冬の日誌/内面からの報告書(新潮文庫)

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    自分の人生を肉体と精神のそれぞれの側面から振り返った本。
    ただの自叙伝ではなく、構成がかなりユニークで面白いと思った。時系列順に並んでなかったり、各章でアプローチ方法が全然違ったりなど。あんまり詳しく書くとネタバレになってしまうけど、私は本を書く人間ではないのに思わずこういう書き方もあるんだって感嘆するようなものだった。
    全く違う国と時代と性別に生まれた人だから、情景を上手くイメージできないこともあったけど、それでも筆者の人生を一緒に辿るのが楽しかった。

    恥ずかしながらポール・オースターのことは知らなくてこの本をたまたま書店で目についたからなんとなく買っただけなんだけど、文章がとにかく面白く

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    2024年02月13日
  • トム・ソーヤーの冒険

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    ハックルベリーフィンの冒険を読んだ後、読まなければと思っていたこの本をやっと読むことができた。
    やはりとても面白かった。
    ミシシッピ川河畔の描写も多く、20年前に訪れた、マークトウェインの生家までセントルイスから車でドライブした時のことを思い出した。
    ミシシッピ川沿いをずっと北上してたどり着いた。
    道中所々で見えたミシシッピ川は水量が多く堂々としている印象だった。
    マークトウェインはもちろん知っていたが、まだ本は読んでいなかったので、ただ単に訪れたというだけで終わってしまったが、読んでから行けばよかったと今は後悔の気持ちでいっぱいだ。
    できれば再度訪れてみたい。

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    2023年09月18日
  • ムーン・パレス(新潮文庫)

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    良い本だ。
    M.S.フォッグの生き方に対しては、自分もそうなってしまうのではないかという不安と、羨ましさの感情が混ざる。

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    2023年07月18日
  • 雲

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    序盤、黒曜石雲の描写から始まり、終始どんよりした空気を感じながら読み進めた。
    度々差し込まれた奇怪なエピソードが鋭く心に残る。
    決して明るい物語ではないが、読書体験としては新鮮に感じた。

    主人公ハリーとその息子フランクとの関係性が独特(互いを尊敬しつつ、なんでも話せる関係、ではない感じ)で、こんな親子も良いなと思った。

    通して、ハリーの内面に迫っていく感じが面白い。

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    2023年06月04日
  • 写字室の旅/闇の中の男(新潮文庫)

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    「闇の中の男」作中作と現実世界が交互に進み、どうなるんだろうと思ってどんどん読んだ

    ミステリーではないから伏線があって分かりやすく繋がっているというものではないが、通して読んで本当に良かったと思えた海外文学作品
    特に孫娘に語るソーニャとの日々のところが良かった
    読後感も良い

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    2023年01月05日