柴田元幸のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
読んだばかりのJ.D.Salinger の「Catcher in the Rye」について、訳者である村上春樹と、それを教材に東大で講義をしている柴田元幸が徹底的に語り合っている。
この小説は「社会に反抗する無垢な少年の物語」という評価が通り相場らしいが、村上も柴田もそれに関してはとても否定的である。以前は、若者はこの小説を読まないことには話が始まらないというところがあったそうだ。ところが二人の対談を読んでいると、とてもそんな単純な物語ではないことに気付かされた。
二人は「トム・ソーヤー」や「ハックルベリー・フィン」を引用しながら、ヨーロッパにある成長物語はアメリカにはない。反成長物 -
Posted by ブクログ
それぞれの事情を持った4人がサンセット・パークで過ごす数ヶ月間の物語。
学生の頃から、ポール・オースターが好きで、久しぶりに読みたくなり購読。
“青春群像劇”とは銘を打っているが、いままで読んできた青春小説とはだいぶ趣がことなる。それもそのはず、この小説の名は『サンセット・パーク』、つまり日が沈みゆくような仄暗い背景を舞台にした物語なのだ。
この本が書かれた当時、世界金融危機が起きた直後だった。先行きが不透明な社会情勢と、自分が何者になれるのか、あるいはなれないのかという将来への不安と希望を抱く若者達の心の葛藤が、同じような色調で物語に彩りを与えている。 -
Posted by ブクログ
これが最後の長編小説という先入観があるせいか、喪失の悲しみと、老いやその先にある死への諦念が色濃く感じられました。再生とか、ここからもう一花、みたいな明るさを見出した人もいるようなのだけれど、わたしには人生の最終章という印象のほうが強かった。なんかずっと寂しかったです。たとえば秋の景色に対して、きらきらと日の光を受けて輝く紅葉や落ち葉のじゅうたんが美しくて好ましいと感じる人がいる一方で、冷たい風を受けて散っていく葉や道路をカラカラと駆けてゆく枯葉に心がざわついてうら寂しさを感じる人もいますよね。この本はわたしにとっては後者の景色。オースターはどんな思いで書いていたのだろう。
-
Posted by ブクログ
笑えるのに笑えない。泣けるのに泣けない。
枯淡の境地なんてどこ吹く風の、初老の男を巡る物語。
思い通りにいかない老いた体への諧謔と、縦横無尽に展開される思考の渦と、あたふたとした日常の瑣末時のごった煮の中に、失った人生の伴侶への愛、若き日々の一コマ、奇跡のような喜びの瞬間が、突然一筋の光として差し込まれる。
そして、オースターが最後の一行に込めた力強い宣言は、逃れがたい現実に満ちた人生を、煌めくジョークとスリリングな冒険へと変えてくれる。
“生きるとは痛みを感じることであり、痛みを恐れて生きるのは生きるのを拒むことなのだ。”
“ある出来事が真実として受け容れられるためには、それが -
Posted by ブクログ
私立探偵ブルーは、明らかに変装しているホワイトという男から、ブラックという男を見張るよう、依頼を受ける。
最近ブラウンから探偵事務所を受け継いだばかりのブルーは、張り切って見張るのだが……。
依頼人が用意した見張るための部屋は、ちょうどブラックの部屋が正面から見張れるような位置にあった。
充分に報酬が支払われ、見張り部屋の家賃も支払うって、どれだけ重要なミッションなんだよ!
ところがブラックときたら、毎日窓辺のデスクで何かを書き、本を読み、買い物に出、たまに映画を観たり、飲みに行ったり。
こんな生活が1年以上続く。
一体ブラックは何者で、何のために彼を見張らなければならないのか。
登場人 -
Posted by ブクログ
一本の間違い電話をキッカケに自分がポール・オースターという名の探偵となる作家ダニエル・クイン
自分の気配を消し、探偵のふりをするうちに、自分という個の意識から自由になるかわりに自分を見失っていく話
探偵となった主人公が何かを解決することもなく⋯うっすら根底に不穏な雰囲気を醸し出している
「何者でもない自分」を演じ、そのように振る舞い、それが継続されていくと自己は自分を認識できずに混乱していくのか?、と思い至った
ほの暗い色彩のないグレーな印象で少々気分が下がるけど
なぜかこの著者の本を他にも読んでみたいと思った
あと柴田元幸さんの翻訳がうまいと思う
-
Posted by ブクログ
積読状態にある「ジェイムズ」……。
何となく「ハックルベリイ・フィンの冒険」を読んでから手に取ろうと思っていたが、どうせならトム・ソーヤーも読んでおこう、と。
多分、子供の頃に児童書で触れたような気も……でも、内容はよく覚えていなかったので。
改めて読むと、ポリー伯母さんの髪が真っ白になるのもよくわかる(笑)
牧歌的な時代の、トム・ソーヤーの冒険譚、単なる童話というだけに収まらない。少年の自尊心や畏れ、悪に憧れはあるが、本当の悪には決して染まらず、いい意味でのスラップスティック的要素と、根底にあるキリスト教的信仰、それをも超越するハックの目線。
事件も上手くハメ込まれ、こんな話だったっけ…… -
Posted by ブクログ
わりと困惑させられる「だーいどーーーんでーーーんがえしーーー!!!」みたいのがあって、おいおいそれでええんか?『夜と霧』みたいなシリアスさの偽史ものとして読んでいたのに。終盤で『アフリカンカンフーナチス』みたいになっちゃう(というのはさすがにいいすぎ、でもいいたかった)のはつっこまれるべきだろう。
民族差別が、全面的な抑圧ではなくて分断と懐柔により達成される、というのは極めて今日的。フルコース食べてる時にワインのグラスを倒してシルクのクロスとメインディッシュがびちゃびちゃになるみたいなイヤァ〜な怖さでよかった。
市井の人の意地や信念みたいなのを描くのが上手な人。登場人物の内心でなく言動を描写し -