柴田元幸のレビュー一覧
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作品紹介・あらすじ
エッセイで指南し、
小説で実践してみせる。
当代一の書き手によるゴシック入門。
エドガー・アラン・ポー、ウィリアム・フォークナーから始まり、内田百閒、伊藤潤二、柴崎友香、『鬼滅の刃』までのゴシック、ホラーの作品世界を、現代アメリカの最重要ゴシック作家のひとりブライアン・エヴンソンが語り尽くす。書き下ろしを含むゴシック小説4編(うち3編は本邦初公開)と、柴田元幸との対談も収録。完全英日バイリンガル本。
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ブライアン・エヴンソンは大好きな作家の一人。今のところ翻訳されている彼の作品は「遁走状態」と「ウインドアイ」の二冊だけだけれど、僕は二冊ともに五つ星にしてい -
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オースター初期、ニューヨーク3部作のうち「孤独の発明」と「幽霊たち」は読んだ記憶があるのだが本作は未読。追悼特集で平積みになっていたところでついに手に取った。
探偵小説のような体裁で書かれているが、探偵小説のような謎解きも、事態の進展もない。
馴染みがありそうな例えをするならば、村上春樹的な不思議空間に迷い込み、探偵のようなことをさせられた男の物語といったところだろうか。
いささか実験的小説のような印象も受け、いろんな手法とテーマが混ざり合っているのだが、敢えて軸となるテーマを探し出すとするのであれば「言葉」と「狂気」と「認識」だろうか。
虐待を受けて育ったクライアントが用いる違和感のある言 -
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ニューヨーク3部作~「ガラスの街」「鍵のかかった部屋」「幽霊たち)
1985年~1986年に執筆されたこの傑作揃いは、全く、互いに関連するものはない。
なのに、読書中、読後感が同じ匂い、感触に包まれる。
どれも読んだのは20年余前、仕事の合間に読んだ事もあり、あんまり記憶に残らなかった。
年齢もあるのか・・と今回、まずこの本を再読してみて感じた。
共通するモチーフは「孤独」そして無色ではないとしても没個性的「存在の」人物・・ブルー・ブラック、ホワイト、レッド、ヴァイオレット・・・
ブルーがブラックの指示に従い、歩き走り行動して‥現実と虚構のはざまが薄れ消えていく感覚がこちらにも伝わってくる -
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「それは人類が初めて月を歩いた夏だった」
主人公マーゴの物語が始まる。
敬愛するビクター伯父さんを亡くしてから、隙間から見える「ムーン・パレス」のネオンサインを、ただ眺め、思い浮かべるだけの生活を彷徨う……やがて、友とキティという女性に助けられて、無為の果てから生還する。
そののちに出会ったエフィングという人物が、主人公に生き様を見せる。
「……どこでもない場所のど真ん中の、何もない荒野に、独りぼっちで何か月も……わしはどこへもいく必要なんかないんだ。ちょっとでも考えれば、とたんにもうそこに戻っているんだから。このごろじゃ一日の大半はそこにいるのさ……」
物語は次に主人公マーコとエフィン -
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直前に読んだアガサ・クリスティーの『オリエント急行の殺人』が、”リンドバーグ誘拐殺人事件”を下地にして書かれていましたが、本作でも言及されていました。読書していると、不思議な繋がりって結構あるものですよね。
小さな単葉機を操縦し、人類初のニューヨーク=パリ間の大西洋単独無着陸飛行を達成したリンドバーグ。アメリカ国民に絶大な人気のあった彼は、親ナチス的で反ユダヤ人主義の考えを持つという別の面も持っていました。本作は、そんな彼が世界大戦の嵐吹き荒れる1940年に、もしローズベルトの代わりに大統領になったら……という歴史改変小説。
アメリカ国内に限れば、戦争に参戦せず、強制収容所もない平和な国を -
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難解だと感じるのに面白いからかするする読み進められた。
いかにもミステリーといった始まり方だったから途中まではこの事件の真相は一体どこにあるんだろう、どうやって解明されるんだろうとワクワクして読んでいたけどそういう次元の話ではなかった。
最後の方急に物語が動くけどラストシーンであれはあの時の伏線だったのか!と思う瞬間がありそれがとても楽しい。
結局どこに行ったんだろうね。途中で語られてた街にいる様々な人たちと同じようにニューヨークの街に溶けて消えてしまったみたい。
三部作は幽霊たちを先に読んだんだけど本作も同じく書くことの苦悩を感じた。 -
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南米で『黒曜石雲』という古書を手に取った「私」は、そこにスコットランドのダンケアンという地名を発見して驚愕する。それはかつて「私」が逃げるように立ち去った場所だった。一人の男の半生記に奇妙で不条理なエピソードを散りばめた、著者の集大成的な長篇小説。
マコーマックによる果てしない自己言及の物語。自作のパロディや再話がふんだんに入っていて、マッドサイエンティストがでてきたり南国に対するエロティックな妄想が爆発していたりと『パラダイス・モーテル』『隠し部屋を査察して』の要素が踏襲されていながらも、訳者あとがきで柴田さんが言うとおり、ビザールな悪趣味だけじゃない温かみを感じられるのが今までと違うな -
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自己紹介を兼ねた序章で、本書の主人公は3歳の時以来56年ぶりにブルックリンに戻ってきたと書かれている。肺癌を患い、目下のところ小康状態で、生まれ故郷のブルックリンで過ごすことにしたと。病気のためか明らかにしていないが、仕事はリタイアしたと。くしくも、日本でいう定年退職の年頃だ。
定年退職者の日常となると、1か月前に定年退職を迎えたわが身としては他人ごとではないが、平穏なわが身と異なり、主人公はいろいろな人と関わり、周辺でいろいろな出来事が起こる。タイトルのフォリーズ( ”愚行” や”愚かな”) の意味の通り、客観的に見れば、些細で愚かなことかもしれないが、ご隠居の視点から見ると、関わる人 -
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おそらく名著と呼ばれるであろう類の作品。
なのだが、私にはだいぶしんどかった。ようやく読み終わった、というのが正直な感想。
1940年前後の、本当にあった史実から、反ユダヤ思想をもった(これも史実である)チャールズ・リンドバーグが大統領になるというIFを乗せて物語がスタートする。
アメリカは決して戦争に与しない。そのためであれば、ナチスとでも仲良くするし、そのおかげで我が国は戦争にも巻き込まれず平和ではないか、という主張で妄信的な支持を得る。
その一方で、彼が発する様々なユダヤ人を圧迫する施策(これがタイトルの”Plot Against America”の由来となる)により、国内にユダヤ人差 -
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ニューヨーク3部作からオースターを読んでる身としては、
この2作は本当にニューヨーク3部作との関係性で語りたくなる作品。
というのはあの3部作はまさに「作家が小説を書くというのはどういうことか」をめぐる3作だったわけだし、
もちろんその後の作品でもそういった問題意識を提示してきたけれど、
この2作は本当にそこを前面に押し出して「書くものの責任」「書かれた世界への畏怖」みたいなものを強く感じます。
「写字室」はコミカルであり、ファンサービス的な部分を感じたけれど、「闇の中の男」は後半の作家を殺さなきゃならないって部分で緊張感が高まるし、映画化もあるんじゃないかと感じました。
スパイク・ジョーン -
購入済み
オースターファン向けです。
『孤独の発明』を30代の頃に書いたオースターが歳をとり自分の身体史・精神史を振り返ります。個人的には「冬の日誌」の方が好きかな。
ここから大作『4321』に繋がるわけですがこちらはまだ未訳…。 -
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ネタバレ思ってたより書かれた時代が前。今では異世界転生めちゃくちゃあるけど、そういうお決まり一切ない時代にできた異世界生活の話。目次見てまずびっくりした。大体書いてあるじゃん!
解説が充実してる。痒いところに手が届くって感じで無かったら得られる情報半分以下になってたかも。黒後家蜘蛛の会読んでからアイザックアシモフを知り合いだと思ってるので、アシモフの注釈を引用してくれるの嬉しい。一緒に読んでる気分になる。
どこの国行ってもイギリスの腐敗した政治を人間代表みたいに語るのやめてほしい。他に漂着する人滅多にいなさそうだから、多分今でもめちゃくちゃな世界として伝えられてると思う。流石に仕組みはもうちょっと進化