柴田元幸のレビュー一覧
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非常に起伏に富んだ鮮やかなストーリー展開で一気に読ませる力がある。所々に出てくる現実の出来事への評価を含めて政治的にも旗幟鮮明であり、「多様性とその敵」とばかりに定義される善悪の構図は、寛容がベースとなる本書の筋書きの中では怒と憎悪の感情が顕になる貴重なアクセントでもある。
小説の舞台から四半世紀、出版から20年が経過した現在から見ると、ポリティカル・コレクトネスが高らかに歌い上げられている光景には当時の熱気と未完の革命への期待感のようなものが感じられる。その明るさが、結末部分に迫る非常に暗い影と対照的に浮かび上がる仕掛けには思わず唸らされた。 -
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あとわずかで60歳のネイサン。
妻イーディスとの結婚生活は破綻し、娘のレイチェルともうまくいかない。
そこへガンにかかり、治療はなされ小康状態になってはいるが、仕事も失った。
死までの時間を過ごすため、幼少期を過ごしたニューヨークのブルックリンに移り住むところから物語が始まる。
こちらとてキラキラした物語を期待しているわけじゃない。
それでも、序盤からこんなんでついていけるか不安になってくる。
が、そんな不安は次第に払拭される。
その後のネイサンの人生は、実に魅力的なものになっていくからだ。
それには、やはりネイサンのキャラクターが大きな要素になっているのかな、と思う。
彼は自分の人生を振 -
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ネタバレ結末はあっけなく、とても不明瞭なものだった。
なのになぜこんなに満ち足りた読後感なのだろうか。
結末に至るまでの空想にふける時間がとても濃密で、思考するブルーを観測することを楽しんでいたからだ。
そしてブルーと同じくブラックとホワイトについて推理をする。文章から得られる情報を整理し余白に想い馳せることを繰り返す状態はブルーと同じ感覚だったし、ブルーが様々な変装でブラックに近づく場面でブラックが発した「幽霊たち」の状態そのものだろう。
ブルーと意識が近くなるにつれて、ブラックに少しでも動きがあると嬉しくなったりしていた。
ホワイト(ブラック)が書いた物語がブルーのことだとすれば、その正体はオ -
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私の大学生活でこの本を何度読み返したか分からない。タイトルの「再魔術化」という表現は、マックス・ウェーバーがかつて「プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神」の中で、近代化によって以前のアニミズム的思考が薄れてしまった状況を表した「脱魔術化」との対比表現である。しかし重要なことは、両者は対立的ではないということだ。なぜなら、「再魔術化」は、近代のデカルト的思考を否定しているわけではなく、むしろそれとアニミズム的思考との統合を目指しているからだ。そして、この統合に取り組んだのがグレゴリー・ベイトソンである。本書でもベイトソンの理論が簡潔にまとめてあるが、彼の代表作である「精神と生態学」「精神と
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面白くてたまらなくて、
がっしがしに読み進めた!
これまで読んだポール・オースターは、
もっと複雑で、言葉の迷宮に入り込み、
冷たさや悲観的な部分があるからこそだった気がするが、
とてもあたたかくて、優しくて、
楽観的で、希望がある。
もちろん人生なので悲痛な痛みや別れはあるのだけれど。
街角で巡り合う人々や、
家族の繋がりの中で、
名もなき人々の物語が照らし出されてきたからこそ、
ラストの2段落に、
はっと息を呑むのだった。
すべての人々に、
他にはない特別な物語があったのだということを、
ブルックリンへの愛を込めて、
ポール・オースターは全力で言いたかったのだな。 -
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還暦目前、自身の身の錆で離婚をすることになり、さらには肺ガンにもかかり、残りの余生は静かに暮らしたいと故郷であるブルックリンに一人戻ってきたネイサン。
幸いガンは予後が良いようで、もうしばらく人生を楽しめるというなか、新生活を始めるやいなやわきおこる数々の騒動。
騒動の中で登場するネイサンの甥であるトム、トムが働く古書店の(怪しげな)主人のハリー、通りすがりに出会った完璧に美しい母親(PBM)ナンシー、トムとネイサンのもとに突然現れた少女ルーシー。
その他、ネイサンが行動する範囲で現れる数々の人々を群像劇的に描いていく。
騒動がおこり、それが収束していくなかで変わり、そして深まっていく人間関 -
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突然のポール・オースターの訃報を聞き、長年積読状態だった本書を手に取りました。難解と思い込み本棚で眠っていましたが、オースターってこんなに面白かった?と思わせる小説。10ページ弱のエピソードが怒涛に展開してとても読みやすい。「アメリカ文学」って高尚に構えるのではなく、日本の小説ではないアメリカ的な「物語」を読んでいる、引き込まれて行く感覚。
結局、人は一人では生きられない。誰かとの繋がりを求めている。オースターの小説の登場人物は、高度資本主義かつ大量消費社会に馴染めないインテリの男が多い。本書もしかり。人間は愚かな生き物だけれども、だからこそ魅力的でもあり愛すべき存在。
もちろん読みやす -
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誰かのおすすめ本で紹介されていて
気になって購入後、積読したままにしてたら
何に惹かれて買ったか、どんな内容か
さっぱり忘れてしまってた
わたしの最近の傾向でSFだったかなーと
思いながら読み進めたが、物語である。
僕の視点で話はすすむ
むむむ、最後まで読み切れるかなー
と不安になりつつ、読み進める
50ページも過ぎた頃からか
どんどん引き込まれていく
彼の中に。
小説って、また読もうと思うものはなかなかない
一回読んで、あーよかった、面白かったと
でも、最後まで、ワクワクもするし
人生についてすごく考えさせられる
アメリカ文学って、結構文化的なことを
知った上じゃないと楽しめないのが -
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自分の人生を肉体と精神のそれぞれの側面から振り返った本。
ただの自叙伝ではなく、構成がかなりユニークで面白いと思った。時系列順に並んでなかったり、各章でアプローチ方法が全然違ったりなど。あんまり詳しく書くとネタバレになってしまうけど、私は本を書く人間ではないのに思わずこういう書き方もあるんだって感嘆するようなものだった。
全く違う国と時代と性別に生まれた人だから、情景を上手くイメージできないこともあったけど、それでも筆者の人生を一緒に辿るのが楽しかった。
恥ずかしながらポール・オースターのことは知らなくてこの本をたまたま書店で目についたからなんとなく買っただけなんだけど、文章がとにかく面白く