柴田元幸のレビュー一覧

  • ガラスの街(新潮文庫)

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    ネタバレ

    物語の中に著者が出てくるメタ要素がある中で、同じくメタ要素のあるドン=キホーテをとりあげるというユーモアさもありつつ、妻と息子を失った主人公の虚無感ゆえの自己の抽象化と、そこから起こる探偵物語のような展開に惹き込まれる。

    どうなっていくんだろうと没入するほど、奇妙に歪められた世界を見ることになった。
    結論から言うと解決はされていない。
    俎上に載せられた問題は何もわからないまま、物語の幕は閉じる。
    真実の物語なのだから、常に答えが用意されているとは限らないよね、という感じなのか。
    それでも、面白い。

    個人的な読字体験として、プルーストとイカ〜読字は脳をどのように変えるか〜を併読していて、文字

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    2024年12月15日
  • 4 3 2 1

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    ネタバレ

    やー、面白かったなー!!分厚くしかも二段組で、嬉しくこの世界に浸った。

    注:何をどう書こうが読み進む面白さを削いでしまってはいけないので、未読の方はここから先を読まないでください。


    最初の1.1、1.2で、むむむ?と思いながら読んでいたのが、1.3あたりから、もしかしてこれってそういうこと?!と急に霧が晴れてきて、すごい構成だなーとぐいぐい来た。どういうことかは読んで知るのが吉。ラストも素晴らしい。余談ですが、そういえばポール・オースターはコロンビア大学なんだね。まさに『いちご白書』の渦中の人だったんだ?

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    2024年12月15日
  • ガラスの街(新潮文庫)

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    探偵小説のようでそうでもない
    ひとりの男の「間違い電話から始まった」
    物語
    「ニューヨークは尽きることのない空間、無限の歩みから成る一個の迷路」
    やっぱり気になる
    読み終えたあともっと
    気になる
    ゼロは始まりか否か

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    2024年12月08日
  • 幽霊たち(新潮文庫)

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    奇妙な依頼を受ける私立探偵
    ただ、見張り続けるだけ
    何かおこるわけでもなく
    次第におかしな思考になり
    おかしな行動をとる
    いったいなんなの!
    と、読む側もおかしくなる
    が、なんだか気になって気になって
    一気に読まずにはいられない
    読みおわっても
    気になって仕方がない

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    2024年12月07日
  • ムーン・パレス(新潮文庫)

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    柴田元幸さんを知ってから
    ポール.オースターを知りました
    そしてやっとこの有名な作品を読むことができました
    なんともせつない青春小説
    月が常にそばにいて
    絶望と、偶然と、運命と、に振り回される
    「太陽は過去であり、地球は現在であり、月は未来である」ムーンパレスで出会ったこの言葉が
    自らの家系を知り、未来を暗示していく

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    2024年12月07日
  • ムーン・パレス(新潮文庫)

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    10年ぶりくらいに再読。フォッグがユタ州の荒野をもっとずっと彷徨ってるイメージだったけど、実際には数ページだった。
    世界との繋がりが完全に絶たれたと思っても、意外なところに繋がりは残っている。世界は偶然が支配している。終わったと思ったところから始まる。どんな絶望的な状況でも、世界は自分と関係なしに回り続ける。
    「僕はただ歩きつづければよいのだ。歩きつづけることによって、僕自身をあとに残してきたことを知り、もはや自分がかつての自分でないことを知るのだ。」

    キティが魅力的すぎる。

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    2024年12月03日
  • ムーン・パレス(新潮文庫)

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    ネタバレ

    最高。これがロマンチック。

    ムーンパレスという名前のままに、何度も月に関するものが出てくる。叔父さんが「金がないからこれ以外送れないんだよ」と送ってくれた1000弱の本とそれを包むダンボールを家具にするという発想。叔父さんが亡くなりそのダンボールを本を読み売ることで悲しみと同時に消費し、叔父さんの本来の「役に立てる」を実行する。売る本もなくなってからは路上生活をするようになりその中でキティと出会い親友とキティに救われる。

    次に盲目で車椅子に乗った気の狂った振りをする変わり者のおじいさんエフィングのところで働くことになる。エフィングが急に死を悟り、エフィングの隠された壮絶な物語が開けて行く。

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    2024年11月23日
  • ユリイカ 2015年3月臨時増刊号 総特集 150年目の『不思議の国のアリス』

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    理想化された「少女」としてのアリス。
    ロリータ・ファッションなど、少女主体のガーリー・カルチャーにも派生。

    ディズニーアニメ、実写映画、演劇など、さまざまな翻案(アダプテーション)にも言及。

    英国文学、児童文学、言葉遊び、ナンセンス、数学者で論理学者のドジソン教授、当時の写真技術、鉛中毒の帽子屋……などなど、様々な角度から論じられる「アリス」の魅力について。

    表紙イラストはヒグチユウコ。

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    2024年11月02日
  • ガラスの街(新潮文庫)

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    ポール・オースターの小説はいつも破滅的で諦観していてある程度一貫性が無く、実際に起こる出来事ではなく物語は人の脳内で進むので、現実逃避に効く。
    radioheadの小説版って感じ。

    本書はオースターの中では比較的理路整然としてビギナー向けといった印象。

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    2024年10月15日
  • ブルックリン・フォリーズ(新潮文庫)

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    非常に起伏に富んだ鮮やかなストーリー展開で一気に読ませる力がある。所々に出てくる現実の出来事への評価を含めて政治的にも旗幟鮮明であり、「多様性とその敵」とばかりに定義される善悪の構図は、寛容がベースとなる本書の筋書きの中では怒と憎悪の感情が顕になる貴重なアクセントでもある。
    小説の舞台から四半世紀、出版から20年が経過した現在から見ると、ポリティカル・コレクトネスが高らかに歌い上げられている光景には当時の熱気と未完の革命への期待感のようなものが感じられる。その明るさが、結末部分に迫る非常に暗い影と対照的に浮かび上がる仕掛けには思わず唸らされた。

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    2024年10月05日
  • ブルックリン・フォリーズ(新潮文庫)

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    あとわずかで60歳のネイサン。
    妻イーディスとの結婚生活は破綻し、娘のレイチェルともうまくいかない。
    そこへガンにかかり、治療はなされ小康状態になってはいるが、仕事も失った。
    死までの時間を過ごすため、幼少期を過ごしたニューヨークのブルックリンに移り住むところから物語が始まる。

    こちらとてキラキラした物語を期待しているわけじゃない。
    それでも、序盤からこんなんでついていけるか不安になってくる。
    が、そんな不安は次第に払拭される。
    その後のネイサンの人生は、実に魅力的なものになっていくからだ。

    それには、やはりネイサンのキャラクターが大きな要素になっているのかな、と思う。
    彼は自分の人生を振

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    2024年10月06日
  • 幽霊たち(新潮文庫)

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    結末はあっけなく、とても不明瞭なものだった。
    なのになぜこんなに満ち足りた読後感なのだろうか。

    結末に至るまでの空想にふける時間がとても濃密で、思考するブルーを観測することを楽しんでいたからだ。
    そしてブルーと同じくブラックとホワイトについて推理をする。文章から得られる情報を整理し余白に想い馳せることを繰り返す状態はブルーと同じ感覚だったし、ブルーが様々な変装でブラックに近づく場面でブラックが発した「幽霊たち」の状態そのものだろう。
    ブルーと意識が近くなるにつれて、ブラックに少しでも動きがあると嬉しくなったりしていた。

    ホワイト(ブラック)が書いた物語がブルーのことだとすれば、その正体はオ

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    2024年08月26日
  • デカルトからベイトソンへ――世界の再魔術化

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    私の大学生活でこの本を何度読み返したか分からない。タイトルの「再魔術化」という表現は、マックス・ウェーバーがかつて「プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神」の中で、近代化によって以前のアニミズム的思考が薄れてしまった状況を表した「脱魔術化」との対比表現である。しかし重要なことは、両者は対立的ではないということだ。なぜなら、「再魔術化」は、近代のデカルト的思考を否定しているわけではなく、むしろそれとアニミズム的思考との統合を目指しているからだ。そして、この統合に取り組んだのがグレゴリー・ベイトソンである。本書でもベイトソンの理論が簡潔にまとめてあるが、彼の代表作である「精神と生態学」「精神と

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    2024年08月02日
  • ムーン・パレス(新潮文庫)

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    人生で何度も読みたくなる本。

    高校生の頃、吉祥寺のヴィレッジバンガードで購入した。
    ポップでお勧めされなければ手に取ることさえしなかっただろう。

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    2024年08月01日
  • 幽霊たち(新潮文庫)

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    何か起こりそうでなかなか起こらないし、読んでいるうちに主人公と自分がひとつになって一体この主人公は今何をしてて本来は何を成し遂げなければならないのか、主人公が誰かを見ているのか、逆に誰かが主人公を見ているのか、そもそも主人公は誰なのか分からなくなってくる。
    最終的にはハッピーエンドとはいかずともトゥルーエンドくらいにはなったんじゃないかと個人的には思う。失ったものは大きいけど。物語からの脱出成功。

    オースター自身の書くことへの不安感が表現されていると思う。三部作の二作目から読んでしまったので残りの作品も近々読んでみたい。

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    2024年07月21日
  • ムーン・パレス(新潮文庫)

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    主人公のフォッグはハードな人生を送っている。様々な人との出会いがあって成長と挫折を繰り返す彼の姿に勇気をもらえた。
    とても魅力的な主人公だった。
    そしてストーリーの緩急が素晴らしい。
    作者の才能をひしひし感じながら読み進めることが出来て、とても良い読書時間だった。
    最近読んだ小説の中でいちばんお気に入り!

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    2024年07月07日
  • ブルックリン・フォリーズ(新潮文庫)

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    面白くてたまらなくて、
    がっしがしに読み進めた!

    これまで読んだポール・オースターは、
    もっと複雑で、言葉の迷宮に入り込み、
    冷たさや悲観的な部分があるからこそだった気がするが、
    とてもあたたかくて、優しくて、
    楽観的で、希望がある。
    もちろん人生なので悲痛な痛みや別れはあるのだけれど。

    街角で巡り合う人々や、
    家族の繋がりの中で、
    名もなき人々の物語が照らし出されてきたからこそ、
    ラストの2段落に、
    はっと息を呑むのだった。

    すべての人々に、
    他にはない特別な物語があったのだということを、
    ブルックリンへの愛を込めて、
    ポール・オースターは全力で言いたかったのだな。

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    2024年06月20日
  • ムーン・パレス(新潮文庫)

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    初のオースターは大変素晴らしい時間になった。
    とにかく物語の展開が凄まじく一気に読んだ。流浪の青春を描きながら家族の話に帰結する巧みさに加え、人間の悪よりも善に光を当てるスタンスが心地よい。

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    2024年06月18日
  • ムーン・パレス(新潮文庫)

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    しかるべき時間に間違った場所にいて、然るべき場所に間違った時間にいる。
    それぞれの人生とつながり。
    引き込まれたあとは一気読みのすごい作品。

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    2024年06月03日
  • ブルックリン・フォリーズ(新潮文庫)

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    還暦目前、自身の身の錆で離婚をすることになり、さらには肺ガンにもかかり、残りの余生は静かに暮らしたいと故郷であるブルックリンに一人戻ってきたネイサン。
    幸いガンは予後が良いようで、もうしばらく人生を楽しめるというなか、新生活を始めるやいなやわきおこる数々の騒動。
    騒動の中で登場するネイサンの甥であるトム、トムが働く古書店の(怪しげな)主人のハリー、通りすがりに出会った完璧に美しい母親(PBM)ナンシー、トムとネイサンのもとに突然現れた少女ルーシー。
    その他、ネイサンが行動する範囲で現れる数々の人々を群像劇的に描いていく。

    騒動がおこり、それが収束していくなかで変わり、そして深まっていく人間関

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    2024年06月01日