柴田元幸のレビュー一覧

  • サンセット・パーク(新潮文庫)

    Posted by ブクログ

    期待に違わぬ素晴らしい作品でした。リーマンショック後の先の見えない時代を背景に、心が損なわれた主人公と取り巻く人達が、傷ついた心や厳しい生活を抱えながらも互いをいたわりながら日々を懸命に生きていく様は、強い共感を覚え心が癒されます。

    0
    2025年12月08日
  • ムーン・パレス(新潮文庫)

    Posted by ブクログ

    ネタバレ

    主人公が愛する伯父を失って泣き腫らし、泥酔・嘔吐し、行きずりの娼婦にホテルに連れ込まれた挙句、脚を開く彼女に子守唄を歌ってあげた一幕は感に堪えなかった
    頁を急く衝動と、ずっと終わらなければいいのに、という一抹の寂しさを胸に同居させられた傑作

    0
    2025年12月08日
  • ムーン・パレス(新潮文庫)

    Posted by ブクログ

    ジーンと心に染み入るような感動のある小説でした。
    悲劇に振り回されながら生きる登場人物たちはとても人間味があり、僕はなぜか読んでいて救われる気持ちになりました。
    登場する3人の男たちは、ある意味悲劇でつながっている深い関係だと思いました。
    不思議と読後感がとてもよい小説でした。
    また、このような小説を読みたいです

    0
    2025年11月30日
  • デカルトからベイトソンへ――世界の再魔術化

    Posted by ブクログ

    グレゴリー・ベイトソンの偉業と著者モリス・バーマンの作家性が見事に融合された、まさに感動巨編!

    同著者の『神経症的な美しさ アウトサイダーがみた日本』も素晴らしい本でしたが、この本も後半に行くにつれてぐいぐい引き込まれていく、吸引力の凄まじい一冊です。付箋を貼る手が止まらず・・・。

    そして、著者モリス・バーマンの深い見識に加え、訳者柴田元幸さんの丁寧な日本語もまた素晴らしいのです。

    デカルトの二元論を批判的に見ながら、グレゴリー・ベイトソンの全体論を理解する本としても最適な一冊。ベイトソンは、まだその著作に触れたことはありませんが、ずっと気になっていた人物。捉えるのが難しい〈精神〉の存在

    0
    2025年11月24日
  • ブルックリン・フォリーズ(新潮文庫)

    Posted by ブクログ

    移民や多様な文化が交錯するニューヨーク、ブルックリン。ここを舞台に、人生の終盤に差しかかった主人公が偶然の出会いを通じて再び人とのつながりを取り戻していく。過去に何かしらの傷を負った人物の群像劇でありながら、どこか静かに温かい。自分の外に一歩踏み出して他者と関わろうという気持ちがあれば、年齢に関係なく、人生前向きに生きられると思えた本。

    0
    2025年11月23日
  • どこかで叫びが

    Posted by ブクログ

    アフリカ系の経験、差別や暴力を題材としたブラック・ホラー。19編ありどれも読み応えのある佳作だと感じました。不穏な「目」が見えてしまう倒錯を描いた「不躾なまなざし」、サイコホラーの趣きがある「片割れ」が特に気に入りました。

    0
    2025年11月22日
  • 翻訳夜話

    Posted by ブクログ

    一冊をひとりで翻訳する、それは孤独な作業。道をひとりぽっちで歩いてゆかねばならない。本書はその旅のおともになる。弱気になった時に読み返すと、少しだけ元気をもらえる。
    3つのフォーラム――1996年東大駒場、1999年翻訳学校、2000年若い翻訳家6人と――を収める。若い翻訳者のなかには、25年前の岸本佐知子や都甲幸治もいる。
    カーヴァーとオースターの短篇を村上・柴田がそれぞれ訳している、その比較が興味深い。もともと波長が合うためか、ふたりの訳文がそんなに違っていないような印象も受ける。
    村上も柴田も勢いがあるのががいい。まだふたりとも、ほぼほぼの40代だもん。

    0
    2025年11月19日
  • 4 3 2 1

    Posted by ブクログ

    めっちゃ良かった。ファーガソンの何度も様々な方向に違えて繰り返す人生を、様々に違った方向から読むことができる。同じような人生でも様々に違って見えるのかもなと思った。

    0
    2025年11月15日
  • トム・ソーヤーの冒険

    Posted by ブクログ

    トムの話術の巧みさで周りを味方にしていくのが面白かった!無人島でハックたちが家に帰りそうなのをよくトムは引き止めたと思うと感心です。最後にハッピーエンドで終わるのが良かった!

    0
    2025年11月07日
  • 4 3 2 1

    Posted by ブクログ

    なんということか、ついにこの大作を読み終えてしまった!深夜2時半の読後とにかく感想を新鮮なうちにおさめたい!

    まず、本屋さんで手に取ったその時の重みと期待は忘れられず、読み進めるほどに考えが深まるこの経験はとても貴重だった。今この時代に20代で、主に60年代波乱の時期を書いたこの作品を読めたこと、著者のポールオースターには感謝しかありません。なんたる贈り物。
    10代後半から20代へと差し掛かる時期に、いつどこでだれがどのようなことをしたのか、自分自身の出来事、社会の出来事、全ての要素が織り込まれて人は成長していくのだなと、俯瞰的に人生を眺めるに至りました。今現在の私に深く深く突き刺さってきま

    0
    2025年11月02日
  • トム・ソーヤーの冒険

    Posted by ブクログ

     いつ買ったのだか、家にあったので読みました。話をかなり忘れていたので新鮮に楽しむことができました。
     個人的には、中盤ごろまでは当時のアメリカの田舎によくある風景や価値観の描写を、腕白少年の日々を通じて淡々と読み進める印象でした。しかひ後半に進むにつれ、緊張の糸が張っていく感じがして、ラストまでハラハラしながら駆け抜けるように読みました。
     今度ディズニーランドに行ったら、蒸気船に乗りながら、彼らのように海賊ごっこでもしてやろうかと思います。

    0
    2025年10月20日
  • ブルックリン・フォリーズ(新潮文庫)

    Posted by ブクログ

    とても時間がかかってしまったけど、読み終わってほんわかする。いや、未来は暗いんだけど、いくつになってもアイデアと気力があれば人生は楽しいんだなって 90

    0
    2025年09月29日
  • ブルックリン・フォリーズ(新潮文庫)

    Posted by ブクログ

    初めてポールオースターを読みました。面白い。そして読後感も良く癒されました。特に際立ったことが起こらない前半も、魅力ある文体と豊かな表現力に引き込まれました。他の作品も早速読みたくなりました。

    0
    2025年09月19日
  • ガラスの街(新潮文庫)

    Posted by ブクログ

    クインの失われた息子と妻の話は最後まで語られない。その説明の不在こそトラウマの証拠だろう。
    ピーターとヴァージニアは、おそらく彼の失われた家族を暗喩している。
    ダニエル・クインのイニシャルが、ドン・キホーテと同じであるように、これは狂人、あるいは狂人に見える人の物語であり、孤独に陥っていく「浮浪者」あるいは「狂人」の内面を描いた物語だろう。
    最初は、ピーターの父である教授がそのように見える。しかし次第にクイン自身がそれと同じ境地に陥っていくのである。

    教授と同じ顔をした(立派なみなりをした)別の人間は、おそらくそうではなかった別の人生を生きる自分の暗喩である。クインにとってのオースターも同じ

    0
    2025年09月10日
  • 4 3 2 1

    Posted by ブクログ

    これぞ、オースターが遺した
    オースター流の総合小説だ。

    恋愛・哲学・音楽・文学・青春・政治が
    これでもかと言わんばかりの力強さを持って
    オースターの文学的音楽の波にサーフしている。

    0
    2025年09月03日
  • 芥川龍之介選 英米怪異・幻想譚

    Posted by ブクログ

    大正13~14年にかけて芥川龍之介が編んだ、
    旧制高校の英語の副読本全8巻51篇は、
    当時の現代文学が選ばれていた。
    その作品の中から怪異・幻想譚22篇を抽出し、
    豪華な訳者陣によって翻訳されたアンソロジー。
    ・はじめに――柴田元幸
    I The Modern Series of English Literatureより
    II 芥川龍之介作品より
    ・おわりに――澤西祐典
    附 芥川龍之介による全巻の序文と収録作品一覧

    22の作品は怪異と幻想小説の他、エッセイ、民話、
    童話調、戯曲、リアリズム作風も選ばれている。
    ヴィクトリア朝時代の名残りに世紀末の頽廃、
    アイルランド文芸復興運動、第一次世界大戦

    0
    2025年09月01日
  • 幽霊たち(新潮文庫)

    Posted by ブクログ

    探偵ブルーはホワイトから、ブラックを見張ってほしいという依頼を受ける。
    ブルーはブラックの真向かいの部屋に住み観察を始めるが、彼の行動はといえば、何か書きものをしているか、散歩しているかのどちらか。
    事件らしい事件も起こらず、ただブラックを見張り続けるほか何もすることのない日々に、ブルーはじりじりと焦燥感を募らせる。
    無機質なニューヨークの街の中で、物語は色彩を失っていく――。

    『書くというのは孤独な作業だ。それは生活をおおいつくしてしまう。ある意味で、作家には自分の人生がないとも言える。そこにいるときでも、本当はそこにいないんだ。』
    『また幽霊ですね。』
    『その通り。』
    『何だか神秘的だ。

    0
    2025年08月16日
  • ムーン・パレス(新潮文庫)

    Posted by ブクログ

    書き出しの「人類がはじめて月を歩いた夏だった」はあまりにも名文だと思う。

    愛や喪失をテーマに紡がれる物語で文章も相まってとても美しく儚い。

    以下、好きな文章。

    ・「彼女に恋をしないこと なんて不可能だった。ただ単に彼女がそこにいるという事実に酔い知れないこと なんて不可能だった」

    ・「僕は崖から飛び降りた。そして、最後の最後の瞬間に、何かの手がすっと伸びて、僕を空中でつかまえてくれた。その何かを、僕はいま、愛と定義する」

    人生のオールタイムベストに挙げる人が多いのも頷ける。

    0
    2025年07月24日
  • 翻訳夜話2 サリンジャー戦記

    Posted by ブクログ

    サリンジャー『キャッチャー・イン・ザ・ライ』を村上春樹さんが翻訳していること、併読している『ギンガムチェックと塩漬けライム』(鴻巣友季子著)で初めて知りました。そして、本書に辿り着きました。

    村上さん、『キャッチャー』(『ライ麦畑』)を大絶賛でした。翻訳という大変なお仕事をするのですから、当然といえば当然ですが。『キャッチャー』(『ライ麦畑』)を読んだら、(どちらかでも)本書は必読だと個人的に思います。

    村上さんの翻訳を巡っての柴田さんとのお話は、とにかくおもしろい! 野崎訳『ライ麦畑でつかまえて』を読み、ちょっと理解が難しいところが、こんがらがった糸がほどけたように分かり、すっきりしまし

    0
    2025年07月03日
  • 芥川龍之介選 英米怪異・幻想譚

    Posted by ブクログ

    芥川龍之介が1924~25年(大正13~14年)にかけて旧制高校生の英語学習用に編集した英米文学のアンソロジー
    "The Modern Series of English Literature" 全8巻51編から22編を精選して、澤西祐典氏と柴田元幸氏他10名が日本語訳をした。

    まず芥川にこういう「学習教材」のような作品があるということを知らなかった。古今東西の文学に精通している芥川のセレクションであるから、間違いはない。

    また、それらを精鋭の翻訳者による現代の日本語で読めることが素晴らしいではないか。2018年に単行本が出ていた(不覚にもチェックしていなかった!)が、

    0
    2025年06月15日