柴田元幸のレビュー一覧

  • ガラスの街(新潮文庫)

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    探偵小説と言われれば眉をひそめたくなるし、純文学かと言われれば「純文学って何ですか?」と言い返したくなる。
    ほんのイタズラや出来心に端を発した物語を読者は追うだけだが、大きな事件など一個も起きないのに不思議と先が気になって仕方がない。
    一応、謎はあちこちに出てくるが推理小説のようにトリックや伏線として活かしていくわけではない。余白か、あるいは主人公の思考を観察・あるいは描写するものとして登場するのみだ。
    そんな不思議でヘンテコな物語なのに結末では奇妙な寂しさがあった。

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    2025年05月18日
  • 幽霊たち(新潮文庫)

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    最後の最後で爆発する「ブルー」の怒りが凄まじい。
    きっちり落とし前をつけて新しい世界へ去っていく。なかなか爽快です。
    それにしても、行動範囲が限れた主要人物たった3人による駆け引き、よくこんな設定を考えたものだと感心した。

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    2025年05月14日
  • ムーン・パレス(新潮文庫)

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    ネタバレ

    それは人類がはじめて月を歩いた夏だった。という美しすぎる書き出しがいい。音楽的とも評される文章は比喩表現含めてとても綺麗かつ、自嘲と自虐の目立つ語り口ながらニューヨーカーらしい軽快さもあるアメリカ現代文学らしいオシャレさがあった。

    内容としては自伝的な青春小説でありながら、これは家族小説でもある。特に第二部の余命いくばくもない富豪の老人と、第三部の息子がそれぞれ主人公の父であり祖父だったという「偶然」と、それが連なって物語となる「必然」は非常に面白く、いずれも互いが関係性を自覚して双方向になったのは束の間で、死による離別となるのはたまらなく切ない。結局ひとりぼっちとなるラストも含めてかなり薄

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    2025年05月13日
  • 翻訳夜話

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    この手の本を読んだことがなかったのですがとても興味深く読めた。英語も日本語も関係なく、とにかく文章が大好きなお二人と学生さんたちの講義の様子は想像するのも楽しかったし、翻訳は面白いんだ!やらずにはいられないんだ!という村上春樹の翻訳愛に触れられたのも新鮮。キャッチャーインザライは野崎訳も村上訳ももっているけど、この講義をしていた頃にはまだ訳していなかったんだなと思うと感慨深かった。
    そして、お二人があまりにも熱烈に英語をどう日本語に直すのか、というお話をするので私も翻訳という作業に興味がわいてしまって、フラニーとズーイの英文庫を取り寄せています。英語は得意じゃないけれど、こういうところから勉強

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    2025年05月10日
  • ガラスの街(新潮文庫)

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    探偵小説だとは感じなかった。入れ子構造になった物語で、途中、ジョイス的なものが顔を覗かせてから一挙に面白くなった。

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    2025年05月03日
  • 翻訳夜話

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    翻訳をめぐる二者の対談。翻訳というものを自身の中でどう位置付けるかということに関する話に心惹かれた。

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    2025年04月30日
  • ガラスの街(新潮文庫)

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    妄想と現実が入り混じり、
    探偵小説の体から始まるが、途中から
    己の狂気に閉じ込められた人間像について、
    リアルに描かれていて文学作品のよう。

    途中、ドンキホーテ論を交わす場面があるが、
    最後に主人公のクインの赤いノートだけが残り、またそこで初めて、物語の作者が、
    ポールオースターの友人なる『私』の存在が、
    明らかになる。
    まさにドンキホーテのように、4番目なる人物が
    ストリーテラーだったというオチ

    同胞たる人間たちの信じやすさを試す愉しみ
    とあるように、幾十にもなっている入れ子の
    小説になっている。

    読書後も、登場人物のあの人は、夢か現実か
    はたまたクインの妄想か、不思議な余韻が残る

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    2025年04月30日
  • ムーン・パレス(新潮文庫)

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    随分と滑稽で、幾分と自虐的な貧乏学生マーコの視点から描かれる随筆チックな青春小説。
    どうしたらこんな比喩が思いつくのか?の連続。純文学にも似た美しい翻訳が、思春期ならではの独りよがりの悲壮感、世の中を穿つことでしか得られない優越感と上手く融和していた。
    起承転結というよりは、主人公の回想の中で偶発する出来事の連続にゆらゆらと身を任せながら楽しむ物語。

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    2025年04月20日
  • オズの魔法使い

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    自分が足りないと思っているものは既に自分の中にあるんだよ、という教訓的要素を持ちながら、児童文学らしい冒険と友情の物語で、且つ、オズの魔法使いの正体はそうきたか!と驚かされる、大人でもわくわくしながら読める作品。
    かかしもブリキの木こりもライオンだって喋る世界で、『なぜかトトだけ喋ることができない』のが現実世界とファンタジー世界を上手く融合していて面白かった。

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    2025年04月10日
  • ムーン・パレス(新潮文庫)

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    翻訳小説とは思えない文章の良さ!
    表現が全部良くて、刺さりまくって大変でした。
    面白い比喩表現が多くて、言葉遣いがとっても好き。
    著者も訳者もほんとに素晴らしいです。柴田元幸さん訳の本もっと読みたくなっちゃった。

    内容は非常に壮大で先が読めなくて面白かった。
    時系列がごっちゃになってて、頭の中の回想を追ってるような感覚。
    楽しかったし、展開が全く予想つかなくて驚かされてばかりだった。
    大変面白かったです!

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    2025年04月07日
  • 4 3 2 1

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    訳者が後書きの最後で書いたように、この途方もない物語に耽溺、はした…
    まぁ、大分的が外れてるかもなのだが、途中、まるでアメリカの大河ドラマのようだなと思った。
    日本の大学紛争はニュースや小説等で触りだけの関わり方しかしていないものだから、あちらのそれの描写のシーンでは、ファーガソンに感情移入しているものだから、かなりの迫力と無惨さをもって伝わってきたように思う。
    それにしても、そういうことをする年になってから以降は、女も男も相手にするセックスの話も多く、これはこれで興味はあるのだが、寧ろそういう時代を、もう、振り返るだけしかできないような年代になったファーガソンが、回想ではなく、そこからまた何

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    2025年03月23日
  • 鑑識レコード倶楽部

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     とにかく一人称の語りで物語が淡々と進む。過去の回想シーンなど一切なく、1〜3章のような仕切りもない。比喩的な表現もなく、余計なものを削ぎ落とした文体がなぜか心地いい。
     その文体だからか、何度も同じ箇所を読み返すようなこともなく、1日で読み終えた。
     「登場人物を回想しないから感情移入がしづらい」、「比喩表現がないから物語に広がりがない」、のにめちゃくちゃ面白い。オフビート映画に出逢ったときのような静かな余韻を感じる。

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    2025年03月16日
  • 幽霊たち(新潮文庫)

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    シンプルに読みやすい。
    相手を見張るだけ、という単調な設定だからこそ、自己との対話を通して疑心暗鬼に陥っていく展開がとても良い

    ミステリーの展開がワクワクするので読み終わりのスッキリ感がありつつも、他者を通して自己の存在を確認するというテーマが最後に残されて、行為と行為による影響が人間を人間たらしめていると改めて考えさせられた

    あと海外小説、映画あるあるで名前覚えにくくて発生するノイズがなかったのが地味に助かった

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    2025年03月15日
  • 写字室の旅/闇の中の男(新潮文庫)

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    1人の老年男性が主人公の中編2編からなる本作。
    いずれも静かな語り口で、著者独特の画中画のような構造は共通しているものの、物語の雰囲気は少し違います。
    とはいえ、いずれもどこか“不安”や“不穏”が付きまといつつ、どっぷりとその世界に浸って読書時間を堪能しました。
    ポール◦オースター的世界に浸れる良作だと思いますが、もう新作を読めないのかと思うと非常に残念でなりません。

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    2025年02月13日
  • ムーン・パレス(新潮文庫)

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    狂った若者とイカれた老人とのキテレツな関係も、読み進めるうちに頼もしいコンビのように思えてくる。
    主人公と関わる登場人物の多くは、割り切れない葛藤と独りよがりでもそれを打破する工夫や拘りが散りばめられている。狂っていてもイカれていても同じ人なんだと思えた。

    タイトルにある「ムーン」という言葉が、全編に渡って多くの描写に使われているのも読み終えて納得。
    これは読んで良かった。
    自分の人生の終盤にもう一度読むといいかもしれない。

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    2025年01月18日
  • 英日バイリンガル 現代ゴシック小説の書き方

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    なかなか興味深いエッセイだった。子供の頃に難解な本を読んで、分からない言葉があったり理解出来なくても、得るものは時にすごく大きかったりすること。これは本当にそう思う。今でも難解な読書体験をすることがあるけど、これがいつ深い理解や気づきに繋がるか分からない。英語も口語的で分かりやすいので、英語の勉強にもオススメ。

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    2025年01月16日
  • ムーン・パレス(新潮文庫)

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    最後の1章が良かった。
    最後の章の為に、それまでの複雑に絡み合ったストーリーを読んできた甲斐があったと思えた。

    最初から最後まで主人公には共感できず、途中で語られる砂漠での物語は正直つまらなかったが、この小説を貫く哀しい諦観のような空気感は楽しめた。その哀しさを最も感じられたのが最後の章であり、最後、主人公が到達した浜辺で見上げた月は、この物語中に一貫して存在する哀しさの象徴に思えた。

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    2025年01月15日
  • ブルックリン・フォリーズ(新潮文庫)

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    ブルックリンって書いてあったからリサイクル本を購入。
    読み終わった後にポールオースターって見て納得。
    そして驚き。笑
    結構好きな作家だし作者見ずに読んでても無意識に好きなの選んでる…!

    割とリアルなニューヨーク(ブルックリン)の人たちって所が良かった。
    全然キラキラしてないの。
    みんな人生こんなもんじゃないかな。
    ハリーだけがある意味キラキラかな。

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    2025年01月13日
  • 幽霊たち(新潮文庫)

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    ブルーに課せられたのは、ただ机に向かって書き物をするだけのブラックを見張ること。
    そのうち、自我が融解してブラックと融合したかのような奇妙な感覚に陥る。
    ブラックはブルーの合わせ鏡でもある。
    ブルーの視点を通して、わたしたちもブラックを知り、ブルーを知る。
    ブラックにとってもブルーの存在は同じようなもので、だからこそブラックはブルーを殺せなかったのだろうし、そこで怒りに任せてブラックを殺してしまうブルーには狂気すら感じる。
    その後、ブルーが正常に戻れることはあるのだろうか。ブラックを失って。

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    2025年01月06日
  • 幽霊たち(新潮文庫)

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    2024年に亡くなったアメリカの作家、
    ポール・オースターが描く、私立探偵の物語。

    登場人物は、(実在の人物等を除いて)全てが色の名前で、奇妙な展開や駆け引きに夢中になりました。

    ページ数も130ページ程度と非常に短いので、1日で一気読みでき、2024年の年納め小説とさせていただきました。

    実は、ニューヨーク3部作の第2作目とのことで、
    話は繋がってないらしいものの、1作目のガラスの街から読むのもアリだったかもと思いました。

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    2025年01月06日