柴田元幸のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
妄想と現実が入り混じり、
探偵小説の体から始まるが、途中から
己の狂気に閉じ込められた人間像について、
リアルに描かれていて文学作品のよう。
途中、ドンキホーテ論を交わす場面があるが、
最後に主人公のクインの赤いノートだけが残り、またそこで初めて、物語の作者が、
ポールオースターの友人なる『私』の存在が、
明らかになる。
まさにドンキホーテのように、4番目なる人物が
ストリーテラーだったというオチ
同胞たる人間たちの信じやすさを試す愉しみ
とあるように、幾十にもなっている入れ子の
小説になっている。
読書後も、登場人物のあの人は、夢か現実か
はたまたクインの妄想か、不思議な余韻が残る
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Posted by ブクログ
訳者が後書きの最後で書いたように、この途方もない物語に耽溺、はした…
まぁ、大分的が外れてるかもなのだが、途中、まるでアメリカの大河ドラマのようだなと思った。
日本の大学紛争はニュースや小説等で触りだけの関わり方しかしていないものだから、あちらのそれの描写のシーンでは、ファーガソンに感情移入しているものだから、かなりの迫力と無惨さをもって伝わってきたように思う。
それにしても、そういうことをする年になってから以降は、女も男も相手にするセックスの話も多く、これはこれで興味はあるのだが、寧ろそういう時代を、もう、振り返るだけしかできないような年代になったファーガソンが、回想ではなく、そこからまた何 -
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Posted by ブクログ
遂に、読み終わった…
1947年生まれのポール・オースターによる自伝的小説
戦後史において恐らく最も激動だった60年代を若者として生きることは、自らの可能性が何通りにも分かれパラレルワールドの如く並行して存在するように感じるのかもしれない
面白かった!
自伝的小説というより、彼の世代の大河ドラマと言うべきか
青春の戸惑いと喜びを書かせたら彼の右に出る者はいない
身体と精神の変化、神との関わり、性愛、クィア、闘争、死…
辟易しないのは、この小説のスタイルと、彼の「小説と思弁的な散文のあいだの微妙な線を歩く術」のおかげだ
そして、
今の制度がダメだからと革命を起こそうとして失敗したのが6 -
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面白い!790ページの物語に一週間どっぷり浸かって、まずはそう言い切れる。が、いやー疲れたってのも本音。
ひとたびファーガンソン君を好きになってしまえば、横溢する詩、書物、音楽、そして映画の固有名詞も、ファーガンソン君を形成していく重要なピースとして愉しく読める。
しかし、教養といってしまえばそれまでだが、誰の本に感銘を受け、どの映画が最高かを論じるのが友情を築く土台だとすると、僕などは全く資格に値しないのは残念なところ。ファーガンソン君は1960年代アメリカの空気を胸いっぱいに吸いこんで青春を駆け抜けていく。
“これまでファーガンソンはいつも、人生は一冊の本に似ているとあらゆる人から言わ -
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大人が読む物語として、
柴田元幸の訳書は逸品だと思う。
「馬の国」とも言われる
第四部「フウイヌム国渡航記」
冒頭
「平家物語」で俊寛が罪人として島流しされた話を思い出す。
「(平家物語)島には、住む人も少なく、言葉も通じません。田畑もなく、魚や獣を取って食料にするしかありませんでした。」
未知の世界に踏み入れる時に、好奇心より不安や恐怖、嫌悪感からくる表現か。
理解するより拒絶を感じる。
自分とは違う。
自分が基準。
本当にその基準は正しいのか。
正しさとは。
どうどう巡りさせて
きがついたらぐるぐると
思考の深みにはまる。
難しい言葉の羅列なく
物語だからこそ出会う思考の探究。 -
Posted by ブクログ
作品紹介・あらすじ
エッセイで指南し、
小説で実践してみせる。
当代一の書き手によるゴシック入門。
エドガー・アラン・ポー、ウィリアム・フォークナーから始まり、内田百閒、伊藤潤二、柴崎友香、『鬼滅の刃』までのゴシック、ホラーの作品世界を、現代アメリカの最重要ゴシック作家のひとりブライアン・エヴンソンが語り尽くす。書き下ろしを含むゴシック小説4編(うち3編は本邦初公開)と、柴田元幸との対談も収録。完全英日バイリンガル本。
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ブライアン・エヴンソンは大好きな作家の一人。今のところ翻訳されている彼の作品は「遁走状態」と「ウインドアイ」の二冊だけだけれど、僕は二冊ともに五つ星にしてい