柴田元幸のレビュー一覧

  • ガラスの街(新潮文庫)

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    思索の過程に浮かんでは消えてゆく言葉の数々を残らず捉え、文字として残す。それら言葉の連なりは、もしかしたらそれ自体が物語なのではあるまいか。もう一人の自分が居るとして、その存在を捉えることができたなら、僕は彼の人生を同じく歩いて行くことができるだろうか。世の中は不思議で、不思議なものだと決めてかかれば、さほどでもなく、何事にも頓着しなければ、しないなりに、どうにも説明のつかない事態に巻き込まれてしまうこともある。先入観では語り尽くせないのが人生で、世界は、その目に映るすべての物事でしかない。想像はあくまで想像で、現実にリンクしたら、それは想像ではなくなってしまう。あれは、こうだ。それは、ああだ

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    2025年07月06日
  • ガラスの街(新潮文庫)

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    ほぼジャケ買いで購入。
    色々な謎が残り読後何ともモヤモヤする。

    そもそも事件そのものもはあったのか。
    主人公の見ていたものは、全て孤独な彼自身が生み出した幻覚ではなかったか?
    最後に出てきた一人称の「私」は誰なのか、「私」が書いた体になってるが作者はポール・オースターなのはなぜなのか。

    ものすごく自分が落ちたとき、また読みたい。

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    2025年06月07日
  • ガラスの街(新潮文庫)

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    ひょんな間違い電話から探偵家業に手を出し、奇妙な白紙の世界に足を踏み込んでゆくダニエル・クイン。
    この物語は必ずしもバッドエンドではないと憶測する。僕にはクインが、初めからこの謎の世界に憧れていたと思えるのだ。

    映像でしか見たことのない、レンガとガラスの壁に囲まれたニューヨークの街並みが朧げに眼前に迫ってくる。憧れと不思議な懐かしさを覚える風景。

    僕はまた、この本を一種のオジサン文学の萌芽と見たい。勘違いしたクインが、若い女性に蔑まれるシーンがあり、滑稽な笑いをもたらしている。

    この人の作品を、もう少し読みたくなった。

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    2025年06月07日
  • 雲

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    グラスゴー近郊のスラム一歩手前の地域で育ったハリーの半生をたどる不思議な読感の本。ハリーは必ずしも自発的に行動するタイプではなく、どちらかというと巻き込まれ型の男。恋に敗れて逃げながらも、その記憶を何度も反芻する。必ずしも望んでいなかった仕事につき、望んでいたとはいえない結婚をし、それでもその一つ一つに誠実であろうとしながらまた他人に巻き込まれる。暗くて陰鬱に描くこともできたのだろうが、あちこちでふわふわした救いが漂う。短い描写で深みのある情景を描く技量がすごい。

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    2025年05月29日
  • 翻訳夜話2 サリンジャー戦記

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    村上さんと柴田先生の対話で暴かれていく作家サリンジャーのひととなり、非常に興味深く読めました。物語への考察=サリンジャーの生涯に密に関わっていたんだという発見があり、サリンジャーの生き方をホールデンになぞらせたのではなく、サリンジャーがホールデンの生き方をなぞっていったというのは一種の狂気を感じた。大昔に野崎訳を読んだ後に村上訳を読んで比較したことはあったけど、当時の印象として前者のホールデンはとんがり少年で、後者は引きこもりがちな天邪鬼。この印象の違いは翻訳に取り掛かった時代の背景を訳者がうまく反映させていたからだというから感心しきりだったし、ひとつの文章がこんなに変わるものなのかと文学の多

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    2025年05月28日
  • オズの魔法使い

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    ネタバレ

    映画ウィキッドを観た後に原作を読んでおらず理解しきれなかったことがあり、本書を読んだ。
    まず驚いたのはウィキッドではおバカで軽率なグリンダは優しく賢明な魔女だったこと、そして東の国の魔女はただ悪い魔女として描かれてたこと、映画と全然ちゃいますやん…
    オズのダメさ加減は変わらずで安心した。
    空飛ぶ猿の軍勢など原作から引用されてるとは思わずビックリした。
    概してウィキッドの設定は杜撰だと思ってしまった。
    ウィキッドとの関連を除くと、全体として面白い話だった。
    頭が良くなりたいと脳みそを欲しがるかかしが、機転が効いたアイデアを沢山出したり、心臓をもらって心が欲しいと言うブリキの木こりが生き物を慈しむ

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    2025年05月21日
  • 4 3 2 1

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    ネタバレ

    2段組みかつ余白はほぼなし、そして約800ページという超ボリュームのこちら。2024年に永眠したオースターの最期から2つめの作品である。ファガーソンの4つの物語。激動の50~70年代のアメリカが舞台。メインヒロインはエイミー。(.1.2.3.4でエイミーとの関係はいろいろかわる)愛と性と野球と学生生活、政治がメイン。
    790ページくらいでからくりが判明。それまでパラレルワールド的な感じで読んでいたので、やられたと感じる。つまり.4の作家になったファガーソンが.1.2.3のファガーソンの人生を創作したということなんですよね。途中から白紙になって脱落していくファガーソンもあり。

    2.2 落雷によ

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    2025年05月20日
  • ガラスの街(新潮文庫)

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    探偵小説と言われれば眉をひそめたくなるし、純文学かと言われれば「純文学って何ですか?」と言い返したくなる。
    ほんのイタズラや出来心に端を発した物語を読者は追うだけだが、大きな事件など一個も起きないのに不思議と先が気になって仕方がない。
    一応、謎はあちこちに出てくるが推理小説のようにトリックや伏線として活かしていくわけではない。余白か、あるいは主人公の思考を観察・あるいは描写するものとして登場するのみだ。
    そんな不思議でヘンテコな物語なのに結末では奇妙な寂しさがあった。

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    2025年05月18日
  • 幽霊たち(新潮文庫)

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    最後の最後で爆発する「ブルー」の怒りが凄まじい。
    きっちり落とし前をつけて新しい世界へ去っていく。なかなか爽快です。
    それにしても、行動範囲が限れた主要人物たった3人による駆け引き、よくこんな設定を考えたものだと感心した。

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    2025年05月14日
  • ムーン・パレス(新潮文庫)

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    ネタバレ

    それは人類がはじめて月を歩いた夏だった。という美しすぎる書き出しがいい。音楽的とも評される文章は比喩表現含めてとても綺麗かつ、自嘲と自虐の目立つ語り口ながらニューヨーカーらしい軽快さもあるアメリカ現代文学らしいオシャレさがあった。

    内容としては自伝的な青春小説でありながら、これは家族小説でもある。特に第二部の余命いくばくもない富豪の老人と、第三部の息子がそれぞれ主人公の父であり祖父だったという「偶然」と、それが連なって物語となる「必然」は非常に面白く、いずれも互いが関係性を自覚して双方向になったのは束の間で、死による離別となるのはたまらなく切ない。結局ひとりぼっちとなるラストも含めてかなり薄

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    2025年05月13日
  • 翻訳夜話

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    この手の本を読んだことがなかったのですがとても興味深く読めた。英語も日本語も関係なく、とにかく文章が大好きなお二人と学生さんたちの講義の様子は想像するのも楽しかったし、翻訳は面白いんだ!やらずにはいられないんだ!という村上春樹の翻訳愛に触れられたのも新鮮。キャッチャーインザライは野崎訳も村上訳ももっているけど、この講義をしていた頃にはまだ訳していなかったんだなと思うと感慨深かった。
    そして、お二人があまりにも熱烈に英語をどう日本語に直すのか、というお話をするので私も翻訳という作業に興味がわいてしまって、フラニーとズーイの英文庫を取り寄せています。英語は得意じゃないけれど、こういうところから勉強

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    2025年05月10日
  • ガラスの街(新潮文庫)

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    探偵小説だとは感じなかった。入れ子構造になった物語で、途中、ジョイス的なものが顔を覗かせてから一挙に面白くなった。

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    2025年05月03日
  • 翻訳夜話

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    翻訳をめぐる二者の対談。翻訳というものを自身の中でどう位置付けるかということに関する話に心惹かれた。

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    2025年04月30日
  • ガラスの街(新潮文庫)

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    妄想と現実が入り混じり、
    探偵小説の体から始まるが、途中から
    己の狂気に閉じ込められた人間像について、
    リアルに描かれていて文学作品のよう。

    途中、ドンキホーテ論を交わす場面があるが、
    最後に主人公のクインの赤いノートだけが残り、またそこで初めて、物語の作者が、
    ポールオースターの友人なる『私』の存在が、
    明らかになる。
    まさにドンキホーテのように、4番目なる人物が
    ストリーテラーだったというオチ

    同胞たる人間たちの信じやすさを試す愉しみ
    とあるように、幾十にもなっている入れ子の
    小説になっている。

    読書後も、登場人物のあの人は、夢か現実か
    はたまたクインの妄想か、不思議な余韻が残る

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    2025年04月30日
  • ムーン・パレス(新潮文庫)

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    随分と滑稽で、幾分と自虐的な貧乏学生マーコの視点から描かれる随筆チックな青春小説。
    どうしたらこんな比喩が思いつくのか?の連続。純文学にも似た美しい翻訳が、思春期ならではの独りよがりの悲壮感、世の中を穿つことでしか得られない優越感と上手く融和していた。
    起承転結というよりは、主人公の回想の中で偶発する出来事の連続にゆらゆらと身を任せながら楽しむ物語。

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    2025年04月20日
  • オズの魔法使い

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    自分が足りないと思っているものは既に自分の中にあるんだよ、という教訓的要素を持ちながら、児童文学らしい冒険と友情の物語で、且つ、オズの魔法使いの正体はそうきたか!と驚かされる、大人でもわくわくしながら読める作品。
    かかしもブリキの木こりもライオンだって喋る世界で、『なぜかトトだけ喋ることができない』のが現実世界とファンタジー世界を上手く融合していて面白かった。

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    2025年04月10日
  • ムーン・パレス(新潮文庫)

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    翻訳小説とは思えない文章の良さ!
    表現が全部良くて、刺さりまくって大変でした。
    面白い比喩表現が多くて、言葉遣いがとっても好き。
    著者も訳者もほんとに素晴らしいです。柴田元幸さん訳の本もっと読みたくなっちゃった。

    内容は非常に壮大で先が読めなくて面白かった。
    時系列がごっちゃになってて、頭の中の回想を追ってるような感覚。
    楽しかったし、展開が全く予想つかなくて驚かされてばかりだった。
    大変面白かったです!

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    2025年04月07日
  • 4 3 2 1

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    訳者が後書きの最後で書いたように、この途方もない物語に耽溺、はした…
    まぁ、大分的が外れてるかもなのだが、途中、まるでアメリカの大河ドラマのようだなと思った。
    日本の大学紛争はニュースや小説等で触りだけの関わり方しかしていないものだから、あちらのそれの描写のシーンでは、ファーガソンに感情移入しているものだから、かなりの迫力と無惨さをもって伝わってきたように思う。
    それにしても、そういうことをする年になってから以降は、女も男も相手にするセックスの話も多く、これはこれで興味はあるのだが、寧ろそういう時代を、もう、振り返るだけしかできないような年代になったファーガソンが、回想ではなく、そこからまた何

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    2025年03月23日
  • 鑑識レコード倶楽部

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     とにかく一人称の語りで物語が淡々と進む。過去の回想シーンなど一切なく、1〜3章のような仕切りもない。比喩的な表現もなく、余計なものを削ぎ落とした文体がなぜか心地いい。
     その文体だからか、何度も同じ箇所を読み返すようなこともなく、1日で読み終えた。
     「登場人物を回想しないから感情移入がしづらい」、「比喩表現がないから物語に広がりがない」、のにめちゃくちゃ面白い。オフビート映画に出逢ったときのような静かな余韻を感じる。

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    2025年03月16日
  • 幽霊たち(新潮文庫)

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    シンプルに読みやすい。
    相手を見張るだけ、という単調な設定だからこそ、自己との対話を通して疑心暗鬼に陥っていく展開がとても良い

    ミステリーの展開がワクワクするので読み終わりのスッキリ感がありつつも、他者を通して自己の存在を確認するというテーマが最後に残されて、行為と行為による影響が人間を人間たらしめていると改めて考えさせられた

    あと海外小説、映画あるあるで名前覚えにくくて発生するノイズがなかったのが地味に助かった

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    2025年03月15日