柴田元幸のレビュー一覧

  • 翻訳夜話

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    翻訳をめぐる二者の対談。翻訳というものを自身の中でどう位置付けるかということに関する話に心惹かれた。

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    2025年04月30日
  • ガラスの街(新潮文庫)

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    妄想と現実が入り混じり、
    探偵小説の体から始まるが、途中から
    己の狂気に閉じ込められた人間像について、
    リアルに描かれていて文学作品のよう。

    途中、ドンキホーテ論を交わす場面があるが、
    最後に主人公のクインの赤いノートだけが残り、またそこで初めて、物語の作者が、
    ポールオースターの友人なる『私』の存在が、
    明らかになる。
    まさにドンキホーテのように、4番目なる人物が
    ストリーテラーだったというオチ

    同胞たる人間たちの信じやすさを試す愉しみ
    とあるように、幾十にもなっている入れ子の
    小説になっている。

    読書後も、登場人物のあの人は、夢か現実か
    はたまたクインの妄想か、不思議な余韻が残る

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    2025年04月30日
  • ムーン・パレス(新潮文庫)

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    随分と滑稽で、幾分と自虐的な貧乏学生マーコの視点から描かれる随筆チックな青春小説。
    どうしたらこんな比喩が思いつくのか?の連続。純文学にも似た美しい翻訳が、思春期ならではの独りよがりの悲壮感、世の中を穿つことでしか得られない優越感と上手く融和していた。
    起承転結というよりは、主人公の回想の中で偶発する出来事の連続にゆらゆらと身を任せながら楽しむ物語。

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    2025年04月20日
  • オズの魔法使い

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    自分が足りないと思っているものは既に自分の中にあるんだよ、という教訓的要素を持ちながら、児童文学らしい冒険と友情の物語で、且つ、オズの魔法使いの正体はそうきたか!と驚かされる、大人でもわくわくしながら読める作品。
    かかしもブリキの木こりもライオンだって喋る世界で、『なぜかトトだけ喋ることができない』のが現実世界とファンタジー世界を上手く融合していて面白かった。

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    2025年04月10日
  • ムーン・パレス(新潮文庫)

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    翻訳小説とは思えない文章の良さ!
    表現が全部良くて、刺さりまくって大変でした。
    面白い比喩表現が多くて、言葉遣いがとっても好き。
    著者も訳者もほんとに素晴らしいです。柴田元幸さん訳の本もっと読みたくなっちゃった。

    内容は非常に壮大で先が読めなくて面白かった。
    時系列がごっちゃになってて、頭の中の回想を追ってるような感覚。
    楽しかったし、展開が全く予想つかなくて驚かされてばかりだった。
    大変面白かったです!

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    2025年04月07日
  • 4 3 2 1

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    訳者が後書きの最後で書いたように、この途方もない物語に耽溺、はした…
    まぁ、大分的が外れてるかもなのだが、途中、まるでアメリカの大河ドラマのようだなと思った。
    日本の大学紛争はニュースや小説等で触りだけの関わり方しかしていないものだから、あちらのそれの描写のシーンでは、ファーガソンに感情移入しているものだから、かなりの迫力と無惨さをもって伝わってきたように思う。
    それにしても、そういうことをする年になってから以降は、女も男も相手にするセックスの話も多く、これはこれで興味はあるのだが、寧ろそういう時代を、もう、振り返るだけしかできないような年代になったファーガソンが、回想ではなく、そこからまた何

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    2025年03月23日
  • 鑑識レコード倶楽部

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     とにかく一人称の語りで物語が淡々と進む。過去の回想シーンなど一切なく、1〜3章のような仕切りもない。比喩的な表現もなく、余計なものを削ぎ落とした文体がなぜか心地いい。
     その文体だからか、何度も同じ箇所を読み返すようなこともなく、1日で読み終えた。
     「登場人物を回想しないから感情移入がしづらい」、「比喩表現がないから物語に広がりがない」、のにめちゃくちゃ面白い。オフビート映画に出逢ったときのような静かな余韻を感じる。

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    2025年03月16日
  • 幽霊たち(新潮文庫)

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    シンプルに読みやすい。
    相手を見張るだけ、という単調な設定だからこそ、自己との対話を通して疑心暗鬼に陥っていく展開がとても良い

    ミステリーの展開がワクワクするので読み終わりのスッキリ感がありつつも、他者を通して自己の存在を確認するというテーマが最後に残されて、行為と行為による影響が人間を人間たらしめていると改めて考えさせられた

    あと海外小説、映画あるあるで名前覚えにくくて発生するノイズがなかったのが地味に助かった

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    2025年03月15日
  • 写字室の旅/闇の中の男(新潮文庫)

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    1人の老年男性が主人公の中編2編からなる本作。
    いずれも静かな語り口で、著者独特の画中画のような構造は共通しているものの、物語の雰囲気は少し違います。
    とはいえ、いずれもどこか“不安”や“不穏”が付きまといつつ、どっぷりとその世界に浸って読書時間を堪能しました。
    ポール◦オースター的世界に浸れる良作だと思いますが、もう新作を読めないのかと思うと非常に残念でなりません。

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    2025年02月13日
  • ムーン・パレス(新潮文庫)

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    狂った若者とイカれた老人とのキテレツな関係も、読み進めるうちに頼もしいコンビのように思えてくる。
    主人公と関わる登場人物の多くは、割り切れない葛藤と独りよがりでもそれを打破する工夫や拘りが散りばめられている。狂っていてもイカれていても同じ人なんだと思えた。

    タイトルにある「ムーン」という言葉が、全編に渡って多くの描写に使われているのも読み終えて納得。
    これは読んで良かった。
    自分の人生の終盤にもう一度読むといいかもしれない。

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    2025年01月18日
  • 英日バイリンガル 現代ゴシック小説の書き方

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    なかなか興味深いエッセイだった。子供の頃に難解な本を読んで、分からない言葉があったり理解出来なくても、得るものは時にすごく大きかったりすること。これは本当にそう思う。今でも難解な読書体験をすることがあるけど、これがいつ深い理解や気づきに繋がるか分からない。英語も口語的で分かりやすいので、英語の勉強にもオススメ。

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    2025年01月16日
  • ムーン・パレス(新潮文庫)

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    最後の1章が良かった。
    最後の章の為に、それまでの複雑に絡み合ったストーリーを読んできた甲斐があったと思えた。

    最初から最後まで主人公には共感できず、途中で語られる砂漠での物語は正直つまらなかったが、この小説を貫く哀しい諦観のような空気感は楽しめた。その哀しさを最も感じられたのが最後の章であり、最後、主人公が到達した浜辺で見上げた月は、この物語中に一貫して存在する哀しさの象徴に思えた。

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    2025年01月15日
  • ブルックリン・フォリーズ(新潮文庫)

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    ブルックリンって書いてあったからリサイクル本を購入。
    読み終わった後にポールオースターって見て納得。
    そして驚き。笑
    結構好きな作家だし作者見ずに読んでても無意識に好きなの選んでる…!

    割とリアルなニューヨーク(ブルックリン)の人たちって所が良かった。
    全然キラキラしてないの。
    みんな人生こんなもんじゃないかな。
    ハリーだけがある意味キラキラかな。

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    2025年01月13日
  • 幽霊たち(新潮文庫)

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    ブルーに課せられたのは、ただ机に向かって書き物をするだけのブラックを見張ること。
    そのうち、自我が融解してブラックと融合したかのような奇妙な感覚に陥る。
    ブラックはブルーの合わせ鏡でもある。
    ブルーの視点を通して、わたしたちもブラックを知り、ブルーを知る。
    ブラックにとってもブルーの存在は同じようなもので、だからこそブラックはブルーを殺せなかったのだろうし、そこで怒りに任せてブラックを殺してしまうブルーには狂気すら感じる。
    その後、ブルーが正常に戻れることはあるのだろうか。ブラックを失って。

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    2025年01月06日
  • 幽霊たち(新潮文庫)

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    2024年に亡くなったアメリカの作家、
    ポール・オースターが描く、私立探偵の物語。

    登場人物は、(実在の人物等を除いて)全てが色の名前で、奇妙な展開や駆け引きに夢中になりました。

    ページ数も130ページ程度と非常に短いので、1日で一気読みでき、2024年の年納め小説とさせていただきました。

    実は、ニューヨーク3部作の第2作目とのことで、
    話は繋がってないらしいものの、1作目のガラスの街から読むのもアリだったかもと思いました。

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    2025年01月06日
  • 4 3 2 1

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    遂に、読み終わった…
    1947年生まれのポール・オースターによる自伝的小説

    戦後史において恐らく最も激動だった60年代を若者として生きることは、自らの可能性が何通りにも分かれパラレルワールドの如く並行して存在するように感じるのかもしれない

    面白かった!

    自伝的小説というより、彼の世代の大河ドラマと言うべきか

    青春の戸惑いと喜びを書かせたら彼の右に出る者はいない
    身体と精神の変化、神との関わり、性愛、クィア、闘争、死…
    辟易しないのは、この小説のスタイルと、彼の「小説と思弁的な散文のあいだの微妙な線を歩く術」のおかげだ

    そして、
    今の制度がダメだからと革命を起こそうとして失敗したのが6

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    2025年01月04日
  • 4 3 2 1

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    面白い!790ページの物語に一週間どっぷり浸かって、まずはそう言い切れる。が、いやー疲れたってのも本音。
    ひとたびファーガンソン君を好きになってしまえば、横溢する詩、書物、音楽、そして映画の固有名詞も、ファーガンソン君を形成していく重要なピースとして愉しく読める。
    しかし、教養といってしまえばそれまでだが、誰の本に感銘を受け、どの映画が最高かを論じるのが友情を築く土台だとすると、僕などは全く資格に値しないのは残念なところ。ファーガンソン君は1960年代アメリカの空気を胸いっぱいに吸いこんで青春を駆け抜けていく。

     “これまでファーガンソンはいつも、人生は一冊の本に似ているとあらゆる人から言わ

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    2025年01月04日
  • ガリバー旅行記

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    大人が読む物語として、
    柴田元幸の訳書は逸品だと思う。

    「馬の国」とも言われる
    第四部「フウイヌム国渡航記」

    冒頭
    「平家物語」で俊寛が罪人として島流しされた話を思い出す。
    「(平家物語)島には、住む人も少なく、言葉も通じません。田畑もなく、魚や獣を取って食料にするしかありませんでした。」

    未知の世界に踏み入れる時に、好奇心より不安や恐怖、嫌悪感からくる表現か。
    理解するより拒絶を感じる。

    自分とは違う。
    自分が基準。
    本当にその基準は正しいのか。
    正しさとは。

    どうどう巡りさせて
    きがついたらぐるぐると
    思考の深みにはまる。

    難しい言葉の羅列なく
    物語だからこそ出会う思考の探究。

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    2024年12月07日
  • 英日バイリンガル 現代ゴシック小説の書き方

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    作品紹介・あらすじ

    エッセイで指南し、
    小説で実践してみせる。
    当代一の書き手によるゴシック入門。

    エドガー・アラン・ポー、ウィリアム・フォークナーから始まり、内田百閒、伊藤潤二、柴崎友香、『鬼滅の刃』までのゴシック、ホラーの作品世界を、現代アメリカの最重要ゴシック作家のひとりブライアン・エヴンソンが語り尽くす。書き下ろしを含むゴシック小説4編(うち3編は本邦初公開)と、柴田元幸との対談も収録。完全英日バイリンガル本。

    *****

    ブライアン・エヴンソンは大好きな作家の一人。今のところ翻訳されている彼の作品は「遁走状態」と「ウインドアイ」の二冊だけだけれど、僕は二冊ともに五つ星にしてい

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    2024年11月20日
  • 冬の日誌/内面からの報告書(新潮文庫)

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    オースターの訃報に悲しみながらじっくりと。
    主語?を「君」にして幼い頃からを振り返るのと、もっと混乱に満ちた青春の日々を語る2篇の自伝。瑞々しく、ロマンチックで、かえすがえすももうほぼ新作が読めないのが寂しい。

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    2024年11月09日