柴田元幸のレビュー一覧

  • ハックルベリー・フィンの冒けん

    Posted by ブクログ

     あいかわらず、引っかかりがなくスルスルと入ってくる訳文だ。
     難しい漢字が全てひらがなになっている。これは原作の文章の雰囲気を日本語的表現で反映しようとしたためとのことだが、ちょっと読みにくい(原作のスペルミスだらけの英語を読むときのネイティブも、同じように感じるのだろうか)。
     ハックの大冒険の物語の詳細よりも、印象深く残っているのは風景の描写だ。筏で迎える川の夜明け、あらし、夜更けの航行の様子は、どれも目の前でハックの目線で見ているような気になった。どんな豪華な食べ物も衣服も、自由と空と川と森の美しさには勝てないのだろう、ハックにとっては。

    0
    2019年03月18日
  • ハックルベリー・フィンの冒けん

    Posted by ブクログ

    なんてこってしょ!

    ハックとトムの物語が、こんなに魅力溢れる本だったとは知らなかった!

    子どもの頃から何かのおりに、トム・ソーヤーや、ハックルベリー・フィンの名は聞いていて、そうか、男の子のロマンなのかな?くらいにしか思っていなかったし、2人が友だち?悪友?だったって事も知らなかった。

    柴田元幸さんの肝入りの翻訳というのと、この素敵な装丁に惹かれて読んだのだけど、とんでもない冒険しちまったよ!ってな感じ。

    ハックは、現代ならば、DV親父の下で暮らす貧困児童。
    でも、彼らの時代はそんな言葉はなく、ハックの自由さに驚くばかり。
    父親がダメなこともよくわかってるし、関わりたくないのだけど、

    0
    2019年02月03日
  • インヴィジブル

    Posted by ブクログ

    Sturm und Drang.

    本書を読み終えた直後の私の心境は、まさのこの一言であった。暴力的なまでの物語の持つ力を見せつけられ、数分の間、茫然自失としてしまう自分がそこにはいた。

    私にとって、現存する作家の中で新作をチェックしてほぼ読むようにしている数少ない一人がポール・オースターである。これまで彼の最高傑作は多くの人々も認めるように1989年の『ムーン・パレス』だと思っていたが、その認識を改めた。本作こそ最高傑作といって良いのではないか。

    物語は1967年、文学を志す20歳のコロンビア大学の男子学生を主人公に幕を開ける。彼が突然巻き込まれる暴力と恋愛をトリガーにして、彼の一生が劇

    0
    2018年12月30日
  • 翻訳夜話

    Posted by ブクログ

     かなり面白かった。翻訳の持つ妙味が想像できた。
     おかしかったのは、小説家でもある村上氏が「自分の小説を英訳された英文を読んだときに、『けっこう上手く書けているじゃないか』と思ってみると、自分の作品だった」というのが多々ある、ということ。
     この人の自分の小説に対する距離感はわりに不思議で、「若い人たちのための短編小説」でも、「自分の小説だからといって、自分の解釈が唯一無二で正しい訳ではない」といった風なことを述べていたのと通じるな〜と、感じた。

     「キャッチャー・イン・ザ・ライ」はまだ読んでいないので、読んでから、翻訳夜話2を読んでみたい。

    0
    2018年12月22日
  • 翻訳夜話

    Posted by ブクログ

    ワタシの中で「名訳者」の地位をゆるぎないものにしているお二人が出した本が、面白くないはずがない。あまりにハマってしまって、電車を乗り過ごしてしまいそうになった。

    本書が出るきっかけとなった、柴田さんの持つ大学の授業への村上さんの登場がフォーラム1。聴衆を翻訳学校の生徒に換えて行ったのがフォーラム2。そして、お二人によるカーヴァーとオースターの短編競訳をはさんで、それについて若手翻訳者を前に語ったのがフォーラム3。

    お二人の口から出てくる言葉や、そこから読み取れる感性がとても心地いいし、気づきも与えてくれる。特に競訳とそれについて語ったフォーラム3は秀逸。12年近く前に出た一冊だけれど、中味

    0
    2018年11月18日
  • インヴィジブル

    Posted by ブクログ

    物語が物語を呼んで、さらに物語を紡いで、また前の物語に戻っていく。しかも、それらの物語の語り手はみんな異なる(四人もいる)。結局、真実は何だったのか...誰の物語が嘘で誰の物語がほんとうのことなのか。色々考えてしまったり。おもしろいです。す

    0
    2018年11月09日
  • ハックルベリー・フィンの冒けん

    Posted by ブクログ

    日本では「ハックの冒険」より「トムソーヤーの冒険」の方が有名ではないだろうか? にもかかわらず,オールタイムベストの類に選ばれているのは,かならず「ハックの冒険」の方である.この認知度(日本での)と評価のずれは,一体何なのだろう? とかねてから不思議に思っていたのだが,そこに鳴り物入りで柴田元幸訳の本書が登場したので,読んでみた.
    ハックはまともに教育も受けていない,なかば浮浪児であるが,そのハックが自分で書いたという設定が絶妙で,ハックのたどたどしい文章を通じて,彼の冒険の数々が生き生きと浮かび上がる,また冒険の道連れとなった逃亡奴隷のジムも当然ながら無学で,この二人が様々なトラブルに巻き込

    0
    2018年10月28日
  • トム・ソーヤーの冒険

    Posted by ブクログ

    1876年に書かれたアメリカ南北戦争以前の「古き良き」我らが故郷を
    少年の冒険を題材に描く作品
    素材梗概を子供向けにジュブナイルのように翻案されてもいるが
    広く読まれているようにその多くはアメリカ原風景を刺激する国民的作風
    日本で言えば吉川英治作品のような
    主人公やその周囲は人間的でありながら善と成されているが
    だからこそ南北戦争以降の国家として目覚めたアメリカにとっての
    得難さを持つ時代小説となっている

    0
    2018年10月20日
  • インヴィジブル

    Posted by ブクログ

    ネタバレ

    旧友から送られた回顧録の体裁を取ってるとはいえ、倫理的にも社会的にも結構エグい話。オースターと訳者の品格ある文章に抑えられているのを差し引かなかったら、かなりドン引きしていたのは間違いない。またその話が複雑で流動的な枠構造に彩られ、ドンドン物語世界の深みにさらわれる。読み終わりたくない、と久々に思った。

    主人公アダムはオースターの主人公としては定番なタイプとは言え、美しく聡明な姉グウィンとの関係は、何故かサリンジャーのグラース家を彷彿とさせる。
    更に、一応インテリながら歪んだエゴ炸裂で一皮剥けば変人どころか剣呑なルドルフは、偏執狂気質を露呈するとどうもイマイチ魅力に乏しい一方で、「王妃マルゴ

    0
    2018年10月11日
  • トム・ソーヤーの冒険

    Posted by ブクログ

    多くの人が子供時代に一度は読んだと思う。私も小学生の頃読みました。大人になって再び読み、トムや仲間の言動に笑ったりハラハラしたりしながら童心に帰ってしまいました。子供だった頃の自分の考えていた事を次々と思い出させてくれる本。時代も場所も背景もトムたちとは全く違うのに、子供の考えることは世界共通。大好きな本です。

    0
    2018年08月14日
  • トム・ソーヤーの冒険

    Posted by ブクログ

     他の人の訳で中学時代に読んだ気がするが、柴田元幸氏の翻訳で読んでみたいと思い、再読。
     トムの勇気や機転は本当にすごいんだけど、ガキ大将っぷりは鼻についてしまう。スクールカースト上位だよな、こいつ、とか思ってしまう。私が捻くれているのか。しかし柴田先生もあとがきで同様に「トムは大人になったら地元のお偉いさんになって『私も子供の頃はやんちゃしたもんですよ、ガハハ』って言ってそう」的なことを書いており、激しく同意。
     やっぱりトムよりもハックの言葉が心にしみる。「手に入れるのに苦労しないものなんて、持つ気しねえから」。こっちはきっと、お偉いさんになって昔を笑ったりはしない。

    0
    2018年05月02日
  • 翻訳夜話

    Posted by ブクログ

    As long as there's one person to believe it, there's no story that can't be true.

    0
    2018年03月26日
  • 翻訳夜話

    Posted by ブクログ

    最近の自分的外文ブームにうってつけの本新書。しかも春樹・柴田共著となると、もう読むしかないってことで。期待に違わぬ内容で、翻訳のイロハの部分とか、ちょっと垣間見れた気になっちゃいました。他の著作でも触れられていたと思うけど、”翻訳には耐用年数あり”っていうのには全面的に賛成。新しい訳で読めば良かった!って思ったことも結構あり、最近では専ら一番新しい訳にこだわってたりもする。そう考える中でふと思ったのが、外文は100年経ったものでも新しい訳で生まれ変われるんだから、日本の古典的文学作品も、50年とか経ってるものは誰かが書き直せば良いのに、ってこと。夏目、森、芥川など諸々。新しい言葉に置き換えられ

    0
    2017年10月17日
  • [音声DL付]現代語訳でよむ 日本の憲法―憲法の英文版を「今の言葉」に訳してみたら―

    Posted by ブクログ

    日本国憲法が成立するまでの過程も簡潔にまとめてあって勉強になった。翻訳者・柴田元幸氏と憲法学者・木村草太氏の対談からは、今起きている改憲論のバカバカしさと恐ろしさを改めて感じた。現行の憲法が成立する過程で、当時の日本人(政府、官僚、国民といった全て)がどんなことを考えていたかを想像してみることは大事だと思う。

    0
    2015年12月18日
  • オズの魔法使い

    Posted by ブクログ

    ネタバレ

     壮大なタイトル詐欺。
     竜巻のせいで魔法の国に飛ばされたドロシーと、カカシ、ブリキ男、ライオンの愉快な仲間たちで送るファンタジック・ヒーローズ・ジャーニー。
     非常に面白かった。不朽の名作である訳が分かった。愉快で変わった仲間たちとの冒険譚でありながら、『青い鳥』のような寓意性も持っている。また様々な困難を全員の協力で打開していくところが非常に素晴らしい。ストーリーは『桃太郎』に似たところがあるが、『桃太郎』よりも困難に工夫が見られる。

     あらすじ
     カンザス州に住む少女ドロシーは愛犬トトと一緒に迫り来る竜巻に備え地下室に逃げ込もうとした。だがトトがベッドの下に逃げ込んだせいで、家ごと竜巻

    0
    2015年12月14日
  • 翻訳夜話

    Posted by ブクログ

    しぐさの英語表現辞典 研究社
    出てすぐに読めば良かった!高校生にすごくオススメ。最後の文を自分で訳してから2人のを読んだりしたらさらに面白いかと。

    0
    2015年11月03日
  • 翻訳夜話

    Posted by ブクログ

    特に翻訳に興味があるわけではない、と言うか、むしろ翻訳の文章は頭に入ってこないので苦手な世界だが、その舞台裏はとても面白い。興味がないけどそのマニアックぶりが面白いという点では「小澤征爾さんと、音楽について話をする」を連想する。やはり村上春樹が面白いのだ。
    翻訳のあれこれを語ると読者や作家活動にも関係してきてその広がりも面白いところ。

    ここでは2つの短編を二人が翻訳して掲載し、比べるという面白い試みもしている。例えば登場人物の職業について書かれていない場合、翻訳者が肉体労働者と思うか知的労働者と思うかで訳文がかわってくる。淡々としたものにするか熱いものにするか、主人公は「僕」なのか「私」なの

    0
    2015年09月15日
  • 翻訳夜話2 サリンジャー戦記

    Posted by ブクログ

    サリンジャーに限らず、これまで学んできたアメリカ文学に関するアンサーが次から次へと流れるように入ってくるけど、全部すっと入ってくるものだから、消化はしやすいです。
    特にカポーティやフィッツジェラルドのイノセンスとの比較論は興味深い。(マンハッタンの「地獄めぐり」ね)
    麦畑か…という理由だけで実はずっと読んでなかった。はやく読んだらよかった。

    0
    2016年10月13日
  • トム・ソーヤーの冒険

    Posted by ブクログ

    彼らの目に映る世界は膨大に広がっていて、なんでもできそうな、どこにでも行けそうな、こちらまでそんな気にさせてくれる

    0
    2015年06月03日
  • ジム・スマイリーの跳び蛙―マーク・トウェイン傑作選―

    Posted by ブクログ

    古典文学を読む!と意気込んで読んだら予想以上のユーモアに驚いた。楽しく読めて、時々考えさせられた。
    翻訳が自然で解りやすかった。

    0
    2014年09月09日