柴田元幸のレビュー一覧
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日本では「ハックの冒険」より「トムソーヤーの冒険」の方が有名ではないだろうか? にもかかわらず,オールタイムベストの類に選ばれているのは,かならず「ハックの冒険」の方である.この認知度(日本での)と評価のずれは,一体何なのだろう? とかねてから不思議に思っていたのだが,そこに鳴り物入りで柴田元幸訳の本書が登場したので,読んでみた.
ハックはまともに教育も受けていない,なかば浮浪児であるが,そのハックが自分で書いたという設定が絶妙で,ハックのたどたどしい文章を通じて,彼の冒険の数々が生き生きと浮かび上がる,また冒険の道連れとなった逃亡奴隷のジムも当然ながら無学で,この二人が様々なトラブルに巻き込 -
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ネタバレ旧友から送られた回顧録の体裁を取ってるとはいえ、倫理的にも社会的にも結構エグい話。オースターと訳者の品格ある文章に抑えられているのを差し引かなかったら、かなりドン引きしていたのは間違いない。またその話が複雑で流動的な枠構造に彩られ、ドンドン物語世界の深みにさらわれる。読み終わりたくない、と久々に思った。
主人公アダムはオースターの主人公としては定番なタイプとは言え、美しく聡明な姉グウィンとの関係は、何故かサリンジャーのグラース家を彷彿とさせる。
更に、一応インテリながら歪んだエゴ炸裂で一皮剥けば変人どころか剣呑なルドルフは、偏執狂気質を露呈するとどうもイマイチ魅力に乏しい一方で、「王妃マルゴ -
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他の人の訳で中学時代に読んだ気がするが、柴田元幸氏の翻訳で読んでみたいと思い、再読。
トムの勇気や機転は本当にすごいんだけど、ガキ大将っぷりは鼻についてしまう。スクールカースト上位だよな、こいつ、とか思ってしまう。私が捻くれているのか。しかし柴田先生もあとがきで同様に「トムは大人になったら地元のお偉いさんになって『私も子供の頃はやんちゃしたもんですよ、ガハハ』って言ってそう」的なことを書いており、激しく同意。
やっぱりトムよりもハックの言葉が心にしみる。「手に入れるのに苦労しないものなんて、持つ気しねえから」。こっちはきっと、お偉いさんになって昔を笑ったりはしない。 -
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最近の自分的外文ブームにうってつけの本新書。しかも春樹・柴田共著となると、もう読むしかないってことで。期待に違わぬ内容で、翻訳のイロハの部分とか、ちょっと垣間見れた気になっちゃいました。他の著作でも触れられていたと思うけど、”翻訳には耐用年数あり”っていうのには全面的に賛成。新しい訳で読めば良かった!って思ったことも結構あり、最近では専ら一番新しい訳にこだわってたりもする。そう考える中でふと思ったのが、外文は100年経ったものでも新しい訳で生まれ変われるんだから、日本の古典的文学作品も、50年とか経ってるものは誰かが書き直せば良いのに、ってこと。夏目、森、芥川など諸々。新しい言葉に置き換えられ
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ネタバレ壮大なタイトル詐欺。
竜巻のせいで魔法の国に飛ばされたドロシーと、カカシ、ブリキ男、ライオンの愉快な仲間たちで送るファンタジック・ヒーローズ・ジャーニー。
非常に面白かった。不朽の名作である訳が分かった。愉快で変わった仲間たちとの冒険譚でありながら、『青い鳥』のような寓意性も持っている。また様々な困難を全員の協力で打開していくところが非常に素晴らしい。ストーリーは『桃太郎』に似たところがあるが、『桃太郎』よりも困難に工夫が見られる。
あらすじ
カンザス州に住む少女ドロシーは愛犬トトと一緒に迫り来る竜巻に備え地下室に逃げ込もうとした。だがトトがベッドの下に逃げ込んだせいで、家ごと竜巻 -
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特に翻訳に興味があるわけではない、と言うか、むしろ翻訳の文章は頭に入ってこないので苦手な世界だが、その舞台裏はとても面白い。興味がないけどそのマニアックぶりが面白いという点では「小澤征爾さんと、音楽について話をする」を連想する。やはり村上春樹が面白いのだ。
翻訳のあれこれを語ると読者や作家活動にも関係してきてその広がりも面白いところ。
ここでは2つの短編を二人が翻訳して掲載し、比べるという面白い試みもしている。例えば登場人物の職業について書かれていない場合、翻訳者が肉体労働者と思うか知的労働者と思うかで訳文がかわってくる。淡々としたものにするか熱いものにするか、主人公は「僕」なのか「私」なの -
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読んだばかりのJ.D.Salinger の「Catcher in the Rye」について、訳者である村上春樹と、それを教材に東大で講義をしている柴田元幸が徹底的に語り合っている。
この小説は「社会に反抗する無垢な少年の物語」という評価が通り相場らしいが、村上も柴田もそれに関してはとても否定的である。以前は、若者はこの小説を読まないことには話が始まらないというところがあったそうだ。ところが二人の対談を読んでいると、とてもそんな単純な物語ではないことに気付かされた。
二人は「トム・ソーヤー」や「ハックルベリー・フィン」を引用しながら、ヨーロッパにある成長物語はアメリカにはない。反成長物