柴田元幸のレビュー一覧

  • 雲

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    面白かった。
    彼の今までの作品はグロテスクで奇想な展開が多かったのだけれど、本作にはあまりそういう展開はでてこない。
    所々出てはくるのだけれど、あまりメインの話に有機的には絡んではこない。
    ただ、そんなグロテスクで奇想な展開は、今までに彼が発表してきた作品に登場したエピソードに似た内容が多いので、彼の一つの集大成的な意味合いもあるかも知れない。
    まぁ、そんな展開を期待していた人にとってはちょっと肩透かしを食らわされたように感じるかも知れない。
    実は僕も最初はそんな肩透かしを食らった一人だったのだが、読み進めていくうちに「おいおい、エリックさん。グロテスクで奇想な展開がなくても凄く面白い作品が書

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    2021年05月07日
  • トム・ソーヤーの冒険

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    小学校時代に読み漁った名著の読み返し。
    「トムソーヤの冒険」が発表されたのが今から140年前、アメリカがまだ南北で対立していた時代。
    奴隷制もあり、荒れていた時代にこれほどまでに勇気と希望に溢れた物語を生み出した著者が素晴らしい。
    印象的なシーンが、自らの日曜学校の葬式の日に戻ってきた3人を、喜びに満ち溢れて出迎えた人たちに、ハックが帰ってきたことも喜んでくれと、何の気無しにトムが言ったところ。
    トムの心の優しさ、寛大さがひしひしと伝わってくるこのシーンに胸を打たれた。

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    2021年05月05日
  • 雲

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    古書店で、とある本を見つけるハリー。
    そこから彼の半生が語られる。
    滾々と湧きいでる泉水が虹を放つような言葉で。

    タイトルどおり、ぽっかりと浮かびいつしか形を変え消えゆく雲のような挿話。ほんとうに、雲を眺めるような心地よい読書時間がもてた。

    ラストは、波乱に満ちていくのか穏やかに過ぎゆくのか、どちらにしてもハリーの人生が長く続いていくだろうことを感じさせる。
    本を閉じても物語は閉じないようだ。

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    2021年05月02日
  • 翻訳夜話2 サリンジャー戦記

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    ネタバレ

    大変に面白かったです。大満足です。

    まず、「翻訳夜話2」ということで、第二弾の本ですよ、って事だと思うのですが、「翻訳夜話(1)」は、未読です。そっちを読まずに「2」から読むのって、ある意味アカンやんか、、、と思うのですが、すみませんコッチから読んじゃいました。また機会がありましたら、「(1)」の方も、読みますです。楽しみです。

    で、本書の内容をザックリと言いますと、村上春樹さんと柴田元幸さんが、それぞれに
    ①翻訳というものはなんぞや?を語る。
    ②「キャッチャー・イン・ザ・ライ」という物語を語る。
    ③J・D・サリンジャーという人物について語る。
    という本、だと思います。

    翻訳論、キャッチ

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    2021年04月14日
  • 新訳 オズの魔法使い

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    オズの魔法使い、柴田元幸さんの新訳。

    オズの魔法使いは、絵本的なイメージがあり、メルヘンチックな幼児向けな話がしていたけど、きちんと小説を読んでみたら、思っていたよりも複雑な話だった。
    小学校中学年以上向けというのもうなづける。

    寓話的な話であることが印象的。
    夢に向かっていたアメリカで書かれた話。

    コンプレックスだらけの弱者たちが協力し助け合うことで未知の世界を開拓し、成功する。

    皆が足りないと思っている能力は、実は皆の中にある。
    経験と自信を得ることで、自分の力に気づき、堂々と振る舞えるようになる。

    カラフルな色の表現。(これは映画版でも大きな効果)

    カンザスは「なにもかも灰色

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    2021年02月20日
  • トム・ソーヤーの冒険

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    おそらく子どもの頃に読んだことがあるはずだが、こんなに長い話だという印象はなかったので、子ども向けに縮訳されたバージョンで読んだのだろう。数々のいたずらと冒険、少年らしい想像力と恋、そしてハッピーエンドで、19世紀アメリカらしい瑞々しさ満載のストーリーを柴田元幸訳で楽しめるのだから、文句のつけようがない。『ハックルベリー・フィンの冒険』も読もう。

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    2021年02月20日
  • 雲

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    『ひょっとしたら、一見ごく取るに足らない要素 ― 聞き間違えた一言、誤った想定、無理もない計算違い ― こそ実は、物事の連鎖における何より強力な環なのかもしれないのだ』―『学芸員いま一度』

    旅先の鄙びた古本屋で目に留まる一冊の古書。物語がそのように始まると、ついウンベルト・エーコの小説を思い浮かべてしまう。だがしかし、この物語はエーコが好んで描いた劇中劇のような形式に素直に嵌まることはない。スコットランドでかつて観測されたという「黒曜石雲」にまつわる記録は十分に摩訶不思議な物語を展開しそうだというのに。

    一人称の主人公の語りは、古書の周りを回りながら自らの来し方を辿り、如何にして自身をメキ

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    2021年02月02日
  • トム・ソーヤーの冒険

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    幼少期にTVで観たトム・ソーヤの冒険。「悪童」というのがぴったりのトム。ポリーおばさんに叱られ、学校で喧嘩し、日が暮れるまで遊び、女の子にモテたくて意地悪をする、純粋な少年。トムの少年時代は多くの事件が勃発する。海賊になりたくて家出、目の前で起きた殺人、金貨がぎっしり入った宝箱の発見。これらの事件でいつもトムの近くにはハックが常に一緒に行動する。このハックはとても独特な性格で面白い。トムが好きになったベッキーにはとても好感度が高く、少年トムを羨ましく思った。多くの人に小説のトム、ハックと会ってほしいな。

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    2020年12月21日
  • トム・ソーヤーの冒険

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    大人になって読み返して改めて面白さがわかる本がある。失われた時間への惜別の想い、子供たちの未来よりも自分の今とこれからを期待したくなる小説。ストーリーは今さら語るまでもない。19世紀のミシシッピーを舞台にトムやハックやジョーが好奇心で常識を封じ込め、新しい世界に飛び出していく冒険小説である。「へん、ぶたれるのがなんだっていうんだ」明日会社で実践してみよう

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    2020年12月10日
  • 翻訳夜話

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    翻訳本が苦手に感じるのは、
    作品が面白ければ面白いほど、
    ひとつずつの言葉の表現に直接触れてみたくなるから。
    つまり、原著で読めるのならば原著のままで読みたいのだ。

    物語の本質はひとつずつの言葉ではないところにあっても、
    翻訳者の中を通ったものは、
    すでに純正ではなく(劣化するという意味ではない)、
    二重性が大前提になってしまう。
    そこに、さらに読者としての私の解釈も入り込むと、
    誰の、何に影響されたものなのか難しくなってくる気がするので、
    だから翻訳本を苦手だと感じていた。

    とはいえ、ポール・オースターが大好きで、
    『オーギー・レーンのクリスマス・ストーリー』が読みたくて、
    村上春樹と柴

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    2020年08月10日
  • インヴィジブル

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    「一九六七年の春、私は彼と初めて握手した。そのころ私はコロンビア大学の二年生で、何も知らない、書物に飢えた、いつの日か自分を詩人と呼べるようになるんだという信念(あるいは思い込み)を抱えた若者だった。」という主人公アダムの書き出しで、オースター読者ならピンと来る。本作も、ここ最近のオースター小説のベースになっている内省的自叙伝の色合いが濃いのではないかと。(1967年、オースターはコロンビア大学の二年生) もうこの時点でオースター・ファンとしては期待値が一段階アップする。
    語り手がアダムになったり、彼の友人のジムになったり、そして、ジムの語りの中でアダムの残した手紙を読んだり。こうしてアダム像

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    2020年05月04日
  • 雲

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    めくるめく怪奇、ユーモア、官能。やがて脳内で文章が諸星大二郎作画に変換されていく。物語の描かれ方はマジックリアリズム的だが、南米のものとはずいぶんパースの取り方が違う印象。ヨーロッパの魔術的風景だなぁと感じる。人智を超えた非科学の世界と、素面で合理的な世界の両方を愛し、愛される主人公が誰より特異で魅力的だ。読みながら何度も「面白い…!」と声に出た。

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    2020年05月03日
  • ジム・スマイリーの跳び蛙―マーク・トウェイン傑作選―

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    あのトムソーヤ、ハックルベリーフィンのマークトウェインが生涯で発表した文章の中から、新聞や雑誌に掲載された与太話、ホラ話を集めて翻訳したもの。

    もうめちゃくちゃ面白かった!
    マークトウェインはとことん皮肉の効いたユーモアのセンスに富んでいて、

    風邪を治すには
    ワシントン将軍の黒人従者
    私の農業新聞作り

    の三遍は特に最高だった。

    とにかく笑いと風刺、ひたすらに皮肉。

    いやぁ、何度でも繰り返し読めるなー

    マークトウェインの本で読んでない本などもうないと思ってたのに新編を読めた感動と、翻訳の素晴らしさにも敬意!あー、嬉しかった。楽しかった。

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    2020年04月15日
  • 雲

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    グラスゴー近郊のスラム「トールゲート」で育った主人公ハリーの魂の遍歴の物語であり愛を渇望し目の前にあることに気づけなかった物語である.メキシコの田舎町の古書店で出会った一冊の古書「黒曜石雲」から糸が解けて大いなる大河のような物語が始まる.スコットランド,ダンケアンでのゴシックホラーのような味わい,アフリカでの冒険小説のような雰囲気,カナダでのサクセスストーリー的な展開や家族への複雑な愛といった盛りだくさんな内容で,しかも本にまつわる謎も含めて,読み応えのある骨太の小説だった.表紙の絵もどこか不安な荒涼としたこの本にぴったりだ.

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    2020年03月16日
  • 雲

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    これは色んな面白さが詰まった物語だった!!古書店で見つけた「黒曜石雲」という不思議な雲についての本。そこに記された「ダンケアン」という地名は若い頃、苦い経験をした地だった。そこから物語は彼の半生へ。両親を悲劇的な事故で失い、大学を出て職を得たダンケアンでのミリアムへの情熱的な恋、そして裏切り。失意のままアフリカ行きの船に乗り込み、流されるまま世界を巡る。各地で運命を左右する人々に出会い、心揺さぶる経験をしてきた。結婚し、子供も得た今「黒曜石雲」の謎を追ううち、懐かしい人と再会し、衝撃の真実を知る。不気味なゾクリとさせる不意打ちのラストがなんとも言えない印象を残す。

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    2020年02月22日
  • ハックルベリー・フィンの冒けん

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    ネタバレ

     柴田元幸さんが、出来るだけ原著に忠実に、ハックの声を再現した翻訳で、ひらがなが多く最初は読むのに苦労しましたが、後半からハックの魅力全開で、どんどん読めました。
     小説の舞台の時代も生活も人々の考え方も今とあまりにも違いすぎて、良心に従うことが必ずしも自分のやりたいことと一致しない現実に苦しむハックの姿は心が痛みました。しかし、困った事になると、次から次へとよくもこれだけ出てくると感心してしまうほどの言い訳や嘘八百が傑作で、何度も大笑いしました。また、黒人奴隷のジムが教えてくれる悪いことのしるしやおまじないなどもたくさん出てきて、一体ジムは何歳なのか、と思いました。ハックが女の子のフリをして

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    2020年01月28日
  • 雲

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    「パラダイス・モーテル」では風呂敷を広げるだけ広げて「これちゃんと畳める?」とこちらがワクワクと不安でいっぱいになったところで手その風呂敷を手品で消してしまい、こちらの胸にぽっかり穴を開けて茫然とさせ(褒めてます)、「ミステリウム」では一度きれいに畳んで見せた風呂敷を残りページも少ないのにもう一度クシャクシャにしてから畳み直すと言う荒技で読むものを呆れさせた(褒めてます)マコーマック、ちゃんとお話畳めるやん!!何なら四角やなくて綺麗な花になってるやん、くらいの大団円。いやはや、やるやんマコーマック。

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    2020年01月22日
  • ハックルベリー・フィンの冒けん

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    20年ほど前にたしか岩波文庫で読んでいたが、柴田訳で読みたくて再読。
    読みながら、とにかく長いので、色々、深読みしたくなった。
    例えば、この物語では、嘘や物語がかくも多用されるのか、とか。良心とは何か、とか。

    読み終えて思ったのは、これはハックという子どもに託して、自由とは何かを書いた物語だった、ということ。

    痛快の一言です。

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    2020年01月10日
  • オズの魔法使い

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    自身の短所は、実は長所でもある。
    短所と思う理由は、自身が求める基準が非常に高いから。
    劣等感こそが成長を促すエネルギー。
    そんなことを教えてくれます。

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    2019年09月19日
  • オズの魔法使い

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    ネタバレ

    「不思議の国のアリス」は苦手でも、
    こちらは好き。
    高校1年時に、英語版を授業で使った。

    カンザスの大平原のまんなかから大竜巻で家ごと見知らぬ土地に飛ばされたドロシー。ヘンリーおじさんとエムおばさんが待つ故郷へ戻りたい一心で、どんな願いも叶えてくれるという偉大なる魔法使いオズに逢いにエメラルドの街を目指す。頭にわらの入ったかかし、心臓がないブリキの木こり、勇気がほしいライオン。仲間とともに困難を乗り越える一行の願いは叶えられるのか?柴田元幸の新訳による不朽の冒険ファンタジー。

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    2019年05月05日