柴田元幸のレビュー一覧

  • 芥川龍之介選 英米怪異・幻想譚

    Posted by ブクログ

    芥川龍之介が選んだ英米怪異・幻想文学のアンソロジー。芥川龍之介が英文学者を志していたとは知らなかった。収録作品はオスカー・ワイルドやエドガー・アラン・ポーなど有名作家もいるが、知らない作家も多いので簡単なプロフィール紹介があるのが嬉しい。

    好きな作品:
    ・月明かりの道(アンブローズ・ビアス):「藪の中」に影響を与えた作品。事件関係者たちの告白で構成されている。
    ・A・V・レイダー(マックス・ビアボーム):英国紳士二人の話。オチが意外だった。
    ・大都会で(ベンジャミン・ローゼンブラッド):わずか4ページの作品だけど、大都会の冷たさと人間心理の醜さにゾッとした。
    ・ささやかな忠義の行い(アクメッ

    0
    2025年09月19日
  • インヴィジブル

    Posted by ブクログ

    ネタバレ

    アダム・ウォーカーが書き残した彼の人生。ルドルフ・ボルンとの出会いと殺人疑惑。彼に物語を託されたジムはアダムの死後、彼の人生を追う。

    ポール・オースターも村上春樹と同じで、読むタイミングがある作家さん。今は波長が合うらしく、ずっと読んでしまった。アダムの物語やジムに語られる関係者の話が引き込まれる。

    0
    2025年09月19日
  • 翻訳夜話

    Posted by ブクログ

    70冊目『翻訳夜話』(村上春樹/柴田元幸 著、2000年10月、文藝春秋)
    米文学翻訳家のトップを走り続ける2人が、若き翻訳家や翻訳家を目指す学生と行ったディスカッションの模様を纏めた新書。
    一見堅苦しそうな本に見えるがそんなことは全く無く、いかに翻訳が楽しい作業なのかが伝わる幸福感に満ちた一冊である。
    2人が同じ短編小説をそれぞれに訳すという「競訳」も収録されており、そのスタイルの違いを比較出来るのも面白い。

    〈僕は翻訳というのは、基本的には誤解の総和だと思っているんですね〉

    0
    2025年09月17日
  • ガラスの街(新潮文庫)

    Posted by ブクログ

    ポストモダン的な話とかドンキホーテの話とか聖書の話とか教養がないからむずい。これ推理小説なのか?
    ムーンパレスと雰囲気近いけど、ムーンパレスの方が読みやすかった気がする。

    ニューヨーク行く機会あったらもう一回読みたい。

    0
    2025年09月08日
  • ナイフ投げ師

    Posted by ブクログ

    ほんとうにただごとではない密度。文字に埋め尽くされたページ、底なしに秀逸な文章。質が高いとしか言えねえよ。不安がつきまとう夢みたいなお話たち、とてもよかった。不思議で、薄気味悪くて、心当たりがないのに懐かしいような気さえしてくる。『協会の夢』『パラダイス・パーク』この上なく想像力が掻き立てられたし、『ある訪問』好みすぎてたまらんかった。満足感えぐ。

    0
    2025年08月22日
  • ムーン・パレス(新潮文庫)

    Posted by ブクログ

    不格好で、不器用にもがく滑稽な姿。
    主人公の青年期が見事に描かれています。
    「ムーン・パレス」 ポール・オースター著
    若い頃、何冊も同じ著者の本を読んだのですが強く印象に残ったのはこちらの一冊でした。
    今年に入ってニュースで著者の訃報を受けました。その夜から3日間でこの小説を再読しました。
    物語の前半は、主人公がとにかく極限状態に落ちていく様子、
    後半はそこから回復して、自分のルーツを探すという設定です。
    後半からの話はちょっと奇想天外で、ここが面白い!という方々が多々ですね。
    私は、主人公マーコがどんどん落ちて彷徨うところが、この作品の一番の魅力だと思っています。
    この主人公の精神状態がその

    0
    2025年08月12日
  • ナイフ投げ師

    Posted by ブクログ

    細部が犇めく濃密な短編集。非現実的な出来事がシームレスに現実へと滑り込むが、その文体は数学のように精緻でエレガント。究極のナイフ投げ芸が行われる表題作に惹き込まれ、少女たちの秘密結社への様々な憶測が流れる『夜の姉妹団』に唸り、自動人形劇場だらけの町を描く『新自動人形劇場』に魅了され… 全12作が高い完成度で、短編ならでは魅力に浸る。

    0
    2025年08月07日
  • ブルックリン・フォリーズ(新潮文庫)

    Posted by ブクログ

    ガラスの街など比較的初期のオースターを読んでいたので、今回の作品は少し違う雰囲気ではあるけど、面白く読めました。 準主人公のグラスの周りで起こる悲喜交々、徐々に生きる意味を取り戻しつつある現実に911が暗い影を落としています。後期の作品も面白いです、また他の作品も読みたい。

    0
    2025年08月04日
  • ガラスの街(新潮文庫)

    Posted by ブクログ

    思索の過程に浮かんでは消えてゆく言葉の数々を残らず捉え、文字として残す。それら言葉の連なりは、もしかしたらそれ自体が物語なのではあるまいか。もう一人の自分が居るとして、その存在を捉えることができたなら、僕は彼の人生を同じく歩いて行くことができるだろうか。世の中は不思議で、不思議なものだと決めてかかれば、さほどでもなく、何事にも頓着しなければ、しないなりに、どうにも説明のつかない事態に巻き込まれてしまうこともある。先入観では語り尽くせないのが人生で、世界は、その目に映るすべての物事でしかない。想像はあくまで想像で、現実にリンクしたら、それは想像ではなくなってしまう。あれは、こうだ。それは、ああだ

    0
    2025年07月06日
  • ガラスの街(新潮文庫)

    Posted by ブクログ

    ほぼジャケ買いで購入。
    色々な謎が残り読後何ともモヤモヤする。

    そもそも事件そのものもはあったのか。
    主人公の見ていたものは、全て孤独な彼自身が生み出した幻覚ではなかったか?
    最後に出てきた一人称の「私」は誰なのか、「私」が書いた体になってるが作者はポール・オースターなのはなぜなのか。

    ものすごく自分が落ちたとき、また読みたい。

    0
    2025年06月07日
  • ガラスの街(新潮文庫)

    Posted by ブクログ

    ひょんな間違い電話から探偵家業に手を出し、奇妙な白紙の世界に足を踏み込んでゆくダニエル・クイン。
    この物語は必ずしもバッドエンドではないと憶測する。僕にはクインが、初めからこの謎の世界に憧れていたと思えるのだ。

    映像でしか見たことのない、レンガとガラスの壁に囲まれたニューヨークの街並みが朧げに眼前に迫ってくる。憧れと不思議な懐かしさを覚える風景。

    僕はまた、この本を一種のオジサン文学の萌芽と見たい。勘違いしたクインが、若い女性に蔑まれるシーンがあり、滑稽な笑いをもたらしている。

    この人の作品を、もう少し読みたくなった。

    0
    2025年06月07日
  • 雲

    Posted by ブクログ

    グラスゴー近郊のスラム一歩手前の地域で育ったハリーの半生をたどる不思議な読感の本。ハリーは必ずしも自発的に行動するタイプではなく、どちらかというと巻き込まれ型の男。恋に敗れて逃げながらも、その記憶を何度も反芻する。必ずしも望んでいなかった仕事につき、望んでいたとはいえない結婚をし、それでもその一つ一つに誠実であろうとしながらまた他人に巻き込まれる。暗くて陰鬱に描くこともできたのだろうが、あちこちでふわふわした救いが漂う。短い描写で深みのある情景を描く技量がすごい。

    0
    2025年05月29日
  • 翻訳夜話2 サリンジャー戦記

    Posted by ブクログ

    村上さんと柴田先生の対話で暴かれていく作家サリンジャーのひととなり、非常に興味深く読めました。物語への考察=サリンジャーの生涯に密に関わっていたんだという発見があり、サリンジャーの生き方をホールデンになぞらせたのではなく、サリンジャーがホールデンの生き方をなぞっていったというのは一種の狂気を感じた。大昔に野崎訳を読んだ後に村上訳を読んで比較したことはあったけど、当時の印象として前者のホールデンはとんがり少年で、後者は引きこもりがちな天邪鬼。この印象の違いは翻訳に取り掛かった時代の背景を訳者がうまく反映させていたからだというから感心しきりだったし、ひとつの文章がこんなに変わるものなのかと文学の多

    0
    2025年05月28日
  • オズの魔法使い

    Posted by ブクログ

    ネタバレ

    映画ウィキッドを観た後に原作を読んでおらず理解しきれなかったことがあり、本書を読んだ。
    まず驚いたのはウィキッドではおバカで軽率なグリンダは優しく賢明な魔女だったこと、そして東の国の魔女はただ悪い魔女として描かれてたこと、映画と全然ちゃいますやん…
    オズのダメさ加減は変わらずで安心した。
    空飛ぶ猿の軍勢など原作から引用されてるとは思わずビックリした。
    概してウィキッドの設定は杜撰だと思ってしまった。
    ウィキッドとの関連を除くと、全体として面白い話だった。
    頭が良くなりたいと脳みそを欲しがるかかしが、機転が効いたアイデアを沢山出したり、心臓をもらって心が欲しいと言うブリキの木こりが生き物を慈しむ

    0
    2025年05月21日
  • 4 3 2 1

    Posted by ブクログ

    ネタバレ

    2段組みかつ余白はほぼなし、そして約800ページという超ボリュームのこちら。2024年に永眠したオースターの最期から2つめの作品である。ファガーソンの4つの物語。激動の50~70年代のアメリカが舞台。メインヒロインはエイミー。(.1.2.3.4でエイミーとの関係はいろいろかわる)愛と性と野球と学生生活、政治がメイン。
    790ページくらいでからくりが判明。それまでパラレルワールド的な感じで読んでいたので、やられたと感じる。つまり.4の作家になったファガーソンが.1.2.3のファガーソンの人生を創作したということなんですよね。途中から白紙になって脱落していくファガーソンもあり。

    2.2 落雷によ

    0
    2025年05月20日
  • ガラスの街(新潮文庫)

    Posted by ブクログ

    探偵小説と言われれば眉をひそめたくなるし、純文学かと言われれば「純文学って何ですか?」と言い返したくなる。
    ほんのイタズラや出来心に端を発した物語を読者は追うだけだが、大きな事件など一個も起きないのに不思議と先が気になって仕方がない。
    一応、謎はあちこちに出てくるが推理小説のようにトリックや伏線として活かしていくわけではない。余白か、あるいは主人公の思考を観察・あるいは描写するものとして登場するのみだ。
    そんな不思議でヘンテコな物語なのに結末では奇妙な寂しさがあった。

    0
    2025年05月18日
  • 幽霊たち(新潮文庫)

    Posted by ブクログ

    最後の最後で爆発する「ブルー」の怒りが凄まじい。
    きっちり落とし前をつけて新しい世界へ去っていく。なかなか爽快です。
    それにしても、行動範囲が限れた主要人物たった3人による駆け引き、よくこんな設定を考えたものだと感心した。

    0
    2025年05月14日
  • ムーン・パレス(新潮文庫)

    Posted by ブクログ

    ネタバレ

    それは人類がはじめて月を歩いた夏だった。という美しすぎる書き出しがいい。音楽的とも評される文章は比喩表現含めてとても綺麗かつ、自嘲と自虐の目立つ語り口ながらニューヨーカーらしい軽快さもあるアメリカ現代文学らしいオシャレさがあった。

    内容としては自伝的な青春小説でありながら、これは家族小説でもある。特に第二部の余命いくばくもない富豪の老人と、第三部の息子がそれぞれ主人公の父であり祖父だったという「偶然」と、それが連なって物語となる「必然」は非常に面白く、いずれも互いが関係性を自覚して双方向になったのは束の間で、死による離別となるのはたまらなく切ない。結局ひとりぼっちとなるラストも含めてかなり薄

    0
    2025年05月13日
  • 翻訳夜話

    Posted by ブクログ

    この手の本を読んだことがなかったのですがとても興味深く読めた。英語も日本語も関係なく、とにかく文章が大好きなお二人と学生さんたちの講義の様子は想像するのも楽しかったし、翻訳は面白いんだ!やらずにはいられないんだ!という村上春樹の翻訳愛に触れられたのも新鮮。キャッチャーインザライは野崎訳も村上訳ももっているけど、この講義をしていた頃にはまだ訳していなかったんだなと思うと感慨深かった。
    そして、お二人があまりにも熱烈に英語をどう日本語に直すのか、というお話をするので私も翻訳という作業に興味がわいてしまって、フラニーとズーイの英文庫を取り寄せています。英語は得意じゃないけれど、こういうところから勉強

    0
    2025年05月10日
  • ガラスの街(新潮文庫)

    Posted by ブクログ

    探偵小説だとは感じなかった。入れ子構造になった物語で、途中、ジョイス的なものが顔を覗かせてから一挙に面白くなった。

    0
    2025年05月03日