柴田元幸のレビュー一覧

  • 幽霊たち(新潮文庫)

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    ◼️ポール・オースター「幽霊たち」

    再読。短めでさらっと読めて、小説的。オースター入門編には最適かもと今回思った。まあその、読後、「で?」というのは残るかも。

    1947年、探偵事務所に勤める青年ブルーは、ホワイトという依頼者から、ブラックという男を見張る仕事を受ける。ホワイトはブラックの部屋に面したアパートを手配した。仕事にかかったブルーだが、あまりに事態が動かないことに疑念を抱き行動に出るー。

    登場人物には色の名前が多いが、物語の大半はブルーとブラックの関係性。依頼人のホワイトへ報告書を出しながらも、いわば孤独を極める存在となったブルーの心情の描写が深まっていく。謎を解明しようと起こした行動により逆に謎は深まる。そして哲学的とも言える境地?に辿り着く。

    解説にもあるが、色の名前をさまざま出しながらも、主要ドラマは闇の黒で展開のイメージはモノトーン。色彩が無い。120ページほどと長くはなく心理描写、ちょっとしたサスペンス小説のような成り行きが楽しめる。さらっと読めるものの、ちょいじっくりと考えるタイプの小説でもあった。

    ネタははっきりと描くのがいいのかどうか考えさせる。そこも含めて小説ってものか。

    設定には軽い面白さを感じるが、透明感のあるモノトーンを印象付ける黒さ、深さを生む感覚と技巧はとても興味深い。この作品を含む「ニューヨーク三部作」で1980年代末にポール・オースターは世界的な評価を得たとか。

    時代とアメリカを感じたりする作品。

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    2026年04月11日
  • 囚人のジレンマ 下

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    虚構商業(の王ミッキーマウス)と冷戦と大衆映画プロパガンダが並走する。他にもアメリカ史、ゲーム理論、哲学などの多くのモチーフに、ある家族の物語が多層的に織り込まれていく。構造や技巧自体が目的化している感は否めないが(そしてタイトルが全て集約しているが)、知的関心と物語構造を融合させる「ポストモダン文学」に身を委ねて、巨匠の初期作を楽しんだ。

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    2026年03月26日
  • 幽霊たち(新潮文庫)

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    タイトルがかっこいい。文章が現在形で、最近読んだ『海辺のカフカ』を思い出した。ブルーとブラックの関係は、小説を書くことにおける作者とキャラクターの関係を表しているのかと思いました。

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    2026年03月22日
  • 舞踏会へ向かう三人の農夫 上

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    ペダンティックで嫌味な語り口で終始イライラする。いちいちいちいち皮肉めいた軽口を挟んでくるなよ鬱陶しい。
    複数の視点が絡み合う構成は、後半で収束する地点を予見させるので好きだった。

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    2026年03月18日
  • ムーン・パレス(新潮文庫)

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    数奇な人生
    巡り巡って自分と血の繋がった人達と会う
    助け合い、時には憎しみあい、愛する人と出会い別れ、
    よくもこの500ページの中にここまで物語を紡げるなぁと感心する本

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    2026年03月16日
  • サンセット・パーク(新潮文庫)

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    大好きなポールオースターの本も久しぶりに買った。亡くなったニュースは目にしていたが、忘れていたような気もする。
    これはなぜか読み進められない。話が全然入ってこない。そういう狙いなのかもしれないけど、なぜか話が進まない。今のところ読み終えられていないけど、読み終えられる気がしていない。なぜだろう。
    でも、最後の作品はそのうち必ず読みたい。

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    2026年03月09日
  • 幽霊たち(新潮文庫)

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    霧がかったような世界観の中、主人公という人間がどんどんなくなっていく。
    どうなるのか、この先になにがあるのか、という不安が最後まで続くのが良い。

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    2026年03月06日
  • バウムガートナー

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    ネタバレ

    70歳を過ぎた男が、亡き妻を想う。妻の過去や友人への恋愛感情など、静かな雰囲気の物語だけど、バウムガートナーの心の中は結構激しい。ゆっくりと物語が進むけどあまり退屈を感じない不思議な雰囲気。

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    2026年03月03日
  • ハックルベリー・フィンの冒けん

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    「ジエィムズ」を読むために、まずは「ハックベリーフィンの冒険」を読まねば!
    で、どうせ読むなら柴田元幸さんの新訳を読むことに。

    やっぱりこういう冒険譚は子どもの頃に読むものなのかな。なかなかに苦痛な旅だった…。進まない。

    嘘つきハックが、さまざまな偽名を使いながら、ジムと共に逃亡するのだが、もう子どもの感性がないからなのか、それとも時代的な感覚のズレなのか、私には共感し難いハックの行動原理笑

    特に最後、トム・ソーヤが出てきてからの展開。
    すぐに解放できるのに、それでは簡単すぎて面白くないとと、困難をわざわざ演出する「子どもの遊び」に命懸けで付き合わされるジム。
    これ、なかなか笑って読むことはできない。
    えっと、ここは、マーク・トウェインの示唆に富む現代批判と読めばよいのか?

    「ジェイムズ」が生まれる理由はここにあるのだろうなと思う。白人の子どもの冒険もどきに付き合わねばならなかったジムの心境を是非とも知りたいから。

    あー、ようやく読める!

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    2026年02月09日
  • サンセット・パーク(新潮文庫)

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    かつてサンセット・パーク近くのゲストハウスに2週間ほど滞在したことがあり、当時の光景を懐かしみたくて手に取りました。
    ​しかし、そこに描かれていたのは美しい追憶ではなく、ブルックリンの若者たちが抱える複雑な心情や、逃れられない過去のトラウマ。彼らを包む閉塞感や、行き場のないやるせない感情は、不法占拠されたアパートの空気感、そして決して裕福とは言えないサンセット・パーク周辺の乾いた街並みと見事に共鳴しています。
    ​マイルズの浮世離れした美男子ぶり(女優の息子という設定も効いています)など、細かな描写も印象的です。ニューヨークの情景を五感で思い出しながら読む体験としては非常に贅沢でしたが、物語そのものの展開としては、個人的にはあと一歩物足りなさを感じました。

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    2026年02月08日
  • 幽霊たち(新潮文庫)

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    ネタバレ

    不思議だな。
    ガラスの街も読んだけど、対象者と接触しがち(笑)そして妄想がちょっと面白い。
    結局何だったんだろう。人が自分の人生をどうしようが、本人の勝手じゃないか。っていう文章、本当にそうだよな、でも割と1番難しい問題でもあるよな。ブラックは自分をブルーに見張らせて何がしたかったのか。多分そういうのを説明している部分はあるんだろうけど、わからない。文学ってこういうものなのかな。私も誰かを見張る仕事したい。

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    2026年02月07日
  • トム・ソーヤーの冒険

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    時代的に黒人への差別や偏見がところどころで暗い影を落とすが、トムを通して少年たちにしか分かち合えない世界が伸びやかに描かれていた。日曜名作劇場のイメージが強いので読んでいる間脳内ではアニメのトム達が駆け回っていた。

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    2026年02月01日
  • ガラスの街(新潮文庫)

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    ネタバレ

    そもそも、最後の視点は誰?
    途中も急に視点が変わって、え?ってなった(笑)んで、駅でなんでピーターが2人いたんだろう、これはクインの書いた小説か?
    ちょっとわからないことが沢山あるけど、間違い電話から始まって、興味本位で探偵することにした設定は物凄くいいよね。
    ニューヨーク3部作、全部読んでみよう。

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    2026年01月31日
  • サンセット・パーク(新潮文庫)

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    ネタバレ

    ピラールに惹かれるのはわかる気がする。マセガキが一番魅力的だと思う。やはりオースターらしい孤独を感じるが、ストーリーに凡庸さを少し感じてしまった。ムーンパレスや偶然の音楽のような、どこか劇的な要素に欠ける。特にラストはプツッと終わりすぎかなと思う。オースターってそういうものだろうけど、何かしらの変化というのはもっとあるべきだと思う。ポールとリンダが出てきた。オースターも好きなのか。

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    2026年01月17日
  • 翻訳夜話

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    ネタバレ

     ちょいと“界隈”で、村上春樹が話題なのと、翻訳家として知る柴田元幸との対談はおもしろそうと、長野湯田中の古本屋で、というか、古民家を再利用したフレンチレストランの奥の和室に古本コーナーのある、ちょっと面白いお店で見つけたもの。
     柴田氏の翻訳は、近年ではエドワード・ゴーリーの絵本の訳者として目にするなどしていて、実は、もう大御所の、なんなら鬼籍に入られているような方かと思っていた。本書を読んで、存命なのはもとより、村上春樹より年下なんだと驚いたりもした。

     本書は、柴田が自分の大学の学生たち、若手翻訳者などとのセッションに村上春樹をゲストに招いて、翻訳とは、文章とは、といった日本語の表現についてあれこれ語りあい、参加者からの素朴な質疑応答に応えるもの。
     そのセッションがPart.3まで、3回に分けて行われた様子が収録されている。

     もう少し、柴田氏の翻訳、あるいは文章を生み出すときの姿勢や、心がけが知れるかと期待していたが、付箋紙を付けた箇所は、圧倒的に村上春樹の発言のほうが多かった。つまりは、春樹氏の姿勢、考え方が、やはり特異で、さすがと思わされる。一家言をお持ち、というところか。
     心がけもさすがだが、やはり喩えが絶妙で面白い。多くは挙げないが、以下など、いかにも“らしい”

    「小説を書くというのは、文章的に言えば、たとえばお客を呼んで特別料理を作るのとおなじなんです。スーパーマーケットに行っていろんな食材を買いこんできて、冷蔵庫に入れて、いろんな下拵えをして、客用の食器も出してきてというのがあるわけですよ。ところが翻訳というのは、おばんざいみたいなものなんです。冷蔵庫を開けて「あっ、きょうはこれとこれがあるから、これをささっと作っちゃおう」という自然体でやるのが、翻訳なんです。少なくとも僕にとってはそういうことですね。」

     最後に、「少なくとも僕にとっては」と付言するあたりも、いかにも、ハルキ節(笑)

     自分のスタイルを作るのも、愚直にやるしかない、と説く。

    「寝食を忘れて一生懸命いろんなものを翻訳して、何度も何度も読み直して、何度も何度も書き直して、人に読んでもらってまた書き直すということを続けていれば、スタイルというものは自然に出てきます。それはもう、歩き方とか、食べ方とかと同じことです。生きている過程で自然に身につかなければ、意味ないですよね。」

     このあたりも、日々のルーティンとしてジョギングを欠かさず、毎年、決まってマラソン大会にも参加する氏らしい(今はどうか知らないが)。
     かつての、そんな生活ぶりを見聞きしているからこそ、響く言葉でもあった。

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    2026年01月09日
  • ムーン・パレス(新潮文庫)

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    題名が好きで読み始めた。
    すごく惹き込まれるというより主人公の物語を聞き流している感じ。
    ときどき刺さるフレーズが出てくる。

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    2026年01月07日
  • 幽霊たち(新潮文庫)

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    「鍵のかかった部屋」のような、脳みそを侵食されて溶かされるような感覚がなかった。最後まで煙に巻かれて不完全燃焼。

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    2026年01月02日
  • ムーン・パレス(新潮文庫)

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    何とも言えない余韻を残してくれる青春小説。

    人類が初めて月を歩いた夏。
    父を知らず、母とも死別したマーコは、
    唯一の血縁だった伯父のビクターを失う。
    彼はマーコと世界を結ぶ絆だった。
    マーコは絶望のあまり、人生を放棄し始める。
    やがて生活費も尽き、餓死寸前のところを友人に救われた。
    体力が回復すると、彼は奇妙な仕事を見つける。
    車椅子で生活する盲目の老人、トマス・エフィングの世話である。
    エフィングの依頼を遂行するうちに、
    偶然にも彼は自らの家系の謎にたどり着く。

    人生に偶然は付き物である。
    だが大抵は結びつきの欠如と、タイミングの悪さと、
    無知ゆえの盲動の結果に終わる。
    そんな人生においての出会いを考えさられた。

    一気読みするのはお薦めできない作品。
    時間を掛けて、ゆっくりと味わわないと
    きっと理解できずに途中で投げ出してしまうだろう。
    一応、退屈な描写が続き飽きが来ると次の展開が動きを見せてくれる。
    その辺、計算してのことではないだろうが、
    時間経過も今なのか過去なのか、行ったり来たりするので
    集中して読んでいないと、すぐに混乱してしまう。

    なかなかの強敵ではあるが、読み終えた後の余韻は保証できる。
    こういった物語も、人生には必要なのだと強く思った。

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    2025年12月22日
  • どこかで叫びが

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    ネタバレ

    映画で洋画のホラーと、日本のホラーって怖さのベクトルが違うとわたしは思っています。
    今回初めて海外のホラー小説を読んだのですが、映画と同じように本もやっぱり違うか…!と少し驚きました。
    例えば流行りのモキュメンタリーホラーのようにギャーーーーーと叫びたくなるような、心臓がバクバクするような怖さではない。
    淡々と日常に潜む怖さ。薄気味悪く、正体が掴めない。精神的に追い詰められるようなそんな不気味さがありました。
    個人的に好きなのは「人魚」でした。
    怖さだけではない。なぜか切なさや儚さも感じさせられる物語だと思いました。人魚といえば泡となって消える…。この話が好きだと思う人は多い気がします。

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    2025年10月23日
  • 翻訳夜話

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    2人の翻訳との向き合い方が垣間見えた。

    自分の文章はリズム的、と自覚している村上さんが印象的だった。

    カキフライ理論も興味深い。

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    2025年10月20日