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Posted by ブクログ
下巻に入り、読み方をつかんできたこともあってだいぶ物語を楽しめるスキーマが頭の中にできる。
展開的にも、結末へ向けてぐっと動いていくところなのでどの章にも躍動感が出てくる。
ただ、それでもやっぱりものすごい読み応え。この物語は、この写真を偶然デトロイトで見かけた「私」、写真の中に写る農夫たち、理系の雑誌編集者であるメイズの視点でそれぞれ語られつつ、彼らの物語が一つの場所で交差し、そしてそのときに解説で論じられるところの「20世紀全体」の輪郭がくっきりと浮かび上がるという形式になっている。
とりわけ「私」が語る認識論にも似た写真論は、少なくとも私には再読必至。一度読んだだけではその半分も理解できていないと思う。
とにかく圧倒的な思索。思索の中に光る、エスプリのきいたアイロニー。
読み終わって、ああやれやれ、と思うと同時に、いい文章を読んだなあという満足感。
これ、原文で読んだら半年くらいかかるんだろうなあと思うと、こんな素敵な翻訳に仕立てた柴田先生に感謝。
Posted by ブクログ
現代アメリカ文学の作家、リチャード・パワーズのデビュー作。
最も信頼できる翻訳家、柴田先生が翻訳を担当され、そして私が近年に最も愛好するSF・ミステリー作家の小川哲が解説を書いているという点で手に取ったのだが、極めて奇妙で構築された現代小説であった。
この本は表紙にある3人の農夫を写した1枚の写真から始まる。時代は1914年、場所はプロイセン。そう、第一次世界大戦の前夜とも言える時代である。
”20世紀の始まりは1914年である”というのは、近現代の歴史研究における一つのテーゼとされている。このたった1枚の写真から、著者の途方もない文学的想像力によって幕を開け放たられた20世紀の物語が描かれていくのが本作である。あまりにもスリリングなストーリーテリングと同時に、歴史という流れの中において極めて微小に思えるたった3人の農夫というミクロな存在から、マクロな歴史の流れを逆照射するとも言える文学的冒険が楽しめる。
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