柴田元幸のレビュー一覧
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現代アメリカ文学の作家、リチャード・パワーズのデビュー作。
最も信頼できる翻訳家、柴田先生が翻訳を担当され、そして私が近年に最も愛好するSF・ミステリー作家の小川哲が解説を書いているという点で手に取ったのだが、極めて奇妙で構築された現代小説であった。
この本は表紙にある3人の農夫を写した1枚の写真から始まる。時代は1914年、場所はプロイセン。そう、第一次世界大戦の前夜とも言える時代である。
”20世紀の始まりは1914年である”というのは、近現代の歴史研究における一つのテーゼとされている。このたった1枚の写真から、著者の途方もない文学的想像力によって幕を開け放たられた20世紀の物語が描 -
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現代アメリカ文学の作家、リチャード・パワーズのデビュー作。
最も信頼できる翻訳家、柴田先生が翻訳を担当され、そして私が近年に最も愛好するSF・ミステリー作家の小川哲が解説を書いているという点で手に取ったのだが、極めて奇妙で構築された現代小説であった。
この本は表紙にある3人の農夫を写した1枚の写真から始まる。時代は1914年、場所はプロイセン。そう、第一次世界大戦の前夜とも言える時代である。
”20世紀の始まりは1914年である”というのは、近現代の歴史研究における一つのテーゼとされている。このたった1枚の写真から、著者の途方もない文学的想像力によって幕を開け放たられた20世紀の物語が描 -
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ブルックリンで晩年を過ごそうと引っ越してきた、失意の男性。だけど…?
ユーモラスに、成り行きが描かれます。
60歳のネイサンは癌にかかって会社を辞め、妻とは離婚。娘とはうまくいかず、親戚ともほぼ音信不通。
いくらか思い出があるブルックリンを終の棲家に選び、自分のこれまでの愚行を書き記して過ごそうか、などと考えていました。
街の古本屋で、甥のトムにばったり再会。これが親族では一番気が合う甥だった。
トムから繋がってご縁が転がっていき、トムの妹や娘や母、古本屋の主人など、思わぬ出会いと楽しみが増えていくのです。
やや上手く行き過ぎ?だったり、中年?男の身勝手さが垣間見えたり、というところも、ユー -
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魅力的でカラフルな人物たちが登場する。語り手がいるが、群像劇と言ってしまってもいいかもしれない。
特に楽しみもなく暇をつぶしながら老後を過ごすつもりだった高齢男性が、甥に久しぶりに再開したことをきっかけに突如人間関係が広がり、さまざまな事件が起こり、考え方がポジティブに切り替わっていく。まあ、楽しみながら読める。
フォリーズ(Follies)とは「愚行」という意味で、たしかに登場人物は愚かなことばかりしているように見えるが、愚かな行為は悪いことというわけではないよね。
多様性に肯定的だが、唯一カルト宗教に関しては強い否定的な書き方をしている。 -
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翻訳家・柴田元幸さんと作家・高橋源一郎さんの対談本です。
柴田元幸さんの翻訳のお仕事に触れたのは、オースターのニューヨーク三部作とミルハウザーをひとつ、といったくらいです。印象としては、「透明な触媒」としての翻訳、です。翻訳者の癖というか、翻訳者自体の声や匂い色、もっというと人となりって、どうしても翻訳された作品からかすかにではあっても感じられがちだと僕は思っていて。それが柴田さんの翻訳だと、翻訳者は薄いフィルターとしてだけあって、外国人の作者のほうを大きく、そして近く感じるんです。翻訳者の存在が、無色無臭っぽい。
柴田さんは翻訳を、原文が自分の中を通り抜けていく通過時間がゼロに近ければ近 -
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様々な人生が凝縮されたような濃い一冊。
六十歳を前に、妻と離婚して静かに人生の結末を迎えようとブルックリンに帰ってきた主人公ネイサン。
街のの古本屋で甥のトムと再会してから、運命の歯車が回り始めます・・。
アメリカらしい皮肉のきいた文章で繰り広げられる悲喜こもごも。
タイトルの“フォリーズ”=愚行という事で、皆何かとやらかしています。
ネイサンをはじめ、甥のトム、姪のオーロラ、古本屋のオーナー・ハリー等々・・。
読みながら、“あぁ、アメリカの人も色々しんどいんだなー・・。”と胸に刺さるものがありました。
内容的にヘビーな部分もあるのですが、ウィットに富んだ文体のおかげで重くならずにすんでいる -
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雑誌BRUTUSの村上春樹特集で、本人が選んだ51冊のブックガイドの中でまだ未読だったものの1冊。コンラッドの名作『闇の奥』は読んでいたのだが、同じ語り手マーロウが登場する他作品ある、というのはそもそも知らなかった。
コンラッドの作品は、基本的に植民地支配がテーマであり、本書ではインドネシアのスマトラ島が舞台となる。主人公は、多くのイスラム教巡礼者を乗せた客船が沈没寸前となったことから客船を見捨ててボートで逃げ出したイギリス人航海士のジムという男である。彼が自らの名誉を回復せんがごとく、スマトラ島の未開の地を開拓し、現地人のリーダーとしてコミュニティを作っていく・・・というのが大まかなあらす -
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ノルウェイの森の永沢が敬愛する作家の一人として挙げていたジョゼフ・コンラッド。漠然とした興味で手に取ったのが本作。既訳が何個か出ているが柴田訳を見つけるまでに何度も挫折。最初から柴田訳を見つけておけばよかった。。
訳文を読んだだけで原文のコンラッドの英語の硬質そうな感じが伝わってくる。感情の描写では一読しただけでは理解に苦しむ部分も多く、なかなか噛み砕けなかったが風景の描写自体はかなり克明というかリアルで海原を進む船の様子がはっきりとイメージできた。
爆笑問題の太田が本作を「線路に倒れた人を助ける勇気がないのが人間だが自問自答を続けることで助けられるようになるのも人間なのだと教えてくれる作品」 -
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ネタバレネットで見かけて。
端的に言えば、一人の男の人生のお話。
しかも若くして恋に破れ、それを引きずる男のお話。
これだけだと全く面白そうなストーリーではないし、
話の展開も何があるわけでもない。
微妙に不思議な場所や、不思議な人たちが出てくるが、
全くの異世界というわけでもない。
幻想的な話は、えてして猟奇的であったり、
怪奇的であったりと、不快な何かを伴う場合が多い気がする。
このお話も決して気持ちの悪い場面もあるが、
全体的にはふわふわとした心地よい感じで
読み進めることができる。
何と言って面白いわけではないし、
「人生の軌道が丸ごと変わった忘れようない体験」も普通だし、
「雲」を巡