柴田元幸のレビュー一覧
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自己紹介を兼ねた序章で、本書の主人公は3歳の時以来56年ぶりにブルックリンに戻ってきたと書かれている。肺癌を患い、目下のところ小康状態で、生まれ故郷のブルックリンで過ごすことにしたと。病気のためか明らかにしていないが、仕事はリタイアしたと。くしくも、日本でいう定年退職の年頃だ。
定年退職者の日常となると、1か月前に定年退職を迎えたわが身としては他人ごとではないが、平穏なわが身と異なり、主人公はいろいろな人と関わり、周辺でいろいろな出来事が起こる。タイトルのフォリーズ( ”愚行” や”愚かな”) の意味の通り、客観的に見れば、些細で愚かなことかもしれないが、ご隠居の視点から見ると、関わる人 -
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おそらく名著と呼ばれるであろう類の作品。
なのだが、私にはだいぶしんどかった。ようやく読み終わった、というのが正直な感想。
1940年前後の、本当にあった史実から、反ユダヤ思想をもった(これも史実である)チャールズ・リンドバーグが大統領になるというIFを乗せて物語がスタートする。
アメリカは決して戦争に与しない。そのためであれば、ナチスとでも仲良くするし、そのおかげで我が国は戦争にも巻き込まれず平和ではないか、という主張で妄信的な支持を得る。
その一方で、彼が発する様々なユダヤ人を圧迫する施策(これがタイトルの”Plot Against America”の由来となる)により、国内にユダヤ人差 -
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ニューヨーク3部作からオースターを読んでる身としては、
この2作は本当にニューヨーク3部作との関係性で語りたくなる作品。
というのはあの3部作はまさに「作家が小説を書くというのはどういうことか」をめぐる3作だったわけだし、
もちろんその後の作品でもそういった問題意識を提示してきたけれど、
この2作は本当にそこを前面に押し出して「書くものの責任」「書かれた世界への畏怖」みたいなものを強く感じます。
「写字室」はコミカルであり、ファンサービス的な部分を感じたけれど、「闇の中の男」は後半の作家を殺さなきゃならないって部分で緊張感が高まるし、映画化もあるんじゃないかと感じました。
スパイク・ジョーン -
購入済み
オースターファン向けです。
『孤独の発明』を30代の頃に書いたオースターが歳をとり自分の身体史・精神史を振り返ります。個人的には「冬の日誌」の方が好きかな。
ここから大作『4321』に繋がるわけですがこちらはまだ未訳…。 -
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下巻に入り、読み方をつかんできたこともあってだいぶ物語を楽しめるスキーマが頭の中にできる。
展開的にも、結末へ向けてぐっと動いていくところなのでどの章にも躍動感が出てくる。
ただ、それでもやっぱりものすごい読み応え。この物語は、この写真を偶然デトロイトで見かけた「私」、写真の中に写る農夫たち、理系の雑誌編集者であるメイズの視点でそれぞれ語られつつ、彼らの物語が一つの場所で交差し、そしてそのときに解説で論じられるところの「20世紀全体」の輪郭がくっきりと浮かび上がるという形式になっている。
とりわけ「私」が語る認識論にも似た写真論は、少なくとも私には再読必至。一度読んだだけではその半分も理解でき -
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ボストンへ移動する途中、乗り換えのために下車したデトロイトで出会った一枚の写真。そこに写った3人の若者を見たところから始まる壮大な思索。
なんと言えばいいのだろうか。物語(そもそも物語なのか、これは)に登場する人物を、圧倒的な量の歴史的事実の中に編み込んでいくことで、何が虚で何が実なのかがわからなくなる。
読むのにかなり苦労はする。箴言のオマージュなども多用されているが、もとを知らないのでなんのことかピンとこなかったり、理解できない部分も多々ある。
それでも随所に見られる皮肉的な記述が面白く、彼の膨大な知識に溺れながらも読み進めることができる。
上巻が終わって、ようやく読み方がつかめてきた -
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現代アメリカ文学の作家、リチャード・パワーズのデビュー作。
最も信頼できる翻訳家、柴田先生が翻訳を担当され、そして私が近年に最も愛好するSF・ミステリー作家の小川哲が解説を書いているという点で手に取ったのだが、極めて奇妙で構築された現代小説であった。
この本は表紙にある3人の農夫を写した1枚の写真から始まる。時代は1914年、場所はプロイセン。そう、第一次世界大戦の前夜とも言える時代である。
”20世紀の始まりは1914年である”というのは、近現代の歴史研究における一つのテーゼとされている。このたった1枚の写真から、著者の途方もない文学的想像力によって幕を開け放たられた20世紀の物語が描 -
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現代アメリカ文学の作家、リチャード・パワーズのデビュー作。
最も信頼できる翻訳家、柴田先生が翻訳を担当され、そして私が近年に最も愛好するSF・ミステリー作家の小川哲が解説を書いているという点で手に取ったのだが、極めて奇妙で構築された現代小説であった。
この本は表紙にある3人の農夫を写した1枚の写真から始まる。時代は1914年、場所はプロイセン。そう、第一次世界大戦の前夜とも言える時代である。
”20世紀の始まりは1914年である”というのは、近現代の歴史研究における一つのテーゼとされている。このたった1枚の写真から、著者の途方もない文学的想像力によって幕を開け放たられた20世紀の物語が描 -
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ブルックリンで晩年を過ごそうと引っ越してきた、失意の男性。だけど…?
ユーモラスに、成り行きが描かれます。
60歳のネイサンは癌にかかって会社を辞め、妻とは離婚。娘とはうまくいかず、親戚ともほぼ音信不通。
いくらか思い出があるブルックリンを終の棲家に選び、自分のこれまでの愚行を書き記して過ごそうか、などと考えていました。
街の古本屋で、甥のトムにばったり再会。これが親族では一番気が合う甥だった。
トムから繋がってご縁が転がっていき、トムの妹や娘や母、古本屋の主人など、思わぬ出会いと楽しみが増えていくのです。
やや上手く行き過ぎ?だったり、中年?男の身勝手さが垣間見えたり、というところも、ユー -
Posted by ブクログ
魅力的でカラフルな人物たちが登場する。語り手がいるが、群像劇と言ってしまってもいいかもしれない。
特に楽しみもなく暇をつぶしながら老後を過ごすつもりだった高齢男性が、甥に久しぶりに再開したことをきっかけに突如人間関係が広がり、さまざまな事件が起こり、考え方がポジティブに切り替わっていく。まあ、楽しみながら読める。
フォリーズ(Follies)とは「愚行」という意味で、たしかに登場人物は愚かなことばかりしているように見えるが、愚かな行為は悪いことというわけではないよね。
多様性に肯定的だが、唯一カルト宗教に関しては強い否定的な書き方をしている。