あらすじ
奇妙な老人が奇妙な部屋にいる。彼は何者なのか、何をしているのか――。オースター作品に登場した人物が次々と現れる「写字室の旅」。ある男が目を覚ますとそこは9・11が起きなかった21世紀のアメリカ。代わりにアメリカ本土では内戦が起きている。闇の中から現れる物語が伝える真実。年間ベスト・ブックと絶賛された「闇の中の男」。傑作中編二作を合本。ここに新たな物語空間が立ち上がる。
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Posted by ブクログ
「闇の中の男」作中作と現実世界が交互に進み、どうなるんだろうと思ってどんどん読んだ
ミステリーではないから伏線があって分かりやすく繋がっているというものではないが、通して読んで本当に良かったと思えた海外文学作品
特に孫娘に語るソーニャとの日々のところが良かった
読後感も良い
Posted by ブクログ
【写字室の旅】
オチがよかった。あと数ページだけどどうやって物語が終わるんだろうって思ってたところでのそういうことか、と分かった時は快感だった。
オースターが今まで書いてきた作品の登場人物たちが沢山出てきて、それぞれの作品を思い出しながら楽しく読めた。オースターはそんなつもりで書いてないかもしれないけど、ファンからしたら最早ファンサービスだと思う。
物語の登場人物が自我を持ったらという題材は色んなところで見るけど、物語を世に生み出すことの責任や畏怖のようなものを感じた。
【闇の中の男】
前半の写字室の旅と同じく物語を作ることについてのお話。
こちらは前半とは違い、作り出された物語の中の人物の方に感情移入して読んでいたから、その物語の終わり方には驚いた。
前半で物語を生み出すことの恐ろしさや責任を感じた後にこの作品を読むことになるので、それでも結局物語は物語で、どんな結末になろうとも現実世界での生活は続くし、そこにフィクションの人物は介入できない虚しさみたいなものを感じた。
もしも写字室の旅と闇の中の男の掲載順が逆だったら全然違う読書体験になったと思う。
Posted by ブクログ
1人の老年男性が主人公の中編2編からなる本作。
いずれも静かな語り口で、著者独特の画中画のような構造は共通しているものの、物語の雰囲気は少し違います。
とはいえ、いずれもどこか“不安”や“不穏”が付きまといつつ、どっぷりとその世界に浸って読書時間を堪能しました。
ポール◦オースター的世界に浸れる良作だと思いますが、もう新作を読めないのかと思うと非常に残念でなりません。
Posted by ブクログ
前回読んだ『幽霊たち』も、主人公が「自分が何者かわからない」状態から本当の自分に戻っていく話だったけどこういう作風なのか。
オチが興奮するタイプのものじゃなくて静かに取り残されて終わっていくのだが、私は結構好み。
まだ著者の作品は3作しか読んでいないが、主人公が自身の内面と対話している様子を俯瞰したり時には自分とリンクさせたりしながら本と精神的に繋がっているような感覚になる。
Posted by ブクログ
ニューヨーク3部作からオースターを読んでる身としては、
この2作は本当にニューヨーク3部作との関係性で語りたくなる作品。
というのはあの3部作はまさに「作家が小説を書くというのはどういうことか」をめぐる3作だったわけだし、
もちろんその後の作品でもそういった問題意識を提示してきたけれど、
この2作は本当にそこを前面に押し出して「書くものの責任」「書かれた世界への畏怖」みたいなものを強く感じます。
「写字室」はコミカルであり、ファンサービス的な部分を感じたけれど、「闇の中の男」は後半の作家を殺さなきゃならないって部分で緊張感が高まるし、映画化もあるんじゃないかと感じました。
スパイク・ジョーンズとかチャーリー・カウフマン辺りが映画化したらおもしろそう。
ただ写字室は原書で10年以上前に読んでたけれど、闇の中男こそそのころに読んでおくべきだった。
ブッシュ、イラクというワードが出てくる感じはやはり911以降のアメリカへの憂いが色濃く出てて、もちろん今も状況はちっともよくはなってないけれど、それでも10年前に読んでたらもっとぐっときたんじゃないかな。
Posted by ブクログ
写字室の旅。
そんなにおもしろいとは思えなかった。いろんなふうに考えられる、奇妙な話で、評価しづらい。
闇の中の男。
こちらは割とよかった。映画のようだ。
小津安二郎の東京物語を絶賛する数ページがあり、小説としてのおもしろさとは別かもしれないが、非常に興味深かった。ポール・オースター本人が言ってるように思えたから。