あらすじ
君がまだ3歳か4歳だった頃、君と地面はもっと近かった。君の父親がついた小さな嘘。母親が打った特大のホームラン。心揺さぶられた映画。性の目覚め。学生運動。パリでの暮らし。妻との出会い。外見はまるで変わっても、君はまだかつての君なのだ――。人生の冬にさしかかった著者が、身体と精神の古層を掘り起こし、自らに、あるいは読者に語りかけるように綴った、温かで幻想的な回想録。
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Posted by ブクログ
自分の人生を肉体と精神のそれぞれの側面から振り返った本。
ただの自叙伝ではなく、構成がかなりユニークで面白いと思った。時系列順に並んでなかったり、各章でアプローチ方法が全然違ったりなど。あんまり詳しく書くとネタバレになってしまうけど、私は本を書く人間ではないのに思わずこういう書き方もあるんだって感嘆するようなものだった。
全く違う国と時代と性別に生まれた人だから、情景を上手くイメージできないこともあったけど、それでも筆者の人生を一緒に辿るのが楽しかった。
恥ずかしながらポール・オースターのことは知らなくてこの本をたまたま書店で目についたからなんとなく買っただけなんだけど、文章がとにかく面白くて買ってよかったと思ったし他の作品を読んだりこの本をまたじっくりと読み直したくなった。
Posted by ブクログ
オースターの訃報に悲しみながらじっくりと。
主語?を「君」にして幼い頃からを振り返るのと、もっと混乱に満ちた青春の日々を語る2篇の自伝。瑞々しく、ロマンチックで、かえすがえすももうほぼ新作が読めないのが寂しい。
オースターファン向けです。
『孤独の発明』を30代の頃に書いたオースターが歳をとり自分の身体史・精神史を振り返ります。個人的には「冬の日誌」の方が好きかな。
ここから大作『4321』に繋がるわけですがこちらはまだ未訳…。
Posted by ブクログ
読むのに時間がかかった。面白いのだけど全てが時系列順に書かれているわけではないので途中少し混乱した。
第二次世界大戦後のアメリカで育ったアメリカ人少年としてのオースター、ユダヤ人としての自身と家族の心情を垣間見ることができたのは面白かったし、泣けるエピソードもいくつかあった。この当時のアメリカの文化や雰囲気をオースターの目を通して知ることができたとともに、オースターの良くも悪くも普通と違う面も知ることができてとても興味深く読んだ。
やはり自分はポール・オースターが好きだ。
Posted by ブクログ
自分の身体的な記憶と内面の記憶、二つの面から人生を振り返るという構成がユニークで面白かった。必ずしも時系列順ではなかったり、自分の住んだ土地を順番に片っ端から挙げていったりしていたのも、過去へのアプローチの仕方がとにかく新鮮だった。
自分が何を思って、どんなことを大切にして生きていたのか、ものすごく事細かに綴られていて引き込まれる。
こうして振り返れる材料がここまで残っているのは、さすが文章を書くことを生業にしている人だと半分の人生も送っていないのに偉そうに思ってしまった。