養老孟司のレビュー一覧
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「小説推理」に養老先生が連載していたものが単行本化され、さらに題名を変えて新書化されたもの。だから初めは正直、タイトルと内容の齟齬に少し戸惑ったが、読み進めていくうちに、だんだん養老節に引き込まれていった。養老先生の考え方、視点、私は好きだ。
あの「バカの壁」は、この連載の途中で売り出されてヒットしていたもので、実は私はまだ「バカの壁」を読んでいないので、先にこちらを読めて正解だったかもしれない。
それにしても、帯などに書かれている、出版社が用意したこの本のキャッチコピー、全然違うと思うんだよな・・・。養老先生言うところの、出版社は本を売らなければ「ならない」ゆえのうたい文句なんだろうけど、正 -
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音楽とは?とか、クラシックと歌謡曲とは一体何がどう違うのか?という、取り付くしまもなさそうな疑問を持ち続けてきた。本書のような対談式の音楽論本を読み漁っているが、今だ満足のいく納得感が得られない状況。音楽家と解剖学者の対談、というちょっと変わった取り組みでの話の進行は非常に面白いものがあった。養老先生のずばり言い切るところは小気味いいくらい。
しかし、読後、まだまだもやっとした感覚が頭から抜けずにいる。いましらばくこの道は続くのか、というところか(猛烈な解決要求があるわけではないが、興味がつきないので、類書は今後もあたっていこうと。本書はその意味で、また別の音楽への視点を得るきっかけをくれ -
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我が意を得たり。本質だ。
「もっとはっきりいえば、実情としては当時は戦争以外に娯楽がなかったといってもいい。なにしろふだん庶民は食うや食わず。生きるのに精一杯なら、戦争は格好の娯楽であろう。それを不謹慎だと怒るのは勝手だが、真面目な答えが正しいとは限らないのが政治である。なぜなら政治は人間全体を相手にするもので、人間はいつでも真面目だというわけではないからである。しかも真面目でなければ、ゆえに不真面目だという、二分法も成り立たない。真面目と不真面目が同時に共存するのが人間である。戦争は政治じゃない。ここでそう思った人のために付け加えるなら、クラウゼヴィッツの言葉を借りるまでもなく、戦争は政治の -
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どの場所に対してもカンペキな建築というのは、そもそもムリ。だからと言って諦めるのではなくて施主とデベロッパーがアイデアを出しながら納得できるものを建てることは可能。しかし今の分業制の建築方法では、責任の所在がどこにあるのか不透明で誰が何を求めた建築物なのかがよくわからない。
(隈)津波から命を守る建築物といったら「地下」シェルター。土地の上の建物で地震にも津波からも逃れられるカンペキなものを求めるから問題が難しくなる。
だったら「だましだまし」の思想で、とりあえず津波から命を守るために「地下」に逃げ込める設備を作る。津波の表面は波の力が強いけれども、下はわりと弱い。
・ユートピア主義→どん -
Posted by ブクログ
「バカの壁」の養老孟司氏と建築家隈健吾氏の対談集です。
普通のおっさん的風貌の隈氏にはいつも親近感を感じますが、建築家ですので当然建築や都市計画への思考は深く、そこに養老氏の思考と絡まれば、単なる住まいや住み方のテーマから一気に飛躍しそうでなかなかしない感じがとても読みやすかったです。
隈氏の建築家としての個性があまり出てこないのは養老氏の懐の深さだと感じました。
大規模建築を独り歩きさせず、人目線から建築を見つめ直す視点は、その前提として、人間的な思考を繰り返してこそ得られるものだと感じました。
あまり専門的になり過ぎず、難しい言葉も少ないので一気読みできました。