斎藤真理子のレビュー一覧

  • すべての、白いものたちの

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    幼少の時のイノセントな記憶と呼応する。なぜここまでに共振するんだろう。この小説を読んで思い出す人がいる。心の奥、雪がしんと降る窓の奥で背を向けて。この窓ではない奥の窓を見つめている。

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    2026年09月11日
  • すべての、白いものたちの

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    恥ずかしながら、ご本人のあとがきを読んでからやっと本書全体の世界が理解できた。これを日本語訳した斎藤真理子氏の手腕にも脱帽。

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    2026年09月03日
  • 光と糸

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    「世界はは何故これほど暴力的で苦痛に満ちている?それと同時に、何故世界はこれほど美しいのか?」や、人間が内包する暴力性と愛のような真逆の二面性について考え続けているところが忍耐強くてすごい人だと思う。私は人間の醜い部分に絶望して己が同じ人間という生き物である事実に疲れてしまい、考えることを放棄しているから。
    考え続けた人の何かしらの結晶として生み出された作品はこんな形をしているのかと、過去に読んだ物語たちを想った。

    ハン・ガンが二十代の頃に思い浮かべていた2つの問いに胸を突かれた。
    「現在が過去を助けることはできるか?生者が死者を救うことはできるのか?」
    助けるや救うの定義が曖昧だが、直感で

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    2026年09月03日
  • 波の子どもたち

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    チョン・スユン作
    斉藤真理子訳
    脱北する3人の子どもたちの逃避行を描く。それぞれに事情は違うが、「自分が生きるのはここではない」との思いは共通だ。
    作者チョン・スユンはソウル生まれの作家、翻訳者。慶應大学、早稲田大学で学んだあと韓国で日本文学を幅広く紹介している。
    斉藤真理子は推しの人だ。

    本作は13年間に100名の脱北者の話を聞き、彼らの体験をもとに3人の主人公の話として書き上げている。
    76年経っても、今なお朝鮮戦争は終わってない。休戦状態である。
    言語や文化を同じくする朝鮮民族を2つに分断したのは彼らの望んだことではないことを知るべきであろう。

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    2026年09月01日
  • ギリシャ語の時間

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    ネタバレ

    主人公は徐々に視力を失っていく男と、言葉を発せなくなった女。二人は古代ギリシャ語のスクールでそれぞれ教師、生徒として参加している。

    二人の人生では、言葉に対する期待と絶望、大切な家族や友人の喪失、自身の身体的機能の喪失がゆるやかに重なりながら進行していき、それらが疎外感のような言葉の揺らぎとして表出しているように感じる。
    段々と言葉が自分から滑り落ちていく疎外感があるからこそ、小説の言葉がより一層の重みを持っているように感じられた。

    そんな二人は、古代ギリシャ語という死語を学ぶことで自分の存在を確かめていく。
    女は死語を学ぶことで失った自分の言葉を取り戻そうとし、男は死語を教えることで段々

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    2026年08月24日
  • 私の女の実

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    ハン・ガンの作品には暴力や喪失や孤独が描かれている。人が目を背けたくなることや忘れたいことを突き付けてくる。一方でそれが癒しや励ましになる。

    それは桜庭一樹さんの帯文−傘をさしていないハン・ガンは今日もまた誰かの傍で共に雨に濡れている−に尽きると思う。

    血や痣や人間の生理的な描写も鮮やかに描きながら、時に夢のような抽象的なイメージを詩のように抒情的に描き出していく文体は美しく素晴らしい。

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    2026年08月23日
  • ギリシャ語の時間

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    ネタバレ

    ひとひらの雪片が地に降りる前に雨となり、泥濘みを生じる。
    雪の美しさは、-イデアは、雨や泥濘みとなって失われたのか?

    この問いへの答えとして、僕らは自ずと円環の摂理を見いだすだろう。
    絶対的な美や善、光と理想だけで作られた世界と、理想の影にすぎない現実の世界、というプラトンが説くような二元論とは違う、東洋的な感覚。それは韓国でも日本でも同じく、なじみ深い感覚なのだろう。
    消滅と薄暮の中にある世界。それは絶望でも欠落でもなく、儚くともあるがままの生だ。
    人生は理想に向かって前に進む訳ではない。ひとときの煌めきと、繰り返す苦しみの連続だ。
    だがそれは何度でも新しく生まれる世界とも言えるだろう。

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    2026年08月16日
  • 光と糸

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    小説かと思ったら散文集だった、エッセイ、寄稿文、講演録、詩、庭日記etc. 内省的だけどひとりよがりではない淡泊なトーンがとても良い。わたしやっぱりハンガン好きかも

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    2026年08月16日
  • 言葉の森のかくれんぼ

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    良い往復書簡。わたしは隣の国のことを何も知らない…真摯にことばに書に世界に向き合う2人の質問投げ掛け合いがぐっときて、心に染みて、こんな言葉で表せるのかと感動する内容でした

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    2026年08月14日
  • すべての、白いものたちの

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     こんな小説もあるんだなと思った。
    しろいものを集めて、それを基調として、独自の静謐な世界を創り出すことに成功している。
     生死の交わるところに生があるということ。
     この小説の独自性は卓越していると感じたし、他のハン・ガン作品も読んでみたいと感じさせられた。
     韓国の作品を読むのは、少年の頃に読んだ「ネギを植えた人」以来だったが、文学性の高い素晴らしい作品だった。

     韓国では、死者に着せる装束を寿衣と呼ぶというのが、印象に残ったが、国語辞典を調べたら、普通に載っていた。スルメをアタリメというのと同じ発想なのだろうか。

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    2026年08月10日
  • 82年生まれ、キム・ジヨン

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    読んでいるときずっと辛かった。。私もこれ以上男性に悪いイメージを持ちたくなくてあえて考えないようにしていたテーマだったので。ショッキングだけど、読むのが止まらないような本だった。。

    私の親も、「女は稼げないから結婚して男に稼いで貰わないと」とか言う。あと、私が趣味で何か料理を作ると、祖母に「これでいつでもお嫁に行けるね」と言われたりもする。これは世代の価値観だからしょうがない、と受け流している。
    私はそう言われるたび、「自分で生きていくために稼ぐしお嫁に行くために料理していない」と心で言う。

    特に印象的だったのが、女性は結婚、出産で失うものがあるけど、男性はあくまで「手伝い、メインで稼ぐ側

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    2026年08月07日
  • すべての、白いものたちの

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    エッセイでありながら、まるで美しい詩のように読まれた。

    個人的な記憶が異国の集団記憶と重なり、生と死、そして「いきること」への普遍的な思索へと広がっていく展開が素晴らしい。時折立ち戻って吟味したくなるような表現が、要所に宝石のように散りばめられている。ある日突然、世の中の喧騒から一歩離れて読みたくなる、そんな一冊だ。

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    2026年07月22日
  • すべての、白いものたちの

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    この蒸し暑い梅雨時期に読む感じじゃなかった、ずっと冬だった。
    短編というより散文詩のような、白いものと亡き姉にまつわる短い物語が続きます。

    原書がどんな感じかわからないけど、訳者の言葉の選び方にいろいろ想像が広がって流し読みできない感じ。じっくり読み返し。
    平野啓一郎氏の解説を読んで、さらにまた読み返すことになりました。そういうことだったのかぁ。

    冷たくてひたすら静かな雰囲気。図書室で借りたのですが、手元に持っていたくなりました。

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    2026年07月18日
  • すべての、白いものたちの

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    著者が亡き姉に思いを馳せ白いものを挙げていくお話

    死者を悼み、静けさの中で白と向き合う
    読んでいると美術館を歩いている気持ちになる

    夏に韓国に行くからきっとまた読む

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    2026年07月15日
  • 別れを告げない

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    原著は2021年発行。日本語訳は白水社から2024年4月に刊行。架蔵本は2025年12月刊の第17刷。訳者は斎藤真理子。
     
     偏頭痛と胃痙攣に苦しみ、自らの遺書を書くために生きていると感じていた作家・キョンハのもとに、しばらく連絡を取り合っていなかった友人・インソンからの連絡が届く。故郷の済州島で小さな木工所を営んでいた彼女は、作業中に誤って2本の指を切断、何とか接合手術には成功したが、入院中は3分に一度、神経を殺さないため、接合した指を腐らさないために指を針で刺し続ける必要がある。彼女を見舞ったキョンハは、インソンのたっての頼みで、彼女が家に残してきた小さなインコ「アマ」が生きているかを確

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    2026年07月04日
  • 82年生まれ、キム・ジヨン

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    ネタバレ

    最後の最後に突き落とされるような感覚があった。だからカタルシスを期待していてはいけないんだと思う。この本の帯にK-POPアイドルの名が並んでいること、この本が売れている現実があることが、まだ希望の光なのかもしれない。
    言葉悪いけど言わせてほしい、本当に、本当に、本当にクソみたいな世界だ。これでも「マシなほう」なんだから本当にクソだ。
    ジヨンの言葉は、それを発する者が「ジヨンではない誰か」になったら回りに受け止められた。だけどすぐに「具合が悪い」扱いにされた。この描写がつらい。

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    2026年06月27日
  • 光と糸

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    彼女の問いは、世界の片隅の誰かやわたしと同じで、彼女が言うように、言語が糸となり、そんなわたしたちをつなぐ。
    世界の、何もかもが異なる誰かとも、確実につながっているのだと実感するとき、まさに他者は自分の鏡であり、あなたはわたしで、わたしはあなたなのだとも理解する。
    それはどれほど心強いことだろうか。

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    2026年06月21日
  • 別れを告げない

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    忘れたくない読書になった。
    人間が人間でなくなること。
    どんなにかすかでも生命は生命であること。
    私たちの想いや存在は決して理屈でわかるだけのものでないこと。
    至高の愛の物語だし、鎮魂の物語だし、人の本質にどう触れるかという物語だし、死に限りなく近づく物語だった。
    最後の炎の表現は希望の明かりの例えのように思えた。

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    2026年06月18日
  • すべての、白いものたちの

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    白という色について、詩集のようにさまざま描かれています。韓国の本なのに、やたらと心にスッと入ってくる。また、読み返したい本です。

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    2026年06月14日
  • すべての、白いものたちの

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    すごいなぁ。なぜ白いものを説明しているだけなのに世界が地球を超えて宇宙に広がっていく感覚があるんだろう。ネットフリックスもSNSも何もいらないくらい世界は美しいものに溢れているしそれだけでエンタメ。そこに生きている私たちも不完全でも美しい。読書しているのに瞑想しているような感覚。これからもずっと読み返したい。

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    2026年06月11日