あらすじ
〈この50人の中に、きっとあなたの味方がいる〉
多くの読者に愛され、読み継がれてきた韓国文学の必読の名作が、細部にさらなる磨きをかけて再登場。
50人の登場人物が、あやとりのようにすれ違い、重なりあい、結び合う。
一度読んだ人も、初めましての人も。読めばだれかと話したくなる、悲しくて、おかしくて、痛くて、愛おしい物語。
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
ビリヤードみたいだった。
ある人がある人にぶつかって、その人が今度は別のあるにぶつかって、の繰り返し。人がある場所にいるのは、別の誰かにぶつかったからで、それはまた別のある人が、、、と考えると、今自分は膨大な人と人がぶつかり合った軌跡の延長線上にいるのだ、と壮大な気持ちになった。
赤の他人の51人は本人たちも知らないところで互いに影響を及ぼしあっている。他人だけど他人じゃない、誰も気づいていないし見えないけれどそこには確かに連帯があるのだと思った。
ということは、見知らぬ誰がが困っていたとして、それは周り回って自分に繋がるかもしれない、と思った。「個人の問題は社会の問題」というフレーズを思い出した。
先人が投げた石を、その石が落ちたところに生まれた人がそこからまた遠くに投げる。そうやって石がどんどん遠くに向かっていく。そうやって私たちは残されたものを未来に運んでいく。人によっては、石を元あった場所に戻してしまう。その表現も興味深かった。では自分はどうだろう。先人が残したものを未来に向かって投げることができているだろうか。この心象風景は多分ずっと心のどこかに残り続けるだろうと思った。
Posted by ブクログ
人生の中の最悪な日、誰かの生死にまつわるような出来事、走馬灯の中に出てくるであろう、シーンをめぐる50人のストーリー。
それが少しずつ繋がっていったりする。
かなりの読み応えがあり、心がずっしり重くなる感じがした
Posted by ブクログ
「背負ってさしあげますよ」「それはだめだよ」「体のでっかい孫が孝行していると思って、そうしてください」
セフンのような思いやりを持ってこんな行動ができたなら。
「ずっと差別されずに育ってきたから、差別を見たときにこれは差別だってすぐにわかるのよ。自分の持ってる資源でできることをやってるだけなのに、何だっていうの?」
有能で責任感の強いソラの言葉に胸がすく思いがする。
「おばさん、助けて」会ったこともない人だ。でも、ジョンビンのママなら助けてくれると思った。大人が必要だった。
まだ幼いジョンビンとダウンの物語が優しくて切ない。
客観的で、でも細やかで、人間の善意のようなものが51人の物語を貫いている。
Posted by ブクログ
全員が主人公で、主人公が五十人ぐらいいる小説。今までにないタイプの小説で、読み始めた時は少し戸惑った。短編小説集ではなく、五十人ぐらいの主人公の一人一人の物語。どんな人にも一人一人にドラマがあって、いろんな人と絡み合って生活しているんだなとあらためて感じることができた。いつかドラマか映画で映像化して欲しい。
Posted by ブクログ
韓国の物語だからそんなに感情移入できないと勝手に思っていたが、読み終わってからその認識がいかに甘かったか考えさせられた。
背景に持っている国や文化が違っても、私たちが直面している問題や考えにはさほど差がないことに驚かされたとともに、力強さ、そして非力さも感じた。
私ごとだが、最近母親になったばかりで、今まで見たことがある作品を改めて見返した際、感情移入する登場人物が子供から母親に変わったことに自分自身困惑したことがあった。この本もきっと、私とともに成長してくれるのだろう、と感じた。
Posted by ブクログ
50人が少しずつ交差したりすれ違ったりしながら進んでいく物語。
韓国の情勢を織り交ぜつつ、ちょっとシリアスで悲しくなる物語もあるけれど、いろんな人の視点で描かれるのはとても面白い。
ただ韓国の名前に慣れてないせいか、誰が誰なのか混乱しやすいかもw
3、4回読んでやっと理解できるかもしれません。
Posted by ブクログ
50人の主人公がそれぞれの人生を生きながら交差する話。ある病院を中心の舞台とし、韓国の現代の社会と問題を織り交ぜ、生きていく人を新鮮に描写している。
韓国の人の名前がとにかく覚えられない私は、何度も目次で確認しながら読み進めた。漢字は視覚的に記憶に残るけれど、カタカナってこんなにも記憶できないのか。
韓国も日本も社会がすごく似ている。例えば今日自分とすれ違った人が実は50人の1人だったとしても全くおかしくはない。
やっとチョン・セランを読めて満足。
Posted by ブクログ
50人の主人公が韓国の郊外の大病院をハブにして、それぞれの人生を繰り広げる。
一人ずつの人生が、各10ページ前後の章にわけて展開される。登場人物たちは、他人の章にちょくちょく顔を出し、一つの病院をハブにして、たくさんの人達の人間関係の繋がりが感じられるところが面白い。
また本の中に、韓国で起きている様々な社会問題が取り上げられているところも、現代の若手小説家っぽさを感じられて良かった。
シンクホールなど、最近の日本でも大きく取り上げられている問題もあるが、韓国の医師の労働環境の劣悪さは衝撃的だった。
週100時間労働は平均値で、今は制度が変わってきてはいるものの、週88時間までは合法らしい。日本で週80時間働いてる人って会社員ではめったにいないんじゃないか。医師の友達もいるけど、そこまでではないと聞いている。地方の大病院などはまた違うかもしれないが。
50人の主人公の中に推しがみつからなかったこと(あえて挙げるなら、ウナムの奥さんのソンミには憧れるなあと思った)と、韓国人の名前が覚えにくくて所々に度々出てくる登場人物の識別が大変だったことは、少しだけしんどかった。