斎藤真理子のレビュー一覧

  • シリーズ「あいだで考える」 隣の国の人々と出会う 韓国語と日本語のあいだ

    Posted by ブクログ

    自分がk-popを好きになってから韓国に対する心の距離感は近くなったし日に日に縮まっているとも思うけどまともに韓国について読書を通じて知ろうと思ったことは少なかった。(おそらくこれが2か3冊目)

    韓国文学や詩の翻訳等でご活躍されてる著者の目線から韓国語(言葉、文字、声)について、全く堅苦しくない形で、韓国の歴史や韓国語の歴史にも触れながらわかりやすく書いてくれている。知識を得るために読む!という目的の本というよりかは、韓国や韓国語について興味がある人が手軽に読める本、なのに知識がかなり得られた。

    ハングルの成り立ちについてかるーくは知っていたけど、言葉(マル)や声(ソリ)については知らないことが多かったし、だからバンタンのラップに惹かれるんだと初めて認知して面白かった。

    ハングルを作った「世宗大王とチューニングする」というように、過去の人物と"チューニングする"という表現が素敵だと思った。

    ただやっぱり、歴史について論じている本ではないにも関わらず、韓国が(というか朝鮮半島全体が)抱えている歴史って暗くて、だけどあちらの方々はたくましくて、そして日本人としては手放しに隣国の歴史を単なる知識や情報としてはもちろん捉えられなくて、泣くような本じゃ全くないのに、涙しそうになった。

    もっと知りたいと思うきっかけにはなった。

    0
    2026年08月16日
  • すべての、白いものたちの

    Posted by ブクログ

    なんとなくわかるようでむずかしい、後書きがあったことで理解ができた部分もあり助かった。
    読み終わりは確実に残る余韻に不安と安心がまざってざわりとするが、祈りによるものか、あたたかく血の通った希望みたいなものも私の中に置いていった。

    うつくしいものほどこわい。
    美術館に置かれたそれぞれの白い展示を次々に見て歩く、名残惜しいけど歩みを進める、そんな感覚でページを進め、すぐに読み終わった。
    においや感触すらも伝わってくるような言葉選びと作者の柔らかでやさしい思考がつまっている。

    自分がこの世に生きていること、そんな偶々の出来事、わかっていても生活に注目して見落としている祈りや問いかけ。
    日々のあゝ苦しい、しんどい、そんなことを差し置いてただ輝かしくそこに在る、自分の生を実感することができると言うだけでも手元に迎えられてよかった一冊。

    ただすべて、すべてのいのちが、今日はあたたかいふとんでねむってほしいとそんな気持ちにならざるを得なかった。

    0
    2026年08月14日
  • 私の女の実

    Posted by ブクログ

    詩人の言葉で綴られた短篇集は、その一篇一篇が「九つの物語」だけでなく、長めの詩のよう。
    哀しみの通奏低音はあるものの、必ずしも哀しいわけではなく、色のない痛みみたいなものがある。
    同じ経験など一つとしてないのに、読み終えて自分自身が身を削ぐような経験をしたように思う。
    「誰がどうしてどうなった」という物語には収まらない展開は形自体も詩のよう。
    比較的初期の中・短篇集ということで、「菜食主義者」を出すまでもなく、のちのハン・ガン作品の萌芽を感じられて、それも嬉しい。
    最初のあいさつやあとがきに作者の謙虚で控えめな人柄がうかがわれて、親しみを感じるし、桜庭一樹の解説も斎藤真理子による訳者あとがきも読めてよかった。

    0
    2026年08月14日
  • 別れを告げない

    Posted by ブクログ

    何か不思議な小説だなと思った。勿論、この小説を貫く骨格は1948年の「済州島4・3事件」とそれに伴う南側の警察、軍、右翼組織による多数の一般市民無差別虐殺。
    最初は、キョンハが見た悪夢から「済州島4・3事件」の真相、真実を描き、人間の愚かさ、残虐性をこれでもか言うぐらい強調するのかと思って読んでいたが、第1部は親友のインソンの頼みで吹雪の済州島へ行って小さなインコを助けようとする話。そこでは、「済州島4・3事件」に関わる虐殺の話は重要ではあるが、主要な話ではない。しかしキョンハの猛烈な吹雪の中でインソンの家を目指す描写は、キョンハの思い出と悪夢、インソンの治療と思い、そして吹雪の中でバスを待つ老婆の様子、キョンハをまるで凍らせるような猛烈な吹雪の様子など、さすがの表現力だと感じた。
    不思議な小説と感じたのは、第2部の内容。死んでいたインコのアマが飛んで、ソウルの病院に入院しているはずのインソンが済州島のインソンの家にいて、キョンハに話し掛けたりするところ。それはキョンハの夢なのか、それともインソンの幽霊か?本当はキョンハは吹雪の中で死んでいて、インソンは妄想の中でキョンハに母の辛い思い出を語ったのか?
    そのインソンが母から伝え聞いた話。「済州島4・3事件」に何の関わりもなかった普通の多くの島民が「アカ」と断定され、拷問をうけ残虐に殺された事実。犠牲者は3万人近くと言われている事実。
    ひょっとして虐殺された人たち、生き残った人たちの怨念がキョンハを生かし、インソンを済州島に連れてきたのか、迫害され惨殺された人たちのことを語り継ぐために。そんな不気味で恐ろしく、そして不思議な感想を覚えた。
    人間はどんな場所でも、どんな時代でも、どんな時でも簡単に愚かになり、残酷になってしまう。
    それを教えてくれる小説だと思った。

    0
    2026年08月13日
  • 82年生まれ、キム・ジヨン

    Posted by ブクログ

    私は80年生まれ。
    その頃の韓国、日本も同じだったと思う。
    兄弟で差別をされたことはなかったから韓国の方が女性に関する問題は深刻だったのか。
    まだそう言った考えも残ってるんだろうなぁ。

    0
    2026年08月10日
  • すべての、白いものたちの

    Posted by ブクログ

    一度目読んだときは物語なのか、詩の連作なのか混乱もありつつ、表現の美しさに、そして読み続ける中で、言葉で表現できない死と生の深みを文章に惹き込まれた。
    作者のあとがきを読んで再読すると、物語として見える世界が確立され、それぞれの章での主人公での視覚で物語を味わえる。
    いやはや深い。他の作品も読みたくなりました。

    0
    2026年08月08日
  • 82年生まれ、キム・ジヨン

    Posted by ブクログ

    差別の問題が個人の倫理観の問題ではないということを突きつけられる。
    善人、悪人という二項対立で物事を単純に切り分けることはできない。特に流動性の高い現代において、普遍的にみえる価値観というのは少なくなっている。気がする。

    その変化に合わせて社会のあり方もアップデートしていかないといけないのだが、実際問題そんなに早く変わっていくわけもない。
    社会が人間の集団なのであれば、それらを作るのは個々人の心、しかし個々人の心は社会構造によって形成されているからだ。
    個々人の心と社会構造は、お互いに制約と促進という関係で結ばれている。であれば、個々人の心の変化が社会構造に制約されることによって差別というものが生まれているのかもしれない。

    0
    2026年08月02日
  • すべての、白いものたちの

    Posted by ブクログ

    白いものをめぐる短い文章の連なりが、生と死、喪失、祈りへと静かにつながっていく。はっきりとした物語ではないのに、一つひとつの言葉が胸の奥に沈み、読み終えてもしばらく余韻が消えなかった。多くを語らないからこそ、読む人自身の記憶や感情が入り込む余白がある。

    0
    2026年07月29日
  • ギリシャ語の時間

    Posted by ブクログ

    話すことができない女性と、視力を失いつつある男性。二人はギリシャ語教室で、生徒と教師として出会う。

    二人は身体的な喪失だけでなく、それぞれの人生で大切な人を失った痛みも抱えている。

    ボルヘスやギリシャ哲学に詳しければ、この作品の構造やモチーフをもっと深く読み解けたのだろう。例えば古典ギリシャ語の「中動態」は、二人と彼らを取り巻く世界との関係性を考える上で重要な鍵になっているように思えた。残念ながら私にはそこまでの知識はなく、その奥行きを十分に味わい切れたとは言えない。まるでアトリビュートを知らずに西洋絵画を鑑賞しているような、もどかしさも残った。

    最終章の番号は「0」。そこには、喪失を抱えたまま新たな始まりへ向かう地点が示されているように感じた。

    詩のような静けさを湛えた文章は、二人が向き合ってきた痛みをいっそう際立たせる。とりわけ、女性が言葉と和解できない苦しみ、そのために子どもと引き離されてしまった悲しみには胸が痛んだ。

    しかし、この作品は単に傷を抱えた人々を描くだけの救いのない物語ではない。0章には、失われたものを抱えながらも再び歩み始めようとする、かすかな恢復の兆しが描かれているように思えた。

    0
    2026年07月25日
  • 優しい暴力の時代

    Posted by ブクログ

    同時代に生き、価値観も家族感も日本とよく似ていて、非常に親近感が湧きました。
    厳しい環境の中登場人物は皆必死で生きていて、それが繊細に描写されています。とても人ごとには感じない。
    しかしチョンセというシステムはなかなか大変そうだなぁ…

    0
    2026年07月19日
  • 私の女の実

    Posted by ブクログ

    95年から00年にかかれたというハンガンの短編集。

    後の長編につながるのかな、と思わせるものもないではないけども、それぞれの短編単体で、悲鳴や痛みにに似た輝きを秘めている。

    あのとき辛かったな、苦しかったな。
    そんなことを思い出しながら読み終えた時、桜庭一樹のあとがきの一文がこころに残る。

    “傘をさしていないハンガンは今日もまた誰かの傍らで共に雨に濡れている”
    日本の雨も冷たいが、私達にはハンガンの本がある。

    0
    2026年07月18日
  • 82年生まれ、キム・ジヨン

    Posted by ブクログ

    韓国から日本へ、現代フェミニズム全盛に繋がる一大ムーブメントを巻き起こした話題作。韓国の伝統的な家父長制に翻弄される女性の姿を克明に描き出し、これまで光を当てられることのなかった苦しみと痛みを暴く。一方で男性に課される責務や責任を意図的に排除している節があり、手放しに称揚することもまた難しい一作。

    0
    2026年07月13日
  • 誰でもない

    Posted by ブクログ

    生々しい不安と不満、絶望。現実に疲弊しているのに、本の中でもまたそれにあてられてぐったり。誰でもない、この人たちは私。
    知っている感情を認知することも読書の意味であるはずなのに、本作にはただ疲弊してしまい、「すでに知っている現実をわざわざ突きつけられることに=読書 に、意味なんてあったっけ?」とすら思わされてしまった。(褒め言葉)

    0
    2026年07月12日
  • ギリシャ語の時間

    Posted by ブクログ

    理解しようとすると難しい。
    長い長い詩と思って読んだ。
    最後に彼らが交わし合うなにかがとても美しかった。

    0
    2026年06月29日
  • サハマンション

    Posted by ブクログ

    章によって主人公も時代も違うから、あれ?どうだっけ?コレはいつの話だっけ?って少し混乱してしまう。
    だけどページをめくる手は止められない。

    サハマンションに集まる人は貧困を抱えて差別の対象にもなっているけど、それぞれに人として感情があって生活もある。サハマンションで産まれた子供たちは幸せに大きくなっているだろうか?ウミはどうなるんだろう?トギョンはどこに行った?章ごとに描かれている人たちの延長が知りたいと思った。

    0
    2026年06月25日
  • 回復する人間

    Posted by ブクログ

    絶望の淵で、わずかな光が見えるような見えないような。

    今作で完全に彼女の虜になった。
    翻訳もやはり素晴らしい。

    0
    2026年06月21日
  • 別れを告げない

    Posted by ブクログ

    ハンガン自身がこの作品を「究極の愛の小説」とし、「光がなければ光を作り出してでも進んでいくのが、書くという行為」と語っていて、歴史の闇から目を逸らさず、そこに生きた死者の姿を描き、光を照らし出そうとする彼女の覚悟に胸を打たれる。
    痛みを引き受け、光を作り出す、それは確かに彼女の作品に共通するものであり、ノーベル文学賞受賞にふさわしい。

    彼女と同じ時代に生きて、彼女の作品に触れられること、本当に嬉しく思う。

    0
    2026年06月21日
  • フィフティ・ピープル[新版]

    Posted by ブクログ

    短編のようで短編ではない。分厚いけど、毎日少しずつ読み進めていった。後半2回くらい泣いた。ハ・ゲボムとチョン・ダウンの話。

    0
    2026年06月12日
  • ギリシャ語の時間

    Posted by ブクログ

    ノーベル文学賞受賞のハン・ガン氏による長編小説。言葉を失った女性と視力を失いつつある男性との魂の物語。ハン・ガン氏の根底のテーマであるトラウマと蘇生。そこに社会性を反映させ、詩的な物語を紡ぐ。とにかく言葉の表現が凄い。普段組み合わせない動詞と名詞を配置し、横たわる情景や感情を的確に表現する。物語のあらすじや意味するところは難解だが、不思議と心に迫ってくる作品。

    0
    2026年06月04日
  • ギリシャ語の時間

    Posted by ブクログ

    読んでいる最中は少しとっつきづらく、難しいと感じる場面もあった。しかし、読み進めるうちに、いつの間にか静謐な世界に引き込まれていく不思議な作品だった。

    ハン・ガンさんの文章は非常に練り上げられており、一つひとつの表現に深い思索が感じられる。その繊細な言葉の積み重ねが、この作品ならではの魅力だと思った。

    派手な展開を楽しむというよりも、言葉や登場人物の心の動きを静かに味わう作品だと感じた。

    0
    2026年06月06日