斎藤真理子のレビュー一覧
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韓国文学の翻訳者である斉藤真理子さんによる韓国語と日本語にまつわるお話。
10代以上すべての人のための人文書シリーズ『あいだで考える』の中の1冊として刊行されてていることもあり、とても読みやすく、理解しやすいです。
ハングルに関する思想や歴史、韓国における詩、戦争と現代史など知っておくべきことがわかりやすくて、本当に読んでよかったです。
「世宗大王とのチューニング」がとっても素敵、
ハングルの発音の魅力がとてもよくわかりました。
日本語には「雨脚」しかないけど、韓国語には「雨脚」も「雪脚」という言葉もあること。
韓国語には無機物や抽象概念にも複数形があること、
例えば「問題たち」とか「静か -
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ネタバレ島崎和歌子さんが出てませんが、めっちゃくちゃ面白かった!!
何か奇をてらった派手な表現をしてるわけじゃなく、丁寧に書かれた小説、小説を読んでる!小説って面白い!って鮮烈に感じました。
筆箱くらいの大きさの肉の塊に黒板消しくらいバターを乗せました、みたいな料理ももちろん好きだし良いんだけど、結局ちゃんと出汁とってちゃんと丁寧に作られた美味しいお味噌汁飲むとうわっこりゃ敵わないな、ファーストインパクトとか過激な何かに頼らない、筋肉隆々な人よりもパッと見強そうじゃなくて強い人ってもうそんじょそこらの生命体じゃ勝てないみたいな、私が例えれば例えるほど伝わりづらくなっている気がしますが、とにかく、小 -
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韓国を代表する女性作家の短編集(+おまけ)
チョンセ賃貸や、競争社会、受験戦争、地区毎の貧困格差が背景にあり、物語に湿った影を落としている。
絶妙な言葉選びや、複雑な心情の言語化が所々にあり、うんうんと頷いてしまう。
例えば、タイトルの「優しい暴力の時代」は、SNSをみていると分かる気がする。
「あなたのため」「世間のため」と他者を思いやるような言葉や情報で、誰かの劣等感や罪悪感を刺激しようとする。
優しい、けれど緩やかに負担になっていく。
物理的な暴力や、直接的な言葉の暴力は厳しく咎められるようになった現代。
安心で生きやすくなったはずなのに、周りくどく傷つけられてる気がする。
それが優しい -
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J.M.クッツェーの翻訳者として知られるくぼたのぞみと、韓国文学の翻訳者であり紹介者でもある斎藤真理子が一年に渡り、幼少期の記憶から翻訳者という仕事、それぞれの訳業や社会情勢に至るまでさまざまに意見を交わした往復書簡。
1950年生まれのくぼたさんと1960年生まれの斎藤さん、ちょうど10歳違いの二人は、元々藤本和子の本を復刊させたいという熱意を持つ女性翻訳者と編集者たちの集まり、〈塩を食う女の会〉での飲み友だちだという。
そんなわけで、本書は翻訳者としてのスタートから藤本さんに師事していたくぼたさんと、ブローティガンの訳書より先に『塩を食う女たち』に出会っていたリアルタイム読者の斎藤さん -
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ネタバレハン・ガンの短編集。気になっていた白水社のエクス・リブリスシリーズを初購入。
訳者のあとがきにあるように、傷口が回復する前には痛むもの。人の心も同じで、様々な挫折、諦め、苦悩の果てに、回復の兆しが見えてくる。そんな作品が多い短編集だった。
相変わらず文体や情景が綺麗で、読んでいるだけで心が洗われた。以下、作品毎の感想。
◎明るくなる前に ★おすすめ
弟を亡くした姉。自分がもっと気にかければと後悔し、以後、自身を罰するように生きる。“そんなふうに生きないで”。この祈りが刺さる。
◎回復する人間
誰かの視点で語られる、決して分かりあうことのできなかった姉に先立たれた“あなた”の話。回復するた -
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著者の斎藤真理子さんは韓国文学好きに知らない人はいないだろう翻訳者で、日本における韓国文学ブーム立役者のひとり。
植民地支配、朝鮮戦争、南北分断、光州事件、IMF危機、セウォル号事故、女性問題...
非常に重く複雑な韓国の歴史を読みやすい文章で解説してくれている素晴らしい一冊。文学作品を通して現代の朝鮮半島の根底にあるものに触れることができる。不条理な暴力や歴史的経緯が、韓国文学に感じる抗ったり切り開いていく雰囲気に影響しており、自分も胸を打たれ心が震えるのだろう。
一度読んだだけでは到底理解できなくとも、本書は韓国文学を読むうえでの地図となる。紹介されている作品は次々手に取りたくなり、リ -
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作者チョン・セランは一九八四年生まれ(私は同い年)、この本が韓国で出版されたのは二〇二〇年、日本語版の出版は二〇二二年一月。私にとっては同時代感バッチリの小説だ。面白かった。
タイトルのシソンは、シム・シソンというおばあちゃんの名前。訳者あとがきから彼女を紹介している部分を引用すると、「朝鮮戦争の中で家族を皆殺しにされたが、海外に渡って第二の人生を切り拓いた勇気ある女性。男性芸術家の暴力によって惨憺たる目に遭うが生き延びて、ユーモアを忘れずにたくさんの仕事をし、二度結婚して四人の子供を育て、世の評判をものともしなかったおばあちゃん。美術評論をはじめ数々の随筆を書き、各種メディアに登場しつづ -
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ネタバレ晴眼者という言葉も、墨字という言葉も、私は知らずに今まで生きてこられた。
「墨字の状態が常識だから、それをそうと呼ぶ必要もなく、それがあまりに当然だから、私たちはそうと自称することさえしない。」
人生において、知っている事よりも知らない事が遥かに多く、知らないことを知りたいという意思が無ければ、それは永遠に知らないまま。
「私たちが常識について語るとき、それは何らかの考えを述べるというより、まさにそれを考えていない状態に近い」「常識的にはね、と言う瞬間、それは何てしょっちゅう、なんにも考えていない状態」「それは固まってしまった思い込み」
これまで生きてきた社会と時間に育てられた考え方や物