斎藤真理子のレビュー一覧
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「d」と「何も言う必要がない」という2つの中編小説からなる。それぞれ独立はしているが、根底ではつながりあっている。
これについては「あとがき」等で触れられている。
「d」は「ディディの傘」という短編小説がもとで、その後幾度かの加筆、改変を経て本書に収録。
「何も言う必要がない」は「d」執筆後に、筆者が社会情勢を前にある種の使命感をもって書いたものだという。
韓国現代社会で次々に噴出する社会的不合理を前で、戦い、無力感に苛まれ、生活し、悩む人間の心境小説的な作品だ。
読み通すのにけっこう体力が必要な小説だった。
通常の小説の半分くらいのペースで読んだと思う。
言葉一つ一つの意味、エピソード -
Posted by ブクログ
字数少なく余白を贅沢に使った本書は詩集のようでもあり、1章3章の主体「私」は著者であり、2章の主体「彼女」は著者の姉の設定であることからも、私小説もしくはエッセイのようでもあった。解説を寄せた平野啓一郎氏が語るように、抽象的な世界と現実社会を織り交ぜた不思議な世界観が広がっていた。白い産着のモノクロ写真を写した表紙には、亡き姉への愛を感じる。タイトル『すべての、白いものたちの』と並んで表記されてあるハングル語「ヒン」は、生と死の寂しさを交々たたえた白色のことであり、本書で書きたかった想いを示しているという。冒頭の目録に記された白いものたちに順じて綴られた散文から、家族同行のワルシャワ滞在中に訪
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韓国の手芸ポシャギを連想するような淡い色彩の表紙が印象的な本作は、身体的・精神的回復を目的とした医療の一環として長期の休暇で冬眠をする患者と、その様子を終始見守る冬眠ガイドとの共同生活を描いている話の連作になっているが、実際には冬眠ガイドという職業は存在しないのでSF的短編集と言えよう。人間も古の時代では、食料のない季節に冬眠していただろうという説はあるようだが、絶望と疲弊に満ち溢れた日常生活を送っている現代人にも長期の休養は必要だ。でも、薬による長期間の睡眠は体に良くないのでは?と心配になったが、寒い季節が苦手な自分は冬眠願望はあるので、一度経験してみたい。巻末の訳者あとがきで触れているよう
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純文学にハマるきっかけになりそう
今まで純文学の楽しみ方の一つの「文章の手触り」みたいな部分全く魅力を感じていなかったけど、この本読んで雰囲気を掴めた気がする。
プロローグの時点で、
「滴り落ちる時間のしずくの一滴一滴は、カミソリの刃で作った玉のよう」とか想像を掻き立てる文章だ思ったし、
寒くなって霜が降りてきたら「木々は葉を落として次第に軽くなる。石や建物などの固いものたちは、微妙に重くなったように見える」みたいな何となくわかるけどそんなこと思ったことなかったなみたいな感覚が楽しみ方なんだろうなと思えた。
まだ当然よくわかんねーみたいなとこが大半だったけど↑の感覚が得られただけで読んで -
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詩のような回顧録のような。
不思議な構成。
著者はとつとつと白いものについて綴る。
真っ白ではない。
もやのような。
グレーがかった…そんな白。
純粋や清らかさを表現した白ではなく、哀しみに包まれたような白。
冬のワルシャワ。
低く雲が垂れこめた世界は冷たい空気と静寂に包まれていて…。
著者は生後すぐに故郷で亡くなった姉に想いを馳せる。
若くして赤ん坊を亡くした彼女の母親にも。
それからこの地に残された大戦の爪痕からその哀しみに触れては言葉を紡ぐ。
それはまるで、白いものたちにさげる鎮魂歌のよう
タイトルのあとには、読者たちはどのような言葉を続けようとするのだろう
吟味されつくした訳文