斎藤真理子のレビュー一覧

  • 声をあげます

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    SFは文明批評の色彩を帯びることが少なくないが、そこで試されるのは作者の社会に対する洞察力である。どの作品についても作者は悲観的なだけでもなく楽観的なだけでもない。ただどのような状況でも、人間は人間であり続けるだろうことを、軽やかに物語っている。

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    2021年09月29日
  • アヒル命名会議

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    何なのだこの本は。フィクションなんだけど、どこかで私たちが思ってる「あれ?これっておかしいのでは?何かちょっと違う?」みたいなことを、不思議で可愛くユーモラスに書かれている。
    私が感じている違和感を、数々の登場人物が一緒に持ってくれる。そしてその違和感は、決しておかしいことじゃなくて、それを限りなく自分の世界へと落とし込んでくれる。

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    2021年07月15日
  • 誰にでも親切な教会のお兄さんカン・ミノ

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    著者曰く「平凡な日常に起きた予期せぬ出来事」を集めた短編集。どの短編も一筋縄では話は進まず、そこに様々な想いをめぐらすことができた。面白かった。

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    2021年05月01日
  • 誰にでも親切な教会のお兄さんカン・ミノ

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    短編?中編?集です。
    わたしは作者が事故の当事者にインタビューする形式で書かれたひと作品が特に好きでした(題名は忘れたが)。
    韓国文化をわかってる人が読むとさらに面白いんじゃないのかなと思いました。別に知らなくても読めるんだけど、例えば教会のお兄さん교회오빠 とかは韓国歌謡にも出てくる割とよく使われているきまり文句で、一口じゃ説明できないニュアンスを含んだ言葉ですから、実体験として知ってる人の方が人物の想像はしやすいかなと思いました。(わたしも大して知らないですけど、知ってたらもっと面白く読めたという想像)
    でも、知らなくてもめっちゃ面白く読めると思います。大体は「普通の人の話」なんですが、社

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    2021年04月19日
  • ディディの傘

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    この小説に描かれている圧倒的な絶望感、閉塞感、人々の怒りは一体どこからくるのだろう…とずっと思いながら読んでいた。韓国に生きる登場人物のこの揺れ動く心情を、そのまま自分のことのように実感するには、私の知識が不足しているのが口惜しい。
    訳者解説にある「現実は混沌としており、激しく変動する。そして正しさは常に一様ではない」この言葉が韓国の情勢の全てを表しているのだろう。
    様々なことを考えさせられる小説だった。

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    2021年03月30日
  • アヒル命名会議

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    はじめ、わ、横書き! とおどろいて、それから後書きにお母さんが寄稿していることでまたびっくり。
    よみすすめていくと、けっこう母親との相克を題材にした作品がちょこちょこあるので(キョンヒ台風とか)それはきっとテーマのひとつなんだろうなと思い、そうなるとあとがきがまた、いっそう重く感じられたり(^_^;;

    じつは、毎日、お風呂に入りながら一編ずつ読んでいたのだが、どこからでも読めるし、それぞれの作品の感触がちがって、全体としてとてもよかった。
    表題作の「アヒル命名会議」は、大丈夫なの?と思うくらい神がひどい(笑) 神がこしらえたアヒル様生物を命名することになって、サタンがduckはいかがでしょう

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    2021年02月12日
  • ディディの傘

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    2021 #3

    私の知らない韓国を知った
    とても丁寧に翻訳されているのが伝わってきて
    日本語で読ませてもらってありがたかった
    日本の読者へのメッセージと訳者解説まで
    おいおい泣きながら読んだ


    ---メモ---


    P192 彼はキム・ソリに大人であれと要求したが、彼自身もキム・ソリに対しては大人なのに、彼はキム・ソリに対して何も、キム・ソリが大人になることについて何も、何らの責任も負わず、非難するだけして行っちゃったんだ。彼の大人らしさはキム・ソリを観察し、判断を下し、ことが終わった後に寄っていって非難するときだけ有効に働いたが、大人らしさがそんなものならあまりに御都合主義で下品じゃない

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    2021年01月23日
  • ディディの傘

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    "まっ昼間から、恨めしくて、恥ずかしくて、涙が出たよ。そのとき私、たいがい驚いて、気がついたのさ、私が泣いてる、恥ずかしいのがわかるんだ、ああ生きてるなあと。そしたらこんどはそれが嬉しくて、涙が出て出てきりがなくて。生きなくちゃ、せっかくここまで生きたんだから最後まで生きてみようって確かに覚悟を決めたんだ……そうやってしっかりはっきり心が決まったのはあの恥ずかしさのおかげで、あれが私を生かしたの。"(p.22)



    "私は自分の答え方や考え方が子どもに及ぼす影響が怖い。"(p. 183)

    "大人になることは、恥ずかしさの後に来るんだよとキム

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    2020年12月20日
  • ディディの傘

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    個人は個人で様々な考えや思い、問題を抱えて生きてる。
    それは大切な人を亡くしたことだったり、両親との隔たりだったり、性差、同性愛だったり、過去の運動や争いだったり。

    そういうものを胸に抱く個人にも、世の中の大きな流れは影響を与え、またその個人が、各々の抱えたものを持ち寄ってより大きな流れに響きあい、新しい流れを作っていく。時に後退しながら、時に迂回しながらも。

    韓国の現代、「セウォル号事故」「キャンドル革命」を背景に語られる、個人の「小さな記憶」と人々の歴史としての「大きな記憶」。
    今は過去となり、語られながら「記憶」は紡がれる。

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    2020年11月04日
  • 誰にでも親切な教会のお兄さんカン・ミノ

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    「チェ・ミジンはどこへ」:フリマ・サイトに自分が書いた本が出ていた。それも著者サイン本。他の本を五冊購入したら無料進呈と。どうしても誰がフリマに登録したのかを知りたい著者のイ・ギホは、出品者に直接取引を持ち掛けるが…。「ナ・ジョンマン氏のちょっぴり下に曲がったブーム」、「クォン・スンチャンと善良な人々」、「私を嫌悪することになるパク・チャンスへ」、「ずっと前に、キム・スッキは」、「誰にでも親切な教会のお兄さんカン・ミノ」、「ハン・ジョンヒと僕」。イ・ギホの短編集。どれも羞恥がテーマに。

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    2020年10月12日
  • ディディの傘

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    「d」と「何も言う必要がない」という2つの中編小説からなる。それぞれ独立はしているが、根底ではつながりあっている。
    これについては「あとがき」等で触れられている。

    「d」は「ディディの傘」という短編小説がもとで、その後幾度かの加筆、改変を経て本書に収録。
    「何も言う必要がない」は「d」執筆後に、筆者が社会情勢を前にある種の使命感をもって書いたものだという。

    韓国現代社会で次々に噴出する社会的不合理を前で、戦い、無力感に苛まれ、生活し、悩む人間の心境小説的な作品だ。
    読み通すのにけっこう体力が必要な小説だった。
    通常の小説の半分くらいのペースで読んだと思う。

    言葉一つ一つの意味、エピソード

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    2020年09月29日
  • 誰にでも親切な教会のお兄さんカン・ミノ

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    "ときどき僕は考える。侮辱されているかもと思ったたけで屈辱を感じ、侮辱し返すという、そういう人生について。"(p.32)


    "それぞれの罪があり、それぞれの罰があるのだ。ひっくるめて眺めていれば、何もかも平べったく見えてくるばかりだ。罪はそのとき、くり返される。"(p.149)

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    2020年04月03日
  • 誰にでも親切な教会のお兄さんカン・ミノ

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    短編小説7編+あとがき
    心の奥底を覗いて目の前に表す,その心の動きが巧みに物語の中で展開する.お見事です.「恥」と言う概念,読みながら自分の中にも確かにるあると共感した.特に「チェ・ミジンはどこへ」と「あとがき」が良かったです.

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    2020年03月14日
  • 光と糸

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    ノーベル文学賞の受賞記念講演「光と糸」のほか、詩と散文、日記で構成される。
    済州島事件、光州事件など厳しい内容も含むが、なんだか癒された。

    ハン・ガンが8歳のとき作った詩、
    『愛ってどこにあるのかな?
    とくとく鳴ってる私の胸の中だよね。
    愛って何なのかな?
    私たちの胸と胸をつないでくれる金の糸よね。』
    栴檀は双葉より芳し、とはこのことか。

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    2026年03月11日
  • 影犬は時間の約束を破らない

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    韓国の手芸ポシャギを連想するような淡い色彩の表紙が印象的な本作は、身体的・精神的回復を目的とした医療の一環として長期の休暇で冬眠をする患者と、その様子を終始見守る冬眠ガイドとの共同生活を描いている話の連作になっているが、実際には冬眠ガイドという職業は存在しないのでSF的短編集と言えよう。人間も古の時代では、食料のない季節に冬眠していただろうという説はあるようだが、絶望と疲弊に満ち溢れた日常生活を送っている現代人にも長期の休養は必要だ。でも、薬による長期間の睡眠は体に良くないのでは?と心配になったが、寒い季節が苦手な自分は冬眠願望はあるので、一度経験してみたい。巻末の訳者あとがきで触れているよう

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    2026年03月07日
  • 82年生まれ、キム・ジヨン

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    女性が知らず知らずのうちに、多くの人にとっては無意識的に受けていた差別に対する本
    本編自体は200ページにも満たなく、すぐ読めます
    まあまあでした!

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    2026年03月06日
  • 優しい暴力の時代

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    分かりやすく表に出ない悪意の方が苦しい。
    過去の罪悪感や悲しみ、苦悩を、何かをきっかけに思い出しながら現在を生きようとするところに励まされた。

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    2026年02月28日
  • すべての、白いものたちの

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    純文学にハマるきっかけになりそう

    今まで純文学の楽しみ方の一つの「文章の手触り」みたいな部分全く魅力を感じていなかったけど、この本読んで雰囲気を掴めた気がする。

    プロローグの時点で、
    「滴り落ちる時間のしずくの一滴一滴は、カミソリの刃で作った玉のよう」とか想像を掻き立てる文章だ思ったし、
    寒くなって霜が降りてきたら「木々は葉を落として次第に軽くなる。石や建物などの固いものたちは、微妙に重くなったように見える」みたいな何となくわかるけどそんなこと思ったことなかったなみたいな感覚が楽しみ方なんだろうなと思えた。

    まだ当然よくわかんねーみたいなとこが大半だったけど↑の感覚が得られただけで読んで

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    2026年02月28日
  • すべての、白いものたちの

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    邦訳ゆえ仕方ないが、基本的に平易な文体で記述されているので表現に関してはやや深みに欠ける印象。他方、訳者解説等が素晴らしく、そこを合わせての作品ではないか。

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    2026年02月27日
  • すべての、白いものたちの

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    詩のような回顧録のような。
    不思議な構成。

    著者はとつとつと白いものについて綴る。
    真っ白ではない。
    もやのような。
    グレーがかった…そんな白。
    純粋や清らかさを表現した白ではなく、哀しみに包まれたような白。

    冬のワルシャワ。
    低く雲が垂れこめた世界は冷たい空気と静寂に包まれていて…。
    著者は生後すぐに故郷で亡くなった姉に想いを馳せる。
    若くして赤ん坊を亡くした彼女の母親にも。
    それからこの地に残された大戦の爪痕からその哀しみに触れては言葉を紡ぐ。

    それはまるで、白いものたちにさげる鎮魂歌のよう

    タイトルのあとには、読者たちはどのような言葉を続けようとするのだろう
    吟味されつくした訳文

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    2026年02月21日