斎藤真理子のレビュー一覧

  • 影犬は時間の約束を破らない

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    冬眠する人とそれを見守るガイドの話
    冬眠する人を見守りながら自分の人生や生活と向き合いつつ、淡々と毎日を過ごすガイドたちの時間がとてもひっそりと静かで心地良い。不思議とこれを読むと良く眠れる気がする。眠ることと散歩することを意識的にして物事を深く考えたり考えなかったりする時間を取りたくなったし、たまに読み返したくなるだろうなという本。寒い国出身の人が生み出す文章は淡々と静かでどこか切なくて好きだなと思う

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    2025年05月26日
  • タワー

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    超超大型のマンション?というシチュエーションのアイデアがまずすごい。ありそうでなかった。
    そのシチュエーションを生かした短編ストーリーも、それぞれ角度が違って面白い。
    ディテールが細かく作られているのがよくわかる。
    読む人の想像力を掻き立てられて面白かった。

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    2025年05月05日
  • シリーズ「あいだで考える」 隣の国の人々と出会う 韓国語と日本語のあいだ

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    韓国文学へのガイドは、多くの場合、日本と朝鮮という2つの国の関係から語られることが多いが(もちろんそれは必要不可欠なことだ)、この小さくて美しい本で、斉藤真理子さんは、朝鮮の人たちが使う言葉を差し出しながら、その奥深さへと導いていく。話し言葉の「マル」、書き言葉である「クル」、そしてその奥から聞こえてくる「ソリ」、声。
    植民地支配や軍事政権によって本心を語るための言葉を奪われ、大量死さえ重ねられてきた集合的歴史をもち、個々の身体においても容易に言葉にしがたい痛みを負ってきた隣の国の人たちが、だからこそ自らの手に取り戻そうと格闘してきた「マル」「クル」「ソリ」。それを表現しようとするのが韓国文学

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    2025年05月04日
  • 回復する人間

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    短編集。
    明るくなる前に
    回復する人間
    エウロパ
    フンザ
    青い石
    左手
    人とかげ

    危うさと脆さ、ギリギリのラインに立つ人、どの作品にも痛みがあり苦しい。でも、なんだろうか。生への思いが強く静かに届いてくる。

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    2025年05月02日
  • 未来散歩練習

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    「来てほしい未来を思い描き、手を触れるためには、どんな時間を反復すべきなのか。」
    ふわふわとしていて不思議で、読んでいるとコーヒーを飲みたくなるし、美味しいものを食べたくなるし、散歩に行きたくなる。散歩をしながら、過去とつながっている今、今とつながっている未来、私はどんな未来を練習しているのかと考えたくなる。現状に満足できていなくても未来には希望を持つことができるようになりそうな気がした。

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    2025年04月13日
  • 回復する人間

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    ネタバレ

    初めての韓国文学で、初めてのハン・ガン。
    静謐な文体。読むうちに心が沈黙して、無我の境地になる。喪失からの静かな、みずからはそれと気づかないほどの細い細い糸のような回復。希望がほんのりと差し込んでくる。
    「時間とは流れるものではないのかもしれない」(p.141「青い石」)
    「私たちももともとはああだったけど、そのあとにいろいろプログラムされて、本来の状態を忘れて暮らしてるんじゃないかと思うわ」(p.261「火とかげ」)
    失ったものは取り戻せないけれど、それを置いてきた時間にいつでも戻れる。そこから回復の一歩を踏み出す。

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    2025年04月09日
  • 誰でもない

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    ホラーじゃないのに読んでいるとゾワゾワとする。人間の仄暗い部分をずっと見せられているようでずっと居心地が悪いのに、懐かしい故郷の景色を見ているようでもある。

    登場人物たちの後悔や失望が滲み出ていて、その描写が素晴らしかった。

    大切な人を大切に出来なくなりそうな時に読んで欲しい短編集。

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    2025年03月27日
  • シリーズ「あいだで考える」 隣の国の人々と出会う 韓国語と日本語のあいだ

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    韓国とは切っても切れない縁なので(個人的に)読んでみました。


    「あいだで考える」というシリーズの中の1冊で
    必ずしも国と国とか、言語とか限られてるわけではなく
    今回はたまたま「韓国語と日本語のあいだ」について著者の経験や考えや感じたことが書かれてありました。


    著者は韓国文学を日本語に翻訳している翻訳者でもあって
    言葉選びや韓国語に対する視点はとても新鮮でした。
    最初この本を読もうと思ったときは分厚い本で、お堅い本なんだろうな...と予想していたのですが(失礼ですね)、
    そんなことはまったくなく、途中素敵なイラストもあって読みやすかったです。

    私も韓国語と日本語のあいだに立たされること

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    2025年03月22日
  • ギリシャ語の時間

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    一読しただけでは理解が及ばず、ユリイカの特集を読み再読。でもやっぱり難しかった。
    二人の主人公はそれぞれ、言葉を失い、視力を失いつつある。私には本の最後、二人の物理的な距離は重なり合ったものの、心の距離が縮まることがないのではと感じられた。ギリシャ語講師は言葉を失った女を理解しないままだし、女はやっと言葉を取り戻したばかり。今後女が言葉を尽くしたとして、ギリシャ語講師は女を視力を失ったその目で見ようとするだろうか。私はそうは思わない。初恋の相手に綴った手紙のように想いが一方的で、簡単に過去を美化してしまうから。
    どうしてこの物語がハン・ガンにとって「生きていくということに対する、私の最も明るい

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    2025年03月14日
  • 優しい暴力の時代

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    親切な表情で傷つけあう人々の時代
    本の中に80年代〜90年代の韓国の歴史(民主化、IMF危機)が刻まれており、格差社会の深刻化を知ることができる
    三豊百貨店事故の話を読むとセウォル号沈没事故のことを思い出し、多くの家族、親友などの尊い命が亡くなっていったことを忘れてはならない

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    2025年02月09日
  • 82年生まれ、キム・ジヨン

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    フェミニズム小説といえば真っ先にタイトルがあがる作品の一つであろう本作をやっと読みました。

    日本においてたまたま女の体で生まれたというだけで理不尽な苦痛や困難を社会に強いられてきた人はたくさんいて、私もその一人。今でも悔しい思いをすることがあるし、それらの体験は後々も思い出して怒りに震え、決して忘れることはありません。この小説は韓国が舞台ですが、私たちが経験したこと、していること、見たこと、聞いたことが詰まっていて「これは私の話だ」となります。どこかで傷つき、しかしそれをなかったことにしてどうにか生きてきた自分を抱きしめることができたように思います。

    本編後には、この小説の巧みな構成につい

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    2026年03月18日
  • 回復する人間

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    「火とかげ」に圧倒された。途中出てくるTears In Heavenのエピソード知らなかったので、改めて聴いて心に沁みた。「左手」だけ他の作品と違った作風だったが、先が気になりグングン読んだ。どの作品も人が傷つき回復する様が丁寧に描かれていた。自分が辛い時に読んだらきっと、もっとハマると思う。そんな時、この本を思い出して、また読みたいと思う

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    2025年01月25日
  • 回復する人間

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    繊細だけれどとても鋭い、傷ついたり傷つけたりしてしまいそうな文章。そんな文章でしか書けない傷や悲しみ苦しさ、人生がある。それらの殆どの人生、物語には最後に光がさす、希望が垣間見える。前に進めるように開いた小説たち。それらは回復を促すように書かれたのかもしれない。
    だけれど、ある短編の登場人物が「私を回復させないで欲しい」と願うように、残しておきたい傷や忘れるべきではない悲しみ苦しさもある。回復とは忘却にも近い。傷や悲しみ苦しさを忘れないために書き残された、そんな風にも思えた。
    回復も忘却も、時間を使って人生が行使する必要な力だ。だけど、それに抗うように傷を悲し

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    2025年01月11日
  • 優しい暴力の時代

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    習慣で寄った本屋でなんとなく選んだ短編集が完璧にClassicだった。これは本当に凄いと思った。という体験を以前にもしたことがある、と思い出す。あのときも同じ本屋で同じ出版社、同じ翻訳者の文庫本を買ったのだった。電車で読み始めた最初の頁でこれは読みたかった本だ、と“分かった”ときの喜びも同じだったように思う。

    帰り道の終点駅のホームで読んだ最初の一編の最後のページ、そこに書かれた印象的な涙を読んで、泣きそうに、いや、彼と同じように「まだ起きていないできごとと永遠に起きないできごとを思い浮かべて」泣きたいと思った。
    物語られる幾つもの人

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    2025年01月11日
  • ギリシャ語の時間

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    目が見えないこと、言葉が話せないこと。
    それは死に半分くらい足を浸しているようなものだろう。
    深い深い森の中にひとり生きているようなものだろう。

    決して他人が理解できるものではない。
    ("そんなに簡単なことではありません")
    闇の深さを、底に何かが横たわっていることを
    かすかに伺い知れるのみ。

    出会いとはすれ違いのことなのかもしれない。
    面と向かってすれ違うことが出会うということなのかもしれない。
    あなたは私の過去を知らない。私もあなたの過去を知らない。
    ぼんやりとした暗闇の輪郭をなぞる。
    触れ合うとは理解し合うことではないのだと初めて思った。
    輪郭に触れる、輪郭を形成

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    2025年01月05日
  • フィフティ・ピープル[新版]

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    50人が少しずつ交差したりすれ違ったりしながら進んでいく物語。
    韓国の情勢を織り交ぜつつ、ちょっとシリアスで悲しくなる物語もあるけれど、いろんな人の視点で描かれるのはとても面白い。
    ただ韓国の名前に慣れてないせいか、誰が誰なのか混乱しやすいかもw
    3、4回読んでやっと理解できるかもしれません。

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    2025年01月04日
  • フィフティ・ピープル[新版]

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    50人の主人公がそれぞれの人生を生きながら交差する話。ある病院を中心の舞台とし、韓国の現代の社会と問題を織り交ぜ、生きていく人を新鮮に描写している。
    韓国の人の名前がとにかく覚えられない私は、何度も目次で確認しながら読み進めた。漢字は視覚的に記憶に残るけれど、カタカナってこんなにも記憶できないのか。

    韓国も日本も社会がすごく似ている。例えば今日自分とすれ違った人が実は50人の1人だったとしても全くおかしくはない。

    やっとチョン・セランを読めて満足。

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    2025年01月03日
  • 翼~李箱作品集~

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    翼、月傷(失楽園)、烏瞰図 詩第一号、烏瞰図 第十五号が好みでした

    韓国併合と一言でまとめられてしまっていた事象に対する当時の韓国の人々の感情を直接的な言葉なく感じ取ることができて興味深い内容だった。

    舞台化しているとのことだったので機会があれば舞台を見たい。

    二つほど読み飛ばしてしまったけれどそれは他の機会に読みたい。

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    2025年01月03日
  • 声をあげます

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    軽やかにユーモアを交えながら描き出すのは、ときにディストピア、ゾンビが群れる世界、人間が絶滅しかけた世界、特殊な能力を持つ人々が強制収容されている世界。

    舞台はそんな風にシリアスなのだけれど、物語を走る登場人物たちはたくましくしなやかに、そしてポジティブに楽しげに生き生きとその奇妙な世界を生きている。そのミスマッチさ、明るさがとても読んでいて心地よくて楽しくて堪らなかったです。

    私が一番好きなのは「メダリストのゾンビ時代」。終末世界で自分らしく最後まで貫いて、切ない想いを閃かせて生きる主人公がとても素敵でした。

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    2024年11月28日
  • 回復する人間

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    私にとって、なんとも言えないくらい、とても衝撃を受けた本でした。落ち着いた場所で、静かに読むべき本のように思いました。じっくりと読んでも1度では足りないようにも思いました。

    自分の目の前でその情景を見ているような感じがしました。登場人物の心の中の細かい描写に吸い込まれそうな感じを受けたときもありました。人の繊細な部分の表現の仕方が秀逸に思えました。身体の傷、心の傷、両方とも回復を願うだけではないときがあることを知りました。ハン・ガンさんがどういう思いでこの本を書いたのか、知りたいと思いました。(あとがきに訳者の説明がありました。)

    今は、私よりもきちんとこの本を理解した方のレビューが読みた

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    2024年11月11日