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陽の差さない部屋で怠惰を愛する「僕」は、隣室で妻が「来客」からもらうお金を分け与えられて……。表題作「翼」ほか、近代化・植民地化に見舞われる朝鮮半島で新しい文学を求めたトップランナーの歓喜と苦闘の証たる小説、詩、随筆等を収録。
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Posted by ブクログ
翼、月傷(失楽園)、烏瞰図 詩第一号、烏瞰図 第十五号が好みでした 韓国併合と一言でまとめられてしまっていた事象に対する当時の韓国の人々の感情を直接的な言葉なく感じ取ることができて興味深い内容だった。 舞台化しているとのことだったので機会があれば舞台を見たい。 二つほど読み飛ばしてしまったけれ...続きを読むどそれは他の機会に読みたい。
難解すぎて、よくわからなかった、の一言で終わらせるには惜しい。難解さの原因は、作者が植民地下の京城、東京にすっぽりと入る時間に生きた青年だったこと、日本語と韓国語の両方を駆使していたこと、時代が芥川の自殺やプロレタリア、モダニズム文学などの文学史上のターニングポイントを迎えていたことなど、多岐にわた...続きを読むる。できれば韓国語と日本語の両方をよく理解できる能力を持った上で読んでみたい作品だけれども、村山槐多や夢野久作を思わせる、人を食ったようなシュールレアリスムな世紀末的世界観はなかなか嵌りそう。
リンバスカンパニー イサンより。 同ゲームのキャラの元ネタで興味を持った。 李箱は、韓国では非常に高い評価を得ており、生前の売れない時代との対比がある。 詩に関しては正直全く分からないが、「翼」は面白い。 天才なんだろう。 常人には分からないが、韓国では解説の探究が続いているらしい。 作品集は...続きを読む短編小説の部分はかなり上手く纏まっている。 抽象・観念的すぎず読みやすい。 読んでみれば分かるが前衛的な小説家であった事が伺える。翼なんかは二重線で囲まれた部分から始まる。 (グッバイと聞くとロボトミーを思い出すからやめてほしい)
植民地時代の朝鮮にも モダニズム文化は日本から流入した そしてやはり古い文化との軋轢が生じたんだ 李箱という人は新旧文化の… 別の言い方をすれば日本と朝鮮のはざまで 一足早くポストモダン的なものに目覚めたらしい 将来の家父長たるべき若旦那として 消費社会の恩恵もいっぺんに受けたいという ぼんくらの願...続きを読むいそのもの、と僕には見えるんだけど でもまあそれが人の本音というものですよね ドストエフスキーなんか捨てちゃって マルメラードフのように生きたいね 「烏瞰図 詩第一号」 群衆のなかに「私」は存在しない 透明な存在として溶け込んでいる 「翼」 妻に飼われて生きてる亭主 飯を出してもらった上に寝てばかりいて そのうえお小遣いまでもらっている 酒も煙草もやらないセックスレス ひょっとしたら童貞の、子供みたいな彼だったが 街をうろつく快感を知ってからというもの 夫婦関係が壊れはじめる 帰宅時間の早すぎることが問題であった 「線に関する覚書Ⅰ」 観念のプリズムによって 観念のスペクトルを見てみましょう 観念上に光の粒子が拡散していくだろう そして思うのです 光速を超えて時間を逆行し 私は懐かしい封建時代へと帰ってゆきたい 「烏瞰図 第十五号」 無責任な私、あるいは責任感ある私 もうひとりの私が 鏡の中にいて 私はそいつを殺したい 鏡のなかの私を相手に、無理な相談をしている 「蜘蛛、豚に会う」 画家を志すも人生に行き詰まってる 彼の妻はカフェーの女給だった 女給といっても当時のカフェーは チップに応じて性的サービスを提供する場所だ 彼は穀潰しの分際で妻を軽蔑していた 蜘蛛みたいな女だと思っていた 痩せてる奴は蜘蛛、太ってる奴は豚 実のところはこの世のすべてを軽蔑していた しかしいちばん軽蔑してるのは自分自身のことだ 脈絡なしに人称が入れ替わる文体を見ればわかるんだぞ (李箱は一時期、自分でもカフェーを経営してたとか) 「山村余情」 都市と農村は地続きであるし それ以前に私が私である以上 逃げ場はどこにもないのだった 素朴な娘たちには憧れる 「逢別記」 「蜘蛛、豚に会う」と「翼」の種明かしをすると じっさい若い頃に娼妓と入籍していた 肺病を患って職も失い自暴自棄になっていた頃だ 彼女は10代で、すでに経産婦だった 数ヶ月で生活は破綻したのだが… 「牛とトッケビ」 豊島与志雄の童話を朝鮮向けに翻案したもの 最後に李箱じしんの意見がつけ加えられているのだけど 作品としては、言わぬが花じゃないかなー ケアの見返りって話になっちゃうから… 李箱が死ぬ直前に発表された 「東京」 極東モダニズムの中心地、東京 そこに行けばなにかあると期待してたのだろうか? じっさい来るとやはり空虚だった 白昼のネオンサインはまるで骸骨のようだった ここで李箱は客死する 「失花」 無邪気な新妻の裏切りに傷つけられた自尊心は ポストモダン思考でどうにかなるものではなかった それで東京に逃げてきたらしい 再生のきっかけとなる何かを求めたのかもしれない 「陰暦一九二六年大晦日の金起林への手紙」 東京ではぶらぶら遊んでいたようだ どこからそんなカネを捻出したのか知らんけど 本人は新しい路線を見出そうとしていた 「失楽園」 6つの断章からなるもので 本人の死後まとめられたという 自由主義によって旧来のロマンが否定された結果 文明は衰亡・滅亡の運命をたどるだろう 時間を止めることはできない ここでおそらく李箱は 今でいうところの加速主義にたどり着いてしまった 「烏瞰図 詩第四号」 バイオリズムは右肩上がりと見せかけて 十を刻むごとにリセットされる 生きづらいことだ 縦読みだろうと裏読みだろうと好きに読めばいい 死はいつも隣にあるんだから
旅先で購入。 初めて知った作家。 詩、随筆、小説。 ちょっと入りきれないものもあった。 ままならない生、暮らし、諦念、苛立ち、悲哀。 そんなのを感じた。
作者李箱(イサン)は、日韓併合直後の京城に生まれ、短い作家活動の末、1937年東京にて死去した人とのこと。韓国文学にはほとんど触れたことがなく、本書で初めてその作品を読んだ。 正直、詩は苦手なのだが、ましてモダニズム系の詩なおさらだ。 それに対し小説は、「翼」といい、「蜘蛛、豚に会う」といい、...続きを読む妻との奇妙な関係が男に鬱屈した感情を抱かせる、そのモヤモヤしたところを上手く表現化していると思った。 植民地下で作家として生きることの困難など作者が当時置かれていた状況や作品自体の鑑賞の手引きなど訳者の丁寧な解説が付されており、大変参考になる。
戦前ないし戦争中に日本で学び日本で逮捕されて獄中で死亡した詩人である。それほど学生が読んでいるとは思えないし、教科書に訳詩が掲載されたこともないであろう。 韓国もこの詩人は日本に宣伝していないのかもしれない。
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翼~李箱作品集~
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李箱
斎藤真理子
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