あらすじ
いま、韓国の文学、音楽、ドラマや映画に惹かれ、その社会や言語に関心を持つ人はますます増えている。本書では、著者が韓国語(朝鮮語)を学び始めた背景、この言語の魅力、痛みの連続である現代史と文学の役割、在日コリアンと言語のかかわりなどを、文学翻訳の豊かな経験から親しみやすく語る。文字、音、声、翻訳、沈黙など、多様な観点から言葉の表れを捉え、朝鮮半島と日本の人々のあいだを考える1冊。
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Posted by ブクログ
著者の言葉遣いが好きです。
たとえば、マル(言葉)について。
p11 「マル」。この朝鮮語の音は日本語にはない。だから、くり返して発音するだけで、口の中にちがう風が吹いてくる。
昔から、この言葉を第二言語として学ぶ人は、口の中に起きる風に誘われて、気がついたらどこかちがう場所に立っていることが多かったのじゃないかと思う。
『目の眩んだ者たちの国家』を編纂したツン芸評論家のシン・ヒョンチョルは、あとがきにこんなことを書いている。
私たちが本を読む理由のうちの一つは、私たちが知らないことがあるということを知るためである。人が経験できる事件は限られているので、実際に感じられる感情も限られている。そのとき、文学作品を読むことは、感情のシミュレーション実験となり得る。小説を読む間、身も細る思いをしたり、血が沸きたったからといって、その感情を完全に理解したというのは言い過ぎだ。しかし、小説でなければその感情に近づいていく方法がない。例えば、自分ん子どもが溺れて死んだのに、その真相を知ることができず、死体も見つからないとき感じる感情とか。人間は無能だから完全に理解することは不可能で、人間は意気地がないので一時的な共感も徐々に薄れていく。だから一生の間にすべきことが一つあるとすれば、それは悲しみについて学ぶことではないか。他人の悲しみに「もううんざりだ」というのは残酷なことだ。政府が死んだ人を再び殺そうとするとき、そんな言葉は生き残った人たちまでも殺そうとするのだ。」
日本語と韓国が似ているという話も面白い。
p135
語順がほぼ同じであること。「てにをは」にあたる助詞があること。
漢字の借用による「漢字語」をたくさん使うこと。
「です・ます」調と「だ・である」調があること。
敬語があること。
擬声語・擬態語が多いこと、など。
ここまで似ているからこそ、なおさら、小さなちがいが気になるのだと思う。
たとえば複数形の使い方だ。
なんと「静かにしてください!」の「静かに」という副詞に「たち」をつけて「静かたちにしてください!」と言うこともできるのですって!
Posted by ブクログ
ハングルの文字を手がかりに韓国の歴史を説明している。イテウォンの事故についてはほんの僅かしか言及していないが、セウォル号の座礁事故では船長も船員も非正規雇用者であることは日本では報道されていない。また訓民正音については日本の井上角五郎の新聞でハングルを広めた役割は書かれていないものの、ハングルが使われるまでの中国語を使う役人の説明は詳しい。(従軍)慰安婦や朝鮮戦争での米軍相手の慰安婦やベトナムでのタイガー部隊やライダイハンは意図的に避けられている。また、日韓併合前の奴隷制度について書かれていないのは文学としての記録がないためであったのかもしれない。韓国における詩の重要性を認識することができるであろう。韓国語を学習している学生は韓国の文化を知るためにも読んでみる方が良い。
Posted by ブクログ
著者は多くの朝鮮文学作品の翻訳者なので、興味を持って本書を手に取った。二つの文化の間で微妙に揺れたり、風が吹いたりするのを感じる、絶妙な心持ちを描いていて、その表現力に唸らされる。しかし本書はそれだけにとどまらず、朝鮮と日本の複雑な歴史関係を史実に沿って書いている。正直言って、ここまで関係の深い国だとは思わなかった。隣の国なのだから、知っていて当たり前なのに。ここに両者の複雑な関係が見え隠れする。本書を読めば、もっともっと朝鮮が好きになりることは間違いない。巻末のお勧め本のリストも嬉しい。
Posted by ブクログ
ハン・ガンの『すべての、白いものたちの』を読んで、韓国語にとても興味を持った。”この本を読んで”というよりもっと初めの段階、”このタイトルを読んで”興味を持ったといった方が正しい。
『隣の国の人々と出会う』は、『흰(ヒン)』の訳を『すべての、白いものたちの』とした翻訳者・斎藤真理子さんの著書である。正直なところ、翻訳についてのいろいろを知ることができるかな?と思っていたのだが、それは私の一方的な希望で、この本には、朝鮮の歴史的背景や日本との関係性、そしてそれらを踏まえての言語・文学などについて多く書かれていた。
あとがきに、「シナモン抜きの水正果(スジョングァ)になってしまい反省している」というような言葉があった。確かに、爽やかさよりも重さの方を感じてしまった。けれども、私が隣の国について、これまで知らなかったり、誤解をしていたりしたことを教えてもらえたので、とても読んでよかったと思っている。
말(マル)言葉
글(クル)文、文字
소리(ソリ)声(思い)
시(シ)詩
사이(サイ)あいだ
各章がこれらの単語が軸になっているのは、とても良かった。
韓国語をもっと知りたいと思った。
Posted by ブクログ
ちょうど韓国語の勉強を始めた今、とても楽しんで読める
一気読みしてしまった
韓国語(朝鮮語)の背景から、日常会話でのフレーズの使われ方まで、テキストとは違う視点から学ぶことができる
韓国語と日本語のあいだ
というサブタイトルが、読む前と後では全く違う重みが違う
読みたい本がまた増えてしまった
挿絵がオシャレ
Posted by ブクログ
星6つつけたい…
以前読んだときは、あまりぴんと来なくて、途中でやめてしまったのだけれど、
最近韓国文学を読み出して、韓国語や韓国の文化、歴史背景、現代のことにも興味が出てきてから読むと、内容がすいすいと入ってきた。
韓国には、昔の加害者側として、どこか後ろめたいけれどどうにもできない、みたいな、何も知らない顔してK-POPや韓国グルメにはしゃいでいるのはどうなんだろ、、みたいな気持ちがあって、
もっとちゃんと韓国の辛い部分も理解してから、本当に仲良くなりたい大事なお隣さんだと思う。
Posted by ブクログ
数々の韓国文学の翻訳や「韓国文学の中心にあるもの」などの著作で知られる著者のエッセイ。韓国語の音、表記、発話そして詩についてたいへん読みやすく、かつ興味深いエッセイであった。
ハングルの表記や発音の特徴など知識として少しは知っていたが、韓国文学の翻訳者の視点で語られるのはもう少し深い話だった。
そして詩や小説が韓国の現代史や政治そして何度も起きた不幸な出来事と絡み合っていることを知ることができた。
一方、日本の現代作家や詩人は日本の今日的問題に向き合っているのだろうかという疑問が浮かんだ。
韓国語を少し勉強してみたくなった。
Posted by ブクログ
知らなかったことは、知ろうとしなかったことだと痛感する。
韓国語について言葉、文・文字、声、詩を通して語り、我々とのあいだにあるものを浮かべる。
言葉を知ることは、歴史や文化を包括すること。そこに人がいる。もっと知りたい。
Posted by ブクログ
ハングルの素晴らしさ、日本語話者だから感じられる韓国語(朝鮮語)のおもしろさ、詩の魅力などが、わかりやすく親しみのもてる文章で書かれていて、読むと韓国語を勉強したくなる。そして日本人が知っておかなくてはならない歴史についても説明されている。「歴史を知ることは、不発に終わった夢のコレクションでもある」という言葉が印象的。
Posted by ブクログ
Kコンテンツにハマって、ここ数年の韓国「だけ」を知るのではなく、その前史のようなものも知ってほしいと切に思う。韓国で表現の仕事にある人たちに受け継がれているもの、文化の芯について知るきっかけになる1冊
Posted by ブクログ
SNSで紹介されていたのを見て、とても興味が湧きました。ハングルを勉強しながら読むと、難しく思えたものも楽しく感じられる本です。
最後のサイ(間)で生きる話は、今の自分にぴったりで、間で生きる意味を考えてしまいました。
Posted by ブクログ
非常に良本だった。
たくさん自分のノートにメモをとりながら読んだ。
なぜ私は日本人なのに自国が行った悪い歴史のすべてを知らないんだろう。
31歳で延世大学語学堂に留学され1年半ソウルに住んだ。韓国留学から戻ってきた、1992年以降学んだことが役に立つ機会はあまり多くなかった。文芸翻訳をやるようになったのはふとしたきっかけからで、50代半ばになってからだった。
2つの言語がほんとに重なったと感じることもある。韓国語でなければ日本語でもない、もしかしたら言葉さえない、言葉になる前の何かを重層的に体験しているような。
言葉は文脈によって花開きもするし、人を殺しもする。日本列島と朝鮮半島の長い歴史をみわたしながら、人を殺さない言葉をみつけることができればと願う。
韓国では朝鮮という言葉は、朝鮮時代を指す歴史用語は頻繁に使わない。韓国に住む人や韓国から日本へ来て間もない人が聞くと、日本による植民地時代のイメージと、結びついて悪印象を生み出すことがあると知っておこう。
この言語と文字に出会うきっかけ
子どものころから縄文土器のかけらを拾うのが好きで考古学を専攻
その考古学が植民地支配に協力していたことを知りダメじゃんとなる
妓生観光問題、在日コリアンへの差別、決定的だったのは光州事件
休み時間に今ではフェミニズム研究会と呼ばれそうなサークルに行くと「韓国では大変なことが起きている、学生が殺されている!」
在日コリアンの知人「少し良くなったと思ったのに、祖国はなぜどんどん遠くへ行くんだ」
それから5年後おぼつかない技術で翻訳するようになっていた。
茨木のり子という詩人
語学をしゃにむにやることで、哀しみのどん底から立ち直ろうとしていた。
隣の国の言葉ですものは魔法のように素敵な言葉だが、よくよく見つめれば隣にも国にも、矛盾と痛みと、ねじれがあった。
運が良かったのは、大学内に朝鮮語を勉強するサークルがあったことだ。
2014年4月16日セウォル号事件
亡くなった304人のうち250人が高校生
1990年代後半以降に始まった企業の自由な利益追求と競争を助長する新自由主義的な政策がもたらした最悪の結果だった。
3・1独立運動
1919年日本統治下の朝鮮で始まった独立運動。全国に波及したが、日本語側は軍隊や警察を出動させてこれを鎮圧、数千人の死者、5万人近い逮捕者が出た。現在も3月1日は国民の祝日。
1937年に日中戦争が始まると日本は朝鮮半島を兵站基地とするためにさまざまな面で弾圧を強めてゆく。1938年には学校での朝鮮語による授業が廃止され、新聞や雑誌も徐々に廃刊に追い込まれた。1942年には朝鮮語辞典の編纂を進めていた朝鮮語学会の学者たちが、治安維持法違反で捕まり2人が拷問で死亡する朝鮮語学会事件が起きた。
なぜ韓国では詩が多く読まれるのか。
痛みを知る人が多かったから。
近代以降、朝鮮半島の歴史は激痛の連続だった。1940年代に入ると日本語での創作が強制され、著名な詩人たちは筆を折ってしまった。
世界文学は依然として欧米中心で英語に翻訳されることが世界文学と認められることの条件だが、日本と韓国の間で起きているような英語を通過せず実現する言語や文学のやりとりも非常に重要だ。
1945年に日本が敗戦を迎えたとき、日本には約200万人の朝鮮半島出身者がいたが、そのうち約60万人が日本に残った。しかし1947年「外国人登録令」が出て、日本国籍を持っている彼らを「当分の間、これを外国人とみなす」こととし、管理や取り締まりの対象とした。
Posted by ブクログ
韓国ミュージカルが好きで、韓国について学び始めました。
「ファンレター」というミュージカルをみて日本の植民地時代のことを少し学びましたが、この本では言葉という切り口で韓国の歴史や国民性などを学べて「隣の国なのに」全く知らないことが多くて驚きました。
紹介されていた映画や他の本も気になります。
言葉だけを学ぶよりハングルができた歴史にも目を向けてみるとより厚みを感じ興味がわきます。
Posted by ブクログ
私は語学が好きで韓国語ものすごく面白いと思っているので、韓国語がどう面白いか、日本人に生まれた自分が韓国語/韓国とどう向き合うか〜みたいな内容が読めてとっても期待通りだった!
ハングルの歴史、文学史などを追いながら韓国の文字や言葉、文学について解説する本。言葉や文学の歴史は弾圧との戦いの歴史でもあるので、必然的に日本の植民地時代のことにも触れるし、それに続く朝鮮戦争、そして地続きの現在についても書かれている。
知らないままカルチャーを消費したくないな、隣の国のことをちゃんと知ってみたい、韓国語に限らず言葉そのものに興味がある方は期待してよいのではと思います。
そういう気持ちがなくても、韓国のカルチャーが好きな人、何かしらの海外カルチャー好きな人、何かしらの語学学んでる人、普段一切海外の何かに触れない人にも読んでほしい!
あとカバーがことりっぷの素材で読んでる間ずっと手触り気持ちよかった。笑
Posted by ブクログ
ハングルをぜんぜん勉強したことがないので、ちょっと頭に入りにくい部分もあったけれど、「詩」の章で、セウォル号事件で亡くなった高校生のために書かれた詩を読んで、涙がこみあげた。
「現代詩の激痛」という言葉の重さ。
まだまだ体験者が数多くいるぐらいの、近い過去に、たくさんの悲痛な事件がある韓国の現代史。つい先日の戒厳令騒ぎのとき、多くの市民が命をかける覚悟で国会前に集結したのも、そういう時代に戻してはいけないという強い意志が働いたからなのだろうな。
短くて読みやすい本なので、きっとまた読み返すと思うし、おなじく斉藤真理子さんの手になる『韓国文学の中心にあるもの』も、積んでいるのでちゃんと読みたい。
Posted by ブクログ
韓国のドラマを観ていると、本屋さんや本を読むシーンがたくさん出てくる。詩を読んだり書いたり朗読したりするシーンも。韓国や朝鮮の文学や詩を読みたいと思っていたけど何から読めばいいかわからなかったので、参考になった。『1982年生まれ、キム・ジヨン』や、ハン・ガンさんの本も読んでみたい。
Posted by ブクログ
ノーベル文学賞を受賞されたハン・ガン氏の翻訳をされている方ということで読んでみた。
結論から言うと、最初に読んだ韓国についての本がこの本で良かったと心底思う。
特に歴史とハングルの成り立ちについて興味深く、また教養としても知っておくべきことの一つだ。
茨木のり子氏の「ハングルへの旅」を紹介してくれていたのも私にとっては大きい(「詩のこころを読む」は私にとって大切な本)。
この本をきっかけに、これから韓国について少しでも正しい歴史認識と文化の違いを知りたい。
Posted by ブクログ
ハン・ガンの『別れを告げない』が良かったので、訳者の斎藤真理子さんの本を。
とても興味深い良い本でした。
ハングルについて、韓国語について、歴史について、文学について、分かりやすく書かれています。
文学や芸術は全てを内包していて、平等に存在していると改めて思いました。
韓国は詩の国だと知りませんでした。
日本とは詩人の在り方が違うのですね。比喩を使わなければ思いを公にできない時代が長かったから詩人は代弁者であり英雄。
詩は書かれた時代や詩人の境遇や立場を知らないと分からないのかも。
韓国語を日本語に翻訳する時の難しさの話に驚きました。
韓国語では複数形の「たち」が何にでもつくらしく、副詞の「静かに」とかにも「たち」がついて「静かたち」となるらしい。
雨脚だけでなく雪脚という言葉もあるとかで、日本語に翻訳するのは訳者が優れていないとニュアンスを伝えられないなぁ…と。
Posted by ブクログ
ハン・ガンのノーベル賞受賞の発表があった最中にタイミングよく読めた。斎藤さんの文章が詩的ですごくすてき、と思って読んでいたら、本当に詩もお書きになるとのこと。こちらも読みたい。付録に書いてある “「失敗」の反対語は「成功」ではなく、「無事」だと思う”という言葉も名言。
ハングルをていねいに包んでそっと手渡されたような気持ちになった。それと同時に、隣の国が経験してきた悲しい歴史も。(そしてその原因のひとつはわたしたちの国がつくった)
Posted by ブクログ
1章 말(マル)言葉
2章 글(クル)文、文字
3章 소리(ソリ)声
4章 시(シ)詩
5章 사이(サイ)あいだ
本書の感想を書くにあたり、初めてキーボードを“韓国語”を入力できるように設定してみた。
(正しく表記できているだろうか?)
今まで、その初歩すら知らなかった隣国の言語を学ぶことを通じて、日本と世界の歴史をもっと知りたい。そんなふうに思わせてくれる一冊だった。読書案内としても素晴らしい!
Posted by ブクログ
韓国文学の翻訳者である斉藤真理子さんによる韓国語と日本語にまつわるお話。
10代以上すべての人のための人文書シリーズ『あいだで考える』の中の1冊として刊行されてていることもあり、とても読みやすく、理解しやすいです。
ハングルに関する思想や歴史、韓国における詩、戦争と現代史など知っておくべきことがわかりやすくて、本当に読んでよかったです。
「世宗大王とのチューニング」がとっても素敵、
ハングルの発音の魅力がとてもよくわかりました。
日本語には「雨脚」しかないけど、韓国語には「雨脚」も「雪脚」という言葉もあること。
韓国語には無機物や抽象概念にも複数形があること、
例えば「問題たち」とか「静かたち」のような。
そんなことも知ることができて楽しいです。
「どこかを植民地にするというしわざは、百年に及ぶ禍根を残す」
本当のその通りで、韓国文学が大好きだし、K-POPも韓流ドラマも好きだけど、どこかで罪悪感を感じ続けてしまうのがとても苦しく、昔の人たちがあんなことしなければ‥と恨めしく思ってしまって。
「2つの言語、2つの文化のあいだにはやはり敷居がある。日本が朝鮮半島を植民地にしたということ、そのときに起きた問題がいまだに解決されていないということだ。在日コリアンの法的地位や人権の問題もそのひとつだ。」
「今の日本でこの言語を学ぶことは『敷居』をなかったことにするためじゃなく、こういう種類の敷居が二度とつくられないようにという願いのために、活かされてほしい。」
今、次男はアメリカ留学時にルームシェアしていた韓国人のお友達に会いに韓国に遊びに行っています。
これからの若い世代が、こうして心からの交流をして、敷居をまたいで日韓が共に生きる新しい時代を作っていってくれることを願います。
私は翻訳された韓国小説や詩をたくさん読むことができる今を生きることができて、本当に本当に幸せです。
韓国語ももっともっと頑張って勉強しよう。
Posted by ブクログ
読んでよかった。
在日コリアンという言葉は知っていたけれど、韓国にルーツのある人がたくさんいて、日本の植民地支配が関係しているのだろうなぁくらいにしか思っていなかった。
外国人登録制度によって、日本国籍にさせられたコリアンの人々が「朝鮮」籍(特定の国家を指すものではなく、出身地を表す記号。北朝鮮のことではない)や「韓国籍」になり、さらに日本は北朝鮮を未承認国家としていることから、朝鮮籍の人は事実上の無国籍状態または国籍未確認の状態であるということに衝撃を受けた。
今ほど2つの言語と文化が好意を持って歩み寄った時代はないが、今ほど露骨に敵意や憎悪を直接的・継続的に向けられる時代もなかった、というのも重要な記述だと思った。
困っていない人は、困っている人の気持ちは分からない。社会的弱者や少数者の気持ちが分からない。踏み躙った側は、踏み躙られた側の気持ちが分からない。
ということをきちんと頭において、学習して、想像しなければならない。
様々なことを知る上でも読書は大切だと感じた。
前半の、マル(言葉)、クル(文・文字)、ソリ(声)についても興味深く読んだ。世宗大王の『訓民正音』読んでみたい。
韓国で詩が愛されていること、k-pop原論、興味がわいてきた。
Posted by ブクログ
マル(言葉)、クル(文、文字)、ソリ(声)と韓国語の解説から始まってわかりやすく興味深く読んだが、隣の国の言葉を知ることはその深く結びついている歴史をしることでもある。詩人たちの作品の心の叫びなど心に響く。良い関係でありたいと願う。
Posted by ブクログ
韓国文学へのガイドは、多くの場合、日本と朝鮮という2つの国の関係から語られることが多いが(もちろんそれは必要不可欠なことだ)、この小さくて美しい本で、斉藤真理子さんは、朝鮮の人たちが使う言葉を差し出しながら、その奥深さへと導いていく。話し言葉の「マル」、書き言葉である「クル」、そしてその奥から聞こえてくる「ソリ」、声。
植民地支配や軍事政権によって本心を語るための言葉を奪われ、大量死さえ重ねられてきた集合的歴史をもち、個々の身体においても容易に言葉にしがたい痛みを負ってきた隣の国の人たちが、だからこそ自らの手に取り戻そうと格闘してきた「マル」「クル」「ソリ」。それを表現しようとするのが韓国文学であるという、ずしりと重い事実が、やさしくやわらかな斉藤さんの言葉と美しいイラストを通して伝わってくる。
Posted by ブクログ
韓国とは切っても切れない縁なので(個人的に)読んでみました。
「あいだで考える」というシリーズの中の1冊で
必ずしも国と国とか、言語とか限られてるわけではなく
今回はたまたま「韓国語と日本語のあいだ」について著者の経験や考えや感じたことが書かれてありました。
著者は韓国文学を日本語に翻訳している翻訳者でもあって
言葉選びや韓国語に対する視点はとても新鮮でした。
最初この本を読もうと思ったときは分厚い本で、お堅い本なんだろうな...と予想していたのですが(失礼ですね)、
そんなことはまったくなく、途中素敵なイラストもあって読みやすかったです。
私も韓国語と日本語のあいだに立たされることがあった時期もあり、言葉の違いなんてのも感じましたが、ただ違うだけでなく、同じ場面での言い方の違いからくる感じ方も新鮮でした。
印象的だったのは韓国では詩を多用しているということ。
言われてみればそうだなと改めて気づかされ、次に韓国語に触れる時にはちょっと意識してみようと思います!
参考にした図書もたくさん紹介されていてまた今後少しずつ読んでみたいです。
Posted by ブクログ
K-POP好きの人はある意味で、必読だと思う。韓国のことが言語を通じてより深く知れることができた。読みやすさもあるし多くの人に受け入れやすい内容だとも思う。